これから新生活へおくる君に言っておきたいことがある

しがついつか

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従姉のお姉さま

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大学の卒業式を翌週に控えたある日、夕食の席で母が思い出したように言った。


「そうだロースケ、あんた来週の土曜日って暇だったでしょ? そのまま予定空けておきなさい」
「は?なんで?」
「お彼岸だからお婆ちゃんのお墓参りに行くの。どうせ就職したら今まで以上に行く機会がなくなるんだし、今回が最後だと思ってあんたも来なさい」
「えー…」


母方の祖母のお墓は、車で1時間の距離にある。
さほど遠くはないが、母とのドライブを喜ぶ趣味もない。

『お墓参り』とは言うが、線香と花をあげて終わりではない。
祖母の家に母の姉弟たちが集まり、昼食を共にするのだ。

非常に面倒くさい。

しかも祖母の家――母の実家は田畑に囲まれているため、暇つぶしできる施設が周囲にない。
面倒くさいし暇なので行きたくない。


だがロースケに拒否権はなかった。

4月から新社会人となるロースケは、一人暮らしはせず、時間はそれなりにかかるが実家から通勤することを選択した。
来月以降もこの家に居続けるためには、我が家の最高権力者である母に逆らうことは許されないのだ。







土曜日。
母が運転する軽自動車で、祖母の家に向かった。

道中、助手席でスマートフォンをいじるロースケに母が言う。


「今日は久しぶりにマツリちゃんも来るみたいよ」
「え、マツリ姉ちゃん来るの!?」


マツリは母の姉――ミコト伯母さんの娘である。
ここ5、6年ほど会っていないが、ロースケが小さい頃から盆や正月の集まりで会った時によく面倒を見てもらっていた。


「そうよ。あんたも来月から社会人になるんだし、いい機会だから社会人としての心得を聞いておきなさい」
「へーい」


マツリが来ると聞いて、ロースケはこの後の面倒な墓参りに少し前向きになった。






「あらぁ~ロースケ君、久しぶり!大きくなったわねぇ!」
「ども…」


祖母の家に到着すると、先に来て居間の掃除をしていた伯母がわざわざ庭まできて出迎えてくれた。
「しばらく見ないうちにいい男になっちゃって~」とおばさん感丸出しの言動をする伯母に、この人は相変わらずだなぁと苦笑いした。


「姉さん掃除ありがとう。食べ物とかはこっちで持ってきたから――ロースケ、トランクから出して運んでちょうだい!」
「はいはい」


母に命じられるがまま、ロースケは車のトランクから保冷バッグを二つ取り出す。
人数分のペットボトル飲料と、道中の店で購入した寿司が入った保冷バッグは重い。
面倒なことこの上ないが、さすがに母や伯母にこれを持てとは言えない。


「ぜんぶ居間にもっていけばいいの?」
「そうね」
「よろしくね、ロースケ君。エイジたちはあと30分くらいで着くっていってたから、料理とかはまだ並べなくていいわよ」
「はーい」


エイジは母の弟――三人姉弟の末っ子である。
今日はロースケと母、伯母とマツリ、叔父一家4人の8人が集うのだ。

叔父には中学生の長男と小学生の長女がいるが、そのどちらともロースケはさほど親しくない。
集まりの場では彼らは携帯ゲームやスマートフォンをいじっていたし、ロースケも別に話しかけようとしなかったので、お互いに干渉することなく過ごした。
顔を合わせたら挨拶はするので、険悪なムードだとか、お互い嫌いあっているというわけではない。






「――どっこいしょ」


居間に入ると座卓の脇に重たい保冷バッグを下した。
寿司の入った方は座卓の上に置く。


居間の畳は日に焼けて色あせており、どことなく古さを感じさせる。


(こんなに小さい部屋だったっけ?)


座卓を2つ並べた8畳の和室は、数年前に来た時よりなんだか小さく感じだ。
ロースケが成長したからそう感じるのだろうか。



「ロースケ、久しぶりだね」
「マツリ姉ちゃん!」


ロースケが室内を眺めていると、従姉が台所から顔を出した。
居間と台所はガラス戸で仕切ることができ、普段は戸を開けた状態にしている。

マツリは母親とともに早く来て部屋の掃除をしていたのだろう。腕まくりをし、布巾を手にしていた。


「5年ぶりかな。元気にしてた?」
「うん」


久しぶりに見る従姉の姿に、ロースケは照れ臭くなった。


「あーっと、なんか手伝うことある?」
「そうね…じゃあ、こっちきて、洗った食器を拭いてくれる?」
「わかった」


居間の隅にボディバッグを置くと、腕まくりをしながら台所に入った。
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