男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー

高井繭来

文字の大きさ
61 / 109
本編で語られなかったイチャラブ事情

58

しおりを挟む
 英国王室主催のガーデンティーパーティの歴史は、1860年代からはじまる。
 第7代ベッドフォード公爵夫人アンナ・マリアが空腹に耐えられず、ウォーバンアビーの館でひっそりと始めたアフタヌーンティー。
 それは、上流階級のソサエティーの中で、ひっそりと催されるものだった。
 それを世に知らしめたのは、時の女王ヴィクトリアである。

 1841年、新婚のヴィクトリア女王とアルバート公は、ウォーバンアビーの館を訪問する。
 そこで受けたアンナ・マリアからのアフタヌーンティーのもてなしに感銘を受け、女王は新婚生活の中にも取り入れるようになる。
 その後、王室主催の行事としても茶会が用いられるようになり、貴族の秘密のお茶会<アフタヌーンティー>は階級を越えて広まっていった。
 
 ドレスコードやマナーは主催者に準ずる。
 今日はルーシュである。
 男性はモーニング、女性はアフタヌーンドレスが基準だが、それほど堅苦しいものではなく、スマートカジュアルのような装いでも良い。

 アンドュアイスも正装だが、何時もより幾分カジュアルである。
 ルーシュの姉たちはアフタヌーンドレスを着ている。
 露出度は少ない。
 ドラゴニア家の息女たちは多くの貴族のように派手に飾る事を好まない。
 また背が高く胸元も引き締まっている(精一杯の賛美)ので胸元が空いたドレスを着る事は無い。
 前屈みになる時に服の中が見えてしまうからだ。
 よってアンドュアイスの気分は悪くない。

 ルーシュの姉だから我慢しなくてはと思っていたが、想像以上にストレスが無い。
 顔立ちが何処かルーシュと似ているのもあるかもしれない。
 性格も挨拶を交わしたがさばさばしている。
 ルーシュに先にあっていなければ、ドラゴニア家の他の息女がアンドュアイスの伴侶になる運命も何処かにあったかもしれない。
 だがアンドュアイスが最初にあったのはルーシュだ。
 だからコレが運命。

 ストレスを感じさせないだけでなく、心から笑い合えるのはルーシュなのだ。
 甘えるのもルーシュ限定である。
 (注)全能神と魔王は別枠である。

 ☆本日のお茶会・メニュー☆
 ・サンドイッチ
 ・ドロップスコーン
 ・フルーツタルト
 ・チョコレートケーキ
 ・レモンケーキ
 などなど多種多様のティーフーズ

 主役の紅茶は王室御用達紅茶商トワイニングがガーデンティーパーティ用にブレンドしたスペシャルティー。
 何度もルーシュが渋みと戦った紅茶である。
 現在は透明度の高い香り豊かな美味しい紅茶に進化を遂げている。

「うん、美味しいねルーシュ」

 ニコリ、とアンドュアイスが笑う。
 今日は大人の笑みだ。
 何時ものワンコモードでないらしい。
 流石に婚約者の実家でワンコモードは出来ないと思ったのか、人の目に出る時は無意識に仮面を付けてしまうのか?
 どちらにしても絵になる男だ。
 それに仮面と言う言葉を使ったが、大人の男の顔もアンドュアイスの1部である。

 その笑顔にルーシュは思わずトキメク。
 大人のアンドュアイスだってルーシュは大好きなのだ。
 本当にいつの間に自分はこの麻薬のような男に惚れ込んでしまったのだろうと、ルーシュは高鳴る胸を押さえて思う。
 アンドュアイスのティーカップに紅茶を注ぐ際、手が緊張で震えていたことは診なかったことにして頂きたい。
 気付いている姉たちに後で揶揄われるな、と思いながら。
 アンドュアイスの紅茶には愛情と言う隠し味をたっぷりと注ぐのだった。
しおりを挟む
感想 197

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...