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57 歴史

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「スピリタニアを優先して落とそうと思ってたが、ミナガルデが先になったな」
「どっちが先でも結果は同じじゃない? ハジメが欲しいものを全部かっさらっておしまい」
「それを言ったら身も蓋もないな」

 俺はミナガルデとの国境に馬車が通過できるくらいの大きさの転移門を繋げた。
 そのまま王都から直で移動をする。途中には検問もあるが、国王からの招待状があるので問題なく通れる。
 面倒なのは、転移魔法が使用禁止ということだ。ここは国際問題になるから我慢するしかない。

(まあ、旅行だと思えば楽しめるか)

 今回、俺に同行するのはシロナとアイスとフレア、加えてクアラとアンナの合計五人だ。
 アイスとフレアは大会には参加しないが、精霊リーフの捜索要員としてついてきた。クアラについては俺との親密ぶりを見せつける為に来ている。また王子との婚約などと言われても迷惑だしな。この際だから見せつけておこうと思う。アンナはセックスのパートナーとして参加している。

「なんであたしがセックス担当なのよ」
「ジャンケンに勝ったからな」
「なんのジャンケンか知ってたら参加しなかったわよ」

 そう言う割には同行できると聞いてはしゃいでたけどな。
 そういう性格なので放っておこう。

「あの子、酷い目にあってないといいけど」

 精霊組はずっとリーフという友人のことを案じている。
 ずっと会えていないそうだから、心配する気持ちは分かるな。

「あまり気負い過ぎるなよ。俺もシロナもいるんだ。きっと見つかるさ」
「そうね。ふたりともよろしくね」
「よろしくお願いします。大切な友達なので」

 分かってると頷いてやる。

 馬車は牧歌的な速度で移動を続け、国境を通過した。
 このまま武闘大会が開かれる王都セントラグナまでの旅路を往くことになる。

 ちなみに、セントラグナは信仰している神がアイシスではないらしい。
 クアラからもたらされたこの情報には、少なからず驚かされた。

「ミナガルデが信仰している神は、女神ラグナです。武の女神と言われているそうですよ」
「へえ。女神アイシスは何の神になるんだ?」
「創造の女神。あんた、自分の国の国教くらい知っときなさい」

 アンナが腕を組んで説明し始めた。

「元々、この世界の主神はアイシス様だったのよ。だけど、邪神が攻め込んできてこの世界にも綻びが生まれたわ。その隙につけ入る形で、武の女神ラグナと、光を司るシャイナの二柱が侵入してきたの。彼女達は瞬く間に信者を増やして、今やこの世界の三大宗教となったわ」
「なんだそれは……。図々しい女神達だな」
「そうね。だけど、勇者召喚に関してはあの二人の方が結果を出してきてるの。勇者の質は女神の質。今までアイシス様はあまり強い勇者を召喚できてなかった。でも、ハジメが他の勇者を駆逐すれば、アイシス様の偉大さが異教徒達にも伝わるはずよ」
「なるほど。つまり、俺が大会で派手に優勝すれば、それだけで恩返しにもなるわけだな」

 やってやろうじゃないか。

 他の国の勇者がどれだけやれるか楽しみだな。
 実のところ怖いのはシロナだけど。

「楽しもうね?」

 バーサーカーの実力や如何に……。
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