聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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そして全能神は愉快犯となった

【123話】

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 王宮の中でも最高に景観が良いテラス。
 庭の咲き誇る薔薇を見る事が出来、高台にあるために王都を一望できる。
 サイヒのお気に入りの場所である。

「で、ドラジュ。カマラはどうだった?」

「えぇ、可愛らしい女の子と仲良くお茶してましたよ。偶然ご一緒も出来て」

「ほう、同席できたのか」

「はい。兄さんの想い人はユラさんには遙かに負けるけど愛らしく、ユラさんに負けるけど可愛くて、ユラさんに負けるけど可憐で、ユラさんに負けるけど純粋そうなお嬢さんでしたよ」

「一度ユラさんから離れて話をしてくれないか?」

「無理です」

 きっぱりと言われてしまった。
 サイヒが押されている。
 全く持って珍しい姿だが、ドラジュはどちらかと言うとルークの性質を強く受け継いでいるので、1度スイッチが入ったら中々止まらない。
 そう言ったところはルークにそっくりである。
 
 父親のルークは皇太子である事を捨て。
 魔王であることを捨て。
 全てを捨ててサイヒを選んだ。

 ルークがサイヒに向ける執着は狂気的と言っても過言でもない。

 そしてドラジュはルークのその性質をしっかりと受け継いでいた。

「そう言えば禁書庫の本の話題を出したら慌てて、あれも可愛かったです。思わず虐めて泣かせてみたくなりました」

 鳴かせてみたいの間違いじゃないだろうか?
 ルークに良く似ているが、確かにドラジュはサイヒの性質も強く受け継いでいる。
 主にドSな部分がだ。
 己に近い発言をする息子を見て、サイヒは「もう更生は無理だな」と諦めた。
 己とルークの間の子だ。
 まともな子供が出来る訳がなかった。
 サイヒは割り切るのが早いタイプなのだ。
 コレはルークとは正反対である。
 ルークはわりと色々引きずるタイプだからだ。
 そして目の前の息子はそう言ったところはルークの血が濃いとサイヒは思っていた。

「まぁコレは黒歴史だろうな。私は結構気に入っているのだが」

 サイヒはパラリと本の頁をめくる。
 ソコには黒髪の美麗の男が、自分と瓜2つの色彩の薄い男を攻めている所だった。
 まだ挿入には至っていない。
 だが攻められている男は色んな液体で体を穢されていることを文章で描写されている。
 歪んだ兄弟愛は尊い。
 サイヒは著者『みゃーみゃーはーる』の【魔王と宰相シリーズ】がお気に入りであった。

「私は【男体化王妃×魔王】のシリーズが好きですわお兄様♡」

 おかわりのお茶を用意しに行っていたマロンが帰って来た。
 トポトポ高い位置から紅茶をカップに注ぐ。
 良くぞあの高さから綺麗に注ぐものだ。
 お茶お1つ入れるにあたってもマロンの給仕能力は高い。

「あぁ、アレ良いですね。ユラさんの作品ですよね。神絵師すぎるユラさんが尊くて愛おしい!今日も僕の推しが最高に可愛い!」

「うんうん分かった。だからカマラの様子を話せ、な?」

「あ~うん、まだ未分化でした」

「だろうな」

「アレ、驚かないんですか?」

「カマラは例の”笑顔を護りたい”少女と一緒にいたのだろう?」

「完全に惚れていると思いしたが…?」

「まぁカマラは女の子大好きだからな。美少女と居ると嬉しそうだし『何時か最高に可愛いお嫁さんを貰う』と言うような子だったからな。そう思っても仕方ないか」

「???」

「まぁその内にお前も分かるよ。”笑顔を護りたい”と”笑顔にしてあげたい”また別のモノなのだよドラジュ」

 頭に”?”を浮かべているドラジュから視線をカップに移し、優雅な仕種で紅茶を口に含む。

「うん、今日もお前の淹れる茶は旨いなマロン。クオンの嫁にするには勿体ないくらいの腕前だ。ルークさえ居なかったら私が男としてプロポーズしたのだがな」

「まぁお兄様ったら」

 クスクスとマロンが笑う。
 15歳で外見年齢が止まっているマロンは相変わらず可憐である。
 年を経てソコに大人の優雅さも加わった。
 天界でもぶっちぎりの”お嫁さんにしたいランキングTOP1”を18年守り続けているだけある。
 人妻に票を入れるなと言いたくなるが、女で既婚者のサイヒのもう1つの姿ーリリー・オブ・ザ・ヴァリーー”が旦那様にしたいランキングTOP2”の牙城を崩した事が無いので、それくらいでは天界人はもう突っ込まない。
 因みに第1位は何とクオンである。
 愛妻家で頼れる男クオンは天界の女性に大人気なのだ。
 その事についてマロンがどう思っているかは聞いたことはない。
 普段は羊さんのマロンの狼の部分が見えそうなので………。

「まぁユラさんに恋焦がれて男になったお前と比べて、カマラはまだまだ中身が子供だと言う事だ」

 クスクスとサイヒが笑う。
 息子のドラジュでさえ、その漂う色気に腰砕けになりそうになる。
 血が繋がっていなかったら性別など何の関係なく「抱いてください」と口走りそうな壮絶な色気だ。
 これが無意識だがらたまらない。
 ドラジュの狙って出す色気とは次元が違う。

「まぁまた気が向いたら地上に行ってカマラの様子もみてやってくれ」

「はい、母様」

「あら、お茶を召し上がられないのですかドラジュ様?」

「ユラさんとこの後ケーキを食べ位行くので今回は辞退しますね、気を使って下さったのに申し訳ありませんマロンさん」

「いえいえ、楽しんできてくださいね」

「はい!」

 満面の笑顔を浮かべてドラジュはサロンを後にした。

「まだまだ子供だな。追っている内は逃げられるというのに」

「成人したばかりのドラジュ様に恋の駆け引きは難しいですよ。お兄様とは違うのですから」

「そのドラジュに手玉に取られるユラさん…本当に迫って来る男に免疫が無いんだな。コチラはコチラで楽しいものだ。さぁ私の息子たちはちゃんと恋する相手と結ばれるかな?」

 クスクスとマロンが笑う。
 愛らしい笑みである。

「お2人ともお兄様の子供なんですから、絶対に結ばれますよ」

「意外と早く孫の顔が見れそうだ」

「その時には是非ウチの息子を世話役に雇ってくださいな」

「是非送させて貰おう。クオンに似て優秀なのにマロンに似て胃が強いからな」

 サイヒは唇に弧を描かせたまま、マロン御手製のシフォンケーキにフォークを立てたのだった。
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