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11 魔人
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「そういえば、誰も気づいてないようだけど元帥は魔人よ」
「……は?」
部屋で夕食を取っていると、唐突にフレアが告げた。
「一国の元帥が魔人で、誰も気づかないなんてことあるのか?」
「魔人を見た目で区別するのは不可能なのよ。彼らを区別する為には、体内の魔力の色を見る必要がある。ただの人間にはできない芸当でしょうけどね」
「精霊と契約した魔術師がこの国にも一人くらいいるだろう。誰も気づかないなんてさすがに……」
「精霊はほとんどがスピリタニア……エルフ国か他所の大国に留まってるから期待しても無駄。この国はつけいるのに丁度良かったんでしょうね。目的まではあたしにも分からないけど」
最悪だ……。魔人が国の中枢に入ってるような国に召喚されるなんて……。
「道理で俺を殺そうとしてくるはずだよな。魔法が使える戦力になりそうだから削ろうとしてたのか」
「そうねえ。あなたの魔力量を見て彼は相当焦ったはずだし、きっと今もあなたを消そうと躍起になってるでしょうね」
この一週間、襲撃とかはなかった。
タイミングを図っているのだろうか。
「……やられる前にやるしかないのか」
「まあ、安心しなさい。あたしもアイスと並ぶ精霊の王だし、小物の魔人一匹に遅れは取らない。そもそも、あたしとアイスがここに居合わせたのは、女神アイシスからあなたを守るよう神託を受けたからでもあるのよ」
「そうだったのか。なのに、俺はアイスを……」
「過ぎたことを気にしてクヨクヨしても無駄でしょ? アイスに何かあった時の為にあたしが控えてたんだし。それより、一緒に元帥への対処を考えましょう」
そうは言われても、俺は魔人に関する知識をほとんど持ってない。
俺の迷いを感じ取ったのか、フレアは俺が尋ねる前に説明してくれた。
「女王から簡単には聞いてるでしょうけど、魔人の特性について話しておくわね。まず、魔人の平均寿命は千年と言われているの。彼らは力を重視し、他者を出し抜く為に独自の魔法をそれぞれ磨いてるわ」
「魔人は精霊と契約しなくても魔法が使えるのか?」
「彼らは産まれた瞬間からオリジナルが使える。それが特徴の一つ。正直、練度に関しては人間の比じゃないと思うわ。単純に、寿命が長いし」
「嫌になるくらい強そうだな」
「ええ、人の倍以上も生きている彼らが生涯をかけて磨いてきた術なんだから、決して侮ったりしたら駄目。単独で討伐することは難しいし、よほど才能があるか、運に恵まれないとできないことよ。だから、人はチームを組んで戦うの」
女王も言っていたことだ。一人で魔人に立ち向かうべきではないと。
「圧倒的に不利な状況に聞こえるな」
「否定はしない。でも、あなたには私がついてるでしょ? 魔人の寿命は千年だけど、精霊は魔力さえあれば不老不死。いざとなればあたしも戦うし、今回はそれで乗り切るべきだと思うわ」
「身を削るような真似をさせてすまないな。だけど……。本当に心強いよ」
フレアの目を真っ直ぐに見つめる。
「あまり熱っぽく見ないで。あなた全然反省してないじゃない」
フレアが呆れたように笑う。
釣られて俺も笑ってしまった。
「今夜は明日に備えて寝るか……」
「生憎だが、貴様らの時間はここで終わりだ」
それは、何の前触れもなく起きた襲撃だった。
空間を割いて現れた男の指が輝いたと思ったら、俺の身体は吹き飛んでいた。
「か……は……っ」
吐血する。腹に風穴が開いており、明らかに助からないと分かる出血量だ。
契約主である俺が死の淵にいることで、フレアの身体は透けてしまっている。
地上に召喚されている間、精霊は契約者の魔力で動くと言っていた。
つまり、俺がこんな有様になったせいで、フレアは魔力の供給が断たれたということだ。
正直、俺の死はもう避けられないものだと思う。
せめて、フレアにだけは逃げて欲しいと思った。
(逃げろフレア……)
思念を飛ばすが、彼女は無視した。
透けた身体で尚、戦おうと懸命に魔力を集めようとしている。
しかし、無理だ。契約者の俺がこの有様なんだからな。
「頼むから……逃げ……ろ」
「私の落ち度ね。まさか空間に干渉できる魔法を持つ魔人がいたなんて……。警戒されても結界を張っておくべきだったわ」
「逃げ……」
「あたしは自分の契約者を見捨てたりしない。フレアー―」
フレアの魔法が霧散した……。
終わりだ……。
俺が死の淵にいることで、契約が消滅したのだ。
精霊は、地上にいる限り人間の魔力でしか魔法を使えない。
「頼む……逃げろ……」
「ごめんね。今のあたしじゃ傍にいてあげることしかできない」
甲冑を身にまとった巨体が消えたと同時、薄れた身体で微笑むフレアの頭を炸裂させていた。
知らず、俺は涙を流していた。
フレアはいつでも逃げられたんだ。
戦えないことだって分かってたはずなのに……。
「愚かな精霊だ。さっさと契約を破棄して逃げれば命まで失わずに済んだものを」
「ドーグ……!」
怒りで視界が赤く染まっている。腸が煮えくり返るというのはこういうことを言うのだろう。キレすぎて歯の根が合わない。
「人間というのは変化がなければ同じ日常が永遠に続くものと錯覚するようだが、精霊も同様に油断をするらしい。いかに優れた術師であろうとも、所詮は女神の造った欠陥品か。やはり、エルゴガーデン様に造られた我々の方が、被造物としては一枚も二枚も上手だったようだ。いやはや、一週間、待った甲斐があると言えるな」
「貴様ぁ……」
「戦いを挑むならタイミングも考えた方がいいぞ。貴様はここで死ぬからな。次に生かされることはないだろうが」
敵は強すぎた。
何の前触れもなく空間を転移して、相手を殺傷する能力。
音も気配も何もない。気づいたら目の前にいて、魔法を撃ってくるのだ。
だが、絶対にこいつだけは許さない。
何度でもやり直せる俺は、どんな情報だって持ち帰ることができる。
今度は確実にフレアの仇を取る。
次の瞬間、俺の意識は弾け飛んだ。
「……は?」
部屋で夕食を取っていると、唐突にフレアが告げた。
「一国の元帥が魔人で、誰も気づかないなんてことあるのか?」
「魔人を見た目で区別するのは不可能なのよ。彼らを区別する為には、体内の魔力の色を見る必要がある。ただの人間にはできない芸当でしょうけどね」
「精霊と契約した魔術師がこの国にも一人くらいいるだろう。誰も気づかないなんてさすがに……」
「精霊はほとんどがスピリタニア……エルフ国か他所の大国に留まってるから期待しても無駄。この国はつけいるのに丁度良かったんでしょうね。目的まではあたしにも分からないけど」
最悪だ……。魔人が国の中枢に入ってるような国に召喚されるなんて……。
「道理で俺を殺そうとしてくるはずだよな。魔法が使える戦力になりそうだから削ろうとしてたのか」
「そうねえ。あなたの魔力量を見て彼は相当焦ったはずだし、きっと今もあなたを消そうと躍起になってるでしょうね」
この一週間、襲撃とかはなかった。
タイミングを図っているのだろうか。
「……やられる前にやるしかないのか」
「まあ、安心しなさい。あたしもアイスと並ぶ精霊の王だし、小物の魔人一匹に遅れは取らない。そもそも、あたしとアイスがここに居合わせたのは、女神アイシスからあなたを守るよう神託を受けたからでもあるのよ」
「そうだったのか。なのに、俺はアイスを……」
「過ぎたことを気にしてクヨクヨしても無駄でしょ? アイスに何かあった時の為にあたしが控えてたんだし。それより、一緒に元帥への対処を考えましょう」
そうは言われても、俺は魔人に関する知識をほとんど持ってない。
俺の迷いを感じ取ったのか、フレアは俺が尋ねる前に説明してくれた。
「女王から簡単には聞いてるでしょうけど、魔人の特性について話しておくわね。まず、魔人の平均寿命は千年と言われているの。彼らは力を重視し、他者を出し抜く為に独自の魔法をそれぞれ磨いてるわ」
「魔人は精霊と契約しなくても魔法が使えるのか?」
「彼らは産まれた瞬間からオリジナルが使える。それが特徴の一つ。正直、練度に関しては人間の比じゃないと思うわ。単純に、寿命が長いし」
「嫌になるくらい強そうだな」
「ええ、人の倍以上も生きている彼らが生涯をかけて磨いてきた術なんだから、決して侮ったりしたら駄目。単独で討伐することは難しいし、よほど才能があるか、運に恵まれないとできないことよ。だから、人はチームを組んで戦うの」
女王も言っていたことだ。一人で魔人に立ち向かうべきではないと。
「圧倒的に不利な状況に聞こえるな」
「否定はしない。でも、あなたには私がついてるでしょ? 魔人の寿命は千年だけど、精霊は魔力さえあれば不老不死。いざとなればあたしも戦うし、今回はそれで乗り切るべきだと思うわ」
「身を削るような真似をさせてすまないな。だけど……。本当に心強いよ」
フレアの目を真っ直ぐに見つめる。
「あまり熱っぽく見ないで。あなた全然反省してないじゃない」
フレアが呆れたように笑う。
釣られて俺も笑ってしまった。
「今夜は明日に備えて寝るか……」
「生憎だが、貴様らの時間はここで終わりだ」
それは、何の前触れもなく起きた襲撃だった。
空間を割いて現れた男の指が輝いたと思ったら、俺の身体は吹き飛んでいた。
「か……は……っ」
吐血する。腹に風穴が開いており、明らかに助からないと分かる出血量だ。
契約主である俺が死の淵にいることで、フレアの身体は透けてしまっている。
地上に召喚されている間、精霊は契約者の魔力で動くと言っていた。
つまり、俺がこんな有様になったせいで、フレアは魔力の供給が断たれたということだ。
正直、俺の死はもう避けられないものだと思う。
せめて、フレアにだけは逃げて欲しいと思った。
(逃げろフレア……)
思念を飛ばすが、彼女は無視した。
透けた身体で尚、戦おうと懸命に魔力を集めようとしている。
しかし、無理だ。契約者の俺がこの有様なんだからな。
「頼むから……逃げ……ろ」
「私の落ち度ね。まさか空間に干渉できる魔法を持つ魔人がいたなんて……。警戒されても結界を張っておくべきだったわ」
「逃げ……」
「あたしは自分の契約者を見捨てたりしない。フレアー―」
フレアの魔法が霧散した……。
終わりだ……。
俺が死の淵にいることで、契約が消滅したのだ。
精霊は、地上にいる限り人間の魔力でしか魔法を使えない。
「頼む……逃げろ……」
「ごめんね。今のあたしじゃ傍にいてあげることしかできない」
甲冑を身にまとった巨体が消えたと同時、薄れた身体で微笑むフレアの頭を炸裂させていた。
知らず、俺は涙を流していた。
フレアはいつでも逃げられたんだ。
戦えないことだって分かってたはずなのに……。
「愚かな精霊だ。さっさと契約を破棄して逃げれば命まで失わずに済んだものを」
「ドーグ……!」
怒りで視界が赤く染まっている。腸が煮えくり返るというのはこういうことを言うのだろう。キレすぎて歯の根が合わない。
「人間というのは変化がなければ同じ日常が永遠に続くものと錯覚するようだが、精霊も同様に油断をするらしい。いかに優れた術師であろうとも、所詮は女神の造った欠陥品か。やはり、エルゴガーデン様に造られた我々の方が、被造物としては一枚も二枚も上手だったようだ。いやはや、一週間、待った甲斐があると言えるな」
「貴様ぁ……」
「戦いを挑むならタイミングも考えた方がいいぞ。貴様はここで死ぬからな。次に生かされることはないだろうが」
敵は強すぎた。
何の前触れもなく空間を転移して、相手を殺傷する能力。
音も気配も何もない。気づいたら目の前にいて、魔法を撃ってくるのだ。
だが、絶対にこいつだけは許さない。
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