妹に手を出したというカルマを背負って転生する羽目になったけど、スキルを持ってるの俺だけなんで割と余裕な世界でした

みかん畑

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5.死霊

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「は……?」

 俺とリーナはベッドで乱れていたままの格好で、領主邸に転移させられた。

「え……嘘……」

 呆然としたアメリーの声が聞こえ、全力で俺は衣服を整えた。リーナに至っては全裸なので、俺が壁になるしかなかった。

「すみません。父を説得しようとしたのですが、無視されてしまって……。お父様が書斎に篭もってたので、今ならタイミングがいいと思って呼んでしまいました」
「まだ時間に猶予があると思って、その、愛し合ってたんだ」
「恋人同士なので当然です。邪魔をしてごめんなさい。ところで、リーナ様はどうしてお兄様をご主人様と――」
「あなたにはまだ早いです!」

 公爵令嬢の声でピシャリと質問を遮断した。
 貫禄があるが、格好は全裸なので今部屋にメイドが入ってきたら変質者だと思われそうだ。

「メイド服があるはずなので持ってきます」
「いや、聖剣で俺がドレスを持ってくるよ」
「ここで着替えるのは恥ずかしいので一度送り届けていただけますか?」
「あ、うん。そうだな。そうしよう」

 無言の圧を感じて、宿屋に転移する。

 リーナは涙目でドレスを着た。

「本当にごめんな?」
「あんな破廉恥な所を見られるなんて、一生の不覚です」

 そんなやり取りがあった後、再度転移で領主邸に戻る。
 アメリーは再び謝ってきたが、俺の下半身が暴走した結果なので責任は俺にある。

「さて、早いところ用事を済ませよう」

 母オディルはベッドで横になっている。
 悪夢でも見ているのか、苦しげな顔だ。

 俺はオディルに手をかざして『完全治癒』を使用した。
 あらゆる病を癒す魔法は、しかし効力を発揮しなかった。

「治りましたか?」
「アメリー、母さんはどういう容態なんだ? 病が原因じゃないらしい」
「そんな……」

 不安になるアメリーの腕を引いて後ろに匿う。
 今、微かに危険感知が働いた。

「魔物の仕業か。出てこい。母さんに憑いてるんだろ?」
「くっくっく。お前の母親じゃないだろう」

 迷宮でよく見かける魔素が、オディルの身体から浮かび上がって形を成した。
 魔素は、明確にアシルの姿を取った。

「え、どうしてお兄様が」
「どうしたもクソもねえよ! このクソ野郎が俺の身体を奪ったせいで、俺は霊体になっちまったんだろうが!」

 ステータスを見ると、レイス(アシル)という表示が出た。
 目の前にいるのは魔物だが、本来のアシルの魂ということになる。

 ずっと疑問だった。俺の身体の本来の持ち主だったアシルが、どこへ消えたのか。
 まさかこんな形で知ることになるとはな。

「ここにいりゃいつか会えると思ってたぜ。さあ、身体を返しやがれ! 救世主!」

 レイスが突っ込んできたので、俺は『万魔調伏』のスキルを使った。
 これは魔力や魔素を従えるスキルで、魔物に使うと身体をコントロールすることができる。
 身動きを封じられたレイスは、苦しげに呻いた。

「何しやがった! 身体が動かねえ……!」
「アメリー、こいつをどうするか決めたい。パトリス侯爵を呼んできてくれ」
「は、はい!」

 念のため、オーラのスキルで全員の身体を保護する。

「つええ……。俺の身体のはずなのに、なんでそんなに強いんだ」
「お前、妹を強姦したらしいな。どうしてそんなことをしたんだ」
「はぁ? 真面目で生意気だったから分からせてやったんだよ」
「下種が」

 レイスを跪かせ、頭を思いきり踏み潰す。

「ぎゃぁぁぁ!!!!」
「アメリーが受けた痛みはこんなものじゃないぞ」
「よせ! やめろ!」

 オーラで保護した足で何度も踏みつける。
 もう一度頭を踏み潰そうとしたところで、パトリスとアメリーが戻ってきた。

「なんだ? なぜアシルが2人いる」
「こっちの悪霊が本来のアシルです。私はアシルの身体を借りた別人なんです。世界を救う為に女神がそうしました」

 雑な説明だったが、状況から侯爵は悟ったらしい。
 ただ一言、「消してしまえ」と切り捨てた。

「おい! てめえの息子を殺すのかよ!」
「消えてくれて構わん」
「ふざけやがって! おいアメリー! 可愛がってやったんだからこいつらを止めろよ!」

 アメリーが俺に向かって頭を下げる。

「お願いします。一刻も早くアレを消し去ってください」
「どいつもこいつも……! てめえら全員ぶっ殺してやる!」
「不可能だな」

 俺は新しく得た『封印術』のスキルでレイスの持っていた全魔力を封じた。

「俺の魔力が……そんな馬鹿な! 消える……消えちま……」

 呆気なくカタがついた。低俗な魔物だったな。

「アメリー、仇は取ったぞ」
「ありがとうございます……」
「パトリス侯爵、これで奥方は回復されるはずです」
「そうか。お前、思ったより強くなったな」

 妻が回復すると聞いても、侯爵は微塵も興味を示さなかった。
 こんな男に家族を持つ資格があるのだろうか?
 そんなことを考えてしまった。
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