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壱話 「黒色少年⇔音少女」
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次の日、まだパニックだったが、国による迅速な判断で避難所で食品などが配られた。人々は家族を亡くして嘆くもの、パニックになり騒ぎ出すもの、助けてと泣き叫ぶものなど、多種多様。そんな騒がしい中で神華は一人、地面に座って考え込んでいた。弱い自分を隠すため、神華は口調も態度もすべて変え、別人のようになっていたのだ。
「どうやってあちら側に渡りましょうか…」
「それは無理だと思うぜ」
神華は驚いて顔を上げた。そこでは、同じくらいの歳の少年が無表情でこちらを見つめていた。少年の髪や目は黒く、服すらも黒で統一されていた。神華は口だけで少年に笑いかけた。
「あらこんにちは。無理って?」
少年はパチパチと二回瞬きをした。その顔には、「こいつ馬鹿かよ」とわかりやすいように見えてわかりにくい感じで書いてあった。
「割れ目の間には地面がねぇし、落ちたらすごい温度の地球の中心が待ってる。どうやっても無理だ。」
「そうですか…」
神華は残念そうに視線を落とした。だがしかし、それで終わる神華ではない。どうやらこの少年は、割れ目の向こうに行く時に役に立ちそうだ。そんなことを思い、神華はまた少年を見た。
「私は紅白 神華。貴方は?」
「……黒崎 レン。」
レンは少しためて答えた。神華は立ち上がり、レンの手を取った。
「よろしくお願いしますね!!黒崎…レンさん?」
レンは神華と会って、初めて笑った。その笑顔は、どこか哀愁を帯びた、大人っぽい笑みだった。
「あぁ。よろしくな。神華。」
神華は、嘘の笑顔でレンに笑いかけた。
「ねぇ。」
その時、いつの間にか近くに来ていた同じ歳くらいの少女が、神華達に話しかけてきた。少女は黄色から緑色にグラデーションで変わってゆく珍しい髪色で、ショートカットで、黒色のヘッドホンをしていた。目つきはじと目で、すべてに諦めたような、そんな目つきだった。
「貴方達、割れ目の向こう側に行くんでしょ?」
その問いに、さっき向こう側に行くのは無理と言い切ったレンが驚いた。
「いや、俺は行くつもりな」
「私もついて行ってあげる…その、向こう側とやらに。」
「聞けよ!?」
少女とレン…正確には、レンが少女を睨んだ。少女へのダメージは1ミクロンさえなかったが。どうやら常識人らしいレンに、さらに空気を読めない神華がたたみかけていく。
「ありがとうございますね!!あなたの名前は?」
少女は少し微笑んだ。
「音階 ねいろよ。貴方達は、レンと神華ね…よろしく。」
「…」
レンは勝手に自分が入れられていることと全く話を聞かない二人に涙した。神華に話しかけた時点で、この運命は決まっていたのだ。仕方がない。そんなレンを1ヨクトメートル(小さい単位)も気にせず、神華はねいろの手を取った。
「よろしくお願いします、音階 ねいろさん♪」
ねいろはうなずいた。そんなねいろの態度とレンの先ほどの対応を思い出して神華は首を傾げた。
「貴方達、四歳にしては大人びてませんか?」
「「神華が言うことじゃない」」
神華の問いに、二人はどこか焦ったような顔をしたが、すぐにいつもの無表情に戻った。神華はそれに違和感を持ったが、本当にちょっとだけの違いなので気のせいかと思い気にしていなかった。ねいろとレンは同時にばっと神華のほうを見た。
「大体私は貴方がそんなに大人っぽい…」
「俺はお前がそんなに…」
「あら、私も貴方達が大人っぽいとは思いますよ?」
神華のその一言が、さらに二人をやる気にさせたようだ。何のやる気かは知らないが、さきほど二人が言いかけたことも気になる。二人は交互に神華の前に立って子供っぽくするための指摘を始めた。
「まずその言い方よ。敬語、それに言い回し」
「それに服!!子供なら、服全部モノクロとかありえねーだろ!?」
「しりませムグ」
神華はねいろに口をふさがれた。ねいろは何をしてもじと目である。
「まずその口調をやめて」
神華は息が苦しくなり暴れる。
「ンー!!!」
それを見ていたレンがさすがにヤバいだろうとねいろに冷や汗だらだらで言う。
「離してやれねいろ…」
そんなレンを見たねいろは神華の口をふさいでいた手を放す。神華は息が上がり地面に膝をついた。「ハッハァハァ…」
ねいろとレンはそんな神華にすかさずたたみかける。
「ねぇいいでしょう?」
「俺たち、子供っぽい奴見てみたいんだよ…」
そのレンのつぶやきを聞き、主人公らしい優しい神華は…
「そ、それなら…だめです。」
許さなかった。
「「エエエッ!?」」
まさか断られると思っていなかったねいろとレンは飛び上がった。
「私は、子供とはどういうものかわかりません。わからなく、なってしまったんです…」
神華は実は全く優しくない。しかも、こっそりとシリアス味を出してきた。この神華の返しに、ただの子供のレンとねいろはシリアス味を全く気にせず、神華に詰め寄った。
「それならもう力ずくで…」
「やるしかないわ…」
「え、なにをです!?」
一時間後
「神華で…だよっ」
神華は、ぶりっ子ポーズでニコッと笑っていた。
「わぁ…」
「かわいー!!」
レンはそんな神華をキラキラした目で見つめた。どうやら自分の技術に驚いているらしい。ねいろは珍しくテンションが上がっている。
神華は、ねいろがどこからか取り出した花の飾りがついた袖がふわっと膨らんでいる上着と、黒と赤色のスカート、そして髪を二つに結んでいた。頭には大きなリボン。そしてそのいずれも黒と赤で統一されている。
ねいろは、神華にうっとりしていた。
「神華…それなら、何しても許されるわ…」
「やっぱり赤と黒って合うよなー…だけど、子供っぽくしとくと言って、結局大人っぽい部分も作ってしまった…そこは改善点だな」
ぶつぶつ言っているレンを神華はじと目で見た。
「そうなんだ…」
こういうところも敬語じゃなくなっているのは、ねいろの徹底的な努力である。
夕焼けがきれいな避難所からの帰り道。神華とレンとねいろは一緒にそれぞれの家へと帰っていた。
「ねぇ神華…」
ねいろは歩きながら言った。
「これからはさ…敬語なしで話してくれない?」
神華は目を見開いてねいろを見た。そして、少し微笑んだ。
「…いいよ、ねいろ、レン。」
「「よっしゃ」」
ねいろとレンはガッツポーズをした。
「どうやってあちら側に渡りましょうか…」
「それは無理だと思うぜ」
神華は驚いて顔を上げた。そこでは、同じくらいの歳の少年が無表情でこちらを見つめていた。少年の髪や目は黒く、服すらも黒で統一されていた。神華は口だけで少年に笑いかけた。
「あらこんにちは。無理って?」
少年はパチパチと二回瞬きをした。その顔には、「こいつ馬鹿かよ」とわかりやすいように見えてわかりにくい感じで書いてあった。
「割れ目の間には地面がねぇし、落ちたらすごい温度の地球の中心が待ってる。どうやっても無理だ。」
「そうですか…」
神華は残念そうに視線を落とした。だがしかし、それで終わる神華ではない。どうやらこの少年は、割れ目の向こうに行く時に役に立ちそうだ。そんなことを思い、神華はまた少年を見た。
「私は紅白 神華。貴方は?」
「……黒崎 レン。」
レンは少しためて答えた。神華は立ち上がり、レンの手を取った。
「よろしくお願いしますね!!黒崎…レンさん?」
レンは神華と会って、初めて笑った。その笑顔は、どこか哀愁を帯びた、大人っぽい笑みだった。
「あぁ。よろしくな。神華。」
神華は、嘘の笑顔でレンに笑いかけた。
「ねぇ。」
その時、いつの間にか近くに来ていた同じ歳くらいの少女が、神華達に話しかけてきた。少女は黄色から緑色にグラデーションで変わってゆく珍しい髪色で、ショートカットで、黒色のヘッドホンをしていた。目つきはじと目で、すべてに諦めたような、そんな目つきだった。
「貴方達、割れ目の向こう側に行くんでしょ?」
その問いに、さっき向こう側に行くのは無理と言い切ったレンが驚いた。
「いや、俺は行くつもりな」
「私もついて行ってあげる…その、向こう側とやらに。」
「聞けよ!?」
少女とレン…正確には、レンが少女を睨んだ。少女へのダメージは1ミクロンさえなかったが。どうやら常識人らしいレンに、さらに空気を読めない神華がたたみかけていく。
「ありがとうございますね!!あなたの名前は?」
少女は少し微笑んだ。
「音階 ねいろよ。貴方達は、レンと神華ね…よろしく。」
「…」
レンは勝手に自分が入れられていることと全く話を聞かない二人に涙した。神華に話しかけた時点で、この運命は決まっていたのだ。仕方がない。そんなレンを1ヨクトメートル(小さい単位)も気にせず、神華はねいろの手を取った。
「よろしくお願いします、音階 ねいろさん♪」
ねいろはうなずいた。そんなねいろの態度とレンの先ほどの対応を思い出して神華は首を傾げた。
「貴方達、四歳にしては大人びてませんか?」
「「神華が言うことじゃない」」
神華の問いに、二人はどこか焦ったような顔をしたが、すぐにいつもの無表情に戻った。神華はそれに違和感を持ったが、本当にちょっとだけの違いなので気のせいかと思い気にしていなかった。ねいろとレンは同時にばっと神華のほうを見た。
「大体私は貴方がそんなに大人っぽい…」
「俺はお前がそんなに…」
「あら、私も貴方達が大人っぽいとは思いますよ?」
神華のその一言が、さらに二人をやる気にさせたようだ。何のやる気かは知らないが、さきほど二人が言いかけたことも気になる。二人は交互に神華の前に立って子供っぽくするための指摘を始めた。
「まずその言い方よ。敬語、それに言い回し」
「それに服!!子供なら、服全部モノクロとかありえねーだろ!?」
「しりませムグ」
神華はねいろに口をふさがれた。ねいろは何をしてもじと目である。
「まずその口調をやめて」
神華は息が苦しくなり暴れる。
「ンー!!!」
それを見ていたレンがさすがにヤバいだろうとねいろに冷や汗だらだらで言う。
「離してやれねいろ…」
そんなレンを見たねいろは神華の口をふさいでいた手を放す。神華は息が上がり地面に膝をついた。「ハッハァハァ…」
ねいろとレンはそんな神華にすかさずたたみかける。
「ねぇいいでしょう?」
「俺たち、子供っぽい奴見てみたいんだよ…」
そのレンのつぶやきを聞き、主人公らしい優しい神華は…
「そ、それなら…だめです。」
許さなかった。
「「エエエッ!?」」
まさか断られると思っていなかったねいろとレンは飛び上がった。
「私は、子供とはどういうものかわかりません。わからなく、なってしまったんです…」
神華は実は全く優しくない。しかも、こっそりとシリアス味を出してきた。この神華の返しに、ただの子供のレンとねいろはシリアス味を全く気にせず、神華に詰め寄った。
「それならもう力ずくで…」
「やるしかないわ…」
「え、なにをです!?」
一時間後
「神華で…だよっ」
神華は、ぶりっ子ポーズでニコッと笑っていた。
「わぁ…」
「かわいー!!」
レンはそんな神華をキラキラした目で見つめた。どうやら自分の技術に驚いているらしい。ねいろは珍しくテンションが上がっている。
神華は、ねいろがどこからか取り出した花の飾りがついた袖がふわっと膨らんでいる上着と、黒と赤色のスカート、そして髪を二つに結んでいた。頭には大きなリボン。そしてそのいずれも黒と赤で統一されている。
ねいろは、神華にうっとりしていた。
「神華…それなら、何しても許されるわ…」
「やっぱり赤と黒って合うよなー…だけど、子供っぽくしとくと言って、結局大人っぽい部分も作ってしまった…そこは改善点だな」
ぶつぶつ言っているレンを神華はじと目で見た。
「そうなんだ…」
こういうところも敬語じゃなくなっているのは、ねいろの徹底的な努力である。
夕焼けがきれいな避難所からの帰り道。神華とレンとねいろは一緒にそれぞれの家へと帰っていた。
「ねぇ神華…」
ねいろは歩きながら言った。
「これからはさ…敬語なしで話してくれない?」
神華は目を見開いてねいろを見た。そして、少し微笑んだ。
「…いいよ、ねいろ、レン。」
「「よっしゃ」」
ねいろとレンはガッツポーズをした。
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