一括りにしないでください

椿森

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 ますます勉強に励んだおかげかは分からないけど、男爵家や子爵家のご令嬢方が声をかけてくれるようになった。
 その繋がりで、伯爵令嬢様とも知り合えた。
 この調子で、可能であれば王宮侍女に推薦してくれそうな人とも知り会えれば嬉しい。でも、知り合った伯爵令嬢様は気さくな方だったので、彼女の侍女として雇っていただけないか打診するのもいいかもしれない。
 将来のプランを状況に合わせて練り直しつつ、それなりの学園生活を満喫していた頃だった。

 入学して数ヶ月、明らかに高位貴族のご令嬢と思われる方に声をかけられた。

「少々お時間よろしいかしら」
「は、はい!」

 裏庭のベンチに座って休憩していたところ、急いで立ち上がりカーテシーをした。

「顔をお上げになって。わたくしはアルレンシア・サモアです。あなたにお聞きしたいことがありますの」
「ユーニス・ロスです。お声がけいただき、光栄です。私に答えられることでしたら何でもお聞きください」

 サモアといえば、確か···侯爵家だ。あ、しかも王太子様の婚約者様!
 ······でも、なんでそんな高貴な方がわざわざ声をかけるくださるなんて普通ではありえないのでは···?いや、もしや、あまりにも見苦しい言動があったとか?
 悪印象を持たれてるかもしれないなんて···就活に響いてしまう···!

 この間、数秒。
 家庭教師に淑女とは感情を表に出さず、常に微笑んでいろと散々に扱かれた。
 その扱きを思い出しながら、精一杯微笑む。

「······あの娘とは違うわね」

 思ったより小さな声で何かを呟いたサモア様は、何とも言えない、微妙な顔をしていた。それでも美しいけれど。

「···あの?」
「いいえ、ごめんなさね。ユーニスさん、男爵家に引き取られてから1年弱くらいかしら」
「ええと···はい、もうすぐ1年になります。進級の時期にあわせて編入いたしました」

 引き取られた時期を知られているのかと驚いた。

「あなた、中々頑張っているようね。ヘーゼルさんとはお知り合いよね、あなたのこと褒めていたわ」
「ありがとうございます。ヘーゼル様には本当に良くしていただきまして・・・ですが、私なぞまだまだです。サモア侯爵令嬢様の足元にすら及ばず······サモア侯爵令嬢様のような淑女になるべく精進する日々です」

 ヘーゼルとは何かと気にかけてくださるフィアロン伯爵令嬢様だ。
 正直に言えば、何をお2人で話されているのかと内心かなり冷や汗を滝のようにかいている。
 なんで?何を仰るつもりなんですか?!
 綺麗な人の見定めるような視線ってこわい!

「あらあら、そんなに怯えないで」
「い、いえ······申し訳ございません。そのようなつもりは」
「いいのよ。急に声をかけてしまったんだもの、驚いたでしょう?あら、それとわたくしのことはアルレンシアと呼んでくださいな」

 コロコロと笑うサモア様、いやアルレンシア様は美しいだけでなく非常に可愛らしい。女の私でもドキドキする。

「あ、ありがとうございます」
「肝心の要件を言ってないわね。······ユーニスさん、ドブソン男爵令嬢のことはどうお思いになるかしら」

 アルレンシア様は少し考えてから、周囲に視線を巡らせてから聞いてきた。
 確かにあまり大きな声では話せないな。

「···ドブソン様、ですか」
「思ったこと、率直にお話になって」
「え、と。少し、いえ、かなり言葉が悪くなってしまうのですが···」
「構わないわ」
「ありがとうございます。
 ドブソン様がおかれている状況は、正直に申しまして、気持ち悪いですね」

 私の言葉にアルレンシア様がパチクリと瞬きをした。可愛い。
 意外な言葉だったんだろうか。

「なんと申しますか・・・子息様方を侍らせて平気な顔をしているなんて相当神経図太いと思いますし、たかが女ひとりに集団で執着する男もたいがい頭おかし···失礼しました」
「構わないわ、続けてくれるかしら」
「はい···愛人にするとかならまだしも、皆さん正妻にしたいと噂で聞きました。そんなに彼女はすごいのかと周りに評判を伺ってもイマイチですし、私もそこまで出来ているつもりはありませんが私から見てもマナーがなってないどころか常識丸無視ですし、ああ、成績も奮わないそうですね。
 どこに魅力があって集まるんでしょうか?失礼な言い方になりますが、娼婦を生業にしている女性の方が断然魅力的です。
 それにドブソン様も何の裏打ちがあってあんなに自信があるんでしょうか
?爵位も低い、マナーも教養もない、見た目も···アルレンシア様に比べたらお子様体型ですよね。顔は確かに平民出としては可愛いかも知れませんが。
 そんなわからないことだらけで、気持ち悪く感じます」

 だいぶ余計なことを言った気がしないでもないけど、恨み半分が出てしまったのは致し方ないと思う。

「······ず、随分と否定的な見方をされているのね」

 呆れられてしまっただろうか。
 聞きようによっては嫉妬しているととられるかもしれない。

「ドブソン様が貴族となってからどれくらい経つかは存じませんが、あれはちょっと···」
「···そうね、淑女とは言い難いわね。ちなみに彼女は2年前に引き取られたそうよ」

 2年あってあれはないわー。
 顔が引きつったのがわかったのか、アルレンシア様は苦笑した。

「ごめんなさいね。彼女の後に同じような境遇のあなたが編入してきたものですから、皆警戒してしまって···」
「いえ、私が逆の立場でも同じように警戒したと思います」
「そう言ってくださると、心が軽くなるわ。そうだ、お詫びにはならないかもしれないけど、今度お茶会にお誘いしますわ」
「!よ、よろしいんですか?」
「ええ、あなたは良く学んでいるようですし、平民の生活についてもお伺いしてみたいわ」
「わ、私なんかでよろしければ是非!」

私は非常にこの時舞い上がっていた。
声をかけてもらえただけでも光栄なのに、お茶会!まで!
マナーを学び直さなくては!

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