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【1話】

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 空をひとっ飛びでつきました隣国。
 展開が速い?
 いや気にしたら負けだ。
 取り合えずサイヒは目的地である隣国”ガフティラベル”に到着した。
 隣国とは言っても花の都と呼ばれる穏やかな”カカン”とは違い、大陸でも長い歴史の中で小国を取り込んで大陸1の大国になった帝国だ。
 文明・主教・魔術・法術が一定水準に達しており”来る者拒まず、去る者追わず”なこの国は旅人の国とも呼ばれる。

 本来ならカカンから馬車で2週間はかかる距離だが快適空の旅のおかげで半日で着くことが出来た。
 やはり魔術は便利だ。
 元々面倒臭がりなサイヒは魔力の封印が不便でしょうがなかった。
 魔術なら一瞬で終わる事を何時間もかけて己の肉体でやらなければならない。
 掃除も料理も魔術なら一瞬だ。
 これからは魔力を封印する必要はない。
 全くもって万々歳である。

 そして生活していく上での資金。
 国外追放を言い渡された訳でもなく、勝手に家出してるので資金くらいは自分で調達しようとサイヒは思っていた。
 実家に置いて来た装飾品やドレスは姉のマーガレットが使えば良い。
 体系の違いはリノベーションさせれば問題ないだろう。
 もともとフリフリドレスも煌びやかな装飾品もサイヒには興味はない。
 自分より2卵生双生児でサイヒとは正反対の愛らしい外見の姉の方が似合うに違いないと、サイヒは本気で思っている。
 シスコンここに極まれりだ。

 では家を出たは良いがどう資金を調達するのか?
 冒険者ギルド?
 まぁ良くある展開ではある。
 だがサイヒは身を粉にして働くのは嫌である。

 ここで役立つのが魔術だ。
 炭素分子の塊を【ソナー】で探し【土】属性の魔術で採掘。
 【身体強化】を手にかけ力いっぱい握りしめ、高温高圧状態にして人工的にダイヤモンドを作る。
 やはり魔術は便利である。
 そして筋肉は裏切らない。
 この方法を取っているのはサイヒしかいないであろうから、ダイヤモンドが人工とは気付かれないだろう。
 
 何時か国から出ていくことを何と無しに考えていたので、5年ほど前からセコセコ気ままに人工ダイヤモンドを作っていたので資金面の問題は無い。

 特にバトルジャンキーでもないサイヒは冒険者になる必要性はない。
 のんびりスローライフを送る気も無い。
 カカンが花の都と呼ばれていただけあって、自然環境に癒しを求めるほど精神的な疲労は無い。

 サイヒが望むものはただ1つ。

 ”面白い”ことだ。

 衣食住が完備されていて面白いものが見れるのが第1条件。
 聖女暮らしはソレはソレは刺激が無いものだったから、その反動が来ているのかもしれない。
 毎日清貧な暮らしをし、国のために必死に祈る。
 まぁサイヒは必死には祈っていなかったが、とにかく俗世に触れるな!穢れを宿すな!と何ともつまらない生活を送ってきた。
 
 7歳の頃から10年間その生活に耐えたのだ。
 サイヒは自分は努力したと自画自賛をしている。

 姉のマーガレットについてはローズの後ろ盾があるので教会側も強くは出られないであろう。
 聖女の力を半場強制的に譲渡してきたが、姉に不幸な思いをさせたい訳ではない。
 大体サイヒの法力の量で国に結界を張る位、多少肉や魚を食べた所で弱まるような脆弱なモノでは無いのだ。

 いや、こっちは成長期だから肉食べたい訳よ肉。
 大豆からタンパク質取るのは飽きたのだよ。
 ベジタリアン所かビーガンな生活を強いられてサイヒは動物性タンパク質に飢えていた。

 そうとなれば話は早い。
 まず一部のダイヤモンドを売り金にする。
 売値については買い手が嘘をついていないか【思考伝達】の魔術で確認するのでぼられる事はなかった。
 旅人の国と呼ばれているだけあって誰でも簡単に資金を調達できる様だ。
 まぁサイヒは汗水垂らして働いては無いが。

 そして街を歩き自らの嗅覚を信じ定食屋に入る。
 求めるは動物性タンパク質だ。
 兎に角、肉や卵や乳製品などを貪る。
 消える料理の多さと体に収納される許容量のバランスがおかしいのは気にしたら負けだ。
 2時間近くサイヒは肉を貪った。
 大満足である。

 そして目指すは目的地。
 皇太子の後宮である。
 是非ともドロドロの愛憎劇と言う物を間近で拝見してみたい。
 そう、拝見だ。
 自分が巻き込まれるのは無しの方向で。

 後宮に向かうと当然護衛の者に止められる。
 【催眠】の魔術を行使。
 そのまま偉いさんの処迄案内して貰う。
 あまりにも堂々とサイヒが歩いているので逆に不信感を持たれることは無かった。
 便利だね魔術って。

 偉いさんの処に着いたので挨拶をする。

「貴様!何者だ!!」

「今日からココで宦官として雇って下さいな」

 【催眠】

「あぁ今日から入った新人だったな。歓迎する。良い働きを期待しているぞ」

「うぃっす」

 こうしてサイヒは宦官として後宮へ入る事が出来た。
 魔術を行使しての見事な正面突破であった。
 女にしては身長が高め(167㎝)のサイヒは中性的で涼やかな顔立ちなので男装は良く似合っていた。
 押し潰している胸だけは苦しいが。
 無駄に巨乳である。
 今の処使い道は無い。
 まだまだ巨乳を武器にしなければならない相手と立ち会った事は無いのだ。
 その内巡り合う事を心の隅で願っておこう。

 鏡の中の己を見てサイヒは満足する。

「ふむ、私も中々の美男子じゃないか。これならローズ様にも負けないか?この出来ならまず性別はバレないだろう。それでは後宮の1人の男を巡っての愛憎劇を間近で堪能させて貰う事にしよう」

 こうしてサイヒはガフティラベル帝国皇太子の後宮に、見事宦官として身を置く事ととなった。
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