猫の花屋さん

そらいろ

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 毎日見かける男の子が居る。
 俺がこの花屋に住み着くようになってから少し経った頃だ。
 おそらく通学路なのだろう。背中よりはるかに大きいランドセルを背負って通り過ぎる男の子がいた。
 幼いその子は、毎日花屋の前を通る。初めて俺がその子を見かけた時は何も感じなかった。そして、ただ通学路として花屋の前を通り過ぎるだけだったのに、いつしかその子は花屋の存在に気づいたのか、店の前に立ち止まり可憐に咲いている花たちを見つめるようになった。
 季節を変えてもほとんど毎日、同じ時間に見かける男の子。時が流れるごとに少しずつ背が高くなり、顔つきも幼い面影を残しつつ青年へと成長していった。そして、彼は、ただただ俺の一方的な顔見知りになっていた。
 そして、今日も表に飾られた綺麗に咲く白い花を彼は見つめている。
 俺の身体が小さいからなのか。彼が花に夢中過ぎるせいなのか。この俺の存在には、全く気づいていないようだ。

「にゃぁーぁ…」

 欠伸をするフリをしてわざと大きめの鳴き声を出す。
 それでも、声は届かなかった。

(猫より花……か)

 現実に直面した時、なぜだか自分が猫なことに少し寂しくなった。
 この見上げる一方的な視線が、あの子の視線と交わる日が来るのだろうか。その時、彼は花に向けるように俺にああやって微笑んでくれるだろうか。

 そんなことを俺は思い始めていた。

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