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【59話】
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アンドゥアイスの愛グリフォンに乗ってルークはカカンへと向かう。
主の躾が良いのかグリフォンはルークの言う事を良く聞いてくれるので、概ね快適な旅であった。
風の魔法を操るグリフォンは風魔法でルークへの風の抵抗を減らしてくれている。
全く見事な躾である。
「兄さんのお陰でカカン迄半日で着きそうだな。お前も有難うオグリ」
ちなみにグリフォンの名前である。
アンドュアイスが命名だ。
従兄弟揃ってネーミングセンスは無いらしい。
首を指先でかいてやると「クゥ」と嬉しそうに喉を鳴らす。
喜んでいる様だ。
人への懐き様と言い、仕種と言い、オグリは魔獣の持つ凶暴性を感じられない。
当然だろう。
オグリはアンドュアイスが卵から孵した魔獣なのだから。
アンドゥアイスを親のように慕っているのだ。
当然幼いころから面識のあるルークにも懐いている。
「兄さんと和解できたお陰でまたお前とも会えたしな。本来の兄さんの優しい所を見抜き、優しい兄さんを返してくれたサイヒには感謝の言葉でもまだ足りないな…」
今のルークとアンドュアイスの良好な関係は全てサイヒのお陰と言っても過言ではない。
「早くサイヒに会いたいな…」
「クゥ――――ッ♪」
励ます様にオグリが鳴いた。
:::
国境を越えて、王都に入るのはクオンが手配した手形ですんなり入り込む事が出来た。
こんなにセキュリティが甘くて良いのかとルークは驚く。
旅人の国であるガフティラベル帝国でも、もう少し厳しいセキュリティだ。
それだけ内政に自信があるのだろう。
カカンの王都に入って驚くのはまず花の多さだ。
王都を取り囲む山に花が咲き乱れており、王都の至る所に花が咲いている。
四季により咲き誇る花も違うらしい。
流石は「花と美の国」と名高いカカンである。
「この国で、サイヒは生まれ育ったのだな……」
美しい国。
街は活気づいている。
路上で売られる屋台から美味しそうな匂いが漂ってくる。
露店も多く、アクセサリーを売っている店が多い。
「そこのグリフォン連れのお兄さん!良かったら見て行かないか?」
グリフォンを連れていると言うのに街の人はルークを遠巻きにする事がない。
あまりにも平和。
言い方を変えれば危機感が無さ過ぎる、と言うのがルークの感想だ。
少しでも早くサイヒの情報を集めたい。
その為にはカカンの城を訪ねるのが1番手っ取り速いだろう。
だがサイヒが育ったこの街に興味もあった。
露店を1つ覗いたくらいでは時間も取られる事はないだろう。
敷物に並べられているアクセサリーを見る。
全てが花をモチーフに使われているデザインだ。
その中の1つに目が行く。
銀細工の鈴蘭のブローチだ。
(そう言えばサイヒが自分のミドルネームは鈴蘭から取られたと言っていたな…)
サイヒの花。
可憐なそのブローチに興味が湧いた。
華奢でシンプルなデザインだ。
男が付けるには少々繊細なデザインだが、サイヒには良く似合うと思った。
鈴蘭の花の中に薄い青色の石が嵌め込まれている。
銀の色に反射して、サイヒの青銀の瞳を思わせた。
「主人、この鈴蘭のブローチを貰えるか?」
「はい、贈り物ですか?ラッピングはどういたしましょう?」
「ではラッピングしてくれるか?」
「はい、この和紙の中から好きなデザインをお選び下さい」
「ほう、見事な紙だ」
”和紙”はカカンの特産品だ。
作り方は門外不出で滅多に手に入らない。
ブローチがサイヒの瞳を思わせる品なので、和紙は黒を選んだ。
金色の縁取りに金の花(桜と言うらしい)が描かれた黒の和紙は大人っぽいデザインで、年齢より大人びたサイヒに良く似合うと思った。
「貰う女性は嬉しいでしょうな。
鈴蘭の花言葉は『純粋』『純潔』『優しさ、愛らしさ』『幸せの訪れ』です。女性に贈られるには良い花ですよ。
このブローチに使われている石はアクアマリンです。
アクアマリンの石言葉は『幸せ』『永遠の若さ』『喜び』『勇気』『富』を象徴します。
また海の石と言われるだけあって、水の中に身をゆだねたような清らかな気持ちにさせてくれると言われています。
『幸せな結婚』も導いてくれるそうですよ
アクアマリンはエメラルドと同じ鉱物の宝石です。
エメラルドの瞳を持つお兄さんからのプレゼントとしては完璧ですね!」
亭主は黒の和紙の紙袋にブローチを入れてルークに手渡した。
「お代は銀貨9枚です」
「そんなに安いのか!?」
「学生の作った品ですからね。お安くなっています。でも造りはちゃんとしておりますよ。この学生が作った品は半額は学生の取り分になるんですよ。だから下手な細工師より気合の入った品を作りますからね」
「面白いシステムだ」
「大聖女様が当時の国王と作ったシステムですよ!1000年たっても受け継がれるカカンの自慢の文化の1つさ!!」
滅ぶ寸前だと言われていたカカンを復興した伝説の聖女だ。
1000年たった今でも国民に愛されているようだ。
争いの絶えないガフティラベル帝国では何代も皇帝が変わり、伝説になった人物など存在しない。
まるでこの国は時が止まっている様だ。
優美で美しい国。
だがこの国はサイヒの存在を感じさせない。
胸が寂しくなった気がして、ルークは手渡された品を胸に抱えサイヒに想いをはせた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ローズ王太子の所まで進みませんでした(;^ω^)
オグリちゃんに関してもまた閑話で書きたいと思います。
露店のシステムは「聖女として召喚されてのは双子の~」に出てきます。
良かったら目を通してみて下さいね(*´▽`*)
主の躾が良いのかグリフォンはルークの言う事を良く聞いてくれるので、概ね快適な旅であった。
風の魔法を操るグリフォンは風魔法でルークへの風の抵抗を減らしてくれている。
全く見事な躾である。
「兄さんのお陰でカカン迄半日で着きそうだな。お前も有難うオグリ」
ちなみにグリフォンの名前である。
アンドュアイスが命名だ。
従兄弟揃ってネーミングセンスは無いらしい。
首を指先でかいてやると「クゥ」と嬉しそうに喉を鳴らす。
喜んでいる様だ。
人への懐き様と言い、仕種と言い、オグリは魔獣の持つ凶暴性を感じられない。
当然だろう。
オグリはアンドュアイスが卵から孵した魔獣なのだから。
アンドゥアイスを親のように慕っているのだ。
当然幼いころから面識のあるルークにも懐いている。
「兄さんと和解できたお陰でまたお前とも会えたしな。本来の兄さんの優しい所を見抜き、優しい兄さんを返してくれたサイヒには感謝の言葉でもまだ足りないな…」
今のルークとアンドュアイスの良好な関係は全てサイヒのお陰と言っても過言ではない。
「早くサイヒに会いたいな…」
「クゥ――――ッ♪」
励ます様にオグリが鳴いた。
:::
国境を越えて、王都に入るのはクオンが手配した手形ですんなり入り込む事が出来た。
こんなにセキュリティが甘くて良いのかとルークは驚く。
旅人の国であるガフティラベル帝国でも、もう少し厳しいセキュリティだ。
それだけ内政に自信があるのだろう。
カカンの王都に入って驚くのはまず花の多さだ。
王都を取り囲む山に花が咲き乱れており、王都の至る所に花が咲いている。
四季により咲き誇る花も違うらしい。
流石は「花と美の国」と名高いカカンである。
「この国で、サイヒは生まれ育ったのだな……」
美しい国。
街は活気づいている。
路上で売られる屋台から美味しそうな匂いが漂ってくる。
露店も多く、アクセサリーを売っている店が多い。
「そこのグリフォン連れのお兄さん!良かったら見て行かないか?」
グリフォンを連れていると言うのに街の人はルークを遠巻きにする事がない。
あまりにも平和。
言い方を変えれば危機感が無さ過ぎる、と言うのがルークの感想だ。
少しでも早くサイヒの情報を集めたい。
その為にはカカンの城を訪ねるのが1番手っ取り速いだろう。
だがサイヒが育ったこの街に興味もあった。
露店を1つ覗いたくらいでは時間も取られる事はないだろう。
敷物に並べられているアクセサリーを見る。
全てが花をモチーフに使われているデザインだ。
その中の1つに目が行く。
銀細工の鈴蘭のブローチだ。
(そう言えばサイヒが自分のミドルネームは鈴蘭から取られたと言っていたな…)
サイヒの花。
可憐なそのブローチに興味が湧いた。
華奢でシンプルなデザインだ。
男が付けるには少々繊細なデザインだが、サイヒには良く似合うと思った。
鈴蘭の花の中に薄い青色の石が嵌め込まれている。
銀の色に反射して、サイヒの青銀の瞳を思わせた。
「主人、この鈴蘭のブローチを貰えるか?」
「はい、贈り物ですか?ラッピングはどういたしましょう?」
「ではラッピングしてくれるか?」
「はい、この和紙の中から好きなデザインをお選び下さい」
「ほう、見事な紙だ」
”和紙”はカカンの特産品だ。
作り方は門外不出で滅多に手に入らない。
ブローチがサイヒの瞳を思わせる品なので、和紙は黒を選んだ。
金色の縁取りに金の花(桜と言うらしい)が描かれた黒の和紙は大人っぽいデザインで、年齢より大人びたサイヒに良く似合うと思った。
「貰う女性は嬉しいでしょうな。
鈴蘭の花言葉は『純粋』『純潔』『優しさ、愛らしさ』『幸せの訪れ』です。女性に贈られるには良い花ですよ。
このブローチに使われている石はアクアマリンです。
アクアマリンの石言葉は『幸せ』『永遠の若さ』『喜び』『勇気』『富』を象徴します。
また海の石と言われるだけあって、水の中に身をゆだねたような清らかな気持ちにさせてくれると言われています。
『幸せな結婚』も導いてくれるそうですよ
アクアマリンはエメラルドと同じ鉱物の宝石です。
エメラルドの瞳を持つお兄さんからのプレゼントとしては完璧ですね!」
亭主は黒の和紙の紙袋にブローチを入れてルークに手渡した。
「お代は銀貨9枚です」
「そんなに安いのか!?」
「学生の作った品ですからね。お安くなっています。でも造りはちゃんとしておりますよ。この学生が作った品は半額は学生の取り分になるんですよ。だから下手な細工師より気合の入った品を作りますからね」
「面白いシステムだ」
「大聖女様が当時の国王と作ったシステムですよ!1000年たっても受け継がれるカカンの自慢の文化の1つさ!!」
滅ぶ寸前だと言われていたカカンを復興した伝説の聖女だ。
1000年たった今でも国民に愛されているようだ。
争いの絶えないガフティラベル帝国では何代も皇帝が変わり、伝説になった人物など存在しない。
まるでこの国は時が止まっている様だ。
優美で美しい国。
だがこの国はサイヒの存在を感じさせない。
胸が寂しくなった気がして、ルークは手渡された品を胸に抱えサイヒに想いをはせた。
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ローズ王太子の所まで進みませんでした(;^ω^)
オグリちゃんに関してもまた閑話で書きたいと思います。
露店のシステムは「聖女として召喚されてのは双子の~」に出てきます。
良かったら目を通してみて下さいね(*´▽`*)
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