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【21話】
「マロン、今日は1人客が増えたんだが大丈夫か?」
「お兄様の友人ですの?」
「今日友人になった。ルークの従者で…」
「コーンと申します。以後お見知りおきをマロン妃」
まるで騎士のお手本の様に様になった礼をクオンはする。
「まぁ、ルーク様と反対で男らしい方なのですね」
クスクスとマロンが笑う。
その令嬢らしくない屈託ない笑みにクオンは口をぽかんと開いた。
「1人増えたくらい大丈夫ですわ。ちょうど今日は食堂に差し入れに行こうとクッキーを沢山焼きましたの」
「それで甘い匂いが充満しているのか」
「はいお兄様。どうぞお座りになって下さい。ルーク様もコーン様も、今お茶の用意を致しますわ」
マロンに案内されて皇太子妃の部屋に備え付けられたサロンに案内される。
サイヒとルークは迷いなく勝手にソファに座る。
ちなみにルークはちゃっかりサイヒの隣に座っている。
「サイヒ、ゲストが勝手に座って良いのか?」
「マロン主催のお茶会は全てマロンが取り仕切るからな。ゲストは好きにくつろぐのがココのスタイルだ。あ、私の隣にマロンが座るのでコーンは別の場所に座ってくれ」
「あ、あぁ分かった…」
位の高い令嬢が茶会を開くときには使用人が全ての用意をする。
それが普通だ。
だがサイヒは”マロンが全て取り仕切る”と言った。
この言葉をそのままの意味で受け取ると…。
「お待たせしましたお兄様。本日はカップケーキにクッキー、サンドイッチです。お茶はローズヒップティーでお肌に良いんですの。カップケーキは蜂蜜たっぷりな甘さ強めのプレーンと紅茶味の2種類。クッキーはバターたっぷりのプレーンとココア味です。サンドイッチは野菜サンドとフルーツサンドです」
言葉の通りワゴンを押してマロン自身が運んできた。
「マロン妃の手作りなのですか!?」
「私、お菓子を作るのが好きなんです。作ったお菓子を美味しそうに食べて貰うのはもっと好きですわ」
ふんわりと微笑むマロンにクオンは驚いた。
あまりにも位と言動があっていない。
「コーン、マロンの菓子は美味しいぞ」
何故かサイヒがドヤッている。
妹を自慢する兄のようである。
「では頂く」
「私も頂こう」
サイヒとルークがカップケーキに手を伸ばす。
サイヒは甘味たっぷりのプレーン味。
ルークは甘味の抑えた紅茶味だ。
「うん、今日も旨いな」
「良かったです」
ニコニコと微笑み合うサイヒとマロン。
どう見ても仲の良い兄妹だ。
それもかなりのシスコンとブラコンの。
その光景に驚きながらもクオンもプレーンクッキーに手を伸ばす。
サクッ
「!」
バターの風味と柔らかな甘みが口に広がる。
だがくどさはなく後味も悪くない。
高級店で売っているような菓子とは違う優しい美味しさだ。
「うまい……」
「まぁ良かったですわ。コーン様も好きなだけ召し上がって下さいね」
「あぁ有難うございます……」
素朴だが美味しいクッキーの味は懐かしさを感じさせた。
クオンの母親もまた菓子作りが好きな女性だったからだ。
マロンの作った菓子は、亡き母の手作りの菓子の味を思い出させる。
心から幸せを感じさせてくれる味だった。
「コーンがそんな優し気な表情をするとは珍しいな?」
「普段の俺が不愛想みたいな言い方は止めて貰いましょうか。それにこれ程美味しい菓子にあり付けるなら顔の筋肉も緩むのも仕方ないでしょう?」
「ふふっ、マロンの菓子は美味しいだろう?でもマロンはやらんぞ。私の大切な妹だからな」
「もう、お兄様ったら!」
頬を赤くしてぽかぽかとサイヒの肩を叩くマロンは年相応の無邪気さで、見ている者を和ませる。
「ソレを言うなら私だってお兄様をそこいらの女性にあげるつもりはありませんわ。ちゃんと私の眼鏡にかなった女性で無いと交際は許さないんですからね!」
頬を膨らますマロンの頭を笑いながらサイヒが撫でる。
そのアットホームな空間にクオンは度肝を抜かれっぱなしだ。
「せめて私かサイヒが女性なら良かったのだが…」
(何言ってんだこの皇太子は!?)
ルークの発言にクオンが突っ込みそうになるのをグッ、と堪えた。
「そうですね。ルーク様が女性でしたら安心してお兄様を任せますのに」
「そうなるとマロン嬢が私の義妹になるな」
「まぁ、ルーク様とお兄様の事を語らうのはとても楽しいでしょうね!」
「サイヒの事なら会話のネタに尽きる事は無いな」
クオンには何だかこの光景がブラコンの妹とシスコンの兄と、その兄の恋人の風景に見えて来た。
と言うより性別が変わらなくてもやっていることは変わらない気がする。
サイヒがモキュモキュとカップケーキを食べる中、マロンとルークはサイヒの魅力について語り合っているのだから。
(おかしい…本来なら殿下とマロン妃が夫婦なのだが……)
物凄く何かが間違っている気がするクオンである。
「そう言えば食堂にクッキーを持っていくと言っていたな。今夜の夕食は宦官用の食堂で食べるのか?」
「はい、今日のC定食はサバの味噌煮なんですの」
(皇太子妃が宦官用の食堂で夕食!?)
「相変わらず東の国の魚料理に目がないな」
「だって宦官用の食堂のお料理美味しいのですもの!メニューが増えてからよりいっそう美味しくなりましたわ。それに東の魚料理食べれるのは宦官用の食堂だけですもの」
「箸の使い方も上手くなったしな」
「訓練の賜物ですわ」
ニコニコと笑顔で話すサイヒとマロンの姿は眼福と言っても良いだろう。
事実、傍仕えの使用人たちもニコニコと笑顔で2人の会話を聞いている。
だが、だが話の内容が宦官と皇太子妃のものではない。
「マロンが差し入れするクッキーは食堂のオバちゃんにも、おこぼれにあり付けた宦官たちにも好評だぞ。皇太子妃の中でマロンが1番宦官に人気があるので私も鼻が高い」
マロンの頭を撫でるサイヒはどう見てもシスコンの兄にしか見えない。
年頃の男女であるはずなのに、恋慕の情が一切見られないのだ。
むしろルークからサイヒに向けられる視線の方が恋慕の情が籠っている。
もはや性別が行方不明だ。
突っ込む気も失せてクオンは美味しい菓子と茶を味わうことにした。
(こんな愛らしい少女を嫁に貰える者は幸せだろうな……)
サンドイッチに舌鼓を打ちながらも、クオンは既にマロンがルークの妻であることを忘れていた。
全てはこのカオスの空間が悪いのだろう。
最早サイヒのハーレムにしか見えない空間で静かに食事しながら、思考能力を低下させながらもクオンはこの空間の心地よさに久しぶりに肩の力を抜いていた。
「お兄様の友人ですの?」
「今日友人になった。ルークの従者で…」
「コーンと申します。以後お見知りおきをマロン妃」
まるで騎士のお手本の様に様になった礼をクオンはする。
「まぁ、ルーク様と反対で男らしい方なのですね」
クスクスとマロンが笑う。
その令嬢らしくない屈託ない笑みにクオンは口をぽかんと開いた。
「1人増えたくらい大丈夫ですわ。ちょうど今日は食堂に差し入れに行こうとクッキーを沢山焼きましたの」
「それで甘い匂いが充満しているのか」
「はいお兄様。どうぞお座りになって下さい。ルーク様もコーン様も、今お茶の用意を致しますわ」
マロンに案内されて皇太子妃の部屋に備え付けられたサロンに案内される。
サイヒとルークは迷いなく勝手にソファに座る。
ちなみにルークはちゃっかりサイヒの隣に座っている。
「サイヒ、ゲストが勝手に座って良いのか?」
「マロン主催のお茶会は全てマロンが取り仕切るからな。ゲストは好きにくつろぐのがココのスタイルだ。あ、私の隣にマロンが座るのでコーンは別の場所に座ってくれ」
「あ、あぁ分かった…」
位の高い令嬢が茶会を開くときには使用人が全ての用意をする。
それが普通だ。
だがサイヒは”マロンが全て取り仕切る”と言った。
この言葉をそのままの意味で受け取ると…。
「お待たせしましたお兄様。本日はカップケーキにクッキー、サンドイッチです。お茶はローズヒップティーでお肌に良いんですの。カップケーキは蜂蜜たっぷりな甘さ強めのプレーンと紅茶味の2種類。クッキーはバターたっぷりのプレーンとココア味です。サンドイッチは野菜サンドとフルーツサンドです」
言葉の通りワゴンを押してマロン自身が運んできた。
「マロン妃の手作りなのですか!?」
「私、お菓子を作るのが好きなんです。作ったお菓子を美味しそうに食べて貰うのはもっと好きですわ」
ふんわりと微笑むマロンにクオンは驚いた。
あまりにも位と言動があっていない。
「コーン、マロンの菓子は美味しいぞ」
何故かサイヒがドヤッている。
妹を自慢する兄のようである。
「では頂く」
「私も頂こう」
サイヒとルークがカップケーキに手を伸ばす。
サイヒは甘味たっぷりのプレーン味。
ルークは甘味の抑えた紅茶味だ。
「うん、今日も旨いな」
「良かったです」
ニコニコと微笑み合うサイヒとマロン。
どう見ても仲の良い兄妹だ。
それもかなりのシスコンとブラコンの。
その光景に驚きながらもクオンもプレーンクッキーに手を伸ばす。
サクッ
「!」
バターの風味と柔らかな甘みが口に広がる。
だがくどさはなく後味も悪くない。
高級店で売っているような菓子とは違う優しい美味しさだ。
「うまい……」
「まぁ良かったですわ。コーン様も好きなだけ召し上がって下さいね」
「あぁ有難うございます……」
素朴だが美味しいクッキーの味は懐かしさを感じさせた。
クオンの母親もまた菓子作りが好きな女性だったからだ。
マロンの作った菓子は、亡き母の手作りの菓子の味を思い出させる。
心から幸せを感じさせてくれる味だった。
「コーンがそんな優し気な表情をするとは珍しいな?」
「普段の俺が不愛想みたいな言い方は止めて貰いましょうか。それにこれ程美味しい菓子にあり付けるなら顔の筋肉も緩むのも仕方ないでしょう?」
「ふふっ、マロンの菓子は美味しいだろう?でもマロンはやらんぞ。私の大切な妹だからな」
「もう、お兄様ったら!」
頬を赤くしてぽかぽかとサイヒの肩を叩くマロンは年相応の無邪気さで、見ている者を和ませる。
「ソレを言うなら私だってお兄様をそこいらの女性にあげるつもりはありませんわ。ちゃんと私の眼鏡にかなった女性で無いと交際は許さないんですからね!」
頬を膨らますマロンの頭を笑いながらサイヒが撫でる。
そのアットホームな空間にクオンは度肝を抜かれっぱなしだ。
「せめて私かサイヒが女性なら良かったのだが…」
(何言ってんだこの皇太子は!?)
ルークの発言にクオンが突っ込みそうになるのをグッ、と堪えた。
「そうですね。ルーク様が女性でしたら安心してお兄様を任せますのに」
「そうなるとマロン嬢が私の義妹になるな」
「まぁ、ルーク様とお兄様の事を語らうのはとても楽しいでしょうね!」
「サイヒの事なら会話のネタに尽きる事は無いな」
クオンには何だかこの光景がブラコンの妹とシスコンの兄と、その兄の恋人の風景に見えて来た。
と言うより性別が変わらなくてもやっていることは変わらない気がする。
サイヒがモキュモキュとカップケーキを食べる中、マロンとルークはサイヒの魅力について語り合っているのだから。
(おかしい…本来なら殿下とマロン妃が夫婦なのだが……)
物凄く何かが間違っている気がするクオンである。
「そう言えば食堂にクッキーを持っていくと言っていたな。今夜の夕食は宦官用の食堂で食べるのか?」
「はい、今日のC定食はサバの味噌煮なんですの」
(皇太子妃が宦官用の食堂で夕食!?)
「相変わらず東の国の魚料理に目がないな」
「だって宦官用の食堂のお料理美味しいのですもの!メニューが増えてからよりいっそう美味しくなりましたわ。それに東の魚料理食べれるのは宦官用の食堂だけですもの」
「箸の使い方も上手くなったしな」
「訓練の賜物ですわ」
ニコニコと笑顔で話すサイヒとマロンの姿は眼福と言っても良いだろう。
事実、傍仕えの使用人たちもニコニコと笑顔で2人の会話を聞いている。
だが、だが話の内容が宦官と皇太子妃のものではない。
「マロンが差し入れするクッキーは食堂のオバちゃんにも、おこぼれにあり付けた宦官たちにも好評だぞ。皇太子妃の中でマロンが1番宦官に人気があるので私も鼻が高い」
マロンの頭を撫でるサイヒはどう見てもシスコンの兄にしか見えない。
年頃の男女であるはずなのに、恋慕の情が一切見られないのだ。
むしろルークからサイヒに向けられる視線の方が恋慕の情が籠っている。
もはや性別が行方不明だ。
突っ込む気も失せてクオンは美味しい菓子と茶を味わうことにした。
(こんな愛らしい少女を嫁に貰える者は幸せだろうな……)
サンドイッチに舌鼓を打ちながらも、クオンは既にマロンがルークの妻であることを忘れていた。
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