237 / 297
2章
【209話】
しおりを挟む
眼をウルウルとさせた大型犬がリリィを見ている。
リリィはこの瞳に弱い。
40歳を超えてこの可愛さは何なのだろう。
真っ当に人間であるはずだが、その魅力はサキュバスやインキュバスより強い。
気付かれる前に会議を終わらせるべきだとリリィは判断した。
『雷帝』の威光は今回の戦において失われるべきでは無いのだ。
「では皆を帰そう。今後の支持はガフティラベル皇帝とカカン国王の元行って行ってくれ。必要な材料などは後で別の者に届けさせる」
リリィが指をパチンと弾いた。
その白の空間は霧散し、そこに居たものは自分たちの寝室へと帰されていた。
これだけの人数を別の場所にそれぞれ【空間転移】を行う。
それだけでリリィがどれ程の魔力を持っているか分かる。
そしてリリィ、いや、サイヒはアンドュアイスとルーシュと一緒にガフティラベルへ転移していた。
「サイヒー!ルークがちゃんとサイヒの事好きだったよ!?まだちゃんと魔王じゃないの!?」
うわーんと子供のように泣いて、アンドュアイスがサイヒに抱き着いた。
その背をぽんぽんとサイヒは叩いてやる。
サイヒはこの大型犬が可愛くて仕方ないのだ。
「あぁ、ルークはまだ人間を殺していない。魔界にいるが特に何もしていない。ルークの意思が『悪意の概念の』意思を拒んでいるようだ。お陰ではっきりとした意識はないし記憶も無いがな。
兎も角ルークは今は無事だ。安心するが良い」
「良かったよ~~~~~っ!!!」
大粒の涙がサイヒの方にポロポロ落ちる。
その温もりも不快ではない。
無邪気なサイヒの愛犬-アンドュアイスは本当に人間なのかと思うほど純真無垢なのだ。
「じゃぁあの「魔王を消す」発言はなんだったんよ?」
「あぁ、「魔界から魔王を消す」だな、正確には」
はぁ~~~~っ、とルーシュが大きな溜息を吐いた。
どうやらこの心友はこんな状態になってもサイヒの事を心配していてくれたらしい。
皇帝の王配としてまずは考えるべきは国民の事でなければならない。
天界の御使いの心配をしている場合では無いのだ。
何と言っても御使いであるリリィ・オブ・ザ・ヴァリーが誰よりも強いのだが。
だがルーシュはサイヒが強いことなど気にしない。
人間と全能神と言う位に差がある事も気にしない。
人間同士だった時と何も変わらない接し方をサイヒにするのだ。
だからルーシュはサイヒの心友なのである。
血の繋がりは無くとも、サイヒにとってアンドュアイスとルーシュは家族の様に大切な宝物だ。
そしてアンドュアイスはルーク従兄弟であって、本当に血の繋がりまである。
この宝物たちを護るためならサイヒは幾らでも力が漲る。
「ルークは私が天界へ連れて帰る。半身を何時までも別の存在に獲られて臍を噛むのはいい加減飽きた。ルークの全ては私のモノだ。誰にもやる気はない」
「そっか、頑張れよ心友」
「絶対ルークを連れて帰ってね!また優しいルークに戻してね!」
「当然だよアンドゥ、ルーシュ、地上の事は頼んだぞ」
「おう、任された」
にっ、と少年の様にルーシュが笑う。
泣いてたくしゃくしゃの顔でアンドュアイスが笑う。
(私もルークも愛されているな)
大切な宝物たちのために、地上の安寧のために、何より自分のためにサイヒは必ずルークを取り戻すことを己に誓うのであった。
リリィはこの瞳に弱い。
40歳を超えてこの可愛さは何なのだろう。
真っ当に人間であるはずだが、その魅力はサキュバスやインキュバスより強い。
気付かれる前に会議を終わらせるべきだとリリィは判断した。
『雷帝』の威光は今回の戦において失われるべきでは無いのだ。
「では皆を帰そう。今後の支持はガフティラベル皇帝とカカン国王の元行って行ってくれ。必要な材料などは後で別の者に届けさせる」
リリィが指をパチンと弾いた。
その白の空間は霧散し、そこに居たものは自分たちの寝室へと帰されていた。
これだけの人数を別の場所にそれぞれ【空間転移】を行う。
それだけでリリィがどれ程の魔力を持っているか分かる。
そしてリリィ、いや、サイヒはアンドュアイスとルーシュと一緒にガフティラベルへ転移していた。
「サイヒー!ルークがちゃんとサイヒの事好きだったよ!?まだちゃんと魔王じゃないの!?」
うわーんと子供のように泣いて、アンドュアイスがサイヒに抱き着いた。
その背をぽんぽんとサイヒは叩いてやる。
サイヒはこの大型犬が可愛くて仕方ないのだ。
「あぁ、ルークはまだ人間を殺していない。魔界にいるが特に何もしていない。ルークの意思が『悪意の概念の』意思を拒んでいるようだ。お陰ではっきりとした意識はないし記憶も無いがな。
兎も角ルークは今は無事だ。安心するが良い」
「良かったよ~~~~~っ!!!」
大粒の涙がサイヒの方にポロポロ落ちる。
その温もりも不快ではない。
無邪気なサイヒの愛犬-アンドュアイスは本当に人間なのかと思うほど純真無垢なのだ。
「じゃぁあの「魔王を消す」発言はなんだったんよ?」
「あぁ、「魔界から魔王を消す」だな、正確には」
はぁ~~~~っ、とルーシュが大きな溜息を吐いた。
どうやらこの心友はこんな状態になってもサイヒの事を心配していてくれたらしい。
皇帝の王配としてまずは考えるべきは国民の事でなければならない。
天界の御使いの心配をしている場合では無いのだ。
何と言っても御使いであるリリィ・オブ・ザ・ヴァリーが誰よりも強いのだが。
だがルーシュはサイヒが強いことなど気にしない。
人間と全能神と言う位に差がある事も気にしない。
人間同士だった時と何も変わらない接し方をサイヒにするのだ。
だからルーシュはサイヒの心友なのである。
血の繋がりは無くとも、サイヒにとってアンドュアイスとルーシュは家族の様に大切な宝物だ。
そしてアンドュアイスはルーク従兄弟であって、本当に血の繋がりまである。
この宝物たちを護るためならサイヒは幾らでも力が漲る。
「ルークは私が天界へ連れて帰る。半身を何時までも別の存在に獲られて臍を噛むのはいい加減飽きた。ルークの全ては私のモノだ。誰にもやる気はない」
「そっか、頑張れよ心友」
「絶対ルークを連れて帰ってね!また優しいルークに戻してね!」
「当然だよアンドゥ、ルーシュ、地上の事は頼んだぞ」
「おう、任された」
にっ、と少年の様にルーシュが笑う。
泣いてたくしゃくしゃの顔でアンドュアイスが笑う。
(私もルークも愛されているな)
大切な宝物たちのために、地上の安寧のために、何より自分のためにサイヒは必ずルークを取り戻すことを己に誓うのであった。
1
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる