妹に手を出したというカルマを背負って転生する羽目になったけど、スキルを持ってるの俺だけなんで割と余裕な世界でした

みかん畑

文字の大きさ
33 / 40

1.脅迫

しおりを挟む
 魔神王を下し、穏やかな日常が戻ってくると思っていた俺だが、アシル・カバネルが抱えているヤバい業は、遅効性の毒のように俺を襲った。

 アシルが強姦したという妹が、面会を求めてきたのである。
 実家からは一度顔を出すよう手紙が届いており、俺自身も家督を継ぐために戻るつもりではいた。

 しかし、救世主になって多忙な日々を過ごしていた俺は、里帰りを先延ばしにし続けていた。その結果、妹のアメリーが『謝罪しなければあなたの罪を全て白日の下に晒します』という脅迫めいた手紙を送りつけてくるに至った。

 身に覚えのない罪ではあるものの、俺にとっては真偽など確かめようもないことだ。

 自分を強姦しておきながら、救世主として成り上がり、暴走した王子を止めた男。
 妹がどのように今のアシルを捉えているのか。それは、会って確かめるしかない。

「リーナ、ついてきてくれ。俺、一人じゃ帰れる気がしないんだ」
「分かりました。一緒に帰りましょうね」

 とにかく甘えさせてくれるリーナである。

「あなた、先週までは一人で決着をつけるとか息巻いてたじゃない。結局リーナを連れてくの?」
「ノーコメントで」

 事務所を通してくれと言わんばかりの態度を取ったら、エレナは腰に手を当ててジッと俺を睨んできた。

「アシルは残機があるからいいけど、リーナの命は一つしかないんだからね? 怪我なんてさせたらタダじゃおかないから」
「うっ……」
「きっと大丈夫ですよ。何かあったら治癒してくれますもんね?」
「いっそのこと、妹を闇討ちする訳にはいかないよな」
「良心が許すなら好きにすれば?」
「冗談だよ」

 悪いのは(たぶん)本来のアシルで、アメリーは被害者だろうし。

「ところで、エレナは来てくれないのか?」
「行きたいのは山々だけど、女を2人も連れてったら話がややこしくなるじゃない。謝罪する時に女連れとかありえないのに、それが2人になったらいよいよあなた刺されるわよ?」
「それもそうだな」
「せっかくだし、今回は2人でゆっくり過ごしてきたら?」
「エレナさん、ありがとうございます。私、アシル様と2人きりで出かけるの久しぶりです」

 エレナがヨシヨシと頭を撫でると、リーナは満面の笑みを浮かべた。

(……可愛い)

 家庭環境的に甘やかされることに慣れてないリーナは、エレナのことを姉のように慕っている。
 最初は身分の差という壁があった2人だが、今では仲睦まじい姉妹のようだ。

 そういえば、俺とエレナは先に知り合ってたから、2人きりの思い出をたくさん持っている。
 だけど、リーナは俺とエレナに気遣ってばかりで、そういった機会を得られていなかった。
 単純に今までが忙しすぎたというのもあるが、それは言い訳だろう。

 娶ると決めた以上は、彼女達を幸せにする義務があるし、幸せになってほしいと思う。

(本当は俺が気を回すべきだったな)

 エレナの気配りには頭が下がる思いだ。
 本当にありがたい。

「俺がいない間、エレナは何をするんだ?」
「少し魔法の勉強でもしようかしら。得意な分野ではあなたの役に立ちたいし」
「今でも十分助けられてるよ」
「……うん。でも、もっと色々なところで支えになりたいの」

 なんて愛情深さだ。献身において、エレナの右に出る者はいないかもしれない。

「気をつけて行ってきてね?」
「分かってるさ。そう心配するな」
「あんな思いは二度としたくないから……」

 一カ月前にあったレオンとの戦いで、俺は一度命を落とした。
 身体に神獣を降ろすという無茶をしたことで、自壊を余儀なくされたんだ。

 今の俺があるのは、女神の慈悲のお陰だ。

「もうあんな思いはさせない」
「ええ。リーナのこと頼んだわよ」

 アシルの実家は俺の記憶にないから、一発で転移することができない。
 幸い、乗合馬車の便は出ているようなので、移動手段として活用しよう。

 実家に戻ることを決めてから3日後、俺とリーナは馬車に揺られていた。

「こんなところ、公爵に見られたら不味いよな。リーナを乗合馬車に乗せるなんて」
「でも、たくさんいちゃつけますよ?」

 可愛いリーナの肩を抱く。

「アシル様が盗賊を倒してくれたお陰で、馬車の往来が増えましたね。カバネル領との行き来も増えたので、向こうの領民も感謝して見直してるんじゃないですか?」
「いや、無理だと思う。だって、妹を……だぞ?」

 どれだけ善行を積んだところで、実の妹を強姦した鬼畜に感謝しようとは思わないだろう。
 今は噂レベルでしかないが、今後アメリーが表舞台に立つようなことがあれば、俺は一気に表舞台から遠ざかるかもしれない。

 俺だけならいいが、エレナとリーナに害が及ぶようなことは避けないといけないな。

「納得のいく話し合いになるといいですね」
「本当にな」
「何があっても私達は味方ですから」

 エレナも、という意味合いだろう。
 俺はリーナの頬にキスをした。

『リア充爆発しろ!』

 馬車内でそんな空気を察知したので、これ以上は自重するとしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

処理中です...