顔を焼かれ妹に荒野に捨てられた公爵令嬢、その身を偽り皇太子の護衛として王国へと帰還する

高井繭来

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【4話】

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 グシャッ!

 私を取り押さえていた男たちが音を立てて潰れました。
 肉塊と生暖かい血液が私に降り注ぎます。

 ビッ

 私の顔を覆っていた麻袋と猿轡、縛られていた紐が裂けて切れました。
 そして私が見たのは宙に浮いている絶世の美貌の持ち主でした。

 夜に溶け込ませたような漆黒の黒髪。
 光を浴びて光る海の様な青銀の瞳。
 顔のパーツの全てが神様が丹精込めて作り込み、最高の位置に配置したような整った顔。
 そして流れ出る異様な色気。
 男性と女性の魅力を併せ持つ存在。

 思わず魅入ります。

 先程の恐怖も怒りも忘れました。
 それ程に目の前の存在は生き物として格が違う存在でした。

「貴方は…悪魔、ですか………?」

 美しく残酷な生き物。
 人の命など塵にも満たない存在なのでしょう。
 潰された野盗たちがソレを証明しています。

 ですがこの方が悪魔でも良いと思いました。

 私を助けてくれた存在。
 美しい、人外であろう者。
 これ程の方になら、魂を差し出しても良いと思いました。

「私が悪魔、ねぇ。ではその魂を頂けるのか?」

「はい、私には何の価値でもないでしょうが、貴方様が望むならこの魂を捧げます」

「フ、フフフ…悪魔、ねぇ。では悪魔らしく取引をしようか?お前が望むならその顔、治しても良い。若しくは傷を治さない代わりに力を与えてやっても良い。復讐したいだろう?」

 どちらも魅力的な提案でした。
 母の面差しを受け継いだ顔を戻したいと思います。
 ですが、今の私の心は怒りが渦巻いているのです。
 
「力を、下さい…私を捨てた者たちに復讐する力を!」

「良い返事だ。私の求めた答えだな。では、正解をひいたご褒美にその顔をまず直してやろう」

 青銀色の光が私を包みました。
 顔から痛みが引きます。
 縄で締め付けられていた後も残ってません。

「何故……?」

「お前は何か勘違いしているようだが、私は悪魔ではないぞ。慈悲深い神様だ」

「かみ、さま……」

「そう、気紛れな神様だ。そして私はお前のことが気に入った。傍に置くなら美麗な人間の方が観賞用にも良いしな。だから顔も戻した。暫く私と共に来るが良い。ついでにお前が求める力も与えてやろう。簡単に身につく力ではないがな」

「かみさま…神様なら、何故良きものに加護を与えてくれないのですか!何故悪しき者がのさばる世の中を変えてくれないのですか!!」

「神は人間の管理などしていないからな。私がしているのは世界の管理だ。だがこうして気紛れに助ける事もある。ま、この場合は善人のみだからな。だから悪しき者を許せないなら自分で行え。その為の道は用意してやる。さぁやるか?止めるか?」

 クスクスと自称神様は笑いました。
 瞳が玩具を見る子供のようです。
 実際、この自称神様にとって本当に私は気紛れで助けてくれたのでしょう。

 その手を取る?

 ええ、その手を取ります。
 自称神様の気紛れな心が変わらないうちに。
 大変でも身に付けてみせます。
 復讐するだけの力を。

「神様、私に力も下さい」

「良い目だ。私と共に来い、願うだけの力は身に付けさせてやる」

 私は差し出された美貌の神様の手を取るのでした。
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