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3話「みんなでひなたぼっこ」
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夕方の街並みで、ひだまりたちが通う学校の制服を着た女学生が友達と談笑しながら歩いている。
彼女達が建設中の建物付近を通った時、通行人の一人が「危ないぞー! 上―!」と叫んだ。
女学生が上を振り向くと、彼女達に建設中の鉄骨が落下してきていた。
「きゃー!」と女学生たちが悲鳴を上げたと同時に、鉄骨はなにものかによってバラバラに解体され、散り散りになって霧散した。
女学生達にぶつかったのは、何者かによって分解された鉄骨の破片くらいだった。
「ふむ、――無事でござろうか」と女学生達に声を掛けるのは、白い軍服のようなコートを着ている女。年齢は女学生と同じ10代くらい。金髪を後ろに束ねていて、腰には刀のようなものを帯刀している。
「あ、ありがとうございます」と女学生の一人がお礼を言う。
「なに、ちょうど試し斬りをしたかったところ。これこそみじん切りというのでござるよ。まるでちくわのような鉄骨でござるな」と金髪の女性。
「試し斬りって――その刀のようなもので――」
「刀のようなものではなく、れっきとした刀でござる。これはコーセンケンという人間の住む世界からはるばる離れたヨヤミノクニと呼ばれる島にある、サムライという人ならざるゴーストのアサシンがウラシャカイで鍛え上げたいわくつきのものらしく――」なにから語り始めた。
「な、なんだかよく分からないですが……あ、ありがとうございます」と女学生は言った。
「うむ、あらゆる困難が錬金術で解決する二一世紀だが、人々の閉ざされた心の闇にはゴーストが存在する。錬金術ではどうにも出来ない、その奇っ怪なポルターガイストに困った時はサムライを呼んでくれ」そう言って、金髪の自称サムライ女は去って行った。
「すごいねー、あの人エクソシストなんだー!」と女学生達は話ながら歩いて行った。
この日からサムライ=エクソシストという図式がこの町で知れ渡ることになったのだ。
「ただいまですー」ひだまりは学校から、こむぎの薬品店に帰宅してきた。
「おかえりー」とすふれ。
「なんか、さっきねー。エクソシストのサムライがいたんだって」ひだまりは楽しそうに、さっき拾ってきた話題を話す。
「どういうことなの、その無茶苦茶な名前」とすふれが困惑する。
「いや、でもエクソシストのサムライだって聞いたよ」とひだまり。
「それは拙者のことでござるか?」店のソファでお茶を飲んでいたのは、さっきの金髪のサムライだった。
「うわでた」とひだまり。
「あー、タフィーちゃんの事だったのね」とすふれ。
「確かにサムライなのは間違いないでござるが、「えくそしすと」というのはなんでござろうか。なんらかの怪異でござるか」
「怪異を倒す方よ」とすふれ。
「そうでござったか。いやーこの街にも妖怪退治はあるのでござるな」
「本当にサムライなの?」とひだまりがたずねると、「それは知らなくても良い事よ」とすふれ。「そっかー」とひだまり。
「サムライは死霊の国、ヨヤミノクニと呼ばれる世界の住民でござって、人ならざるゴーストのアサシンなのでござるよ」タフィーは語る。
「怪異じゃん」とひだまり。
「そのヨヤミノクニのサムライと死闘を繰り広げ、試練を乗り越えたからこそ、今拙者の手元にはコーセンケンという名の刀とサムライの称号を得たのでござる」タフィーはもうすこしだけ語った。
「いや死んでるじゃん、サムライは死霊なんでしょ、じゃあ死闘じゃなくて死んでるじゃんすでに」とひだまり。
「凄いわよね……ホラー小説みたいな世界から生きて帰ってきたのよタフィーちゃんは」とすふれは感心したようにうなずいた。
「ところでどこ生まれなの?」とひだまりがたずねると「オランダ付近でござる」とタフィーが答えた。
「本当に死霊に世界に行ったの?」とひだまりは疑問に思うと「考えなくていいこともあるのよひまちゃん」とすふれは言った。
「それでは拙者がサムライである証拠を見せよう」とタフィーは腰に帯刀していた刀を引き抜いた。
「おおう」とひだまりは離れているのに少しだけのけぞる。「本物のカタナだー」ひだまりが驚くと、「本物よー」とすふれ。
「では行くでござるよ」とタフィーは刀で演舞を見せた。
「こ、これがサムライ……」よく分からないままひだまりはタフィーの演舞に見入る。
タフィーが演舞を終わらせると、ひだまりとすふれは拍手した。『わーすごーい』と二人。
「どうでござったか」とタフィーが聞くと、「なるほど、これがサムライかー」とひだまりはなにやら妙に納得したようだ。
「そうよこれがサムライよ」とすふれがひだまりにそう念を押して言う。
「本当にそうなの?」とひだまり。
「そうでござるよ」とタフィー。
「そうよこれがサムライよ」とすふれ。
「いや、でもゴーストいないし、本当にサムライ――」とひだまりが言うのを「人を疑うのは士道に反するわ、ひまちゃん」とすふれがさえぎって言う。
「そうなんだ、サムライなんだね」とひだまり。
三人が話していると、薬品店のドアが開いた。ドアが開かれてベルが鳴る。ひだまりたちと同じくらいの年の女性が入ってきた。
「ちょっといいかしら、買い足したい薬があるんだけど――」
「はーい」とすふれが店に入ってきた女性を出迎えると、「あ、れあちゃんじゃない」とすふれは彼女の名前を言う。「ええ。あら、タフィーも来てるのね」「そうでござるよ」とタフィー。「それで薬なんだけど――」と、れあは話を続ける。
ドアを開けたときのベルの音を聞いて、店の奥からショコラが出てきた。「あー、店番は私がやるから大丈夫」とショコラは言った。
「あら、大丈夫よー」とすふれが言うと、「いいよいいよ、暇だし」とショコラ。「暇なの!?」とひだまりが言うと「お前は黙ってろ」とショコラが即答する。ブーイングしながら抗議の声を上げるひだまり。
それとショコラはひだまりに「余計なことすんなよ」と釘を刺す。「まだなにもしてないよー!」とひだまり。
ショコラは店のカウンターに移動して、れあの注文を聞き始めた。
「そういえば、こむぎさんは?」とれあが訊ねたのでショコラは「今は出かけてるよー」と答えた。
「こむぎさんに用事があるなら伝えておくけど」とショコラが訊ねると、「ああ、いいのよ。大丈夫。今日は薬を買いに来ただけだから」とれあは手を振りながら言う。「……それでね、今必要なのは――」とれあは注文をショコラに伝えた。
「了解―、少々お待ちを」とショコラは店の奥に行き商品を取りに言った。
「あの人も知り合いなんだ」とひだまり。
「そうよ、この店の出資をしている企業のご息女よ」とすふれ。「ちなみに拙者はれあ殿の家の居候でござる」とタフィー。「そうなんだー」とひだまり。
「やめてよご息女なんて。会社と私はあんまり関係ないし」とれあ。
「へー。なんだかお嬢様っぽくないね」とひだまり「……っぐ」れあが少しびくっとした。「ちょっとひまちゃん!」とすふれが慌てて言うので、「え?」とぽかんとするひだまり。「本人はそのこと結構気にしてるでござるよ。育ちも暮らしも良いはずなのに何故か庶民的な俗っぽさが抜けないとか、垢抜けないとかそういう類いで冠婚葬祭でちょっとばかし悔しい思い出があるらしく――」とタフィーがひそひそと声をひそめて説明する。「タフィー!? あなたねぇ!!」とれあが言うとタフィーは顔をそらした。「拙者は~な~にも~言ってないでござる~♪」「もうっ!」と怒るれあ。
ショコラが店の奥から戻ってきて木箱を持ってきた。「お待たせー。んしょ」とショコラはカウンターに木箱を置く。
「ヨッコラショ」
「今なんて――」ひだまりが聞こうとすると「うるさい黙れ」とショコラは即答した。
れあは買い物を済ませ、用事を片付けたあと、薬品店でお茶を飲んで一休みすることにしたようだ。
すふれが出したお茶を飲んで、れあは一息付く。
「そういえば、一人増えたみたいだけど」と言うれあに「そうなのー」とすふれは言う。れあはひだまりを見る。
「陽州ひだまりですー」とひだまり。
「よろしく、絵工れあよ。ここには働きに?」
「林檎畑師匠に弟子入りに来ましたー」
「へぇー、弟子入りねー」とれあ。
「どちらかというと弟子入りがメインね、ひまちゃんは」とすふれ。
「そうだねー、あ、でもちゃんとお店の手伝いとか仕事はしてるよ」とひだまり。
「してるかしら」とすふれが言うと「してるでしょー!」とひだまりはぷんすか。「どうだか」鼻で笑うショコラ。
「もーショコラちゃんー! ぷんぷんー! 頭ポンポンで小さくなーれー!」ひだまりはショコラの頭をポンポン叩き始めた。
「やめろ馬鹿! 本当に小さくなったらどうすんだこの馬鹿!」とショコラ。
「仲よさそうでよかった」と微笑むれあに「仲良くない!」とショコラが即答した。
「えーひどいよー! ぷんぷんー!」再び、ひだまりはショコラの頭をポンポン叩き始めた。
「だからそれやめろよ!」とひだまりの手を払いのけるショコラ。
「あ、そうだ。お菓子もってくるわねー」とすふれは店の奥へと向かった。「はーい」とひだまり。「なにが良いかしら」とすふれが聞くので、「チョコクッキーがいいな」とひだまりが言うと「はーい」とすふれ。
「お菓子持ってきたわよー」とすふれは今日のお菓子をトレイに載せて、店内の休憩所に運んできた。
「はい、プレーンクッキー」とすふれはお菓子をテーブルに置いた。
「チョコクッキーは」とひだまり。
「これはプレーンクッキーよ」とすふれ。
「いやだから、チョコクッキーは」とひだまり。
「今は買ってきてないわ」とすふれ
「じゃあなんで聞いたの」とひだまりが聞くと「え?」と返すすふれ。「え?」とひだまり。
「これはプレーンクッキーよ」とすふれ。
「まぁこれでいいや」ひだまりは食べ始めた。
「いいのか」とショコラ。
「甘くておいしいー、素朴な感じがいいね」とひだまり。
「これも食べよっと」とひだまりは近くにおいておいたクッキー缶をテーブルに置いた。
ひだまりは缶を開けてチョコクッキーを食べる。
「チョコクッキーもおいしいー」
「おい、それ」とショコラが聞くと、「チョコクッキーだよー」とひだまり。
「いやなんでチョコクッキー缶があるんだよ」とショコラ。
「持ってきたからでしょ。もーショコラちゃんってばー」
「いやそうじゃなくてさ!」とショコラはひだまりを指さす。
「持ってきてたの忘れてたの」とひだまり。「ほらね」とすふれ。「なにが「ほらね」よ」とれあ。
「はいショコラちゃんも」とひだまりはショコラの口にチョコクッキーを突っ込む。「むぐっ!」「わー、ショコラちゃんがチョコクッキー食べたー」と、もだえるショコラを見ながら言うひだまり。
後日。れあが薬品店にまたやってきた。
今日は普段しないような「妙に高そうに見えるドレス」と「なんとなく位が高そうな帽子」を身にまとっている。
「ごきげんよう」とれあが店に入って挨拶するので、ひだまりも挨拶しようとするが、普段しないような挨拶なので「ご……ごき……ごきげん……。???……」とぎこちなくなる。
すふれは「ごきげんよう~」と自然に挨拶を返していた。
ひだまりはすふれに「ね、ねぇなんかれあさん口調変わってない?」とたずねるが「そう?」と返された。
「いえ、特に変わったことはしていませんわよ」とれあ。
「そ、そう……? …………。うん……???」ひだまりは首をかしげた。
「今日もお日柄が良くっていいですわね」とれあが言うと、すふれも相づちを打つ。「そうね~。カウンターのシートの柄も花柄にしてみたのよ、ほらっ」
「その柄ではなくてよ」おほほ、とれあ。
「うふふ、そうだったのね~」とすふれ。
「会話噛み合ってないよ」とひだまりが言うと「噛み合ってるわ」とすふれが返した。
「???」ひだまりは首をもう少し大きくかしげながら腕を組んだ。
「れあちゃん。昨日、薬買ったばかりだから、今日はちょっと立ち寄っただけかしら?」とすふれがたずねる。
微笑みながられあは答える。
「そうでございま……ござい……ご……ございま……あーもう! なんなのよございますわよとか! 使いづらいったらありゃしない! 今どき使わない言葉なんか無理して使うもんじゃないわね!」
れあは頭に被っていた「なんとなく位が高そうな帽子」を地面に叩き付けながら言った。通販で16ユーロだった。
「あ、元に戻った」とひだまり。
「今日は何にする?」とすふれがたずねると「お茶!」とれあ。「はーい」とすふれはお茶を淹れに行った。
みんなで近くの公園にピクニックに行くことになった。
公園と言っても、結構広い国立公園で、公園の全周をランニングしようとしたら1時間くらいは掛かる。
薬品店にタフィーとれあがやってきて、すふれとひだまりとショコラも出かける準備をして出発。
公園に到着した。
「お日様が気持ちいいねー」とひだまりが背伸びをしながら言うと、「今日は一日中晴れらしいわ」とすふれが言う。
ルンルン気分でひだまりがみんなより先行して走る。
「転ぶなよー」とショコラ。
「こんなに広いと走りたくなるねー」
「ランニングしている人もいるわよ」とすふれが言うと「だよねー」とひだまり。
ひだまりはポケットから小瓶を取り出した。
「じゃーん、足が速くなる薬だよ」
みんなはひだまりの小瓶を見る。
「それ作ったのひまちゃん?」とすふれがたずねると「うん」とひだまり。
「飲むと早く走れるんだよー」そういうひだまりに怪訝な顔つきで「大丈夫なのかそれ?」とショコラが訊ねる。
「たぶん」とひだまり。
「たぶんって……」とショコラは思わず身を引く。
「さすがに飲むのは……ちょっと」とすふれが言い切る前にひだまりは全部飲んだ。
「飲んだわね」とれあ。
するとひだまりの走る速度が上がって高速で走れるようになっていた。
「わーすごーい」とすふれが拍手すると「でしょでしょー」とひだまりは走りながら返事する。
「みんなも飲むー?」とひだまりはたずねたが誰も返事はしなかった。
ひだまりはかなり高速でぐるぐるみんなの周りを走っている。
「すごーい」とすふれ。
「すごいでござるなぁ」とタフィー。
「目にも止まらぬ早さね……!」とれあ。
「だーもう! 周りを走るなうっとおしい!」ショコラは頭を抱えて訴えた。
「これなら運動会でも一位間違いなしだよ!」とひだまりが言うと「ダメでござるよ運動会で使っては」とタフィーがツッコむ。
「それじゃ先に行って待ってるねー。場所押さえておくから」とひだまり。
「押さえなくても大丈夫よー、ものすごい広いからねーこの公園―」とすふれが呼びかけたが、たぶん聞こえていない。
みんながひだまりが向かった場所にたどり着く。
「おーい」とひだまりが呼びかけていたので、みんなは向かう。「ここ、良い感じだよー」とひだまり。
「たしかにー」とすふれ。「日当たりも良いし、風よけの木もあってちょうど良いわね」とれあもうなずく。
「こんな短時間によく見つけたなこの場所」とショコラが聞くと。「一回りしてきたからねー」とひだまりが言うと「……え……ひ、一回り……?」ショコラはあ然とした。
「この公園を丸々一回りでござるか?」とタフィー。
「うん」とひだまりはうなずく。
「ヤバイでござる」とタフィー。
「ヤバイわね」とれあ。
「え、なんでヤバイの」とひだまり。
「副作用が心配でござる」
「ひまちゃん、体調とか大丈夫?」すふれがたずねる。
「え? なんで? 大丈夫だよ? なんでそんなこと聞くの?」とひだまり。
それはともかくとして、みんなは昼食を食べることにした。
すふれが持ってきたバケットを開けると、作ってきた昼食が見える。
ランチの内容は主にサンドイッチ。飲み物は甘くない紅茶だった。
「おいしいねー、手が止まらないよー……んぐっ」
サンドイッチが美味しいからとバクバク早く食べすぎてひだまりは咳き込む。
「はぁ……」と呆れながら、水筒に入れていた冷たい水を出すショコラ。
「落ち着いて食べろっての」とショコラが言う。
昼食後、みんなは草原に寝っ転がり、ひなたぼっこをしはじめた。
「風が気持ちいいねー」というひだまりに「ねー」とうなずくすふれ。
「雨降らないと良いね」ひだまりがそう言うと「おい! 縁起でもないこと言うな!」とショコラ。
れあはあくびした。
「いつも毎日忙しいから……こうやって寝転がっていると……なんだか眠くなるわ……ね」
そう言っている間にれあはすでに寝ていた。
「爆速で寝たでござる」とタフィー。
「うふふ、帰るときに起こせばいいんじゃない?」とすふれ。
「そうだねー。夕方になったら起こして」とひだまりはすぐに熟睡し始めてしまった。
「お前もか!」ショコラはひだまりのほうを向いた。
「誰か起きてれば大丈夫だよー」とひだまり。
「さらっと押しつけるなっての……たく、……空でも見てるか」ショコラは青空を眺めながら仰向けに寝っ転がっていた。
ショコラが気がつくと空は夕方になっていた。
「……あれ? ……あれぇ!?」ショコラとしてはちょっとまばたきしたつもりだったが、そのまばたきで寝たらしい。ショコラは腕時計で時間を確認した後、慌てる。「や、やっば! ちょ、ちょっとみんな起きてよ!」
ひだまりは「起きてるよー」と寝言で返事した。
「いや寝てるだろ! 無駄なところは器用だなお前は!」
タフィーとれあは目が覚めたようだ。「うーん……もう夕方?」あくびをするれあ。「そうでござるね」背伸びをするタフィー。
「ひまちゃーん、もうみんな帰っちゃったわよー」とひだまりの耳元でささやくすふれ。
「え?」と首を傾げるショコラ。
「えええー!! みんな酷いよー!」ガバッと起き上がるひだまり。ひだまりは周囲を見渡す。「あれ、みんないるじゃん」「そろそろ帰る時間よー」とすふれ。
「ちょっと喉渇いちゃった」「はいお茶―」とすふれは水筒からお茶を用意する。
「そういえば、すふれはいつ起きたの」とショコラがたずねると、「もとから起きてたわよ」とすふれ。「なんでこの時間になるまで起こさないんだよー!」ショコラはすふれの肩を掴んで揺さぶる。「きゃー! ショコラちゃん乱暴は良くないわー!」とすふれ。
みんなが公園から薬品店に帰宅した。
『ただいまー』とみんなちょっとくたびれている。
「おかえり」とこむぎは言った。
こむぎは本を読みながら店番をしていたようだ。
ひだまりは「あ、師匠。店番変わりますよ」というと「いやもう閉店だけど」とこむぎ。
「ややっ!?」とひだまり。「“ややっ!?”じゃないよ」とこむぎがツッコむ。
ちょっと休憩した後、れあとタフィーは自宅まで帰って行った。
彼女達が建設中の建物付近を通った時、通行人の一人が「危ないぞー! 上―!」と叫んだ。
女学生が上を振り向くと、彼女達に建設中の鉄骨が落下してきていた。
「きゃー!」と女学生たちが悲鳴を上げたと同時に、鉄骨はなにものかによってバラバラに解体され、散り散りになって霧散した。
女学生達にぶつかったのは、何者かによって分解された鉄骨の破片くらいだった。
「ふむ、――無事でござろうか」と女学生達に声を掛けるのは、白い軍服のようなコートを着ている女。年齢は女学生と同じ10代くらい。金髪を後ろに束ねていて、腰には刀のようなものを帯刀している。
「あ、ありがとうございます」と女学生の一人がお礼を言う。
「なに、ちょうど試し斬りをしたかったところ。これこそみじん切りというのでござるよ。まるでちくわのような鉄骨でござるな」と金髪の女性。
「試し斬りって――その刀のようなもので――」
「刀のようなものではなく、れっきとした刀でござる。これはコーセンケンという人間の住む世界からはるばる離れたヨヤミノクニと呼ばれる島にある、サムライという人ならざるゴーストのアサシンがウラシャカイで鍛え上げたいわくつきのものらしく――」なにから語り始めた。
「な、なんだかよく分からないですが……あ、ありがとうございます」と女学生は言った。
「うむ、あらゆる困難が錬金術で解決する二一世紀だが、人々の閉ざされた心の闇にはゴーストが存在する。錬金術ではどうにも出来ない、その奇っ怪なポルターガイストに困った時はサムライを呼んでくれ」そう言って、金髪の自称サムライ女は去って行った。
「すごいねー、あの人エクソシストなんだー!」と女学生達は話ながら歩いて行った。
この日からサムライ=エクソシストという図式がこの町で知れ渡ることになったのだ。
「ただいまですー」ひだまりは学校から、こむぎの薬品店に帰宅してきた。
「おかえりー」とすふれ。
「なんか、さっきねー。エクソシストのサムライがいたんだって」ひだまりは楽しそうに、さっき拾ってきた話題を話す。
「どういうことなの、その無茶苦茶な名前」とすふれが困惑する。
「いや、でもエクソシストのサムライだって聞いたよ」とひだまり。
「それは拙者のことでござるか?」店のソファでお茶を飲んでいたのは、さっきの金髪のサムライだった。
「うわでた」とひだまり。
「あー、タフィーちゃんの事だったのね」とすふれ。
「確かにサムライなのは間違いないでござるが、「えくそしすと」というのはなんでござろうか。なんらかの怪異でござるか」
「怪異を倒す方よ」とすふれ。
「そうでござったか。いやーこの街にも妖怪退治はあるのでござるな」
「本当にサムライなの?」とひだまりがたずねると、「それは知らなくても良い事よ」とすふれ。「そっかー」とひだまり。
「サムライは死霊の国、ヨヤミノクニと呼ばれる世界の住民でござって、人ならざるゴーストのアサシンなのでござるよ」タフィーは語る。
「怪異じゃん」とひだまり。
「そのヨヤミノクニのサムライと死闘を繰り広げ、試練を乗り越えたからこそ、今拙者の手元にはコーセンケンという名の刀とサムライの称号を得たのでござる」タフィーはもうすこしだけ語った。
「いや死んでるじゃん、サムライは死霊なんでしょ、じゃあ死闘じゃなくて死んでるじゃんすでに」とひだまり。
「凄いわよね……ホラー小説みたいな世界から生きて帰ってきたのよタフィーちゃんは」とすふれは感心したようにうなずいた。
「ところでどこ生まれなの?」とひだまりがたずねると「オランダ付近でござる」とタフィーが答えた。
「本当に死霊に世界に行ったの?」とひだまりは疑問に思うと「考えなくていいこともあるのよひまちゃん」とすふれは言った。
「それでは拙者がサムライである証拠を見せよう」とタフィーは腰に帯刀していた刀を引き抜いた。
「おおう」とひだまりは離れているのに少しだけのけぞる。「本物のカタナだー」ひだまりが驚くと、「本物よー」とすふれ。
「では行くでござるよ」とタフィーは刀で演舞を見せた。
「こ、これがサムライ……」よく分からないままひだまりはタフィーの演舞に見入る。
タフィーが演舞を終わらせると、ひだまりとすふれは拍手した。『わーすごーい』と二人。
「どうでござったか」とタフィーが聞くと、「なるほど、これがサムライかー」とひだまりはなにやら妙に納得したようだ。
「そうよこれがサムライよ」とすふれがひだまりにそう念を押して言う。
「本当にそうなの?」とひだまり。
「そうでござるよ」とタフィー。
「そうよこれがサムライよ」とすふれ。
「いや、でもゴーストいないし、本当にサムライ――」とひだまりが言うのを「人を疑うのは士道に反するわ、ひまちゃん」とすふれがさえぎって言う。
「そうなんだ、サムライなんだね」とひだまり。
三人が話していると、薬品店のドアが開いた。ドアが開かれてベルが鳴る。ひだまりたちと同じくらいの年の女性が入ってきた。
「ちょっといいかしら、買い足したい薬があるんだけど――」
「はーい」とすふれが店に入ってきた女性を出迎えると、「あ、れあちゃんじゃない」とすふれは彼女の名前を言う。「ええ。あら、タフィーも来てるのね」「そうでござるよ」とタフィー。「それで薬なんだけど――」と、れあは話を続ける。
ドアを開けたときのベルの音を聞いて、店の奥からショコラが出てきた。「あー、店番は私がやるから大丈夫」とショコラは言った。
「あら、大丈夫よー」とすふれが言うと、「いいよいいよ、暇だし」とショコラ。「暇なの!?」とひだまりが言うと「お前は黙ってろ」とショコラが即答する。ブーイングしながら抗議の声を上げるひだまり。
それとショコラはひだまりに「余計なことすんなよ」と釘を刺す。「まだなにもしてないよー!」とひだまり。
ショコラは店のカウンターに移動して、れあの注文を聞き始めた。
「そういえば、こむぎさんは?」とれあが訊ねたのでショコラは「今は出かけてるよー」と答えた。
「こむぎさんに用事があるなら伝えておくけど」とショコラが訊ねると、「ああ、いいのよ。大丈夫。今日は薬を買いに来ただけだから」とれあは手を振りながら言う。「……それでね、今必要なのは――」とれあは注文をショコラに伝えた。
「了解―、少々お待ちを」とショコラは店の奥に行き商品を取りに言った。
「あの人も知り合いなんだ」とひだまり。
「そうよ、この店の出資をしている企業のご息女よ」とすふれ。「ちなみに拙者はれあ殿の家の居候でござる」とタフィー。「そうなんだー」とひだまり。
「やめてよご息女なんて。会社と私はあんまり関係ないし」とれあ。
「へー。なんだかお嬢様っぽくないね」とひだまり「……っぐ」れあが少しびくっとした。「ちょっとひまちゃん!」とすふれが慌てて言うので、「え?」とぽかんとするひだまり。「本人はそのこと結構気にしてるでござるよ。育ちも暮らしも良いはずなのに何故か庶民的な俗っぽさが抜けないとか、垢抜けないとかそういう類いで冠婚葬祭でちょっとばかし悔しい思い出があるらしく――」とタフィーがひそひそと声をひそめて説明する。「タフィー!? あなたねぇ!!」とれあが言うとタフィーは顔をそらした。「拙者は~な~にも~言ってないでござる~♪」「もうっ!」と怒るれあ。
ショコラが店の奥から戻ってきて木箱を持ってきた。「お待たせー。んしょ」とショコラはカウンターに木箱を置く。
「ヨッコラショ」
「今なんて――」ひだまりが聞こうとすると「うるさい黙れ」とショコラは即答した。
れあは買い物を済ませ、用事を片付けたあと、薬品店でお茶を飲んで一休みすることにしたようだ。
すふれが出したお茶を飲んで、れあは一息付く。
「そういえば、一人増えたみたいだけど」と言うれあに「そうなのー」とすふれは言う。れあはひだまりを見る。
「陽州ひだまりですー」とひだまり。
「よろしく、絵工れあよ。ここには働きに?」
「林檎畑師匠に弟子入りに来ましたー」
「へぇー、弟子入りねー」とれあ。
「どちらかというと弟子入りがメインね、ひまちゃんは」とすふれ。
「そうだねー、あ、でもちゃんとお店の手伝いとか仕事はしてるよ」とひだまり。
「してるかしら」とすふれが言うと「してるでしょー!」とひだまりはぷんすか。「どうだか」鼻で笑うショコラ。
「もーショコラちゃんー! ぷんぷんー! 頭ポンポンで小さくなーれー!」ひだまりはショコラの頭をポンポン叩き始めた。
「やめろ馬鹿! 本当に小さくなったらどうすんだこの馬鹿!」とショコラ。
「仲よさそうでよかった」と微笑むれあに「仲良くない!」とショコラが即答した。
「えーひどいよー! ぷんぷんー!」再び、ひだまりはショコラの頭をポンポン叩き始めた。
「だからそれやめろよ!」とひだまりの手を払いのけるショコラ。
「あ、そうだ。お菓子もってくるわねー」とすふれは店の奥へと向かった。「はーい」とひだまり。「なにが良いかしら」とすふれが聞くので、「チョコクッキーがいいな」とひだまりが言うと「はーい」とすふれ。
「お菓子持ってきたわよー」とすふれは今日のお菓子をトレイに載せて、店内の休憩所に運んできた。
「はい、プレーンクッキー」とすふれはお菓子をテーブルに置いた。
「チョコクッキーは」とひだまり。
「これはプレーンクッキーよ」とすふれ。
「いやだから、チョコクッキーは」とひだまり。
「今は買ってきてないわ」とすふれ
「じゃあなんで聞いたの」とひだまりが聞くと「え?」と返すすふれ。「え?」とひだまり。
「これはプレーンクッキーよ」とすふれ。
「まぁこれでいいや」ひだまりは食べ始めた。
「いいのか」とショコラ。
「甘くておいしいー、素朴な感じがいいね」とひだまり。
「これも食べよっと」とひだまりは近くにおいておいたクッキー缶をテーブルに置いた。
ひだまりは缶を開けてチョコクッキーを食べる。
「チョコクッキーもおいしいー」
「おい、それ」とショコラが聞くと、「チョコクッキーだよー」とひだまり。
「いやなんでチョコクッキー缶があるんだよ」とショコラ。
「持ってきたからでしょ。もーショコラちゃんってばー」
「いやそうじゃなくてさ!」とショコラはひだまりを指さす。
「持ってきてたの忘れてたの」とひだまり。「ほらね」とすふれ。「なにが「ほらね」よ」とれあ。
「はいショコラちゃんも」とひだまりはショコラの口にチョコクッキーを突っ込む。「むぐっ!」「わー、ショコラちゃんがチョコクッキー食べたー」と、もだえるショコラを見ながら言うひだまり。
後日。れあが薬品店にまたやってきた。
今日は普段しないような「妙に高そうに見えるドレス」と「なんとなく位が高そうな帽子」を身にまとっている。
「ごきげんよう」とれあが店に入って挨拶するので、ひだまりも挨拶しようとするが、普段しないような挨拶なので「ご……ごき……ごきげん……。???……」とぎこちなくなる。
すふれは「ごきげんよう~」と自然に挨拶を返していた。
ひだまりはすふれに「ね、ねぇなんかれあさん口調変わってない?」とたずねるが「そう?」と返された。
「いえ、特に変わったことはしていませんわよ」とれあ。
「そ、そう……? …………。うん……???」ひだまりは首をかしげた。
「今日もお日柄が良くっていいですわね」とれあが言うと、すふれも相づちを打つ。「そうね~。カウンターのシートの柄も花柄にしてみたのよ、ほらっ」
「その柄ではなくてよ」おほほ、とれあ。
「うふふ、そうだったのね~」とすふれ。
「会話噛み合ってないよ」とひだまりが言うと「噛み合ってるわ」とすふれが返した。
「???」ひだまりは首をもう少し大きくかしげながら腕を組んだ。
「れあちゃん。昨日、薬買ったばかりだから、今日はちょっと立ち寄っただけかしら?」とすふれがたずねる。
微笑みながられあは答える。
「そうでございま……ござい……ご……ございま……あーもう! なんなのよございますわよとか! 使いづらいったらありゃしない! 今どき使わない言葉なんか無理して使うもんじゃないわね!」
れあは頭に被っていた「なんとなく位が高そうな帽子」を地面に叩き付けながら言った。通販で16ユーロだった。
「あ、元に戻った」とひだまり。
「今日は何にする?」とすふれがたずねると「お茶!」とれあ。「はーい」とすふれはお茶を淹れに行った。
みんなで近くの公園にピクニックに行くことになった。
公園と言っても、結構広い国立公園で、公園の全周をランニングしようとしたら1時間くらいは掛かる。
薬品店にタフィーとれあがやってきて、すふれとひだまりとショコラも出かける準備をして出発。
公園に到着した。
「お日様が気持ちいいねー」とひだまりが背伸びをしながら言うと、「今日は一日中晴れらしいわ」とすふれが言う。
ルンルン気分でひだまりがみんなより先行して走る。
「転ぶなよー」とショコラ。
「こんなに広いと走りたくなるねー」
「ランニングしている人もいるわよ」とすふれが言うと「だよねー」とひだまり。
ひだまりはポケットから小瓶を取り出した。
「じゃーん、足が速くなる薬だよ」
みんなはひだまりの小瓶を見る。
「それ作ったのひまちゃん?」とすふれがたずねると「うん」とひだまり。
「飲むと早く走れるんだよー」そういうひだまりに怪訝な顔つきで「大丈夫なのかそれ?」とショコラが訊ねる。
「たぶん」とひだまり。
「たぶんって……」とショコラは思わず身を引く。
「さすがに飲むのは……ちょっと」とすふれが言い切る前にひだまりは全部飲んだ。
「飲んだわね」とれあ。
するとひだまりの走る速度が上がって高速で走れるようになっていた。
「わーすごーい」とすふれが拍手すると「でしょでしょー」とひだまりは走りながら返事する。
「みんなも飲むー?」とひだまりはたずねたが誰も返事はしなかった。
ひだまりはかなり高速でぐるぐるみんなの周りを走っている。
「すごーい」とすふれ。
「すごいでござるなぁ」とタフィー。
「目にも止まらぬ早さね……!」とれあ。
「だーもう! 周りを走るなうっとおしい!」ショコラは頭を抱えて訴えた。
「これなら運動会でも一位間違いなしだよ!」とひだまりが言うと「ダメでござるよ運動会で使っては」とタフィーがツッコむ。
「それじゃ先に行って待ってるねー。場所押さえておくから」とひだまり。
「押さえなくても大丈夫よー、ものすごい広いからねーこの公園―」とすふれが呼びかけたが、たぶん聞こえていない。
みんながひだまりが向かった場所にたどり着く。
「おーい」とひだまりが呼びかけていたので、みんなは向かう。「ここ、良い感じだよー」とひだまり。
「たしかにー」とすふれ。「日当たりも良いし、風よけの木もあってちょうど良いわね」とれあもうなずく。
「こんな短時間によく見つけたなこの場所」とショコラが聞くと。「一回りしてきたからねー」とひだまりが言うと「……え……ひ、一回り……?」ショコラはあ然とした。
「この公園を丸々一回りでござるか?」とタフィー。
「うん」とひだまりはうなずく。
「ヤバイでござる」とタフィー。
「ヤバイわね」とれあ。
「え、なんでヤバイの」とひだまり。
「副作用が心配でござる」
「ひまちゃん、体調とか大丈夫?」すふれがたずねる。
「え? なんで? 大丈夫だよ? なんでそんなこと聞くの?」とひだまり。
それはともかくとして、みんなは昼食を食べることにした。
すふれが持ってきたバケットを開けると、作ってきた昼食が見える。
ランチの内容は主にサンドイッチ。飲み物は甘くない紅茶だった。
「おいしいねー、手が止まらないよー……んぐっ」
サンドイッチが美味しいからとバクバク早く食べすぎてひだまりは咳き込む。
「はぁ……」と呆れながら、水筒に入れていた冷たい水を出すショコラ。
「落ち着いて食べろっての」とショコラが言う。
昼食後、みんなは草原に寝っ転がり、ひなたぼっこをしはじめた。
「風が気持ちいいねー」というひだまりに「ねー」とうなずくすふれ。
「雨降らないと良いね」ひだまりがそう言うと「おい! 縁起でもないこと言うな!」とショコラ。
れあはあくびした。
「いつも毎日忙しいから……こうやって寝転がっていると……なんだか眠くなるわ……ね」
そう言っている間にれあはすでに寝ていた。
「爆速で寝たでござる」とタフィー。
「うふふ、帰るときに起こせばいいんじゃない?」とすふれ。
「そうだねー。夕方になったら起こして」とひだまりはすぐに熟睡し始めてしまった。
「お前もか!」ショコラはひだまりのほうを向いた。
「誰か起きてれば大丈夫だよー」とひだまり。
「さらっと押しつけるなっての……たく、……空でも見てるか」ショコラは青空を眺めながら仰向けに寝っ転がっていた。
ショコラが気がつくと空は夕方になっていた。
「……あれ? ……あれぇ!?」ショコラとしてはちょっとまばたきしたつもりだったが、そのまばたきで寝たらしい。ショコラは腕時計で時間を確認した後、慌てる。「や、やっば! ちょ、ちょっとみんな起きてよ!」
ひだまりは「起きてるよー」と寝言で返事した。
「いや寝てるだろ! 無駄なところは器用だなお前は!」
タフィーとれあは目が覚めたようだ。「うーん……もう夕方?」あくびをするれあ。「そうでござるね」背伸びをするタフィー。
「ひまちゃーん、もうみんな帰っちゃったわよー」とひだまりの耳元でささやくすふれ。
「え?」と首を傾げるショコラ。
「えええー!! みんな酷いよー!」ガバッと起き上がるひだまり。ひだまりは周囲を見渡す。「あれ、みんないるじゃん」「そろそろ帰る時間よー」とすふれ。
「ちょっと喉渇いちゃった」「はいお茶―」とすふれは水筒からお茶を用意する。
「そういえば、すふれはいつ起きたの」とショコラがたずねると、「もとから起きてたわよ」とすふれ。「なんでこの時間になるまで起こさないんだよー!」ショコラはすふれの肩を掴んで揺さぶる。「きゃー! ショコラちゃん乱暴は良くないわー!」とすふれ。
みんなが公園から薬品店に帰宅した。
『ただいまー』とみんなちょっとくたびれている。
「おかえり」とこむぎは言った。
こむぎは本を読みながら店番をしていたようだ。
ひだまりは「あ、師匠。店番変わりますよ」というと「いやもう閉店だけど」とこむぎ。
「ややっ!?」とひだまり。「“ややっ!?”じゃないよ」とこむぎがツッコむ。
ちょっと休憩した後、れあとタフィーは自宅まで帰って行った。
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