聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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そして全能神は愉快犯となった

【158話】

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「と、言う訳で今日からドラジュは毎日1回私と手合わせすることとする」

 普段笑顔のドラジュの笑みが固まった。

「………何ででしょう?」

「ユラさん」

 ピクリ

 ドラジュが身じろぐ。
 どうやら何が原因か心当たりがあるらしい。

「最近ユラさんが私に助けを求める事が多くてな。いい加減にしてくれないと私とルークがいちゃつく時間が減る。このままでは欲求不満で爆発するぞ、私が。
私と手合わせしてどこまで立ち回れるかで本日のユラさんとの時間を決める事にするぞ」

「そんな!それはもうユラさんに手出しするなと言っているのと同じではないですか母様!!」

「だったら私とルークがいちゃつく時間を捻出してみろ」

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ

 何かもう背景が神力で歪みそうなほど殺気をまき散らしている。
 大人げない。
 そして母親としてその言い分は息子に対してどうかと思う。
 だがソレを咎められる者は居ない。
 だって全能神だし?
 負ける喧嘩を吹っ掛ける愚か者はこの天界には存在しない。

 1人だけいるには居る。

 その人物はサイヒの宣言に頬を染めて蕩けた目でサイヒを見つめるルークである。
 サイヒのルーク愛からの暴走だ。
 乙女なら恥ずかしくも嬉しくない訳がない。
 つまりルークは乙女なので息子の応援も味方もしない。

 2人きりでイチャイチャしたいのはルークも同じなのだ。

 そしてルークは現在サイヒをユラに取られそうでしょんぼりだったのだ。
 そのサイヒが。
 ユラに最近付きっ切りだったサイヒが自分を優先してくれている。
 ルークはもう目に♡を浮かべてサイヒを穴が開くほど見ている。
 格好良い。
 あの格好良い存在が自分とイチャイチャしたいとか言ってくれているのだ。
 ときめかない訳がない。

「カマラは愛を貫いたぞ?お前は自分で愛する者との時間を作る努力をせんつもりか?」

「うっ………」

 そう今は詳しく言えないが現在ドラジュの双子の半身であるカマラは、地上で伴侶と愛を育んでいる。
 己の何もかもを捨てて愛する者のために地上に降りたカマラ。
 そして愛を貫き全てを手に入れたカマラ。
 親愛する半身がソレをやりきったのだ。 
 自分に出来ない筈が無い。
 ドラジュは唾をのみ込んだ。

「分かりました母様、その手合わせ、受けさせて頂きます!」

 全てを捨てて地上に行く方が、全能神との毎日の手合わせより難易度が低いのではないかと周囲の者は思ったが口にするものは居なかった。

 ドラジュがこれ以後ユラ欠乏症に陥ったりするが、ソレは後の話である。
 全能神強すぎる………。

 そしてその日からルークは、最近の不機嫌だったのが噓のように、ご機嫌で朝の仕事に取りかかるようになったと言う。
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