先読みの巫女を妄信した王子の末路

しがついつか

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王子の事情聴取2

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「バルト・フォックスに『予知を預かったのか』と聞かれ、どのように答えましたか」


宰相に問われて、リュウは三日前のやりとりを思い出す。





**************

――三日前。リュウ第一王子の自室。



「おや、巫女様の予知でも預かったのですか?」
「え?」
「殿下は最近、熱心に図書室へと通っていますからね。もしかして、巫女様とお心を通わすことが出来たのでしょうか。
 巫女様から予知を預かることが出来るなど、王族として最も名誉あることだと聞き及んでおります。
 おめでとうございます」


戸惑うリュウなど気にもせずに、バルトは喋り続ける。
この場にルーイ・スワンがいれば、バルトの失礼な言動を見て不敬だと烈火のごとく怒りだしただろう。
――もっともこの場にルーイがいたのなら、バルトは先の発言は絶対にしない。


普段は物静かなバルトだが、ルーイが席を外したときは明るくひょうきんな様子を見せることが多々あった。
それが面白くてリュウは彼をクビにすることもなく、またルーイに告げ口するようなことも無かった。

気安く話してくれる相手が物珍しく、嬉しかったのだと思う。



「それで、どのような予知だったのでしょうか?
 ――おっと、失礼。これは失言でした。巫女様の予知は現実の物となるまでは公表してはいけないのでしたね。
 申し訳ありません」
「いや、構わない。だが私以外の者の前では発言に気を付けろ」
「はい。肝に銘じておきます」


リュウの自室は執務部屋と応接室、寝室の3部屋に分けられている。
執務部屋にはリュウと秘書官達の作業机が並んでおり、日中はこの部屋で作業をすることが多い。


席に着いたリュウが仕事を片付けようと書類を手に取ると、バルトが声をかけてきた。


「殿下、眉間にシワが寄ってますよ」
「…そうか?」
「えぇ。何か嫌なことでもありましたか?」
「いや…」
「それとも、巫女様の予知が良くないものだったのですか?」
「…」


否定するべきだった。
バルトとの間に友情を感じていたこともあり、リュウは図星をつかれて黙ってしまった。

その様子を見て、バルトはわざとらしくため息を吐いた。


「嫌な予知だったんですね。でも、前回の大災害のような国民全員にかかわることではなくて、殿下個人に関係があることだった…ってところですか?
 ――例えば、婚約者のこととか…」



リュウは弾かれたようにバルトを見た。
何故わかったのか。
声には出さないが、リュウの顔にはそう書いてあった。



「ありゃ…ビンゴですかね?」
「…どうして…」
「うーん、殿下の様子を見てたら、なんとなくそうかなって思ったんです。――それで、どうするんですか?」
「何がだ?」
「殿下の婚約者――イーグル嬢に、何か問題が起こるのでしょう?このまま婚約を続けるんですか?」
「…何を言っている?」


バルトの言葉にリュウは顔をしかめる。


「何って、問題を起こす様な婚約者は、王族の伴侶として相応しくないです。婚約者にふさわしくないのなら、婚約破棄しかないでしょう」
「婚約破棄?」


何やら不思議な香りがする。
バルトはいつの間にか、リュウのすぐ傍に立っていた。

どうしてだろう。
リュウは彼から目を離せない。



「そうですよ。アイシャ・イーグルは。殿下の婚約者には相応しくありません」
「…」
「殿下は『アイシャ・イーグルとの婚約を破棄するべき』です。ちょうど三日後に収穫祭がありますね。言い逃れが出来ないように『宴の途中で彼女を断罪しましょう』。だって『彼女は罪を犯した』のですから」
「――あぁ…そうだ。そうしなければいけない…」


思考に霞がかかったようだった。



**************




思い出したリュウは愕然とする。
なぜ自分は今までアイシャを犯罪者だと思っていたのか。

彼女は何もやっていない。
どうして『罪を犯す』のではなく『罪を犯した』と思いこんでしまったのか。

リュウの話をすべて聞き終えると皆、難しい顔をして黙り込んだ。


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