生存率0%の未来世界からの脱出

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第一化け物発見

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「……!」
 目を開けると、灰色の曇り空が見える。

 こ、ここは……?

 周りを見渡しながら上半身を起こす。

 周囲は岩壁に囲まれ、その間に大きな洞窟が見える。

 立ち上がって制服に付いた砂を払う。

 地面にしばらく寝ていたようで、若干背中が痛い。

「……」
 改めて上を見上げると、曇り空が見える。しかし、私より遥かに高い岸壁な為、上るのが現実的ではない事が嫌でも分かる。


 ここはどこでしょうか……? さっきまで教室に居たのに、クラスメイトの皆さんは?


 人の気配は全く無く、風の音だけが聞こえる。

 とりあえず、連絡を取れるか確認してみましょう……

 漠然とした不安に襲われつつ、ポケットからスマホを取り出す。
 
 スマホのロックを外している途中で、アンテナが一つも経っていない事に気が付く。

 圏外ですか……困りました、これだと助けも呼べませんし、救助を待つべきでしょうか? 

 いや、あの状況からするに私と同じ状況になってる人が……世界中にいるはずですよね。そう考えると、連絡手段もない私が救助される確率は無いに等しい……となると、残る手段は……

 洞窟の方を向く。

 光源は一切なく、吸い込まれそうな暗闇が続いている。更に洞窟内に響く風の音が悪魔の唸り声のように聞こえてしまう。

 こ、これを一人で進むんですか……!

 スマホのライトで洞窟を照らすが、薄暗く、驚くほど心もとない。

 怖いですけど、ここに居ても仕方がないですし、行くしかありません! もしかしたら、人がいるかもしれませんし!

 勇気を出して洞窟に踏み込む。

 寒い……!

 洞窟内は冬の様な冷たさで、長袖のブレザーでも身が委縮してしまう。特にスカートの下半身から体温が奪われていく感覚が強い。

 風邪ひきそうです! 早くここから出ないといけないですね……

 真っ暗な洞窟を進んでいるが、相変わらず、私の足音しか響かない。

 ここで地震とか起きて閉じ込められたり、押しつぶされたりしないか? 本当に出口があるのか? 
 など、考えれば考えるほど、心が重くなる。

「……!?」
 最初は気のせいだと思っていたが、進む度に明らかに、生臭い悪臭が強くなっていっている。

 な、何の匂いでしょうか? 酷い匂いですね、動物の死骸でもあるのでしょうか? とりあえず、鼻を摘まみましょう……

 暗い、寒い、臭い、怖い……早く洞窟を抜けたいです! とりあえず、大人の人、できれば自衛隊や救助隊とかに会いたいですね……

「……ッ!?」
 戦慄が全身に駆け巡った。

 進む方向に男性の嗚咽が聞こえたからだ。

 進む方向は変わらず光がない。こんな状況だからどうしても人ならざる者の可能性を真っ先に連想してしまう。

 ひ、人の声がしますが……ゆ、幽霊とかではないですよね……?

 今すぐにでも引き返したくなったが、人の可能性を考えて進むことにした。

 人生で経験したことのないほど心臓は鼓動し、寒いのにも関わらず手と額から脂汗が滲み出る。

「……!」
 足を止める。

 スマホのライトの先に、制服姿の男が地面に顔をうずめているのが見えた。

「痛てぇよ……!」
「痛てぇよ……!!」
 背を向けて、嗚咽混じりの声を上げている。

 肩の力が抜けて、思わず安堵の息を吐く。

 制服からするに私と同じ学校の生徒ですね。生きている人で良かったです……ですが、どうしたのでしょうか? 怪我でもしたのでしょうか?


「あの……大丈夫でしょうか?」
 近づいて、声を掛ける。

 男子生徒は振り向く。

「……ッ!!」
 その姿を見て頭が真っ白になった。


「光が見えねぇんだ……! 顔中が痛てぇ!!」
 目、鼻、口の原型は無く顔が無い。骨らしき白い部分や筋肉組織が露出し、滝の様に激しく血を流している。

 腰が抜けて後ろに倒れてしまう。

 その際、スマホを手放してしまうが、不幸か幸いか、ライト側とは反対の方に地面に落ちた為、男子生徒の状態がはっきり見える。

「助けてくれ!!」
 悲鳴に近い声を上げながら、血の滴る手で私の方を掴もうとする。しかし、距離感がつかめていない様で、私のすぐ目の前の地面に手をかすめた。

「痛くて仕方がねえんだ!! 助けてくれ!!」
 ゾンビの様に這いつくばって徐々に接近してくる。

「……!!」
 思考回路が追い付かず、ただ震えるだけで動けずにいる。

「誰か!!!」
 目が無いのに、窪んだ赤黒い二つの穴が私を見ているような気がした。

 突然、男子生徒の体が浮遊する。

「誰だ!! 止めろ!!」
 手足を動かしながら必死に対抗する。

 男子生徒の頭に何かが振り落とされ、潰れる音が響く。

 私の頬に生暖かい液体の様な物が飛び散る。

「いてぇぇぇぇぇえぇああああああああ!!!!」
 絶叫を上げる。

 男子生徒の頭に振り落とされた物が抜けた。

 それは私の太ももぐらいある長方形の鉈だ。

 豚の様に肥大かしたブヨブヨとした腕と腹に、赤黒いエプロンを着ている。そして、人とかけ離れた切り株の断面図の様な丸い顔をしていた。

「いだい!! 止めてくれ!!」
 男子生徒は叫び声を上げる。

 しかし、化け物は私の頭ぐらいある手で鉈を振り上げ、再び下ろす。

 骨と肉の砕ける鈍い音と同時に、また、頭から飛び散る。

 悲鳴を上げ、そしてまた化け物は鉈を振り下ろす。

 悲鳴と骨と肉が潰れる音が何度も何度も繰り返される。

 男子生徒の頭は原型がない程ぐちゃぐちゃだ。

 頭が完全に潰れきって、ようやく悲鳴は聞こえない。しかし、手と足は激しく動いている。抵抗しているかのように……

 化け物は血の滴る男子生徒の体を肩に持ち上げて、私から離れていった。

 化け物が見えなくなってからどれぐらい経過したのか分からない……

 停止していた思考回路が徐々に回復し、理解してしまう。

「……ウッ!?」
 胃からこみ上げてくるものを手で口を押えるが、我慢するのは不可能だった。

 何度か激しく嘔吐する。

 震える手でスマホを拾い上げ、おぼつかない足で元の来た道を引き返す。

 洞窟を走り抜けて、地面に手を付く。

『いだい!! 止めてくれ!!』
 男子生徒の悲鳴と化け物によって頭が潰される光景がフラッシュバックする。

「ウッ……ッ!」
 再び強い吐き気に襲われたが、胃液しかでない。

 な、なんですか!? 何が起きているんですか!? 一体、私達は何処に飛ばされたのですか!?

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