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2章
【232話】
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「では魔物を狩りつつ武器も調達したい。ココから近場の自衛隊の基地に向かう。護身の技がないものも身を護れるようになってほしいのでな」
そうしてメンバーが鈴蘭の指名の元選ばれた。
選ばれたのは攻撃魔術が得意な者と、治癒法術が得意な者メイン。
闘気を扱えるミヤハルも当然選ばれた。
今やミヤハルは『神狩り』の主戦力の1人である。
選ばれない訳が無い。
結界法術を得意とする法術師が選ばれ無かったのは病院の守りを固めるため。
少しでも危険は回避したい。
選ばれたメンバーは興奮状態だ。
何せ鈴蘭はこれまでミヤハル以外のお供を連れて外に出た事はない。
ミヤハルを連れているか1人での行動だ。
その鈴蘭と一緒に狩りである。
興奮をしようと言うものだ。
自分の能力を買われたのだと、皆胸を熱くさせている。
だが選ばれたメンバーの中で難色を示したものが居た。
ユラである。
作戦を控えた前日の夜、ユラは鈴蘭の寝室を訪れた。
鈴蘭の寝室はマオと同室だ。
あんなことやそんなことしてないと祈りたい。
声が聞こえてこないので大丈夫だろうと思うが、鈴蘭は音声をシャットアウト出来る【防音】の魔術を使う事が出来るのだ。
声が聞こえないからと言って油断してはいけない。
「何を扉の前でもだもだしているのだユラさん?」
「キャ―――ッ!」
ユラが悲鳴を上げて飛び上がった。
1mを跳んだだろうか。
きっとユラの自己ベストの記録に違いない。
「えーと、鈴蘭君、今大丈夫?」
「話すなら別の部屋に移動しても構わないだろうか?マオが疲れて寝ているのでな」
「あ、マオ君寝てるんだ…て、疲れて、て…………(あ~そう言う事ですかぁ)」
ユラは察してしまった。
よく見ると鈴蘭の首筋に赤い花びらのような鬱血がある。
随分と目立つ位置だ。
マオの独占欲が伺い知れる。
まぁ今のところユラとは縁のない話しである。
「談話室は人が多いからな。空き部屋を使おう」
そう言って鈴蘭は隣の部屋の扉を開けた。
鈴蘭の隣の部屋は飽き部屋なのだ。
鈴蘭とマオが並ぶと美貌が×2で、圧が陪乗だ。
近くでは皆安眠出来ないらしい。
鈴蘭の指から光の玉が浮かび上がる。
電気をつけるのと遜色のない明かりだ。
部屋の備え付けのソファに座って、鈴蘭なら電気が無くても快適に暮らせるだろうな、とユラは思う。
「あの、何で私がメンバーに入ってるの!?」
「まぁ茶でも飲んで落ち着いて下さいよ」
いつの間にかテーブルにペットボトルのお茶が置かれていた。
「え、こんな貴重な物!」
「私に配られた分だ、気にせず飲んでくれると嬉しい」
「じゃぁ、いただきます」
飲み水は貴重だ。
風呂や水道から出る水は循環ろ過装置で清潔なものに保たれているが、飲み水には向いていない。
なのでペットボトルは賞味期限の問題もあるしで、皆に同じ本数配られたのだ。
正直自分の持ってない種類の飲み物が飲めるのは嬉しい。
鈴蘭が出したのはユラの好きな葡萄の炭酸ジュースだ。
自分に配られていた中に入ってなかったので純粋に嬉しい。
こんな悩みさえなければ。
「で、何で私が入ってるの?」
「人間は庇護欲の強い生き物です。強い者が弱いものを護ろうとします。護身の術がないユラさんが居ることで皆が活気づきます。そして駐屯基地で誰が居るか分かりません。
ユラさんは人のパーソナルペースに入るのが上手いですし、人を穏やかな気分にさせる人柄です。着いて来て貰う理由の1つはソレです」
「それ程でもないけど…て、1つだけじゃ無いの!?」
「もう1つはミヤハルの精神安定のためです。主戦力とは言ってもまだ子供ですから。ユラさんと居ることで大分気も解れるでしょう」
「そっか、ミヤハルちゃんね。分かったわ、護られる身なのは嫌だけど、私が居て皆の士気が上がるなら同行させて貰うわ。ミヤハルちゃんも肩の力抜いて欲しいし」
最近のミヤハルはストイックなまでに体術を鍛えている。
笑顔が減った。
無理矢理作る笑顔で他は騙せても、近くに居る者にはそれが張り付けた笑顔だと分かる。
「鈴蘭君にもミヤハルちゃんが作り笑いしてるの分かったんだ。何か、2人は凄く似てて、少し嫉妬しちゃうな」
そんな事を言いながらも、ユラは顔を綻ばせた。
ミヤハルの理解者が1人でも多い事が嬉しいのだ。
姪思いの叔母なのである。
「勿論ユラさんの事は俺が身を挺して護りますから」
ニコリ、と鈴蘭が綻ぶ。
その笑顔を見てユラは頬をバラ色に染めた。
(本当性別問わず魅了するとか性質が悪いわ。コレで男の子だったら最高だったのに………」
「ユラさん、心の声漏れてますよ」
「!?」
「まぁ良いですけど、俺やマオは薄い本の題材にしないで下さいね」
「薄い本、薄い本かぁ。早く又作れる世の中に戻れば良いのに」
「その内来ますよ、気を長く待っててください」
(まぁ数億年後先なんですけどね)
その事は伏せたまま、鈴蘭はユラから同行の承諾を受け取ったのだった。
そうしてメンバーが鈴蘭の指名の元選ばれた。
選ばれたのは攻撃魔術が得意な者と、治癒法術が得意な者メイン。
闘気を扱えるミヤハルも当然選ばれた。
今やミヤハルは『神狩り』の主戦力の1人である。
選ばれない訳が無い。
結界法術を得意とする法術師が選ばれ無かったのは病院の守りを固めるため。
少しでも危険は回避したい。
選ばれたメンバーは興奮状態だ。
何せ鈴蘭はこれまでミヤハル以外のお供を連れて外に出た事はない。
ミヤハルを連れているか1人での行動だ。
その鈴蘭と一緒に狩りである。
興奮をしようと言うものだ。
自分の能力を買われたのだと、皆胸を熱くさせている。
だが選ばれたメンバーの中で難色を示したものが居た。
ユラである。
作戦を控えた前日の夜、ユラは鈴蘭の寝室を訪れた。
鈴蘭の寝室はマオと同室だ。
あんなことやそんなことしてないと祈りたい。
声が聞こえてこないので大丈夫だろうと思うが、鈴蘭は音声をシャットアウト出来る【防音】の魔術を使う事が出来るのだ。
声が聞こえないからと言って油断してはいけない。
「何を扉の前でもだもだしているのだユラさん?」
「キャ―――ッ!」
ユラが悲鳴を上げて飛び上がった。
1mを跳んだだろうか。
きっとユラの自己ベストの記録に違いない。
「えーと、鈴蘭君、今大丈夫?」
「話すなら別の部屋に移動しても構わないだろうか?マオが疲れて寝ているのでな」
「あ、マオ君寝てるんだ…て、疲れて、て…………(あ~そう言う事ですかぁ)」
ユラは察してしまった。
よく見ると鈴蘭の首筋に赤い花びらのような鬱血がある。
随分と目立つ位置だ。
マオの独占欲が伺い知れる。
まぁ今のところユラとは縁のない話しである。
「談話室は人が多いからな。空き部屋を使おう」
そう言って鈴蘭は隣の部屋の扉を開けた。
鈴蘭の隣の部屋は飽き部屋なのだ。
鈴蘭とマオが並ぶと美貌が×2で、圧が陪乗だ。
近くでは皆安眠出来ないらしい。
鈴蘭の指から光の玉が浮かび上がる。
電気をつけるのと遜色のない明かりだ。
部屋の備え付けのソファに座って、鈴蘭なら電気が無くても快適に暮らせるだろうな、とユラは思う。
「あの、何で私がメンバーに入ってるの!?」
「まぁ茶でも飲んで落ち着いて下さいよ」
いつの間にかテーブルにペットボトルのお茶が置かれていた。
「え、こんな貴重な物!」
「私に配られた分だ、気にせず飲んでくれると嬉しい」
「じゃぁ、いただきます」
飲み水は貴重だ。
風呂や水道から出る水は循環ろ過装置で清潔なものに保たれているが、飲み水には向いていない。
なのでペットボトルは賞味期限の問題もあるしで、皆に同じ本数配られたのだ。
正直自分の持ってない種類の飲み物が飲めるのは嬉しい。
鈴蘭が出したのはユラの好きな葡萄の炭酸ジュースだ。
自分に配られていた中に入ってなかったので純粋に嬉しい。
こんな悩みさえなければ。
「で、何で私が入ってるの?」
「人間は庇護欲の強い生き物です。強い者が弱いものを護ろうとします。護身の術がないユラさんが居ることで皆が活気づきます。そして駐屯基地で誰が居るか分かりません。
ユラさんは人のパーソナルペースに入るのが上手いですし、人を穏やかな気分にさせる人柄です。着いて来て貰う理由の1つはソレです」
「それ程でもないけど…て、1つだけじゃ無いの!?」
「もう1つはミヤハルの精神安定のためです。主戦力とは言ってもまだ子供ですから。ユラさんと居ることで大分気も解れるでしょう」
「そっか、ミヤハルちゃんね。分かったわ、護られる身なのは嫌だけど、私が居て皆の士気が上がるなら同行させて貰うわ。ミヤハルちゃんも肩の力抜いて欲しいし」
最近のミヤハルはストイックなまでに体術を鍛えている。
笑顔が減った。
無理矢理作る笑顔で他は騙せても、近くに居る者にはそれが張り付けた笑顔だと分かる。
「鈴蘭君にもミヤハルちゃんが作り笑いしてるの分かったんだ。何か、2人は凄く似てて、少し嫉妬しちゃうな」
そんな事を言いながらも、ユラは顔を綻ばせた。
ミヤハルの理解者が1人でも多い事が嬉しいのだ。
姪思いの叔母なのである。
「勿論ユラさんの事は俺が身を挺して護りますから」
ニコリ、と鈴蘭が綻ぶ。
その笑顔を見てユラは頬をバラ色に染めた。
(本当性別問わず魅了するとか性質が悪いわ。コレで男の子だったら最高だったのに………」
「ユラさん、心の声漏れてますよ」
「!?」
「まぁ良いですけど、俺やマオは薄い本の題材にしないで下さいね」
「薄い本、薄い本かぁ。早く又作れる世の中に戻れば良いのに」
「その内来ますよ、気を長く待っててください」
(まぁ数億年後先なんですけどね)
その事は伏せたまま、鈴蘭はユラから同行の承諾を受け取ったのだった。
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