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お兄様のことを誤解なさらないでください!

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 ちゅむ……ちゅ……レロ……ぷはぁ。

「じゃあ、行ってきます」
「何かあったらすぐに叫べよ? 約束だからな?」
「お兄様、無事に戻ってこれたらコレットをお嫁さんにしてくださいね? 愛してます、お兄様……しかしその後、コレットは朝になってもレインの部屋へ戻ってくることはなかった。う、う、コレット……ハッ。この足音はコレットに違いない! 期待に胸を高鳴らせながら扉を開くレイン。しかし、扉を開けたレインを待っていたのは……。『レイン様、コレット様は修道院へ入られることになりました。穢れた私はお兄様の傍にいる資格はないと……』。あの時、大事な弟を止めていれば……。レインの後悔の慟哭が、城内に響き渡った――。行ってきまーす」
「朝になる前に部屋に突入しろよレイン! 何自室に引篭もってコレットの帰りを待ってるんだよ!」

 というやり取りをヒソヒソ声でした後、いざお父様の寝室へ。

 いやー、最近は皇国でもいっぱい本が売られるようになって、皆が好き勝手に妄想を書きなぐってるから、こういうシチュエーションにも見覚えがあるんだよね。

 で、僕がお父様の寝室に入ると、見知った顔の年配のメイドさんがワインを準備して待っていてくれた。

「うふふ、本当にお可愛くなられて……」

 一気に盛り下がるのを感じた。ローナおばさんは悪くないけど夢がなさすぎだろ。ちゃんと一人で待っててくれよお父様。ったく、これだから大衆文学に興味のない人は困る。

「夜遅くにすまんな」
「いえ、お兄様の件で呼び出されるとは思っていました」

 実際のところなんだけど、お父様は内乱とか政争を嫌って僕を立てていただけで、別に兄様のことを毛嫌いしてるとか馬鹿にしてるとか言ったことはない。だけどそれは為政者側の視点で、長年に渡って冷遇されていたお兄様が謝罪の一つや二つでそれを許すかと言えば、やっぱりそんなことはないわけで。
 何か手打ちは必要だし、その手打ちの件でお父様が僕を呼んだんだろうなーってことまでは予測できていた。でも、どういう風に手打ちをするのか、兄上に何を差し出すのかっていうことは僕には分からない領分だ。

 王様の宝なんていっぱいあるしねー。ミコト皇国は将来安泰の超裕福、超軍事力持ってますの平和国家だから、国王の財産だってざっくざく。そんな中からお父様が差し出す手打ちの品とは如何に!?

「実はレインだが、儂に対してお前を差し出せと強く要求してきている」

 って僕!? お兄様、僕を寄こせってゴネまくってんの!?
 うわー、嬉しいなぁ! あとでたっぷりサービスしなきゃね!
 下着メイド服でもしてあげようかな?

「……はぁ。今回の一件で、少しは兄弟の仲が良くなるのではないかと期待していた。弟が兄を庇ったのだ。心が動かぬはずがないと思った。だが、奴は女となったお前を辱めるつもりだ」

 どちらかと言えば女となった僕が兄を辱めてるんですけど。
 初めてした時に僕にしがみついてきたお兄様可愛かったなー。
 がんばれっがんばれっ! って応援してあげたら「しゅきだぁぁぁ!」って叫んでたよ。
 あの夜のお兄様、どうして手記なんか欲しがってたのかな?
 早く手記を取りに行く為に急いで腰を振ったら何度も手記って急かしてきて困ったなぁ。

「すまん! お前には苦労をかける! 望む物があれば何でも譲ろう! だからどうか、愚劣な兄を許してやってくれんか!」
「愚劣だなんて……。お兄様はきっと、傷ついているだけだと思います。僕がこの身を差し出すことで慰めになるなら、喜んで差し出します。どうか、お兄様を悪く思わないでください。僕は……僕は喜んで兄に抱かれます!」
「おお……おおおおぉ……なぜ、兄弟で愛し合うことができんのだ……おおおぉ」

 いや限界近くまで愛し合ってますけど。
 お父様の誤解は解けなかったけど、臨時のお小遣いが貰えて良かったよ。
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