大事に育てた畑を奪われたからこの村は見捨てることにした ~今さら許しを乞うても無駄なんだよ~(完)

みかん畑

文字の大きさ
59 / 118

59 頂点

しおりを挟む
「誰だよお前。名前を言えよ」

 アルニスが女を睨む。

「わいか? せやなー。起動したばかりで名前もないんやけど、勇者さんどない思います?」

 俺に振られても困る。
 神がスキルを届ける為に用意したNPCだろうか。
 それよりも――

「スキルを運んできたのか?」
「せやったせやった! まぁ、まずは見本を見せたるさかい、よう見とき?」
「だが、お前の戦力値は――」

 20しかないだろ。
 言い終わる前にアルニスが仕掛けた。

「君も姉上のレイプパーティーに誘ってやるよ。気絶してくれるかな」

 アルニスの手刀が女に迫る。
 だが、アルニスの拳は女の身体をすり抜けるだけだった。

 一体、今何が……。

「ふ、ふざけるな!」

 アルニスがガムシャラに拳を叩き込むが、全てすり抜けて女には一発も届かなかった。

「これが『色即是空』。存在を一時的に消すことで攻撃を空回りさせるスキルや。そしてこれが、『唯我独尊』っちゅうてな」

 実体化した女の拳がアルニスを捕らえる。
 しかし、彼我の戦力値の差は222。
 攻撃は命中するどころか、当ててもダメージを与えるに至らないはずだった。

 だが、女に腹部を殴られたアルニスが腹を抑えて蹲った。

「バカな……。ぼ、僕がこんな女に負けるはずが……」
「見ての通り、『唯我独尊』は格上の敵を殺す為のスキルやな。それともう一点、『六道輪廻』っちゅうスキルもあんねんけど、これは発動条件が自分の「死」やから使わんでええよな」

 ポン、と俺の肩を叩いてスキルが譲渡される。

「はーしんどかった。スキルの容量が大きすぎてわいが自壊する寸前やったわ。親父も人使い荒いなぁ。まあええわ、ほんで、わいはこの後どうしたらええんやろ? 分からへんから姫様の護衛一緒にしたるわ」
「いや、いいのか? 俺を手伝っても……」
「ん? 別にかまへんちゃう? 神様が直接干渉するんはルール違反やけど、わいは神様やあらへんし。いいとこ使い魔? とにかく親父が止めん限り遊ばせてもらうわ。『ドッペルゲンガー』ゆうて仲間のスキルを借りる能力もあんねん」

 超過剰な戦力が味方になってしまった。
 戦力値は低いが、これほど心強い味方もいない。

 一緒に姫を守るギルドマスターの戦力値は最高峰の120。
 二人で姫を守ってくれるとありがたい。

 俺は手に入った三つのスキルを確認する。

 『色即是空』は自分の身体を「無」の状態にして攻撃を避けるスキルだ。ただし、発動中はこちらからの攻撃も不可となる。それでも絶対回避のメリットはデカすぎる。

 『唯我独尊』は自分より格上の戦力値を持つ敵と対面している間、自分がその戦力値を常に+5上回るという壊れスキルだった。最強のバフだ。これ、魔王にも有効なんじゃないか? いや、アンチスキルを使われる可能性はあるか。相手が対抗策を持たなければそのまま勝利が確定するのが恐ろしいが。

 最後に、『六道輪廻』は死亡時に人間界に蘇生すると共に、自分の戦力値を+60するスキルだった。また、一度強化された戦力値はリセットされることもなく永続的に強化されたままらしい。その代わり、発動して復活するまでに60秒掛かるデメリットがあり、また、日に一度しか使用できないようだった。つまり24時間のインターバルは健在だということだ。また、このスキルをセットしていると自害の類はできなくなるらしい。

 変異体の代わりにスキルをくれると言っていたが、とんでもないのを三つもくれたな……。

「スキルっちゅうんは容量使うから、フツーの人間やとでかいスキルは一個しか入れられないんや。でもあんちゃんの容量は底が知れんくらいやったから、凄いのが三つも入れられたわけやな」
「ありがとう。お陰で何とか戦えそうだ」

 俺は『唯我独尊』を発動させる。

 俺の戦力値は247となった。
 アルニスの戦力値は242。

 『唯我独尊』を発動している間、装備による戦力値の強化は行われないらしい。
 だが、十分すぎる。目の前のクズ野郎を叩きのめしてやるにはな。

「アルニス……。レイナを輪姦させると言ったな。俺の女に手を出した奴は例外なくぶっ殺すことにしてるんだが、知ってたか?」
「ヒィィィィ……!」

 肌で感じたのだろうか? 明確な力の差を……。
 俺は奴の攻撃を避けながら近づき、股間を思いきり蹴り上げてやった。

「ああああぁぁぁぁ!!!!」
「レイナを殴って遊びたかったんだってな。お前に欠けてるものを教えてやろうか? 共感能力だ」

 徒手空拳のアルニスを拳で圧倒する。
 そして、最後にはアクアスを四連続で突き出して四肢を砕いてやった。

「あが……っ! お、お前ら、姉上はいい……。勇者を……殺せ」

 惨めに地を這いながらアルニスが命じる。

 俺は霊剣アクアスをアルニスの腰に突き立てた。

「ぎゃぁぁぁぁ!!!」

 アクアス、頼めるか?

『旦那様も残酷なことを考えるのじゃな』

 色即是空は俺が装備している剣なども「無」としてしまう。
 だが、床に突き立てた霊剣は装備を外された状態になる。

「王子を助けたいんだろ? 助けられるか試してみろよ」

 武器を手放した俺に騎士達が殺到した。が、誰一人として俺に触れることはできない。そして、一方的な攻撃が始まる。アルニスに突き刺さったアクアスが、水刃をばら撒き始めたのだ。

「うあぁぁぁ!!! 剣が独りでに!」
「なんで攻撃が当たんないんだよ!」

『んー。タクマに装備されてる時よりも威力が下がるのう。何より寂しいのじゃ』

 分かった。アクアスを悲しませることは俺の本意じゃない。

『旦那様は優しいのう』

「ギィィィ!?」

 アルニスの身体からアクアスを回収してやる。
 そして、俺は神竜斬を実体化の瞬間に放って騎士達を閃光の彼方に消した。
 一応、加減はしたから生きてはいるはずだ。

「勇者様……僕が……僕が間違ってました。だから助けてください……。私の負けです」
「いいや、まだ諦めるには早いんじゃないか? まだまだ罰は受けてもらうぞ」
「もう無理だぁ……」

 アルニスは完全に戦意を失って腰が砕けてる。
 いや、実際に砕けてるかもしれないが。
 何か匂うと思ったら王子がお漏らししていた。

「良かったな。最後に痛みに共感できて」
「あ、悪魔ぁ……」
「悪魔はお前だろうが」

 頭を踏み潰して気絶させる。

 残りはアルジャン、そしてアルニス一派だな。
 連中の罪を暴かせてもらおう。

「見ろ。ここにダイババが書き残してくれたリストがある。ここに書かれているのはダイババの奴隷売買に加担した連中の名前だ。当然、アルニスとアルジャンの名前もある。俺達はこのリストを元に簡易裁判を行うが、まだ抗う奴はいるか?」
「私も……私も参りました! 老い先短い老骨にどうか寛大なご慈悲を――」
「うるせえよ」

 アルジャンは顔面骨折パンチの餌食にした。

「あが……っ」
「てめえの下らない欲望の為にどれだけ他人を犠牲にしてんだ」

 思いきりアルジャンの男の部分を踏み潰してやる。

「……イギィィィィ!?」

 運が良ければポーションで治るんだ。お前も痛みを知れ。

 さて、ようやくこれで少しは片付いたかもな。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...