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73 新領主着任(下)
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トルニアが口を開けて驚いている。
まあ、国王陛下からたんまりと褒賞金を貰えたし、アルジャンが溜め込んでいた私財も領主の館から見つかっている。三ヵ月くらいは余裕で耐えられるくらいの貯えはあるのだ。
「あ、失礼しました……。呆けてしまって……。まさかこんなにも我々に寄り添ってくださるとは……。あまりに今までの領主と違いすぎて……」
「それと、税のことで嘆願してきたのはロゼアも同じだ。彼女は自分の命も顧みず、領民を救ってくれるならば自分の命はいらない、全てを差し出すと申し出てきた。無論、俺は紳士だから悪戯に女性に手を出すことはしないが――」
ドッと領民たちが沸いた。いや、冗談のつもりで言ったんじゃないんだが。
「とにかく、彼女も領民のことを思っていたのは同じだ。あまり怒らないでやってくれ、トルニア……。トルニア?」
「あ、はい……。領主様が素敵すぎて……。あ、いえ、何でもないです!」
トルニアの頬が赤い。まさか……いや、そんな訳ないだろ。
領主の仕事をするだけで女が増えていては仕事にならない。
俺の自意識過剰だな。
「タクマ侯爵、万歳! 新領主様、万歳!」
誰からともなく俺を称える声が広がり、皆が万歳三唱を始める。
誰もが感謝しているが、よほど辛かったのだと思う。俺は領民に餓死して欲しいとは思わないし、あんなキツイ重税だと逆に商売の効率が下がって税収が下がってしまう。何でも搾り取ればいいというものではないのだ。
「俺は領地の運営については経験不足な面があるかもしれないが、皆の力にはなりたいと思っている。ロゼア、引き続き力を貸してくれるな?」
「はい、私は自決した先代秘書である父の意思を継ぎ、この身をアルバトロム領へ捧げると決めておりますので」
「トルニア達も引き続き頼む。もし領民会議で困りごとが上がったら、お前達が領民と領主の橋渡し役になってくれるとありがたい」
「あ、はい。喜んで……。というか、我々の話も聞いて頂けるのですね?」
「それはそうだろう。領民の苦しみを取り除けないなら、俺達はただ甘い汁を啜るだけのクズになる。何でも相談するといい」
「……ッ! はい!」
領地の運営についてはよく分かってないが、人間のコミュニケーションの基本は相手の話を聞いてメリットを示してやることだ。そうしておけば、よほど相手の性根が腐ってなければ良好な関係は築けると思う。
魔王城の女幹部三人衆はどれだけメリットを提示しても話を聞かなかったけどな……。
「あの、ところで領主様は奴隷売買の阻止に一役買っておられましたよね?」
「ああ、一人取り逃がした奴がいるんだけどな」
「それは、コマネシオンという商人のことで間違いないでしょうか?」
まさか名前が出てくるとは思わなかった。
かつてアリシアの父を殺し、奴隷として売っていた商人だ。
エリスや幼メイド達も、元々はコマネシオンの売り物だった。
この手で報いを受けさせてやりたかったが、アルニスを捕まえた時には店を畳んで逃げ出した後だったんだ。
その後、ついにラムネアで見つかることはなかったのだが。
「どこにいるのか知っているのか?」
「あいつはラクシア帝国から来た商人なんです。元々黒い噂の絶えない奴でしたが、実は先日、帝国で見かけたという商人がいまして」
「それは貴重な情報だな。もし本当なら、引き渡すよう帝国へ要請できるかもしれない」
「本当ですか!?」
トルニアが身を乗り出してくる。
「実は、あいつが王都から逃げ去る際に、私の弟子を奴隷にして本国へ連れ帰っているんです」
「詳しい事情を聞こう。陛下に相談して帝国と交渉してみたい」
『そんなことしてる余裕あるのかニャー』
管理神ラリエの念話が頭に響いた。
まさか、このタイミングでくるか。
『今から一時間後、戦ってもらうね! タクマのデビュー戦、大勢の神が見守ってるから頑張るんだよー! もちろん、創造神様も見てるから、ガツンとやっちゃってね! 破壊神でもないタクマが外道神を追い返したら、皆ビックリしちゃうかも! 楽しみぃ~』
遊びじゃないんだけどな……。
『それじゃ、また後でね! ブチュー!』
最後までハイテンションのまま、ラリエの声は遠ざかっていった。
「あの、領主様、何かありましたか?」
「急だが勇者としての仕事ができた。すまないが、この話の続きはまた今度に……」
「あ、はい、是非よろしくお願いいたします!」
「集まってくれた皆もすまないな。俺はこれから勇者として邪悪なる神に戦いを挑む。どうか勝利を願っていてくれ」
「タクマ様、ご武運をお祈りします。ですから、必ず戻ってきてください。あなたは皆の希望です」
ロゼアが強く祈るように手を組んでくる。
「安心しろ。俺は負けない。ではさらばだ」
カナミとアリシアに目配せして空へ飛び経つ。
『隠蔽』を使用していたトワも地上から俺を見ているが、誰も気づいていない。
と、思いきやカナミはトワが立っている場所をハッキリと見た。
戦力値の関係でカナミには効果が薄いのかもな。
俺は転移魔法を使い、一度屋敷へと飛んだ。
まあ、国王陛下からたんまりと褒賞金を貰えたし、アルジャンが溜め込んでいた私財も領主の館から見つかっている。三ヵ月くらいは余裕で耐えられるくらいの貯えはあるのだ。
「あ、失礼しました……。呆けてしまって……。まさかこんなにも我々に寄り添ってくださるとは……。あまりに今までの領主と違いすぎて……」
「それと、税のことで嘆願してきたのはロゼアも同じだ。彼女は自分の命も顧みず、領民を救ってくれるならば自分の命はいらない、全てを差し出すと申し出てきた。無論、俺は紳士だから悪戯に女性に手を出すことはしないが――」
ドッと領民たちが沸いた。いや、冗談のつもりで言ったんじゃないんだが。
「とにかく、彼女も領民のことを思っていたのは同じだ。あまり怒らないでやってくれ、トルニア……。トルニア?」
「あ、はい……。領主様が素敵すぎて……。あ、いえ、何でもないです!」
トルニアの頬が赤い。まさか……いや、そんな訳ないだろ。
領主の仕事をするだけで女が増えていては仕事にならない。
俺の自意識過剰だな。
「タクマ侯爵、万歳! 新領主様、万歳!」
誰からともなく俺を称える声が広がり、皆が万歳三唱を始める。
誰もが感謝しているが、よほど辛かったのだと思う。俺は領民に餓死して欲しいとは思わないし、あんなキツイ重税だと逆に商売の効率が下がって税収が下がってしまう。何でも搾り取ればいいというものではないのだ。
「俺は領地の運営については経験不足な面があるかもしれないが、皆の力にはなりたいと思っている。ロゼア、引き続き力を貸してくれるな?」
「はい、私は自決した先代秘書である父の意思を継ぎ、この身をアルバトロム領へ捧げると決めておりますので」
「トルニア達も引き続き頼む。もし領民会議で困りごとが上がったら、お前達が領民と領主の橋渡し役になってくれるとありがたい」
「あ、はい。喜んで……。というか、我々の話も聞いて頂けるのですね?」
「それはそうだろう。領民の苦しみを取り除けないなら、俺達はただ甘い汁を啜るだけのクズになる。何でも相談するといい」
「……ッ! はい!」
領地の運営についてはよく分かってないが、人間のコミュニケーションの基本は相手の話を聞いてメリットを示してやることだ。そうしておけば、よほど相手の性根が腐ってなければ良好な関係は築けると思う。
魔王城の女幹部三人衆はどれだけメリットを提示しても話を聞かなかったけどな……。
「あの、ところで領主様は奴隷売買の阻止に一役買っておられましたよね?」
「ああ、一人取り逃がした奴がいるんだけどな」
「それは、コマネシオンという商人のことで間違いないでしょうか?」
まさか名前が出てくるとは思わなかった。
かつてアリシアの父を殺し、奴隷として売っていた商人だ。
エリスや幼メイド達も、元々はコマネシオンの売り物だった。
この手で報いを受けさせてやりたかったが、アルニスを捕まえた時には店を畳んで逃げ出した後だったんだ。
その後、ついにラムネアで見つかることはなかったのだが。
「どこにいるのか知っているのか?」
「あいつはラクシア帝国から来た商人なんです。元々黒い噂の絶えない奴でしたが、実は先日、帝国で見かけたという商人がいまして」
「それは貴重な情報だな。もし本当なら、引き渡すよう帝国へ要請できるかもしれない」
「本当ですか!?」
トルニアが身を乗り出してくる。
「実は、あいつが王都から逃げ去る際に、私の弟子を奴隷にして本国へ連れ帰っているんです」
「詳しい事情を聞こう。陛下に相談して帝国と交渉してみたい」
『そんなことしてる余裕あるのかニャー』
管理神ラリエの念話が頭に響いた。
まさか、このタイミングでくるか。
『今から一時間後、戦ってもらうね! タクマのデビュー戦、大勢の神が見守ってるから頑張るんだよー! もちろん、創造神様も見てるから、ガツンとやっちゃってね! 破壊神でもないタクマが外道神を追い返したら、皆ビックリしちゃうかも! 楽しみぃ~』
遊びじゃないんだけどな……。
『それじゃ、また後でね! ブチュー!』
最後までハイテンションのまま、ラリエの声は遠ざかっていった。
「あの、領主様、何かありましたか?」
「急だが勇者としての仕事ができた。すまないが、この話の続きはまた今度に……」
「あ、はい、是非よろしくお願いいたします!」
「集まってくれた皆もすまないな。俺はこれから勇者として邪悪なる神に戦いを挑む。どうか勝利を願っていてくれ」
「タクマ様、ご武運をお祈りします。ですから、必ず戻ってきてください。あなたは皆の希望です」
ロゼアが強く祈るように手を組んでくる。
「安心しろ。俺は負けない。ではさらばだ」
カナミとアリシアに目配せして空へ飛び経つ。
『隠蔽』を使用していたトワも地上から俺を見ているが、誰も気づいていない。
と、思いきやカナミはトワが立っている場所をハッキリと見た。
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俺は転移魔法を使い、一度屋敷へと飛んだ。
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