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1話
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「ユル!お前何したんだ!?」
ギルドマスターがユルの方へ駆けつけてくる。
ユルは今日も定位置で冒険者の軽い傷を治していた。
「はい?何ですか?」
「王宮から招待状が来ているぞ!」
「はいぃ!?何で!?」
「それはこっちの台詞だ!何やらかしたんだお前は!」
ユルが王宮から招待。
誰も何故かが分からなかった。
最近であった特別な事と言えば、高貴そうな女の顔の傷を治した事だけだ。
(あの人、もしかして偉い人だったのかな?)
着ている物も上質そうであったし、お連れの女騎士もやたらと上品であったと記憶している。
何より傷が治った女の顔は、ユルが今まで見てきた人間の中で1番美しいものだった。
「取り合えず、悪さをした覚えは無いから罰を受けると言う事は無いだろうし、行くだけ言ってみるよ」
そう言って、ユルはこの日の仕事を閉める事にした。
グレートウルフのニイドを伴って、街へ繰り出す。
王宮に行くのに小汚い恰好では失礼だろう。
今買える範囲の1番上等な服を買いに来たのだ。
「ニイド、店の前で待っててね」
「グルルゥ」
喉を撫でられてニイドが嬉しそうな声を上げる。
大きいが見た目は犬だ。
小さな子供たちは大きなワンちゃんと割と好意的に接してくれる。
寧ろ大人の方がニイドを怖がる。
こんなに可愛くて性格の良いニイドの良さが分からないあたり、子供の方が優秀だとユルは思っている。
飼い主馬鹿である。
「スミマセン、今持ってるお金の範囲で出来るだけ見目好くなるように見繕ってください」
「はい、では出来るだけ金額を押さえて頭の先から足の先まで揃えさせて頂きますね」
感じの良さそうなウサギの獣人の少女がユルに笑顔で言った。
「金額を押さえて」がユルの心に突き刺さったが、悲しいかな有難い。
ココは店員の言葉に甘えておこう。
うさ耳をピコピコ動かして服を選ぶ少女は凄く可愛い。
もしかしたらこの店は当たりだったかもしれない。
店を紹介してくれたギルドマスターに礼を言わなくてはならない。
「この靴を履いてみてくれますか?」
「あ、はい」
「ぴったりですね。意外と足元が疎かな人が多いんですよ。上流階級の方はまずは靴をチェックしますから、靴を良いものに変えるのは好印象を与えれると思いますよ」
「そうなんですね。正装はどんな感じが良いか分かりますか?」
「お客様細いですからね~テーラードジャケットとテーパードパンツで作った旬のセットアップコーデでなんてどうですか?
大人っぽい雰囲気に仕上がるため、頼もしい印象が作れますよ。
体型を拾わないほどよいゆとりを持たせたシルエットのため、細いラインも目立ちにくく仕上がります。
アイテムはテーラードジャケット・ミラノリブニット・テーパードパンツです。1番安いアイテムで揃えさせて貰いしたので柄は無地ばかりですが、お客様は術師さんみたいですし、それ用のローブを羽織れば上流階級の方に謁見する時でも問題ないと思います」
「有難うございます。お幾らですか?」
「金貨5枚です」
「え?」
「金貨5枚です」
「あー……はい、金貨5枚ですねー」
ユルの財布は一気に軽くなった。
残っているのは銀貨と銅貨。
宿代は先に1週間分払っているので問題はない、が、食事の内容を落とさなければいけないだろう。
「王宮に呼ばれるだけで金貨5枚の損失…僕の1週間の賃金………」
泣きそうになるのを目をかっぴらいて涙を表面張力で頬に流れないように頑張る。
せめて宿に戻るまでは泣かないでおこう。
前向きなのか後ろ向きなのか、何とも言えない感情を抱えて、ユルは購入した荷物を受け取り宿への道をとぼとぼと帰っていくのであった。
ギルドマスターがユルの方へ駆けつけてくる。
ユルは今日も定位置で冒険者の軽い傷を治していた。
「はい?何ですか?」
「王宮から招待状が来ているぞ!」
「はいぃ!?何で!?」
「それはこっちの台詞だ!何やらかしたんだお前は!」
ユルが王宮から招待。
誰も何故かが分からなかった。
最近であった特別な事と言えば、高貴そうな女の顔の傷を治した事だけだ。
(あの人、もしかして偉い人だったのかな?)
着ている物も上質そうであったし、お連れの女騎士もやたらと上品であったと記憶している。
何より傷が治った女の顔は、ユルが今まで見てきた人間の中で1番美しいものだった。
「取り合えず、悪さをした覚えは無いから罰を受けると言う事は無いだろうし、行くだけ言ってみるよ」
そう言って、ユルはこの日の仕事を閉める事にした。
グレートウルフのニイドを伴って、街へ繰り出す。
王宮に行くのに小汚い恰好では失礼だろう。
今買える範囲の1番上等な服を買いに来たのだ。
「ニイド、店の前で待っててね」
「グルルゥ」
喉を撫でられてニイドが嬉しそうな声を上げる。
大きいが見た目は犬だ。
小さな子供たちは大きなワンちゃんと割と好意的に接してくれる。
寧ろ大人の方がニイドを怖がる。
こんなに可愛くて性格の良いニイドの良さが分からないあたり、子供の方が優秀だとユルは思っている。
飼い主馬鹿である。
「スミマセン、今持ってるお金の範囲で出来るだけ見目好くなるように見繕ってください」
「はい、では出来るだけ金額を押さえて頭の先から足の先まで揃えさせて頂きますね」
感じの良さそうなウサギの獣人の少女がユルに笑顔で言った。
「金額を押さえて」がユルの心に突き刺さったが、悲しいかな有難い。
ココは店員の言葉に甘えておこう。
うさ耳をピコピコ動かして服を選ぶ少女は凄く可愛い。
もしかしたらこの店は当たりだったかもしれない。
店を紹介してくれたギルドマスターに礼を言わなくてはならない。
「この靴を履いてみてくれますか?」
「あ、はい」
「ぴったりですね。意外と足元が疎かな人が多いんですよ。上流階級の方はまずは靴をチェックしますから、靴を良いものに変えるのは好印象を与えれると思いますよ」
「そうなんですね。正装はどんな感じが良いか分かりますか?」
「お客様細いですからね~テーラードジャケットとテーパードパンツで作った旬のセットアップコーデでなんてどうですか?
大人っぽい雰囲気に仕上がるため、頼もしい印象が作れますよ。
体型を拾わないほどよいゆとりを持たせたシルエットのため、細いラインも目立ちにくく仕上がります。
アイテムはテーラードジャケット・ミラノリブニット・テーパードパンツです。1番安いアイテムで揃えさせて貰いしたので柄は無地ばかりですが、お客様は術師さんみたいですし、それ用のローブを羽織れば上流階級の方に謁見する時でも問題ないと思います」
「有難うございます。お幾らですか?」
「金貨5枚です」
「え?」
「金貨5枚です」
「あー……はい、金貨5枚ですねー」
ユルの財布は一気に軽くなった。
残っているのは銀貨と銅貨。
宿代は先に1週間分払っているので問題はない、が、食事の内容を落とさなければいけないだろう。
「王宮に呼ばれるだけで金貨5枚の損失…僕の1週間の賃金………」
泣きそうになるのを目をかっぴらいて涙を表面張力で頬に流れないように頑張る。
せめて宿に戻るまでは泣かないでおこう。
前向きなのか後ろ向きなのか、何とも言えない感情を抱えて、ユルは購入した荷物を受け取り宿への道をとぼとぼと帰っていくのであった。
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