4 / 5
先輩が冷たくなった日
しおりを挟む
カズヨが配属されて1か月。
その日モチコは追い詰められていた。
緊急で対応しないといけない仕事が入ったのだ。
カズヨの質問にじっくり付き合う暇は無い。
手を止めたら死ぬ。
それほど急ぎで量の多い仕事だった。
そんな中、カズヨはいつも通り質問してきた。
「モチコさん、あのこれなんですけど」
「はいー」
モチコはカズヨに耳を傾けつつ、己のパソコンの画面を見て、手を動かしながら応えた。
「えーっと…」
「…」
カズヨの質問が止まる。
内容がまとまっていないため、しばし無言の時間があるのはいつものことだ。
その間、モチコはパソコンを操作する。
先週までならモチコはキーボードを叩く手を止めてカズヨに向き合ったのだろう。
だが、今は手を止められない。
質問が出てきたら手を止めるつもりだ。
「うーんと…」
「…」
カタカタカタ。
モチコがキーボードを叩く音が響く。
カズヨは己のパソコンの画面をマウスで操作するも、聞きたい部分が画面に表示されていないようだ。
カチカチとマウス操作している。
「…質問の内容がまとまってないなら、ちょっとまとまってからにしてもらえます?
あとちょっと今手が離せないので、メッセージツールに過剰書きでも良いのでまとめて書いておいてもらえますか」
「あ、はい…」
カズヨが本題になかなか入らないので、モチコはいったん打ち切ることにした。
しばらくすると、カズヨからのメッセージが入った。
手を離せないモチコは、一段落してから読むことにした。
数十分後、一段落したモチコは溜っていたメールやカズヨ以外からも来ているメッセージに目を通し始めた。
カズヨのメッセージを見ると、この一文。
『Aの資料を作成したんですけど、これで合っているかわからないです』
モチコは思った。
だからなんだ、と。
合っているかわからないのなら「作成した資料をチェックして貰えますか」とお願いしたら良いのではないだろうか。
モチコは追い込まれていた。
普段は温厚なモチコだが、精神的に追い込まれている今の彼女の優しさゲージは大幅減少している状態だ。
『じゃあ共有フォルダに置いてくれたら見ますよ』と精神的に余裕のあるモチコなら言うだろう。
だが今のモチコは違う。
『それだけ言われても困ります。資料を共有フォルダに配置するなりしてから、レビューの依頼をしてください』
モチコは突き放した。
付き合ってられなくなったのだ。
モチコはカズヨの家庭教師でも個別指導の塾講師でもないのだ。
カズヨのために割ける時間はそう多くない。
カズヨに時間をかけると、その分己の作業が遅れるのだ。
さらにいうなら、カズヨは新入社員では無い。
二十代とはいえもうアラサーなのだ。
モチコが手厚くケアする必要などない。
その日モチコは追い詰められていた。
緊急で対応しないといけない仕事が入ったのだ。
カズヨの質問にじっくり付き合う暇は無い。
手を止めたら死ぬ。
それほど急ぎで量の多い仕事だった。
そんな中、カズヨはいつも通り質問してきた。
「モチコさん、あのこれなんですけど」
「はいー」
モチコはカズヨに耳を傾けつつ、己のパソコンの画面を見て、手を動かしながら応えた。
「えーっと…」
「…」
カズヨの質問が止まる。
内容がまとまっていないため、しばし無言の時間があるのはいつものことだ。
その間、モチコはパソコンを操作する。
先週までならモチコはキーボードを叩く手を止めてカズヨに向き合ったのだろう。
だが、今は手を止められない。
質問が出てきたら手を止めるつもりだ。
「うーんと…」
「…」
カタカタカタ。
モチコがキーボードを叩く音が響く。
カズヨは己のパソコンの画面をマウスで操作するも、聞きたい部分が画面に表示されていないようだ。
カチカチとマウス操作している。
「…質問の内容がまとまってないなら、ちょっとまとまってからにしてもらえます?
あとちょっと今手が離せないので、メッセージツールに過剰書きでも良いのでまとめて書いておいてもらえますか」
「あ、はい…」
カズヨが本題になかなか入らないので、モチコはいったん打ち切ることにした。
しばらくすると、カズヨからのメッセージが入った。
手を離せないモチコは、一段落してから読むことにした。
数十分後、一段落したモチコは溜っていたメールやカズヨ以外からも来ているメッセージに目を通し始めた。
カズヨのメッセージを見ると、この一文。
『Aの資料を作成したんですけど、これで合っているかわからないです』
モチコは思った。
だからなんだ、と。
合っているかわからないのなら「作成した資料をチェックして貰えますか」とお願いしたら良いのではないだろうか。
モチコは追い込まれていた。
普段は温厚なモチコだが、精神的に追い込まれている今の彼女の優しさゲージは大幅減少している状態だ。
『じゃあ共有フォルダに置いてくれたら見ますよ』と精神的に余裕のあるモチコなら言うだろう。
だが今のモチコは違う。
『それだけ言われても困ります。資料を共有フォルダに配置するなりしてから、レビューの依頼をしてください』
モチコは突き放した。
付き合ってられなくなったのだ。
モチコはカズヨの家庭教師でも個別指導の塾講師でもないのだ。
カズヨのために割ける時間はそう多くない。
カズヨに時間をかけると、その分己の作業が遅れるのだ。
さらにいうなら、カズヨは新入社員では無い。
二十代とはいえもうアラサーなのだ。
モチコが手厚くケアする必要などない。
12
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
刈り上げの教室
S.H.L
大衆娯楽
地方の中学校で国語を教える田辺陽菜は、生徒たちに校則を守らせる厳格な教師だった。しかし、家庭訪問先で思いがけず自分の髪を刈り上げられたことをきっかけに、彼女の人生は少しずつ変化していく。生徒たちの視線、冷やかし、そして自分自身の内面に生まれた奇妙な感覚――短くなった髪とともに、揺らぎ始める「教師」としての立場や、隠されていた新たな自分。
襟足の風を感じながら、彼女は次第に変わりゆく自分と向き合っていく。地方の閉鎖的な学校生活の中で起こる権威の逆転劇と、女性としての自己発見を描く異色の物語。
――「切る」ことで変わるのは、髪だけではなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる