聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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【81話】

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「お前は馬鹿か?」

 執務室に2人きり。
 男女が執務室に2人きり。
 そこには色気の欠片も無い。
 むしろ男は女を蔑んだ目で見ていた。

「一応人並みの思考回路はあるつもりだぞ?」

 心外だとばかりにサイヒが答えた。
 その言葉にクオンははぁ、と大きな溜息を吐く。

「お前妊娠しているだろう?」

「おや、マロンにもバレていないのに」

「マロン様にとってはお前は”お兄様”だからな。結び付かなかったのだろう。今何か月だ?」

「2ヵ月ほどで成長を止めている。」

「子供に害はないのか!?」

「私がルークとの間に授かった子供に害のある事をする訳が無いだろう」

「それなら良いが」

 再びクオンがはぁ、と大きく溜息を吐く。

「何故ルーク様に伝えない?」

「ルークは20歳だぞ?父親になるには早すぎる。ただでさえ皇太子として自由の無かった身だ。しばらくは自由に青春を謳歌させてやりたい」

「それが馬鹿だと言っているんだ」

 クオンが冷たい声を返す。
 サイヒは珍しくキョトンとした顔をしている。
 そんな顔をさせたクオンを、ルークが居たらギリィしていた事だろう。
 ルークには不可能な技である。

「ルーク様がお前が褥を共にしないと嘆いている。ルーク様の青春はお前があってこそだ。お前が今まで通り接せれないなら、さっさとルーク様に事情を説明しろ」

「だがルークはまだ20歳だぞ?」

「そんな事を言ったらお前はまだ17歳だろうが。それも10年間神殿に軟禁されていた。青春を送っていないのはお前もだろう?お前は今子供が出来て自分が青春を楽しめなかった事に不満は生まれるのか?」

「ルークとの間に授かった宝だぞ?不満などあるはずがない!」

「だからお前は馬鹿だと言ったんだ。何故ルーク様も同じだと考えない?」

「それは……」

「お前がルーク様至上主義なのは分かっているつもりだ。ついでにお前の性格はルーク様の前では言えないが、ルーク様より理解しているつもりだ。心友だからな…だから怖がらず、ルーク様に話して見ろ」

 サイヒがキョトンとした顔をする。
 そうすれば大人びたサイヒも年相応に見える。

「私は、怖がっていたのか……?」

「17歳の小娘がまだ婚姻もしていない相手と妊娠したんだ。案ずるのは止むを得ないだろう?」

「私を小娘扱いするなんてお前くらいだクオン」

「たまには年上の矜持ぐらいはらせろ」

「私より年下のマロンに恋してるくせに…ロリコンガ、ボソッ」

「話を止めるか?」

「いや、続けて貰おう」

 キリッとサイヒが表情を作り替える。
 何時もの余裕のあるサイヒの顔だ。

「まずはルーク様に言え。そしてちゃんと説明しろ。理由をルーク様が納得するなら産むのは何年か先でも良いだろう。だがルーク様が産んで欲しいと言えば、ちゃんと産め」

「私は全能神になったばかりだぞ?出産を予定に入れると仕事がルークやお前にたんまり行くぞ?」

「ソレくらい男なら甲斐性としてやるのが当然だろう?全能神と言っても何でも分かる訳では無いんだな」

「呆れるか?」

「いや、安心した。バケモノっぷりがこれ以上上がったらどうしようかと思っていたところだ」

「17歳のうら若き乙女にバケモノとは失礼な」

「お前は1度辞書でうら若き乙女について調べ直せ」

「心友が冷たい…」

「心友だから冷たいんだ。俺はルーク様の様にお前を愛してもいなければ、マロン様の様にお前を敬愛している訳では無いからな。能力的にはお前に劣っていても中身はイーブンだと思っている。違うか?」

「いや、そうだな。お前は私と対等だよ。有難う心友、ルークに話してみる」

「まぁ産む事になるかと思うがな。では俺は俺の仕事がある、失礼するぞ」

 クオンがサイヒの執務室を出て行く。
 すっかりサイヒの胸のつかえは取れていた。
 流石は心友である。

「うむ、確かに知識はあっても産むのは怖いかな?未知の領域だ…だが世間の女ができて私に出来ないと言う事も無かろう……ルークが望むなら、産もう。お前には我儘に付き合わせてばかりで済まないな」

 サイヒは下腹部に手を当てると、ソコに宿る存在に謝罪の言葉を述べた。


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 ある意味でサイヒと対等なのは親友のクオンとルーシュ(出番無かったけど)だけだよ、と言った話。
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