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2章
【248話】
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その日マオは機嫌が悪かった。
機嫌が悪いと言っても気付いたのは鈴蘭だけだ。
ミヤハルや【全知全能】ですら気付いていない。
長年共に歩んできたからこそ分かる僅かな変化。
互いを愛し合ってきたからこそ分かる微かな違和感。
「マオ、どうした?お前が何かを1人で抱え込むのを見るのは私には心苦しいのだぞ?」
夜、本拠地としている病院の鈴蘭とマオに宛がわれた部屋で、ベッドに腰かけて空を見つめるマオに鈴蘭は声をかけた。
「鈴蘭、私は其方を本当の名前で呼びたい。何度も舌の上に出て来ては飲み込むその名前…其方の本当の名前を呼びたくて仕方が無いのだよ………」
マオの双眸から水晶の様な大粒の涙がポロポロ零れた。
その涙の粒を鈴蘭は唇で掬いとる。
「私もお前の名前が呼びたいよマオ」
「でも、駄目なのだろう?」
「あぁ、今は駄目だ。まだその時ではない」
「ならせめて愛し合っているのだと言う実感が欲しい!鈴蘭が私は欲しい!」
「あぁ、本当に可愛いな私のマオ。でもそれは駄目だよ」
「ちゃんと名前を呼ばないと約束する!」
「そう言う問題では無いのだ。コレは私のエゴなのでお前を巻き込んで悪いと思っているのだが…私だってお前が欲しいよマオ」
「では何故駄目なのだ!?」
「見られている」
「?」
「この時代の神が覗いている。今この病院にかけられている結界なんて神にとっては無いも同じだ。私が本来の力で結界をはれば話は違うがな。
だがそれでは力を使った波動の余波で逆に私の存在が神の眼についてしまう。そうなると神々は私を狙い出すだろう。
それだけはいけない。この世界は私のご先祖様の時代なのだ。私が神を葬るのではいけないのだ。歴史が変われば未来も変わる。
そうなれば私たちの世界に戻った時に再び会える愛しい者たちとの関係性まで変わってくるかもしれない。
私たちが出会うと言う歴史そのものが消えるかも知れない。
我々はこの世界では出来るだけ介入せずにご先祖様たちを導かなくてはいけないのだよ」
「それは…イヤだ………其方と巡り会わない運命など、耐えられない…………」
「あぁ泣かないでおくれ私のマオ、それにエゴと言ったであろう?力さえ使わなければ我々の存在は神にとって注目を集めることも無くなる。だから抱き合う事も交わる事も本当は出来るのだ。
ただ下世話な神も居るだろうからな、私たちの営みを覗く輩は後を絶たないだろう。
私はな、お前の快楽に溺れる愛らしい姿を下世話な神々に見せたく無いのだよマオ」
「私だって其方の色香を放つ美しい肢体を他の者に見せたくはない!」
「ふふ、分かって貰えたかマオ。私は早く帰ってお前の名を呼びながらお前を感じたい。だから今やるべきことに集中して敢えてお前とは出来るだけ傍に居ない様にしている。チームを纏めるにしても1人のTOPより2人のTOPの眼で事柄を捕らえる方が良いしな。
だがマオ、私を煽った事を後悔するなよ?帰ったら3日は鳴かせてやるからな、可愛いことを言うお前が悪いのだよマオ?」
「………はぃ」
マオは顔どころか全身を真っ赤にさせて、小さな声で返事をしたのであった。
機嫌が悪いと言っても気付いたのは鈴蘭だけだ。
ミヤハルや【全知全能】ですら気付いていない。
長年共に歩んできたからこそ分かる僅かな変化。
互いを愛し合ってきたからこそ分かる微かな違和感。
「マオ、どうした?お前が何かを1人で抱え込むのを見るのは私には心苦しいのだぞ?」
夜、本拠地としている病院の鈴蘭とマオに宛がわれた部屋で、ベッドに腰かけて空を見つめるマオに鈴蘭は声をかけた。
「鈴蘭、私は其方を本当の名前で呼びたい。何度も舌の上に出て来ては飲み込むその名前…其方の本当の名前を呼びたくて仕方が無いのだよ………」
マオの双眸から水晶の様な大粒の涙がポロポロ零れた。
その涙の粒を鈴蘭は唇で掬いとる。
「私もお前の名前が呼びたいよマオ」
「でも、駄目なのだろう?」
「あぁ、今は駄目だ。まだその時ではない」
「ならせめて愛し合っているのだと言う実感が欲しい!鈴蘭が私は欲しい!」
「あぁ、本当に可愛いな私のマオ。でもそれは駄目だよ」
「ちゃんと名前を呼ばないと約束する!」
「そう言う問題では無いのだ。コレは私のエゴなのでお前を巻き込んで悪いと思っているのだが…私だってお前が欲しいよマオ」
「では何故駄目なのだ!?」
「見られている」
「?」
「この時代の神が覗いている。今この病院にかけられている結界なんて神にとっては無いも同じだ。私が本来の力で結界をはれば話は違うがな。
だがそれでは力を使った波動の余波で逆に私の存在が神の眼についてしまう。そうなると神々は私を狙い出すだろう。
それだけはいけない。この世界は私のご先祖様の時代なのだ。私が神を葬るのではいけないのだ。歴史が変われば未来も変わる。
そうなれば私たちの世界に戻った時に再び会える愛しい者たちとの関係性まで変わってくるかもしれない。
私たちが出会うと言う歴史そのものが消えるかも知れない。
我々はこの世界では出来るだけ介入せずにご先祖様たちを導かなくてはいけないのだよ」
「それは…イヤだ………其方と巡り会わない運命など、耐えられない…………」
「あぁ泣かないでおくれ私のマオ、それにエゴと言ったであろう?力さえ使わなければ我々の存在は神にとって注目を集めることも無くなる。だから抱き合う事も交わる事も本当は出来るのだ。
ただ下世話な神も居るだろうからな、私たちの営みを覗く輩は後を絶たないだろう。
私はな、お前の快楽に溺れる愛らしい姿を下世話な神々に見せたく無いのだよマオ」
「私だって其方の色香を放つ美しい肢体を他の者に見せたくはない!」
「ふふ、分かって貰えたかマオ。私は早く帰ってお前の名を呼びながらお前を感じたい。だから今やるべきことに集中して敢えてお前とは出来るだけ傍に居ない様にしている。チームを纏めるにしても1人のTOPより2人のTOPの眼で事柄を捕らえる方が良いしな。
だがマオ、私を煽った事を後悔するなよ?帰ったら3日は鳴かせてやるからな、可愛いことを言うお前が悪いのだよマオ?」
「………はぃ」
マオは顔どころか全身を真っ赤にさせて、小さな声で返事をしたのであった。
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