兄に嫌われてる弟ですが誤解が解けたら十数年分溺愛されました(完)

外伝2 機械伯爵編 後編

　ドッグへ向かう途中、マシンの開発者であるバルカン博士と遭遇した。
　バルカン博士はかつて大怪我で機械化施術を行い、全身を機械化した機械人間だ。
　自分を機械伯爵と自称してて他の人達を馬鹿にしてたけど、お兄様にバールで頭を半壊させられた時に良心回路に目覚め、以降はお兄様の忠実な部下として働いている。

「コレハ　コレハ　レイン　サマ」
「今から俺を馬鹿にした三国を粛清に行く。マシンは出せるな？」
「モチロン　ニ　ゴザイマス」
「あと八機は建造して八機星と名乗らせたいが、まだ建造は追いつかないのか」
「フフフ　ハッキセイ……！」
「笑いごとじゃねえんだよ！」

　ああっ！　お兄様が怒りのあまり機械伯爵を剣の柄の固い部分で殴り倒した！
　確かに機械伯爵ってロボロボしくて無性に腹が立つことがあるけど、暴力はよくないよ！

「暴力ダメ、ゼッタイ！」
「ハッ！　すまない機械伯爵。笑い声が耳障りで殴り倒してしまった」
「フフフ　ベツ　ニ　カマイマセン　マッタク　イタク　アリマセン　デシタ　カラ」
「機械如きが調子に乗ってんじゃねえぞ！」
「ウアアアア」

　機械伯爵が腹を蹴られて転がってしまう！

「人間様に逆らうとスクラップにするぞゴミ屑！」
「ハンセイ　シテ　マス」
「いいか。お前の頭の中には小型爆弾が仕込んであっていつでも起爆できるんだよ。ショートしたくなかったらショーット過ごすんだな」
「カイドク　フノウ」
「冗談だろうが！　理解しやがれクソスクラップ！」

　度重なるお兄様の攻撃でスパークした機械伯爵だけど、自力で勝手に修理するし問題ないと思う。それより、問題は量産計画の方だ。

「キュウピッチ　デ　ススメテ　マス　ノデ　ハッシュウカン　ゴ　ニハ　カンセイ　スル　カト」
「遅い。八日で済ませろ。」
「リョウカイ　シマシタ」
「出来るのかよ！」

　怒りの余り最近完成したプラズマソードを抜いて機械伯爵を切り裂くお兄様。
　もう、いくら相手が感情のない機械野郎だからってやりすぎだよ！

「機械伯爵も仲間なんだからイジワルしちゃダメ！」
「そうだな。おい機械、これからも仲良くしような」
「――機能停止寸前、機能停止寸前、稼働率、十五パーセント」
「うるせえんだよ！　流暢に話せるなら普段からそうしとけ！」

　機械伯爵の頭を蹴り飛ばすお兄様。

「もう、イジワル駄目って言ってるでしょ！」
「ああ、すまない」

　機械伯爵の頭を撫でるお兄様。
　すると、機械伯爵が「ワタシ　タチ　ナカマ」って呟いた。

　お兄様が倒れた機械伯爵の手を掴んで……。

「稼働してんじゃねえか！」って言いながらエルボーをかました！

「機械伯爵は虐めちゃダメ―――！」

　もう、機械伯爵でテンション上がりすぎだよ！

「最高のオモチャ野郎だったぜ」
「反省して！」

　ごめんね機械伯爵。
　あとからお兄様には言っておくから……。

　……はぁ。
　人と機械が分かり合える日は来るのかな。

　高度な機械文明化が進む昨今、本来人が得るはずだった労働を機械で代替することは、社会問題に発展している。
　そうしたことが原因による機械へのヘイト……。しかし、いつか機械が心を持った時、人類に対する審判の日が来るのではないかと……。

　ボロボロになった機械伯爵を見ながら、考えずにはいられない僕だった。

　人類と機械の共存が試される世界は、もうすぐそこまで来ているのかもしれない――