一括りにしないでください

椿森

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 私は半年前にある男爵に引き取られた。
 私は母と、義理の父とその2人の間に生まれた幼い弟と慎ましくも不自由なく暮らしていた。
 しかし、母が亡くなって間もなく実父を名乗る男爵に連れていかれ、貴族の仲間入りをすることになってしまった。

 話を聞くに、平民としては見目の良かった母は男爵家でメイドをしていたが、男爵に関係を迫られ、その末に私を身篭ったようだった。
 私を身篭った頃には男爵家には既に跡取りとなる異母兄がいた。
 若い頃から浮名を流していたらしい男爵は、妻であった男爵夫人だけではつまらんと母を初めとしたメイドや街の娘たちにも強引に関係を迫っていたらしい。

 そんな中で母は妊娠し、それを知った男爵夫人の怒りにふれ、追い出された。
 きっと男爵夫人はその時は清々しただろうけど、それから16年。成長した母の子供である私が目の前に現れて、いい気分にならないのは当然で。
 男爵家では常に針の筵のように冷たい視線を浴びせられていた。しかし、男爵はいい生活をさせてやってるだろとばかりに私を放置。
 更には、半年後に貴族子女が通学を義務付けられている学園に通えと言われ、家庭教師をつけられた。

 夫人と異母兄が私に冷たい態度をとるのは、まあ仕方なしと我慢は出来る。
 だが、男爵は許さない。
 好き勝手胤を撒いたくせに後始末はおざなりだとか。何が我が家の恥を晒すなだ。つい最近まで平民として生活していて急に貴族だからそれらしくしろとか無理がある。正直、モゲればいいと思う。······失礼。

 こんな家、さっさと出て行ってやる!と必死に半年間学び、学園の2学年に編入した。
 学園は普段お目にかかる事が滅多にない高位貴族や王族方とコネをつくる絶好の場だ。
 男爵はコネを作るか、より好条件の相手を探してこいとほざいていたが、従うつもりなどさらさらない。むしろ、男爵が手を出せないようなところに就職をして独立したい。

 早く独立するために王城か高位貴族の屋敷の侍女になれれば、給料も平民として働くよりも断然良い。
 父さんと可愛い弟の為に頑張らねば。

 なんて意気込んだのはいいけど、編入したばかりだと言うのに周囲の視線はかなり冷たかった。
 やはり、庶民上がりの貴族もどきにはいい感情がないのだろうか。
 たまにしょんぼりしつつも、掲げた目標を降ろす気はなく、受けられる授業は片っ端から受けていた。
 そんな時におかしな光景を見た。

 ぼっちの私ですら知っているという、1人の可愛らしい女の子の周りに男が数人侍っているという集団かたまり。あれが噂に聞こえてきた平民出の男爵令嬢と高位貴族の子息達。
 子息達には婚約者がいるらしいが、あの男爵令嬢にかまけてばかりで婚約者を蔑ろにしているとか。婚約者である令嬢達が男爵令嬢に嫌がらせをしているとか。
 男爵令嬢は断れずにあの状況に置かれているのだろうか。
 いや、あの男爵令嬢はものすごく嬉しそう。いや、嬉しそうに見せている?
 あ、誰か令嬢が近づいて行った。
 ······何やら子息のひとりと揉めてるようだけど···。会話に加わっていない様子の男爵令嬢はプルプル震えている。
 令嬢が立ち去って行った。······あの女、勝ち誇った顔してる。これは黒だな。
 どちらから近づいたかはさておき、あの子息達を侍らせる状況は確実に楽しんでるのだろうか。令嬢がいた時は怯えて見せて、立ち去れば勝ち誇ったような表情なんて。
 ···家庭教師に、婚約者のいる異性に無闇矢鱈と近づくのは破廉恥だと最初に教わったが間違いだったか?
 !もしや、私が周囲に冷たい目で見られているのはあの女のせいでは?
 奇しくも私も平民出の男爵令嬢。
 同じ人種が増えたと思われたのではないか···?
 だとしたら許すまじ!私は男を侍らせる趣味はないし、むしろ好き勝手遊んで後始末もろくに出来ないものだと認識している。(基準は言わずもがな、父を名乗る男爵)

 勝手にひとりであの男爵令嬢を敵認定し、同じ人種だと思われたくないがためにさらに勉強に打ち込むことにした。

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