婚約者の王子に聖女など国に必要ないと言われました~では私を信じてくれる方だけ加護を与えますね~

高井繭来

文字の大きさ
198 / 264

《169話》

しおりを挟む
「サラ、もう寝ているか?」

 セブンの声が聞こえた。
 幻聴であろうか?
 サラはシーツから顔を出した。

 トントン

 玄関の扉をノックする音が聞こえる。
 幻聴でないらしい。
 ではこの扉の向こうにセブンが居るのだ。

 サラは慌てた。
 お風呂に入っていない!
 セブンに臭いと思われるのは真っ平御免である。
 だが今日は自宅に戻ると言っているし、居留守も使えない。
 セブン程の魔術の使い手にもなると人の気配を察知する魔術位簡単に使えるからだ。

(私!歯も磨いてないです―――――っ!!!)

 出たくないけど出ない訳にはいけない。
 テーブルの上のハーブを口に入れて嚙んで吐き出す。
 少しは口臭がマシだろう。
 体臭までどうにか出来る暇と手立てはないが。
 こんな事なら清拭だけでもしておくべきだった。
 サラは絶望した。

 神話時代なら制汗スプレーや香水が簡単に手に入ったが、ディノートでソレを求めるのは厳しい。
 制汗スプレーは文明の国クロイツにしかないし、香水はカカンでなら安価で手に入れれるが、ディノートでは安価で手に入る香水は質が悪い。
 質の良い香水を求めるにはサラ的にはまだその気はなかった。
 香りを纏う必要性を今まで感じなかったからだ。
 今日初めて香水の素晴らしさを知った。
 お財布事情的には問題ないので今度買いに行こう。
 サラは決心した。

 体の臭いがしない様にとシーツを被ったまま玄関の扉を開ける。

「サラ、寝てたのか?まだ寝るには少し早いだろう?」

「何だか、やる気、出なかった、です」

「食事は?」

「食べてない、で、す…………」

 栄養バランスには五月蠅いセブンだ。 
 サラは怒られる覚悟をした。

「それなら丁度良かった。弁当を作って来たから食べるぞ」

「はい?」

「取り合えず中に入れろ」

「はいいい?」

 セブンはそう言うとサラの部屋に入って来た。
 そしてテーブルに重箱を置く。

「何で、セブン、さん?」

「何時もの癖で作りすぎた。お前なら夜食でも食べるだろうと思って持ってきたが、夕食を食べてないならより丁度良い。ちゃんと食べないとホルモンバランスも崩すぞ?食べるだろ?」

 セブンの目が細められる。
 優しい時のセブンの眼だ。
 最近サラはこの目をよく見る。
 この優しい目を見ると、何故だか甘くて、そして切ない不思議な感情になるのだ。

「いただき、ます」

「召し上がれ」

 セブンがシンクで手を洗い、綺麗になった手で弁当の包みを開ける。
 重箱の中には相変わらずの色とりどりの美味しそうなオカズが1段目に入っており、2段目に数種類のお握りが入っている。
 薬師ギルドに行っていた筈だからそんなに食事に手をかける時間は無かったはずだ。
 もう料理のセンスの塊としか言いようがない。
 全能神様にも気に入られる訳である。

「ところで何でお前はシーツを被っているんだ?」

「ち、近づかない、で、下さ、い…あの、私今日、お風呂入ってない、です………」

 サラは身を引いたが逆にセブンは距離を詰めて来た。
 そしてシーツを剥いで首筋をクンクンと犬の様に匂う。

「サラからは良い香りしかしないから心配するな。俺はお前の香りが好きだぞ?」

「はわわあわわわあっぁぁぁあぁっ!!!」

「ほら、食うぞ」

「~~~~はぃ…………」

 サラは小さな声で返事をするしかないのであった。
しおりを挟む
感想 951

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

王子よ、貴方が責任取りなさい

天冨 七緒
恋愛
「聖女の補佐をしてくれないか?」  王子自ら辺境まで訪れ、頭を下げる。  それほど国は、切羽詰まった状況なのだろう。  だけど、私の答えは……  皆さんに知ってほしい。  今代の聖女がどんな人物なのか。  それを知った上で、私の決断は間違いだったのか判断してほしい。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

【完結】何でも奪っていく妹が、どこまで奪っていくのか実験してみた

東堂大稀(旧:To-do)
恋愛
 「リシェンヌとの婚約は破棄だ!」  その言葉が響いた瞬間、公爵令嬢リシェンヌと第三王子ヴィクトルとの十年続いた婚約が終わりを告げた。    「新たな婚約者は貴様の妹のロレッタだ!良いな!」  リシェンヌがめまいを覚える中、第三王子はさらに宣言する。  宣言する彼の横には、リシェンヌの二歳下の妹であるロレッタの嬉しそうな姿があった。  「お姉さま。私、ヴィクトル様のことが好きになってしまったの。ごめんなさいね」  まったく悪びれもしないロレッタの声がリシェンヌには呪いのように聞こえた。実の姉の婚約者を奪ったにもかかわらず、歪んだ喜びの表情を隠そうとしない。  その醜い笑みを、リシェンヌは呆然と見つめていた。  まただ……。  リシェンヌは絶望の中で思う。  彼女は妹が生まれた瞬間から、妹に奪われ続けてきたのだった……。 ※全八話 一週間ほどで完結します。

処理中です...