男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー

高井繭来

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本編で語られなかったイチャラブ事情

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「先輩、入りますよ~」

「おん、ええでぇ」

 重厚な扉の向こうから軽い声が返ってきた。
 扉の豪奢さからして相手は重役だろう。
 それがこんな軽さで良いのだろうか?
 ルーシュは何だか今から合う人物に不安になってきた。

「ようこそ~」

 ジャスミンが扉を開けるとそこに居たのは少し長めのぼさぼさの髪に眼鏡をかけた糸目の男。
 煙管を蒸かしている。
 これまた豪奢な椅子に座りながら甘味なんかも口にしてる。
 そしてテーブルに置かれた酒・酒・酒。
 昼間から重役が酒を飲んでいいのだろうか?

「あぁ、ワシは酔わん体質やから大丈夫やでお嬢ちゃん」

(心を読まれた!?)

「いやいやワシは読心術なんて使わらへんで」

(いやいや今も言い当てたでしょうが!!)

「ちょ~っと人の顔色伺うのが得意なだけの優しいお兄さんやでワシ」

(自分で優しいとか言う所がますます胡散臭い!)

「え~そんな胡散臭いかなぁワシ?ジャスミン君、ワシ胡散臭い?」

「はい、先輩は胡散臭さにかけては右に出る者は居ないくらい胡散臭いです」

「え~そうなん?ショックやわぁ~」

 口から吐く煙で輪っかを作っている。
 とてもじゃないがショックを受けてる人間の行動とは思えない。

「ルーシュちゃん大丈夫だよ。先輩は胡散臭いけど悪い人じゃないはずだから」

 何故に疑問口調?
 ジャスミンの言葉に益々ルーシュは不安になった。

「先輩、と言う事はジャスミンさんの学生時代の上級生とかですか?」

「いやいや、先輩はあだ名。本名不明。現宰相だけど何時から宰相してるのかは不明。俺が5歳の頃には宰相していたよ。因みに父の5歳の頃も先輩が宰相してたらしいよ。さらには祖父の5歳の頃の宰相も先輩らしい」

「何それ怖い!」

「大丈夫やで~ワシは胡散臭くない優しいお兄さんやで~」

「100年近く外見が変わらない人は優しいとかそう言う問題じゃなくて胡散臭すぎます!!」

「ん~お兄さん魔族?」

「「!?」」

「おん、よう当てたなぁ。魔族やってバレたん2度目やわぁ」

「「魔族だったんですか!?」」

 アンドュアイスの質問に答えた”先輩”の言葉にルーシュとジャスミンの声がはもった。

「て、ジャスミンさんも知らなかったんですか!?」

「いや俺だけじゃなくて誰も知らないよ!」

「サイヒの嬢ちゃんは知ってたで」

「じゃぁ2度目と言う事は初めて先輩が魔族だと気付いたのがサイヒ様だったんですか?」

「そうそう、たまに連絡取りおうてるけどやっぱオモロイなぁあの子。聖女で収まる器や無いと思ってたけど、まさか全能神にまでなるとは思わんかったわぁ」

「本当に魔族なんですね………」

「いや、何で誰も気付かなかったんですか!?100年以上宰相してる時点でおかしいでしょ!?」

「先輩はそう言う生き物だとカカンの民には思われている」

「胡散臭いせいで逆に疑われなかったんですね………」

「まぁそう言う事だ。だけど特に先輩は人間に害しないし、この国1番の物知りだからルーシュちゃんとアンドュの役に立ってくれると思うよ」

(この胡散臭い人、いや魔族?本当に役にたつのかなん?)

「も~そんな胡散臭い連呼せんでいいやん」

「やっぱり心読んでるでしょう!?」

「イヤイヤ本当に読んでへんねん。ただちょ~っと人より人の感情の機微に敏感なだけやねん。まぁカグウ何かは最後までワシが心読めると疑っとたけどな」

「カグウてあのカグウ!?大聖女時代の賢王カグウ王!?」

「そうそう、そのカグウや。子供の時は「センパイ~♡」て懐いとったのに成長してからは反発ばかりするようになったんよなぁ。あ~可愛かったなぁ子供の頃のカグウ」

 どうやら目の前の相手は100年どころか1000年以上生きている事が判明した。
 そして胡散臭さが倍増した。

「じゃぁセンパイは【次元移動】の魔術に対して詳しい?」

 コテン、とアンドュアイスが小首を傾げる。
 可愛い。
 尊い。
 久しぶりにルーシュは癒しを感じた。
 目の前の”先輩”のせいでかなりダメージを心に負っていたようである。

「こらまた可愛い子やなぁ。オヤツ食べるかぁ?」

「食べる~」
 
 ニッコニコで”先輩”と話すアンドュアイスを見て、アンドュアイスが懐くなら悪人ではないとルーシュは判断し、目の前の胡散臭い魔族を一旦信じることにしたのだった。
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