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妹が動く
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「――ダメだったわ…」
リオンの部屋に突撃した翌日。
ラランナは休日で予定がないのを良いことに、寝間着のままベッドでゴロゴロしていた。
淑女にあるまじき振る舞いだが、自室の中なのだから問題ない。
「リオンもロミオさんのことを好いていたら、話は丸く収まったのに…。告白されたら困るって言われちゃった…」
「いや、そりゃあそうでしょうよ」
ラランナのつぶやきに反応したのは、妹のエミリーだ。
彼女は姉の部屋のソファに寝そべり、小説を読みながら姉がボソボソと話すのをすべて聞いていた。
――そう、昨日のロミオとの食事会以降の出来事は、エミリーにすべて筒抜けとなっている状態なのだ。
「例えお兄ちゃんがロミオさんのことを好きだと思ってても、お姉ちゃんにそんなこと聞かれて『はい嬉しいです。僕もロミオさんのことが好きです』だなんて言うと思ったの?」
「え、うん。…ちょっと無理があったかしら?」
「ちょっとどころじゃないわよ」
エミリーはため息を吐いた。
直接聞いたわけではないため、姉と婚約者の食事会の場での会話が真実か否かはエミリーには判断が付かない。
だがこのまま姉に任せていても、事態が好転するとは思えなかった。
(このままじゃ、良くも悪くも何も起きないわ)
「――そもそも、お姉ちゃんはロミオさんとの婚約を解消しても良いの?」
「えぇ。いつも紳士的に接してくださる素敵な人だけれど、ロミオさんとどうしても結婚したいわけではないもの」
エミリーの問いに、ラランナはあっけらかんと答えた。
ラランナにとって、ロミオはよき友人だ。
結婚しても構わないと思える相手だが、結婚したい相手ではない。
「…もしロミオさんとお兄ちゃんがうまくいったとして、お父さん達には何て言うのよ」
「それよね…。ロミオさんのご両親の考えはわからないけど、少なくともうちのお母さんは反対しそうね…」
ラランナ達の母は『男が働き、女が家を守る』というやや古い考えを持っている人だ。
そのため、ラランナが父の会社で働くことを今でもよく思っていない。
「お父さんは、会社の不利益にならなければ、あっさり認めてくれると思うのよね」
「…そうね。私もそう思うわ」
姉の言葉に、エミリーは頷いた。
大企業のトップというだけあり、父は柔軟な思考を持っている。
取引相手にはマイノリティな者も当然いるのだ。
それを受け入れられないようであれば、ここまで上り詰めることはできなかっただろう。
「もし、ロミオさんとリオンが両思いになれたなら、お父さんに相談しようと思うのよ。お父さんならきっと悪いようにはしないと思うの」
エミリーもそう思う。
父ならうまいことやってくれるだろう。
――ならば、とエミリーは決意した。
引っ込み思案で、このままでは結婚なんて出来そうにない兄のために、一肌脱ごうではないか。
「お姉ちゃん、お兄ちゃん達に話をさせましょう!」
肝心なところで抜けている姉を置いてけぼりにして、エミリーは一人で会合場所の手配を進めていった。
(ロミオさんの話が本当なら、お兄ちゃん達は両想いなんだから問題ないわ)
エミリーは気づいていた。
ロミオと会ったときの兄の目には熱があることを。そして同時に、切なそうであることにも。
だから行動するのだ。
リオンの部屋に突撃した翌日。
ラランナは休日で予定がないのを良いことに、寝間着のままベッドでゴロゴロしていた。
淑女にあるまじき振る舞いだが、自室の中なのだから問題ない。
「リオンもロミオさんのことを好いていたら、話は丸く収まったのに…。告白されたら困るって言われちゃった…」
「いや、そりゃあそうでしょうよ」
ラランナのつぶやきに反応したのは、妹のエミリーだ。
彼女は姉の部屋のソファに寝そべり、小説を読みながら姉がボソボソと話すのをすべて聞いていた。
――そう、昨日のロミオとの食事会以降の出来事は、エミリーにすべて筒抜けとなっている状態なのだ。
「例えお兄ちゃんがロミオさんのことを好きだと思ってても、お姉ちゃんにそんなこと聞かれて『はい嬉しいです。僕もロミオさんのことが好きです』だなんて言うと思ったの?」
「え、うん。…ちょっと無理があったかしら?」
「ちょっとどころじゃないわよ」
エミリーはため息を吐いた。
直接聞いたわけではないため、姉と婚約者の食事会の場での会話が真実か否かはエミリーには判断が付かない。
だがこのまま姉に任せていても、事態が好転するとは思えなかった。
(このままじゃ、良くも悪くも何も起きないわ)
「――そもそも、お姉ちゃんはロミオさんとの婚約を解消しても良いの?」
「えぇ。いつも紳士的に接してくださる素敵な人だけれど、ロミオさんとどうしても結婚したいわけではないもの」
エミリーの問いに、ラランナはあっけらかんと答えた。
ラランナにとって、ロミオはよき友人だ。
結婚しても構わないと思える相手だが、結婚したい相手ではない。
「…もしロミオさんとお兄ちゃんがうまくいったとして、お父さん達には何て言うのよ」
「それよね…。ロミオさんのご両親の考えはわからないけど、少なくともうちのお母さんは反対しそうね…」
ラランナ達の母は『男が働き、女が家を守る』というやや古い考えを持っている人だ。
そのため、ラランナが父の会社で働くことを今でもよく思っていない。
「お父さんは、会社の不利益にならなければ、あっさり認めてくれると思うのよね」
「…そうね。私もそう思うわ」
姉の言葉に、エミリーは頷いた。
大企業のトップというだけあり、父は柔軟な思考を持っている。
取引相手にはマイノリティな者も当然いるのだ。
それを受け入れられないようであれば、ここまで上り詰めることはできなかっただろう。
「もし、ロミオさんとリオンが両思いになれたなら、お父さんに相談しようと思うのよ。お父さんならきっと悪いようにはしないと思うの」
エミリーもそう思う。
父ならうまいことやってくれるだろう。
――ならば、とエミリーは決意した。
引っ込み思案で、このままでは結婚なんて出来そうにない兄のために、一肌脱ごうではないか。
「お姉ちゃん、お兄ちゃん達に話をさせましょう!」
肝心なところで抜けている姉を置いてけぼりにして、エミリーは一人で会合場所の手配を進めていった。
(ロミオさんの話が本当なら、お兄ちゃん達は両想いなんだから問題ないわ)
エミリーは気づいていた。
ロミオと会ったときの兄の目には熱があることを。そして同時に、切なそうであることにも。
だから行動するのだ。
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