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5 三度目の正直
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目が覚めるとそこはロードオブザリングに出てきそうな城の中だった。
「召喚の儀は成りました。勇者よ、どうかあなたの力をこの国の為に役立ててください」
「「は?」」
二人の声が重なる。
俺は何も知りませんという顔で反応した。
前回は冷静すぎたせいで疑われたからな……。
怪しまれないよう、細心の注意を払う。
「おかしいですね。私が召喚した勇者は一人のはずですが……」
「何かの手違いでしょうな」
「なるほど……。私が召喚したのは、彼だけです」
そう言って女王が指したのは、少年だった。
このやり取りも何度も見たものだ。
「しかし、関係のない一般人まで巻き込んでしまったようです」
「え!? じゃあ、このオッサンが巻き込まれたって認識でオーケー?」
ここまでも既定路線だ。
どう抗っても筋書きが変えられないことは分かってる。
だったら、変に修正せず流れに身を委ねるだけだ。
無駄な労力は使いたくない。
「ここから先は勇者にしか聞かせられない話になりますので、部外者のあなた方は退室してください」
「はい。分かりました……。失礼いたします……」
落ち込んでいる風を装う。
特にボロは出さなかったはずだ。
無事にこの場を切り抜けられたと思ったが、認識が甘かったようだ。
騎士の男が「怪しいな」と呟いた。
「本来、召喚される勇者は一人だったはずだ。それが、二人に増えた。片方は勇者で確定している。ではもう片方は何者だ?」
どうしてこの男は毎回ちょっかいをかけてくるんだ? 俺に恨みでも持ってるのか?
「どうした。なぜ黙り込む。素直に答えて困ることでもあるのか?」
「違いますよ。驚きすぎて言葉が出なかっただけです」
「……妙に冷静だな。やはりこの状況は不自然すぎる。貴様は女王陛下の召喚魔法に乗じて王宮に潜入した間者に違いない」
「なんでお前はそうなるんだよ!」
騎士の命令に従って、兵士達が殺到してくる。
「ご愁傷様」
少年に助けを求める気などなかったが、はなっから助けてくれる気はなさそうだ。
(こうなったら、精霊に頼るしかない!)
「精霊よ、我が魔力と引き換えに百年の契約を願う!」
叫ぶ。瞬間、俺の目の前に六芒星が出現した。
「……ほう。やはり魔術師か。しかし、精霊召喚とは舐めた真似をしてくれる。この土壇場で召喚に応じる精霊など――」
『我、汝の呼びかけに応じ、契約に応じよう』
六枚の羽根を持つ少女が六芒星から現れ、サファイアの瞳で謁見の間にいる者達を睥睨した。見た目には幼さがあるが、纏っている空気は上位種としての威厳を感じさせるものだ。
「私はアイス。上級精霊を統べる精霊の王です」
「この場を切り抜ける為に協力してくれ!」
「馬鹿な……。精霊王だと……。この世界に四柱しかいない精霊の王がなぜ……」
騎士が凍り付いたように動けなくなっている。
いや、明らかにヤバいオーラが出てるし、女王でさえも金魚みたいに口をパクパクさせるだけで指示を出せていない。
(……凄い当たりを引いたか? いや、ある意味ハズレだったりして)
「本来、精霊は魔法を与えるだけで直接行使をしたりはしません。魔法を与えた時点で契約は終了なのですから」
「そういう説教っぽいのは後で頼む!」
「……余裕がないですね。マスター、魔力をお借りします。地上に召喚された精霊は、主の魔力でしか動けませんので」
余裕がなくてすみませんねえ!
でももう大量の兵士が殺到してきてますから!
ひーふーみーもう数えらんねえ!
「氷の棺に抱かれて眠れ。アイスコフィン」
アイスが詠唱を終えた瞬間、謁見の間が冷たい霜に覆われた。俺に殺到していた大量の兵士達は、突如召喚された氷に飲み込まれ、静止している。俺の魔力を使ったようだが、凄まじい威力だ。
「え……。もしかして殺した?」
「今はまだ仮死状態です。ただ、放っておけば確実に凍え死ぬでしょう」
「き、貴様ら……!」
初めて騎士の顔に焦りが見えた。部下達を一瞬の内に氷漬けにされてしまったのだから当然なのだろうが。
「まだ続けますか? マスターに仇名すというなら、こちらも本気で臨みますが」
「邪悪な侵入者共め……!」
「おやめなさい、元帥。まだ私達は彼らの話を聞いてません。そもそもなぜ争う必要があるのでしょうか?」
女王が玉座から立ち上がり、頭を下げた。
「女王陛下……!?」
「この度は配下の者が先走った真似をしていまい、申し訳ありませんでした。どうか話し合うチャンスをいただけないでしょうか。私としては初めから争うつもりも、あなた方を傷つけるつもりもないのです」
こんな流れは初めてだ。というか、女王の言葉には思いっきり嘘が含まれている。だって、今までどんなに俺が泣き叫んで懇願しても兵を引き上げようとしなかったからだ……! このクソビッチが! 都合の悪い時だけ善人面してんじゃねえ!
「マスター、この者らをどうしますか?」
「ひとまずは話を聞かせてもらおう。ただ、もし相手が敵対的な素振りを見せたら、その時は加減しなくていい。この城ごとあいつらの棺桶にしてくれ」
「承知しました。その代わり、あとで魔法を覚えてもらいますよ? 精霊の契約は魔法を与えるところまでです」
釘を刺してくるなぁ。まあ、俺の方が非常識なんだろうけど。
「話を聞いてくださりありがとうございます。私達の間には不幸な行き違いがあったと思います。ドーグも頭を下げなさい」
「は……っ!」
絶対に処刑するマンの元帥が頭を下げる。
「この度は事情も聞かず拘束しようとしてすまなかった」
「拘束? 拷問しようとしたの間違いじゃないか?」
「まさかそのようなことは断じて……! 我々はそのような野蛮な解決を求めません!」
嘘つけや! お前のせいでこちとら三度目の人生なんだぞ! ざけんなクズが!
言いたいことは山のようにあるが、今ここでぶちまけても時間の無駄だ。
「謝罪を受け入れよう。ただし、次はないからな」
「ありがとうございます!」
ドーグが深々と頭を下げる。腹立たしいが、今はこれで溜飲を下げよう。
「アイスさん、そんな奴より俺と来ないっすか?」
「え……?」
ユウスケの奴が、堂々と俺の精霊を口説き始めた。
「召喚の儀は成りました。勇者よ、どうかあなたの力をこの国の為に役立ててください」
「「は?」」
二人の声が重なる。
俺は何も知りませんという顔で反応した。
前回は冷静すぎたせいで疑われたからな……。
怪しまれないよう、細心の注意を払う。
「おかしいですね。私が召喚した勇者は一人のはずですが……」
「何かの手違いでしょうな」
「なるほど……。私が召喚したのは、彼だけです」
そう言って女王が指したのは、少年だった。
このやり取りも何度も見たものだ。
「しかし、関係のない一般人まで巻き込んでしまったようです」
「え!? じゃあ、このオッサンが巻き込まれたって認識でオーケー?」
ここまでも既定路線だ。
どう抗っても筋書きが変えられないことは分かってる。
だったら、変に修正せず流れに身を委ねるだけだ。
無駄な労力は使いたくない。
「ここから先は勇者にしか聞かせられない話になりますので、部外者のあなた方は退室してください」
「はい。分かりました……。失礼いたします……」
落ち込んでいる風を装う。
特にボロは出さなかったはずだ。
無事にこの場を切り抜けられたと思ったが、認識が甘かったようだ。
騎士の男が「怪しいな」と呟いた。
「本来、召喚される勇者は一人だったはずだ。それが、二人に増えた。片方は勇者で確定している。ではもう片方は何者だ?」
どうしてこの男は毎回ちょっかいをかけてくるんだ? 俺に恨みでも持ってるのか?
「どうした。なぜ黙り込む。素直に答えて困ることでもあるのか?」
「違いますよ。驚きすぎて言葉が出なかっただけです」
「……妙に冷静だな。やはりこの状況は不自然すぎる。貴様は女王陛下の召喚魔法に乗じて王宮に潜入した間者に違いない」
「なんでお前はそうなるんだよ!」
騎士の命令に従って、兵士達が殺到してくる。
「ご愁傷様」
少年に助けを求める気などなかったが、はなっから助けてくれる気はなさそうだ。
(こうなったら、精霊に頼るしかない!)
「精霊よ、我が魔力と引き換えに百年の契約を願う!」
叫ぶ。瞬間、俺の目の前に六芒星が出現した。
「……ほう。やはり魔術師か。しかし、精霊召喚とは舐めた真似をしてくれる。この土壇場で召喚に応じる精霊など――」
『我、汝の呼びかけに応じ、契約に応じよう』
六枚の羽根を持つ少女が六芒星から現れ、サファイアの瞳で謁見の間にいる者達を睥睨した。見た目には幼さがあるが、纏っている空気は上位種としての威厳を感じさせるものだ。
「私はアイス。上級精霊を統べる精霊の王です」
「この場を切り抜ける為に協力してくれ!」
「馬鹿な……。精霊王だと……。この世界に四柱しかいない精霊の王がなぜ……」
騎士が凍り付いたように動けなくなっている。
いや、明らかにヤバいオーラが出てるし、女王でさえも金魚みたいに口をパクパクさせるだけで指示を出せていない。
(……凄い当たりを引いたか? いや、ある意味ハズレだったりして)
「本来、精霊は魔法を与えるだけで直接行使をしたりはしません。魔法を与えた時点で契約は終了なのですから」
「そういう説教っぽいのは後で頼む!」
「……余裕がないですね。マスター、魔力をお借りします。地上に召喚された精霊は、主の魔力でしか動けませんので」
余裕がなくてすみませんねえ!
でももう大量の兵士が殺到してきてますから!
ひーふーみーもう数えらんねえ!
「氷の棺に抱かれて眠れ。アイスコフィン」
アイスが詠唱を終えた瞬間、謁見の間が冷たい霜に覆われた。俺に殺到していた大量の兵士達は、突如召喚された氷に飲み込まれ、静止している。俺の魔力を使ったようだが、凄まじい威力だ。
「え……。もしかして殺した?」
「今はまだ仮死状態です。ただ、放っておけば確実に凍え死ぬでしょう」
「き、貴様ら……!」
初めて騎士の顔に焦りが見えた。部下達を一瞬の内に氷漬けにされてしまったのだから当然なのだろうが。
「まだ続けますか? マスターに仇名すというなら、こちらも本気で臨みますが」
「邪悪な侵入者共め……!」
「おやめなさい、元帥。まだ私達は彼らの話を聞いてません。そもそもなぜ争う必要があるのでしょうか?」
女王が玉座から立ち上がり、頭を下げた。
「女王陛下……!?」
「この度は配下の者が先走った真似をしていまい、申し訳ありませんでした。どうか話し合うチャンスをいただけないでしょうか。私としては初めから争うつもりも、あなた方を傷つけるつもりもないのです」
こんな流れは初めてだ。というか、女王の言葉には思いっきり嘘が含まれている。だって、今までどんなに俺が泣き叫んで懇願しても兵を引き上げようとしなかったからだ……! このクソビッチが! 都合の悪い時だけ善人面してんじゃねえ!
「マスター、この者らをどうしますか?」
「ひとまずは話を聞かせてもらおう。ただ、もし相手が敵対的な素振りを見せたら、その時は加減しなくていい。この城ごとあいつらの棺桶にしてくれ」
「承知しました。その代わり、あとで魔法を覚えてもらいますよ? 精霊の契約は魔法を与えるところまでです」
釘を刺してくるなぁ。まあ、俺の方が非常識なんだろうけど。
「話を聞いてくださりありがとうございます。私達の間には不幸な行き違いがあったと思います。ドーグも頭を下げなさい」
「は……っ!」
絶対に処刑するマンの元帥が頭を下げる。
「この度は事情も聞かず拘束しようとしてすまなかった」
「拘束? 拷問しようとしたの間違いじゃないか?」
「まさかそのようなことは断じて……! 我々はそのような野蛮な解決を求めません!」
嘘つけや! お前のせいでこちとら三度目の人生なんだぞ! ざけんなクズが!
言いたいことは山のようにあるが、今ここでぶちまけても時間の無駄だ。
「謝罪を受け入れよう。ただし、次はないからな」
「ありがとうございます!」
ドーグが深々と頭を下げる。腹立たしいが、今はこれで溜飲を下げよう。
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