男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー

高井繭来

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本編で語られなかったイチャラブ事情

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「助けてサイヒもん―――――っ!」

「誰が某ネコ型ロボットだコラ」

 グシャ

 ルーシュの真上から降ってきたサイヒに背中からふまれた。
 お陰で上着に全能神の足形が付いている。
 ご利益はあるのだろうか?

「お前呼ぶ度踏みつけるの止めろよな!」

「避けれんお前が悪い。クオンやアンドュなら避けるぞ?」

「クオンさんはもう魔王の眷属で人間と別次元でしょーが!そしてお前がアンドュ様を踏みつける訳が無いだろう!あんなに可愛がっているのに!!」

「ふっ、アンドュが私に懐いていて悔しいのか?」

「いーもん!結婚するのは私なんだかんな!」

「おぉ、言うようになったではないか。が、私の助けが必要なうちは清い交際から先は認めんぞ」

「お前私らの何なんよ?」

「保護者だと自負しておこう」

「全能神がバックに憑いてるとか私やべーね!うん、やべーわ!!」

「有難がると良い。で、何の用だ?」

「うん、実はお前じゃなくてマロンちゃんに用があったんだよね」

「全能神を伝書鳩変わりか?」

「怒んなよー、お前からじゃないと他当てがないし…協力してくれよー………」

 しょぼん、とルーシュが分かりやすく項垂れる。
 全く、と思いながらもルーシュはお気に入りの中でも心友にまでしているお気に入りだ。
 サイヒが断ることなど無い。
 それを鈍いルーシュは分かっていないみたいだが。
 利用してばつが悪いらしい。
 分かりやすく項垂れている。

 はぁ、と溜息をついてサイヒは部屋の主のベッドへ腰かけて足を組んだ。
 長い脚が組まれるとそれだけで芸術的である。
 ベッドに腰かけるだけで芸術。
 流石は全能神である。
 相変わらず男装であるが、それゆえに男の色香を放っている。
 サイヒは女であるがこうして男も女も誑かす色香を放つから質が悪い。
 本人は無意識であるが。
 そしてソレに惑わされないルーシュだからサイヒはルーシュがお気に入りなのだ。

「で、マロンに何を頼みたいのだ?」

「今度うちでお茶会することになって、主催者私なんよね…持て成す自信がありません………」

「成程、確かにマロンの案件だな。で、全能神の専属侍女を貸して欲しいと?」

 ぶんぶんとルーシュが首を縦に振る。
 そんなに勢いよく振ったら酔うぞ?
 だがルーシュは頑丈なので問題無しだ。

「駄目だ。マロンは文官の補助もしているからな、天界からの貸し出しは出来ん」

「やっぱ駄目か………」

「だからお前が天界に来い」

「え、良いの?」

「あんまり長い時間マロンを貸し出せんからな。1週間で覚えきれ」

「やった!ありがとーなサイヒ!!」

 屈託ない子供のような笑顔。
 サイヒはこれが意外とお気に入りである。
 下げてから上げる。
 詐欺師のような手法だが、全能神が力添えしてやるのだ。
 これ位の楽しみは許されるだろう。

「明日迎えを出す」

「おう!よろしくな心友!」

「全く都合の良い心友だ、まぁ貸し1にしといてやる。後で何かで支払って貰うからな」

「私が出来る事なら何でもさせて貰う!まじ、アンガト!!」

 その媚びない礼だけで本当はサイヒは満足なのだが、ソレを知られてしますと調子に乗るから教えてはやらないのだ。
 ルーシュとはこれからも長い付き合いになる。
 手綱を引くのは自分の役目で良い。
 ルーシュはソレに気付かず無邪気に笑っていれば良い。

 本当に愛されているものである。
 ルークが焼き餅焼くのも仕方がない。

 だが、このサイヒの尽力によってアンドュアイスを招いたお茶会は成功することになるのであった。
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