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11.6 王子の優先するものは
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俺はリアに溺れてしまったらしい。彼女に溺れ何度も火傷しそうな想いを吐き出してしまった。もう、リアなしじゃ生きられない身体に作り替えられたという自覚がある。
(あんな天使のように美しい娘が、淫らに微笑むんだもんな)
甘ったるい声が俺を求め、愛を囁き、存分に甘やかしてくれるのだ。リア以上に大切なものなどない。そう思わされるくらいに、俺はリアに堕とされてしまった。
「よう、何か進展はあったか? 頬にキスくらいしてもらえたか? まあ、リアはガキんちょだからな。お前がゆっくりリードしてやるくらいで丁度いいと思うが……」
ニコラの言葉に笑いそうになってしまう。
(俺が天使のような少女と何度も何度もまぐわったことを、こいつには話せない)
「そうだな。リアには色々教えてやりたいよ」
「お前、焦るなよ? リアにはリアのペースがあるんだ。しっかり合わせてやれよ? あの娘は純粋なんだからな」
その純粋な娘が淫らな術を俺のために磨いてくれたことに、途方もない優越感を感じる。
馬鹿だ、間抜けだ、落ちこぼれだとリアを否定してきた連中に向かって叫びたい。
リアを孤立させてくれてありがとう。お陰で俺だけがリアと結ばれることができた。ざまあみろ! どんなに欲しがってもリアは俺にしか微笑まない。俺だけが本当のリアを知ってるんだ!
リアをバカにしてきた連中を殴りたい気持ちと、感謝したい気持ちが同居している。隣を歩く親友のようにシンプルに生きられたらと思う。俺には不可能だが……。
そんなことを思いながら歩いていると、リアの家庭教師たちが走りよってきた。
「おい、何の真似だ! 殿下に仇なすというなら剣の錆びにするぞ!」
ニコラが警戒するが、害意は感じられない。
俺は騎士を下がらせた。
「話を聞こう」
「我々は殿下に謝罪したくて参ったのです! 過日、我々はリアお嬢様を殿下の犬に例えて貶めました! ですが、我々はお嬢様のお陰で自らの過ちに気づくことができたのです!」
「ふむ。どういうことだ?」
「我々が誤ったと判断していたお嬢様の詠唱、マナー、その全てが正しかったと証明されたのです!」
「興味深いな。聞こうか」
「話は建国の王、ジェラルド一世の時代まで戻ります。ジェラルド一世は自らを地獄から蘇った鬼と称する破天荒な方でした。あの方の時代は最も王国が栄えた時期であり、同時に戦禍の絶えない時代でもありました」
発展もしたが、失ったものも多い時代だったという。
建国の父として王国の民には親しまれているが、戦禍を振りまいた彼を酷評する歴史家も、諸国にはいるそうだ。
「実は、近年になって紛失していたあの時代の遺物が見つかりまして。それらを検証した結果、リア様が行った食器を持って食事をするマナーや、我々とは異なる詠唱などが、全面的に正しかったと証明されたのです!」
「リアはそのことを知っているのか?」
「もちろんでございます! 我々が過ちを認めお嬢様に謝罪したところ、あの方は初めて我々一人一人の名前を呼んでくださりました。あの瞬間、我々の過ちを天が許してくださったように思いました……」
(あいつ多分そこまで考えてないぞ……)
能天気なリアの顔が思い浮かぶ。
親友に目配せすると、彼は感心したように頷いていた。
「リア嬢は天使のように優しい方だ。口頭で誤りを指摘することはないが、行動によって示されるのかもしれないな」
「あの方こそ女神様が地上に遣わしてくれた聖女なのかもしれません。我々は今日までの自分を恥じて、誠心誠意、リア様に仕えたいと思います。本日は、殿下にそのことを報告したかったのです」
「そうか。これからもリアに仕えてやってくれ。婚約者として、俺も嬉しく思うぞ」
「ありがとうございます! ありがとうございます……!」
深々と家庭教師たちは頭を下げていた。
彼らを見送った後、俺は親友に「不思議なこともあるもんだな」と話を振った。
「本当に聖女だったりしてな。こんなに奇跡が連続するなんてこと、普通あるか?」
「聖女なんておとぎ話の存在、お前まで信じるな」
「いや、昔は実際にいたって話じゃないか。爺さん連中のなかには会って話したって連中も……」
「俺は自分が見たものしか信じない。リアはリアだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「なあ、お前らしくないぞ。王族であるヴァレールなら、聖女の伝説がただの眉唾じゃないことは知っているはずだ。あらゆる病気を打ち消し、どんな凶悪な魔物でも封じる存在。それが聖女だろ。もしそんな存在が居てくれたら、この国は強力な後ろ盾を得たことになる。お前だって本当は分かってるんだよな?」
「あいつに不自由を強いろと言うなら、俺はお前を許さない」
じっと俺の目を見つめていたニコラが視線を外す。
「はぁ……。お前は何よりもリアが大事なんだな。まあ、俺も本気でリアが聖女だなんて思ってないさ。お前をからかってみただけだ」
「お前の冗談は昔から分かりづらい」
「……だな。まあ、仮にリアが聖女だったとしてもだ。今と昔じゃ時代も違う。案外楽しくやるかもしれないぞ」
「あいつは魔法も苦手だし、その可能性は低い。……だが、それでいいんだ。リアは努力家だからな。教師連中の名前だって必死に覚えたに決まってる。聖女になんてなったらもっと無理をする」
「全く、仕方ないやつだな。お前ほど王族らしくない王子は見たことがない。ポンコツな婚約者にここまで愛情を注いだ王族はお前くらいだろ」
「不敬だぞ」
リアの幸せ以上に大切なものなんか、この世界のどこを探したって見つからないだろうな。そう思ってしまう時点で、もしかしたら俺は王族失格なのかもしれない。それでも、リアが生きるこの国を守っていきたいとは思うんだ。婚約者の為に、俺は自分にできることをしていこうと思う。
「……帰って仕事するか」
(あんな天使のように美しい娘が、淫らに微笑むんだもんな)
甘ったるい声が俺を求め、愛を囁き、存分に甘やかしてくれるのだ。リア以上に大切なものなどない。そう思わされるくらいに、俺はリアに堕とされてしまった。
「よう、何か進展はあったか? 頬にキスくらいしてもらえたか? まあ、リアはガキんちょだからな。お前がゆっくりリードしてやるくらいで丁度いいと思うが……」
ニコラの言葉に笑いそうになってしまう。
(俺が天使のような少女と何度も何度もまぐわったことを、こいつには話せない)
「そうだな。リアには色々教えてやりたいよ」
「お前、焦るなよ? リアにはリアのペースがあるんだ。しっかり合わせてやれよ? あの娘は純粋なんだからな」
その純粋な娘が淫らな術を俺のために磨いてくれたことに、途方もない優越感を感じる。
馬鹿だ、間抜けだ、落ちこぼれだとリアを否定してきた連中に向かって叫びたい。
リアを孤立させてくれてありがとう。お陰で俺だけがリアと結ばれることができた。ざまあみろ! どんなに欲しがってもリアは俺にしか微笑まない。俺だけが本当のリアを知ってるんだ!
リアをバカにしてきた連中を殴りたい気持ちと、感謝したい気持ちが同居している。隣を歩く親友のようにシンプルに生きられたらと思う。俺には不可能だが……。
そんなことを思いながら歩いていると、リアの家庭教師たちが走りよってきた。
「おい、何の真似だ! 殿下に仇なすというなら剣の錆びにするぞ!」
ニコラが警戒するが、害意は感じられない。
俺は騎士を下がらせた。
「話を聞こう」
「我々は殿下に謝罪したくて参ったのです! 過日、我々はリアお嬢様を殿下の犬に例えて貶めました! ですが、我々はお嬢様のお陰で自らの過ちに気づくことができたのです!」
「ふむ。どういうことだ?」
「我々が誤ったと判断していたお嬢様の詠唱、マナー、その全てが正しかったと証明されたのです!」
「興味深いな。聞こうか」
「話は建国の王、ジェラルド一世の時代まで戻ります。ジェラルド一世は自らを地獄から蘇った鬼と称する破天荒な方でした。あの方の時代は最も王国が栄えた時期であり、同時に戦禍の絶えない時代でもありました」
発展もしたが、失ったものも多い時代だったという。
建国の父として王国の民には親しまれているが、戦禍を振りまいた彼を酷評する歴史家も、諸国にはいるそうだ。
「実は、近年になって紛失していたあの時代の遺物が見つかりまして。それらを検証した結果、リア様が行った食器を持って食事をするマナーや、我々とは異なる詠唱などが、全面的に正しかったと証明されたのです!」
「リアはそのことを知っているのか?」
「もちろんでございます! 我々が過ちを認めお嬢様に謝罪したところ、あの方は初めて我々一人一人の名前を呼んでくださりました。あの瞬間、我々の過ちを天が許してくださったように思いました……」
(あいつ多分そこまで考えてないぞ……)
能天気なリアの顔が思い浮かぶ。
親友に目配せすると、彼は感心したように頷いていた。
「リア嬢は天使のように優しい方だ。口頭で誤りを指摘することはないが、行動によって示されるのかもしれないな」
「あの方こそ女神様が地上に遣わしてくれた聖女なのかもしれません。我々は今日までの自分を恥じて、誠心誠意、リア様に仕えたいと思います。本日は、殿下にそのことを報告したかったのです」
「そうか。これからもリアに仕えてやってくれ。婚約者として、俺も嬉しく思うぞ」
「ありがとうございます! ありがとうございます……!」
深々と家庭教師たちは頭を下げていた。
彼らを見送った後、俺は親友に「不思議なこともあるもんだな」と話を振った。
「本当に聖女だったりしてな。こんなに奇跡が連続するなんてこと、普通あるか?」
「聖女なんておとぎ話の存在、お前まで信じるな」
「いや、昔は実際にいたって話じゃないか。爺さん連中のなかには会って話したって連中も……」
「俺は自分が見たものしか信じない。リアはリアだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「なあ、お前らしくないぞ。王族であるヴァレールなら、聖女の伝説がただの眉唾じゃないことは知っているはずだ。あらゆる病気を打ち消し、どんな凶悪な魔物でも封じる存在。それが聖女だろ。もしそんな存在が居てくれたら、この国は強力な後ろ盾を得たことになる。お前だって本当は分かってるんだよな?」
「あいつに不自由を強いろと言うなら、俺はお前を許さない」
じっと俺の目を見つめていたニコラが視線を外す。
「はぁ……。お前は何よりもリアが大事なんだな。まあ、俺も本気でリアが聖女だなんて思ってないさ。お前をからかってみただけだ」
「お前の冗談は昔から分かりづらい」
「……だな。まあ、仮にリアが聖女だったとしてもだ。今と昔じゃ時代も違う。案外楽しくやるかもしれないぞ」
「あいつは魔法も苦手だし、その可能性は低い。……だが、それでいいんだ。リアは努力家だからな。教師連中の名前だって必死に覚えたに決まってる。聖女になんてなったらもっと無理をする」
「全く、仕方ないやつだな。お前ほど王族らしくない王子は見たことがない。ポンコツな婚約者にここまで愛情を注いだ王族はお前くらいだろ」
「不敬だぞ」
リアの幸せ以上に大切なものなんか、この世界のどこを探したって見つからないだろうな。そう思ってしまう時点で、もしかしたら俺は王族失格なのかもしれない。それでも、リアが生きるこの国を守っていきたいとは思うんだ。婚約者の為に、俺は自分にできることをしていこうと思う。
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