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56 就任
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元々トリテアは女王制の国ではなかった。王配となった俺が王位を譲られることは、想定の範囲内であったと言える。
大きな混乱もなく、俺は王として民の前に立つ日を迎えた。
用意されたお立ち台に立ち、愛すべき民達に向かって第一声を発する。
「俺のことを知っている者も多いだろうが、あえて名乗らせてもらおう。俺は第七代国王、サイハラ・ハジメ・レン・トリテインだ。女王陛下と元老院の信任を得て、俺は新たな歴史を切り開くことになった。トリテアが歩む強者の歴史をだ」
俺のオーラに圧倒されたのか、国民達は静まり返っている。息を飲んで俺の次の言葉を待っていた。
「今まで魔族に怯えてきた諸君。もう恐れる必要はない。いかなる魔人であろうと、俺を倒すことは不可能だ。君達に紹介したい男がいる」
俺の隣にリクが並び立つ。
「彼は魔人だ」
「そんなまさか……!」
「どういうことだ!?」
群衆が騒ぎ出すが、想定の範囲内ではある。
俺は「鎮まれ」と静かに発した。
それだけで、どよめきは収まった。
「邪神エルゴガーデンは、魔人をコントロールする為に『支配』の権能を使っている。魔人が忠実にエルゴガーデンに従うのは、逆らえば死が待っているからだ。しかし、俺はエルゴガーデンの持つ『支配』の権能を無効化することに成功した。魔人は俺に協力することで自由を得られるようになったのだ」
「私は、偉大なる国王陛下に仕える栄誉を賜った魔人です。魔剣騎士団の団長として、この国の皆さん、そして国王陛下を守り抜くことをここに誓います」
「あの王様すげえ……」
「魔人まで味方に引き込むとか、やばすぎだろ!」
いい意味でどよめきが起こってるな。
「俺は最強の国を作りたい。その為には、最強の臣民が必要だ。俺の臣民であるなら、どんな時でも動じずに冷静でいて欲しい。そして、大きな懐を持って欲しい。過日、俺は聖職者が亜人の子供を虐待している現場に遭遇した。それは、俺が求める臣民の姿ではなかった。だから、俺は厳しく罰した。いかに高貴な者であろうと、他者を道具のように消耗させていいという道理は通らない。俺は即位するにあたり、新トリテア法を制定した。民よ、魔人や貴族達の横暴に怯える時代は終わった。これからは、臣民の全てにあまねく寵愛を与えるつもりだ。お前達の後ろには常に俺がついていると思え。だから、怖れるな! 立てよ国民……! この俺と共に強くあるのだ! 共に最強のトリテアを築こうではないか!」
おおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!
俺は国王の所信演説を力技で突破した。
自分の功績を伝え、鼓舞することで強引に乗り越えた。
強い国が作りたいのは本当だけどな。
「演説かっこよかったですよ!」
「王様らしい顔になったじゃない」
控室にいた女達が囲んでくれる。
「兄さんが異国の王様なんて不思議な感じはありますけどね」
「サイハラ、かっこよかったよ」
「ハジメ君、お茶を入れました」
「三人ともありがとう」
ソファで足を投げ出してくつろぐ。
近くにいたシロナを抱き寄せて、クッション代わりに抱いた。
「女だらけになったけどさー。リクとか引いてないのー?」
「いや、感心はしてたけど引いてはなかったぞ。王様は違うって唸ってたな」
「ここまでやりたい放題な王様いるかなぁ」
「旦那様はちゃんと考えて行動してますよ」
「その通りです。深いお考えをお持ちだからこそ、ご主人様は王様にもなれたのです」
深い考えもなくたまたまなっただけだが。
クアラを妻にしようとしたら、流れでなっただけだしな。
「そういえば、ハジメ様。実はこんな手紙がミナガルデから届いていました」
クアラから手紙を受け取る。
「ん? なになに……」
『国王への就任おめでとう。私はミナガルデの王、カイル・レア・ガルデインだ。今度、うちで武闘大会を開くことになった。もちろん、我が国の勇者達も参加をする予定だ。貴国は勇者がたった二人しかいないようだが、余裕があるのならぜひ参加してくれたまえ。期待はしていないがね』
「ずいぶんと挑発的な内容だな。一応、友好国のはずだよな?」
「実質的には属国扱いでした。私にレイ王子に嫁ぐよう勧告してきたりもしましたし」
「一国の王に対してか? 舐めすぎだろ」
「仕方がありません。それだけの戦力差がありました」
「よし、俺が出よう」
「いけません! 一国の王が武闘大会に参加するなんて……」
「カイル王の考えていることは分かる。自国の勇者を大勢出場させ、他国の戦士を退けることで大国としての威信を見せつけるつもりなのだろう」
「その通りです。私は、ハジメ様に危険な目にあって欲しくありません」
真剣なクアラの気持ちを嬉しく思う。
だが、俺には王として取り戻すべきものがある。
それは、民が失っていた誇りだ。
「確か、騎士団長がヒカリって勇者に妻を寝取られたんだったな。今までトリテアの民が受けてきた屈辱を、俺が晴らしてやる。それこそが、国王としての第一の仕事だ」
「ハジメが参加するなら私もいくよ。残念ながら精霊に参加資格はなかったし、二人も出ればいいとこ行けるんじゃない?」
「ユキも参加させてください! 私だって勇者なんです!」
ユキの気持ちは分からないでもない。
だが、俺が目指すのは圧倒的な勝利だ。
俺とシロナが出るならそれで十分だ。
「私も……」
「勇者が二人も参加したらこの国を守る勇者がいなくなる。俺の帰る場所を守ってくれるな?」
「ずるい。そんないい方されたら引き受けるしかないじゃない」
「ごめんな? その代わり、優勝をもぎ取ってくるよ」
囚われた精霊王と一緒にな。
大きな混乱もなく、俺は王として民の前に立つ日を迎えた。
用意されたお立ち台に立ち、愛すべき民達に向かって第一声を発する。
「俺のことを知っている者も多いだろうが、あえて名乗らせてもらおう。俺は第七代国王、サイハラ・ハジメ・レン・トリテインだ。女王陛下と元老院の信任を得て、俺は新たな歴史を切り開くことになった。トリテアが歩む強者の歴史をだ」
俺のオーラに圧倒されたのか、国民達は静まり返っている。息を飲んで俺の次の言葉を待っていた。
「今まで魔族に怯えてきた諸君。もう恐れる必要はない。いかなる魔人であろうと、俺を倒すことは不可能だ。君達に紹介したい男がいる」
俺の隣にリクが並び立つ。
「彼は魔人だ」
「そんなまさか……!」
「どういうことだ!?」
群衆が騒ぎ出すが、想定の範囲内ではある。
俺は「鎮まれ」と静かに発した。
それだけで、どよめきは収まった。
「邪神エルゴガーデンは、魔人をコントロールする為に『支配』の権能を使っている。魔人が忠実にエルゴガーデンに従うのは、逆らえば死が待っているからだ。しかし、俺はエルゴガーデンの持つ『支配』の権能を無効化することに成功した。魔人は俺に協力することで自由を得られるようになったのだ」
「私は、偉大なる国王陛下に仕える栄誉を賜った魔人です。魔剣騎士団の団長として、この国の皆さん、そして国王陛下を守り抜くことをここに誓います」
「あの王様すげえ……」
「魔人まで味方に引き込むとか、やばすぎだろ!」
いい意味でどよめきが起こってるな。
「俺は最強の国を作りたい。その為には、最強の臣民が必要だ。俺の臣民であるなら、どんな時でも動じずに冷静でいて欲しい。そして、大きな懐を持って欲しい。過日、俺は聖職者が亜人の子供を虐待している現場に遭遇した。それは、俺が求める臣民の姿ではなかった。だから、俺は厳しく罰した。いかに高貴な者であろうと、他者を道具のように消耗させていいという道理は通らない。俺は即位するにあたり、新トリテア法を制定した。民よ、魔人や貴族達の横暴に怯える時代は終わった。これからは、臣民の全てにあまねく寵愛を与えるつもりだ。お前達の後ろには常に俺がついていると思え。だから、怖れるな! 立てよ国民……! この俺と共に強くあるのだ! 共に最強のトリテアを築こうではないか!」
おおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!
俺は国王の所信演説を力技で突破した。
自分の功績を伝え、鼓舞することで強引に乗り越えた。
強い国が作りたいのは本当だけどな。
「演説かっこよかったですよ!」
「王様らしい顔になったじゃない」
控室にいた女達が囲んでくれる。
「兄さんが異国の王様なんて不思議な感じはありますけどね」
「サイハラ、かっこよかったよ」
「ハジメ君、お茶を入れました」
「三人ともありがとう」
ソファで足を投げ出してくつろぐ。
近くにいたシロナを抱き寄せて、クッション代わりに抱いた。
「女だらけになったけどさー。リクとか引いてないのー?」
「いや、感心はしてたけど引いてはなかったぞ。王様は違うって唸ってたな」
「ここまでやりたい放題な王様いるかなぁ」
「旦那様はちゃんと考えて行動してますよ」
「その通りです。深いお考えをお持ちだからこそ、ご主人様は王様にもなれたのです」
深い考えもなくたまたまなっただけだが。
クアラを妻にしようとしたら、流れでなっただけだしな。
「そういえば、ハジメ様。実はこんな手紙がミナガルデから届いていました」
クアラから手紙を受け取る。
「ん? なになに……」
『国王への就任おめでとう。私はミナガルデの王、カイル・レア・ガルデインだ。今度、うちで武闘大会を開くことになった。もちろん、我が国の勇者達も参加をする予定だ。貴国は勇者がたった二人しかいないようだが、余裕があるのならぜひ参加してくれたまえ。期待はしていないがね』
「ずいぶんと挑発的な内容だな。一応、友好国のはずだよな?」
「実質的には属国扱いでした。私にレイ王子に嫁ぐよう勧告してきたりもしましたし」
「一国の王に対してか? 舐めすぎだろ」
「仕方がありません。それだけの戦力差がありました」
「よし、俺が出よう」
「いけません! 一国の王が武闘大会に参加するなんて……」
「カイル王の考えていることは分かる。自国の勇者を大勢出場させ、他国の戦士を退けることで大国としての威信を見せつけるつもりなのだろう」
「その通りです。私は、ハジメ様に危険な目にあって欲しくありません」
真剣なクアラの気持ちを嬉しく思う。
だが、俺には王として取り戻すべきものがある。
それは、民が失っていた誇りだ。
「確か、騎士団長がヒカリって勇者に妻を寝取られたんだったな。今までトリテアの民が受けてきた屈辱を、俺が晴らしてやる。それこそが、国王としての第一の仕事だ」
「ハジメが参加するなら私もいくよ。残念ながら精霊に参加資格はなかったし、二人も出ればいいとこ行けるんじゃない?」
「ユキも参加させてください! 私だって勇者なんです!」
ユキの気持ちは分からないでもない。
だが、俺が目指すのは圧倒的な勝利だ。
俺とシロナが出るならそれで十分だ。
「私も……」
「勇者が二人も参加したらこの国を守る勇者がいなくなる。俺の帰る場所を守ってくれるな?」
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「ごめんな? その代わり、優勝をもぎ取ってくるよ」
囚われた精霊王と一緒にな。
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