聖女として召喚されたのは双子の兄妹でしたー聖女である妹のオマケとされた片割れは国王の小姓となって王都復興を目指しますー

高井繭来

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【オマケと魔導士長の芋焼酎】

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「では今日は焼酎作りに入りたいと思います。発酵・熟成の期間を短縮するためにフィルド様はガンガン回復魔法をかけて菌の増殖などをお願いします」

「りょうか~い♪」

 本日も使用人用の厨房は使用人が溢れかえっている。
 美味しいものを我先に食べたいと言う使用人たちは深海が厨房に入るとこぞって見学に来る。
 もちろん味見が専らの目的だ。
 ラキザが深海の隣をキープしているのは何時もの事である。

 深海たちが使用人用の厨房を使うのにも理由がある。
 王家用の厨房はクロナ派閥からの視線が痛いのだ。
 正に針の筵。
 使用人用の厨房はカグウ派閥の物が多いので居心地が良い。

「そもそも酒とは、糖分を含む液体に酵母を加え、発酵させて生み出されるアルコールのこと。
その製造方法により、酒は3つに分類されます。
日本酒やワイン、ビールなど発酵させた液体をろ過などを経てそのまま飲むものは「醸造酒」。
この「醸造酒」を熱し、水より沸点の低いアルコールを先に気化させ、冷やして液体に戻したものが「蒸留酒」。
ウイスキー、ブランデー、ウォッカと並び、焼酎もこの「蒸留酒」にあたります。
ちなみに「醸造酒」や「蒸留酒」に薬草や果汁、香料などを加えた酒は、「混成酒」という分類になります。
カルーアなどのリキュールや梅酒などです。
また、アルコール度数20~30度の焼酎ですが、5~15度のビールや日本酒、ワインのように、食中に味わえる世界でも稀有な蒸留酒です。その味わい方もストレートやロックだけでなく、水割り、お湯割りと様々。水を加えることでアルコール度数が調整できるだけでなく、冷やしてキレ味、温めて香りと甘味を際立たせるなど、温度による風味の変化がたのしめるのも、焼酎のよさです。
とれたて&選別が命の芋焼酎。
ここで焼酎の製造方法を知って貰います。
まずは日本酒造りと同様に「製麹」を行い、その次に「仕込み」が行われます。
麹と酵母と水での一次仕込みが行われ、その後、主原料(芋、麦、米)を加えてもろみを造る「二次仕込み」方式が主流です。
そして、できたもろみを蒸留器に入れ、高温の蒸気を当てて沸騰させ、アルコールを含んだ蒸気を冷却する「蒸留」作業へ。
できた原酒の酒質を安定させ、まろやかにするためにステンレスタンクや和甕(わがめ)などで「貯蔵・熟成」します。
そして出荷前にアルコール度数を調整する「割水などの仕上げ」を行い、完成となります。
この流れは、どの主原料でもほぼ同じですが、特に芋焼酎の場合には、「仕込み」の前段階がとても重要です。
サツマイモは、ジャガイモに比べると痛みが早い芋。
そのため、芋焼酎に使用するものは前日または当日の朝に収穫して、泥付きのまま焼酎の製造所へ。
到着後、速やかに泥や汚れを洗いながら芋の両端を切り落とし、さらに傷んでいるものや変色、虫食い部分などを手作業で削り取ります。
芋は傷ついた部分があると、そこから抗菌性のある物質を分泌し、焼酎の劣化臭である芋傷み臭の原因に。
大変ですが、おいしい芋焼酎には欠かせない大事な作業なのです」

「それで山ほどサツマイモがこんなにある訳だな。コレ美味いだけじゃなくて酒にもなるのか」

「私はアルコールを嗜まないので味は知りませんが、俺の国ではサツマイモから作る焼酎はメジャーな酒ですよ。
後は甘味にも化けさせれます。こちらは追々と言う事で」

 ラキザはテーブルに山盛りに積まれたサツマイモを見て感心の声を発した。
 少し前に深海はカグウにサツマイモを強請っていた。
 相変わらず先輩の手配は早い。
 枯れた地にブーストをかけたフィルドのオドを大量を流し込むと言う力技で、短い期間でサツマイモをゲットした訳だ。

「ええ。人数もいる事ですしちゃっちゃっと下ごしらえしましょうか」

 深海のその言葉で厨房の者全員で下ごしらえをする。
 そして1時間。

「流石に疲れるな」

「まぁそうですね。ここからはフィルド様の出番ですね。回復魔術で発酵・蒸留の繰り返しです。頼みましたよ」

「この量全部するのね?まぁ毎日の畑仕事よりはマシか。んじゃこの宮廷魔導士長に任せない♫」

「まずは蒸します。時間はおよそ30分ぐらいで、箸が通るぐらいに柔らかく蒸しあげます。次に水を3リットル用意します。蒸したサツマイモをすりつぶします。あ、風魔法でちゃちゃっと磨り潰しちゃって下さい」

「ほいほい」

「麹菌は3日前から仕込んでおいたのでコレを使って下さい。麦麹です。次が一次醪(もろみ)です。麹に水と焼酎酵母を加えて酵母を増殖させます。
麹がデンプンを糖に変え、酵母が糖をアルコールに変える役割を持ちます。
次に二次醪で、いよいよ芋が投入されます。
芋と水を加えて一次醪の酵母でデンプンが糖に、糖がアルコールにと醸されていきます。
本来ならここで約7日間寝かせて発行を促すのですがフィルド様、回復魔術で菌を常食させてしまって下さい」

「ほい、ヒール」

「こうして造られた「一次もろみ」に、芋と水を加えて混ぜ、約2週間かけて発酵させます。はい、フィルド様回復魔術を」

「ほい、ヒールっと」

「発酵を終えた「もろみ」を蒸溜することで、焼酎の原酒が得られます。蒸溜とは、液体を熱することで蒸気となった成分を、冷やして再び液体にすること。沸点の違いを利用して、水とアルコールとに分離するわけです。氷魔術で冷やしちゃって下さい」

「ほい、氷魔術」

「次に常圧蒸留です。フィルド様、熱魔術で100度まで温めて下さい」

「ほい、熱魔術」

「最後に蒸留です。蒸留されたばかりの原酒にはガス成分が含まれており、そのまま飲むと荒々しく感じるため、味や香りをたのしめるようになるには少し時間が必要です。
そのため、原酒は少なくとも半年以上は寝かされます。これを「熟成」といいます。
熟成させることで、ガス成分が揮散して荒さがとれるとともに、水がアルコール成分を包み込むことで、酒質が安定してきます。
本来何年も寝かせるのが良いのですが、これも回復魔術で時短です。
フィルド様強めの回復魔術を」

「ほい、回復魔術」

「以上で仕上がりです。フィルド様協力ありがとうございました。皆さん良ければ試飲を」

「「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」

 わらわらと芋焼酎に人が群がる。

「うぉコレはエールと違って別の美味さがあるな。香ばしい香りとマイルドな口当たりで、すいすい腹に入って行くし、幸せな一時を味わえるわ。あぁ~飲んだ後に鼻から抜ける甘い香り最高だな」

「さすがラキザ様、見事な食レポです。どうでしょう、コレは他国の王族に出しても問題ないでしょうか?」

「うん、これならイケるよ~。俺も大陸横断とかした時期合ったけどこんなお酒飲むのは初めてだし。珍しいだけでも目を引くのに味も伴ってるから十分カカンの名産として出せるね」

「よしっ!」

 珍しく深海がガッツポーズを取った。
 流石に知識はあれど酒を飲まない深海に酒造りは不安があったらしい。
 ラキザとフィルドのお墨付きで漸く安心したのだろう。

「後はビールだけだな」

「任せたよフカミちゃん♫」

「承知しました!明日は材料集めに向かうので明後日又ここに集合でよろしくお願いします」

「「了解」」

 ラキザとフィルドが焼酎を飲みながら返事をした。
 よほど焼酎が気に入ったらしい。
 晩餐会までにもう1度作る必要がありそうだと深海は苦笑いを浮かべた。
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