聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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【76話】

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「ルーク!」

 冷え〇タを付けたサイヒがルークに駆け寄り抱きついた。

「あぁ、会いたかったぞ、ルーク」

「さ、サイヒ……」

 ルークの頬がバラ色に染まる。
 エメラルドの瞳が潤み出す。
 冷徹な魔王は何処へやら。
 その表情は恋する乙女そのものだ。

 そして、うっとりするルークにサイヒの顔が近づき…。

 ズキュゥゥゥゥゥゥンン!!

 サイヒがルークに口付けた。

「ん、んん…」

 チュッ
 チュク
 チュパッ

 水音が静かになった執務室に響く。
 皆が息を飲みその光景に見入っている。
 サイヒのリードで行われる口づけは、何と言うか、やたらと艶めかしい。
 額の冷え〇タぐらいではサイヒの色気を封じる事は不可能だ。

「んんんんんん…!!」

 ぷはぁ

 ようやく解放されたルークの腰は完全に砕けていた。
 はぁはぁと息を切らしている。

「良し、ルーク成分補充!これであと3徹は可能だな。ルーク休んでおいてくれ!」

 ルークをクオンに渡し、サイヒはデスクに戻る。
 そしてカリカリと書類にペンを走らせ、ポンポンと書類にハンコを押し始めた。

「おぉっ!全能神様が見違えるように元気になられたぞ!」

「仕事も先程の5倍ははかどっておられる!」

「助かったぞ助っ人殿!」

 冷え〇タを額に張り付け、目の下にクマを作った者たちがルークたちに礼を言う。

「いや、ちょっと待て!私たちはこの現状を知りたいのだが?何故サイヒが全能神なのだ!?」

 何時でもツッコミを忘れない有望な男クオンである。
 マロンは目の前で熱烈なキスシーンを見せつけられ、顔を真っ赤に染めてもごもごしていた。

「すまん説明は後でするのでまず仕事を片付けさせてくれ!」

 兎に角仕事が忙しいらしい。

「何か、手伝いましょうか……?」

「「「「「「本当かっ!?」」」」」」」

 マロンの言葉に執務室のデスクに付いていた者の目がギラリと光りクオンを見つめた。

「私も、手伝おう…執務は慣れている」

「おぉっ、全能神様の伴侶までお手伝いなさってくれるのか!?」

「ではコチラのデスクへ!」

「分からないことがあれば何でも聞いてくれ!」

 ルークとクオンが空いてるデスクの椅子に座らせられる。

「では、私は皆さまが食べれる物を作ってきますわ!厨房に案内して下さい」

「「「「「「食べ物!?」」」」」」」

 執務室のデスクに付いていた者の目がギラリと光りマロンを見つめた。

「4ヵ月ぶりの食事…」

「もう全能神様のエナジーチャージで空腹を満たすのは辛かったんだ…固形物が、固形物が食べれるなんて!」

「料理番まで外の仕事にアシストに行って食事を作ってくれる者が居なかったからな…」

「お嬢さん、温かいモノを!腹に染み入る物をお願いしたい!!」

「は、はい!頑張ります!食べたら少しで良いから1人ずつ休憩を取って下さいね。簡易ベッドの用意も致します」

「女神はココに居たのか…」

「後光が見えるぞ…」

「あぁ体が勝手に拝んでしまう」

 皆、食事なし・睡眠無しの4ヵ月で疲れ切っていたのだ。
 全能神になったサイヒによって【栄養補給】の神術で空腹は満たされる。
 【浄化】の神術によって体の汚れは落とされる。
 【脳回路回復】のおかげで一応睡眠は取らずとも起きていられる。

 だが皆限界だったのだ。
 美味しいものが食べたい!
 風呂に入りたい!
 ベッドで寝たい!

 それがようやく満たされる。
 皆の目にはマロンが女神に見えた。

 よくもここまで仕事を残してくれたな、あのロリコン前全能神!と言ったところである。

 これで仕事は大分はかどる様になるだろう。
 美味しい食べ物とベッドでの睡眠は人を癒すものなのである。

「ふむ、マロンの作る料理か…久しぶりに生きている実感を得られそうだ」

 サイヒも嬉し気に口元を緩ませた。

 ルークたちがサイヒが何故全能神になっているか説明を聞くのはもう少しかかりそうである。
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