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2話「ちっちゃなせんぱい」
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「ふんふんふーん♪」
薬品店の実験室で、ひだまりは鼻歌を歌いながら薬品の調合をしていた。
「うーん、今のところ良い感じー♪ あ、そーれ♪」
とノリノリで最近流行の歌を歌いながら調子よく作業をすすめるひだまり。
すると試験管が唐突に光って急激に反応を始めた。
研究室がバゴーンと爆発する。
「うわわわわわぁああーー!」
ひだまりは実験失敗による爆発事故にパニックになる。
「あわわわわわわ――え、エマージェンシー! エマージェンシー! メーデー! メーデーだよぉー!」
「ちょ、ちょっとぉー!? 大丈夫ひまちゃん!?」
すふれが消火器を両手に持って実験室に飛び込んでくる。
勢いよくひだまりも巻き込んで実験室に消火器を噴射するすふれ。
「うぉおおおおおおおお!」
ひだまりの悲鳴が聞こえる。
念のため、実験室への消火活動が終わったあと。服に降りかかった消火剤を払いのけるひだまり。
「ひまちゃん大丈夫?」とすふれはたずねる。
「わ、わたしは大丈夫……って機材は大丈夫かな!?」
ひだまりは慌てて状況を確認する。
実験室は窓が吹っ飛ぶように割れた(大破)だけで大丈夫なようだ。
「よ、よかったぁ~」
ほっとするひだまり。
「機材より、ひまちゃんの体のほうが大事よ! えぇ、簡単に買える機材じゃないけどね! 高い研究用の機材だけどね!」
「言い方に毒があってもなにも言い返せないよ……って、なんですふれちゃん消火器二つ持ってきてるの?」
とひだまりがたずねると、「念のために二つ持ってきたわ!」とすふれ。
「そ、そう……」とひだまりは困惑している。
「おいおい、全く……しっかりしてくれよ」
とこむぎが呆れた様子で実験室をのぞき込む。
「す、すみません師匠!」とひだまりが土下座する。
「い、いや仕方ないけどさ……あたしもたまにやるし……ってか師匠って言うのやめろよ」
「はい、師匠!」
「だからやめろって」
とこむぎは半目でひだまりを見ながら、ひだまりに近寄る。
こむぎはひだまりの顔を手で触りながら、ひだまりが怪我をしていないか確認する。
「ったく、大丈夫か? 目とか怪我してないよな? 気をつけるように」
「はい……」とひだまりはしゅんと落ち込んだ。
ふたりの様子を見ていたすふれは「あらー」と言う。
「まったく。全然ダメダメね!」
見知らぬ少女が、実験室の入り口に立っている。
彼女は栗毛色のロングヘアーに帽子を被っている。
少女はひだまりに指をさしながら、呆れたように言う。
身長はひだまりたちより低めだ。
「あ、こんにちわー。ねえ、この子は誰?」とひだまりがすふれとこむぎにたずねる。
「ショコラちゃんよー」とすふれが答える。
「よろしく、ショコラちゃん!」とひだまり。
「ちょ……ちょっと! 「この子」ってねぇ! 私の方が一年上なんだけど!?」
「え、えぇ!? そうなの!? 見えないよー!」とひだまりは自分と少女の背丈を手のひらで比べる。
「だって、身長が……」
「比べんな!」少女がひだまりの手のひらを叩く。
「そ、それはそれは……でもまだまだ背が高くなるチャンスはあるはずだよっ」
「だからやめろって!」うがー、とショコラ。
「ショコラちゃんはひまちゃんより先にこむぎちゃんに弟子入りしたのよー」とすふれ。
「そうよ、私のほうが先輩なんだかんね、それなりの敬意を払いなさいよ」
「ご、ごめんね……」とひだまりはしゅんとする。
「陽州ひだまりです。よろしくねショコラちゃん」
「ショコラちゃん……」とショコラは少し不満そうだ。
「ショコラ先輩のほうがいいのかな」ひだまりはうーんと考えるようにしながら言う。
「……そ、そうね!」若干うれしそうにうなずくショコラ。
「でも見た目からするとショコラちゃんのほうがしっくりくると思うわ」とすふれが言った。
「だから見た目の話はやめてよー!」とショコラはすふれに抗議する。
「それでショコラちゃんの名字って」とひだまりはたずねる。
「華十(かと)。華十ショコラね。よろしく」と二人は握手する。
ひだまりは笑顔で満足そうだ。ショコラもなにか隠しているような感じで表情が少し固まっているが、特に問題はなさそうだ。
握手する二人に割り込むようにすふれがこそっと呟く。
「華十ショコラッテよ……」
「――おい!」ショコラがすふれのほうを振り向く。
「か、華十ショコラッテ……」ひだまりがショコラに背を向けて笑いを堪えている。
「笑うな!」
「ご、ごめんね……名前は笑っちゃだめだもんね……!」
「個性的な名前よね」とすふれ。
「あ、あぁ……先輩としての威厳が……」とショコラがガクっとうなだれる。
「違うの馬鹿にしているわけじゃないの! でも、いきなり名前の……発音が」
ひだまりは慌ててフォローしようとするが、名前について思い出し笑いをする。
「おい」とショコラ。
「あのね、なんども言うけど、わたしはあなたの先輩なんだからね!」とショコラ。
「そ、そうだよね。ごめんね」とひだまりはショコラに謝る。
「う、うん……本当に謝るとは思わなかったけど」とショコラは少しびっくりしている。
「先輩って事はショコラちゃんはわたしより年が一個上なのかな?」とひだまりは年齢をたずねている。
「年齢の話は別にしなくていいじゃない」とショコラ。
「それで実際はいくつなのかな?」とひだまりはもう一度たずねる。
ショコラがひだまりに背を向けたので、「ショコラちゃん?」とひだまりがもう一度聞く。
「べ、別にそんなこと聞かなくてもいいんじゃないの……」
ショコラはひだまりのほうに顔を見せない。
「あの……」と、戸惑うひだまりの質問にすふれが答えた。
「ひまちゃんと同い年よ」
「そうなんだー」とひだまりはすふれのほうを向いた。
「おいっ!!」ショコラがすふれのほっぺをつかむ。
「い、いひゃいわーショコラちゃんー」
「おーい! こらー!」ショコラが若干泣き顔っぽくなっている。
「なーんだ、同い年ならそう言ってくれればいいのにー」とひだまり。
「で、でもっ! それでもわたしは姉弟子だからねぇっ!」とショコラはムキになる。
「わかってるってー」とひだまりは適当な返事をする。
「ぐぬぬ……」ショコラは拳を握りしめてなにか言いたいことを堪えているようだ。
「かわいい先輩でよかったー」とひだまりはショコラに抱きついた。
「こらー!」とショコラが恥ずかしがりながらもぷんすか怒る。
「離せぇー!」ショコラはひだまりから逃げようとする。
「離さないよー」でもひだまりは逃がそうとしない。
「離せぇー!」それでもショコラはひだまりから逃げようとする。
「へっへーん」それでもひだまりは以下同上。
「楽しそうねー」とすふれはふたりを見て微笑んでいる。
ショコラは抱きついているひだまりから力尽くで離れた。
「ば、馬鹿にしやがってぇー」ショコラはむかっとしている。
「してないよー!」必死になだめるひだまり。
「こうなったら見せてやる、先輩としての意地ってもんを!」
とショコラは実験室でまだ使えそうな機材と素材を手にし、なにやら準備を始めた。
「えーっと、ひだまりが作ろうとしていたのは……ふんふん、なるほどねー」とショコラはなにか始めた。
「あらぁ、ひまちゃんが作ろうとしていたのと同じものを作ろうとしているのね」とすふれ。
「そうよ、わたしのほうが上ってこと思い知らせてやるんだから!」とショコラは手際よく作業を始めた。
「あ、あぶないよー! また爆発しちゃうよ! またまたエマージェンシーだよぉおお!」
「あんたじゃないんだからなるわけないでしょうが!」と止めようとするひだまりに牽制するショコラ。
すふれもひだまりの肩を抑えて「大丈夫よー、ひまちゃん。ショコラちゃんはなかなか腕があるんだから」
「そうよ!」とショコラは薬品の調合を順調に進める。試験管が光り輝き始める。
「これで仕上げね――ヨッコラショ!」
「い、いまなんて――!?」ひだまりがそう叫んだと同時に調合が完了したみたいだ。
「どうよ!」とショコラが自慢げに言うと、こむぎが確認をする。
「どれ……うむ、良く出来ている。偉いぞーショコラ」とこむぎがショコラの頭をなでるとショコラはうれしそうだ。
「どんなもんよ!」と自慢げなショコラ。
「す、すごーい! ……あ、それはそれで置いといて」とひだまり。
「置いとくな!」とショコラがツッコミを入れる。
「仕上げ前に……なんて」ひだまりは確認しようとする。
「なにも言ってないよ」とショコラが即答する。
「ヨッコラ――」
ショコラはすふれの口を塞いだ。
「むー!」すふれは最後まで言いたそうだ。
「言わなくていいー!」
ショコラはすふれの口を必死で塞ぐ。
ぼけーっとするひだまり。爆笑するこむぎ。
「あー、面白かった。ひだまりもショコラを見習うんだぞ。簡単なのは先輩を頼りにしな」とこむぎは笑い終わる。
「はい、勉強になります! ……ショコラちゃんの調合とっても上手―! やっぱり先輩なんだなー」とひだまりが素直に感心していると、ショコラは恥ずかしそうに笑顔になった。
「え、えへへ……っは!? ふん、そりゃそうよ先輩なんだから!」喜んでいたが、みんながいることを思い出して強がり始めたのだった。
「えー? そうなのかなー?」とひだまりが首をかしげたあと、ショコラに抱きつく。
「そりゃそう……って抱きつくのやめろー!」
「わーい、やっぱり小さいやー」
「うるさいー! 離れろこの!」
ひだまりはショコラが抵抗しても抱きつくのをやめなかったのだった。
二人のやりとりを見ていて、こむぎはははは、と笑った。
「ここもちょっとだけにぎやかになったな」
「そうねー、三人だとわりと静かだったものね」すふれはうなずく。
「ふざけるやつがいないからな」とこむぎ。
「ふざけてないですぅ!」ひだまりはこむぎにそう言い返した。
「どうみてもふざけてるだろっ!」ショコラは抗議する。
「そんなことないよぉおー!」ひだまりも抗議する。
こむぎはなにかを思い出したように言う。
「そういえば、昨日のことだが、ひだまりが見せてくれたあのでかすぎる木のことだけどさ。独学であの成果はなかなかのものだよ。将来性結構ありそうだし、これからもあの調子で頑張るといいよ」
「あの……それは……」ちょっとのミスでド派手な巨大樹になったことを言おうとしているのか、口をパクパクとするひだまりだが、やっぱり言うのをやめたようだ。
「えぇ!? わたしがいない間になにがあったのよ!?」ショコラはひだまりに勢いよく振り向く。
「あぁ、そっか。そういえば、ショコラは初耳だったな」そう言うこむぎにショコラはそうだとばかりに強くうなずいた。
「そうですよ! ぐぬぬ……ひだまりめ、したり顔か」とショコラはまたひだまりを見る。
「えへへ」とひだまりは照れ笑いをしている。
「えへへじゃないっ!」とショコラ。
「じゃあ、てへっ☆」とひだまりは小馬鹿にするように笑う。
「余計ムカつくわ! うぐぐ……見てなさいよ、先輩としての意地ってのを見せてやるんだから!」ショコラは悔しそうだ。
「べ、別にそんなことしなくていいよぉー!」とひだまりはショコラをなだめようとする。
「うるさいー!」ショコラはなんだかむきになっているようだった。
後日。薬品店にて、居住スペースのリビングでのんきに紅茶を飲んでいたひだまりを指さしながらショコラが宣戦布告をしたのだった。
「勝負よ!」と、やけに気合いが入っているショコラ。
「ほ、本当にやるの……?」ひだまりは若干面倒くさそうに困惑しながら、ショコラにたずねた。
「やるに決まってるでしょ、わたしの威厳が無くなっちゃうじゃない、先輩としての威厳が」
「そんなのいらないよぉー!」
「わたしがいるの!!」とショコラがむかっとしている。
「さ、ちゃっちゃとやりましょ」
「うぇー、自分がやりたいだけじゃん……」
「なんか言った?」
「ショコラちゃんは優秀なリーダーになりそうだなぁーって」そんなことは言ってなかった。
「そ、そう!? ――ってそんなこと言っても勝負は勝負でやるからね」と実際に言ってなかったひだまりの発言にウキウキと喜びながら実験室に向かっていくのだった。
「本当にやるのかぁー……」とトボトボひだまりもショコラの後を付いていこうとするが、「あ」となにか思い出したようだ。
「ちょっと、どうしたのよ」とひだまりの様子が気になったショコラが、実験室からリビングを覗きながらたずねる。
「紅茶飲みかけだった」
「あのねっ!」とショコラがツッコミを入れる。「さっさと飲んできなさいよ、先に実験室で待ってるから」意外と優しかったショコラであった。
二人が実験をするという勝負を聞いてウキウキで、すふれが審査員を務めると言った。
ひだまりが実験室に向かうと、妙に気合いの入ったショコラと楽しそうなすふれと、渋々審査席に座らされているこむぎがいた。
「審査員を勤めるすふれですー」
「なんであたしまで……」とこむぎ。
(なんだかおおごとに……)とひだまりは独り言をいう。
すふれとこむぎは用意された椅子に座り、テーブルの上には審査員と書かれたネームプレートが乗っている。そして木製のボウルにクッキーが入っている。観戦中に食べるのだろう。
「別にいいじゃない、こむぎちゃんも弟子の勝負気になるでしょ」とすふれはこむぎにそう言う。
「テレビ見てたんだけど」とこむぎ。
「なに見てたんですか」ひだまりが聞く。
「別に何見てたっていいだろ」クッキーを食べながら、適当にあしらうこむぎだったが、すふれが答えてしまう。
「ドラマなんだけどね、あの恋愛ものだったわよー、ほら昼にやってる――」
「言わなくていいから」とこむぎ。
「おやおやおやぁ!?」ひだまりは話に食いついた。
「ほらみろ」とこむぎ。
「話題を逸らさないで!」とショコラ。
「ごめんごめん、勝負はちゃんとやるからー」とひだまり。
「余裕ぶっているのも今のうちよ」不敵に笑うショコラ。
(いや、わたしやりたくないんだけど)と、つぶやくひだまり。
「負けないんだから」とショコラは腕まくりをする。
(負けて終わらせようかな)とつぶやくひだまり。
「それでは~……勝負、開始~」すふれが卓上ベルを鳴らす。
薬剤調合バトルが始まった。
「負けるもんか!」勢いよくショコラはスタートダッシュを切った。
「う、うおおおおお……すごい迫力……」ひだまりはショコラの気合いに圧倒される。
「ふたりともがんばれ~」すふれの応援が聞こえる。
「フレー、フレー、ふたりともっ! フレー、フレー、ふたりともっ!」
「ちょ、ちょっと集中できないじゃないー!」ショコラからクレームが入った。
「えー」とつまらなさそうにすふれは応援をやめた。
調合バトルは続いている。その時、ひだまりが調合している試験管から光が生まれた。
「おおおっ!?」と注目するひだまりとすふれ。こむぎはクッキーを食べながら、なんとなく様子を眺めている。
「す、すごいのできちゃいそうー!」ひだまりは驚きながら気合いを入れる。
「なにぃいいい!?」焦るショコラ。
「がんばれーひまちゃんー」応援するすふれ。
「どっちでもいいから早く勝負付けてくれよなー」とこむぎはあくびをした。
「うぉおおおお行くぞぉおおお!」ひだまりが叫ぶ。
「ま、まさか……そ、そんなことって――!」絶句するショコラ。
ひだまりの調合はまた失敗して実験室がバゴーンと爆発した。
ひだまりとショコラ二人巻き沿いに消火器から吹き出す消化剤が撒かれる。
『ぎゃあああああー!』
「建て直したばっかなのよー!」とぷんすか怒るすふれ。
「なんでー!?」というひだまりの悲鳴と「真面目にやれー! バカー!」と苦情を入れるショコラの叫びが部屋中に響く。
「こうなると思ってたよ」とクッキーを一口食べようとしたこむぎだったが、クッキーは爆風で吹き飛んだようで、テーブルの上にはなにもなかった。
「あれ?」というこむぎの手は、スカッと虚空を掴む。
「……おい、クッキーまでどっかいっちまったじゃんか」こむぎはちょっとだけむかっと怒り顔だった。
実験室の鎮火後、すふれが結果を発表した。
「えっとー、勝負の結果はぁー。ショコラちゃんの勝ちでーす! わーい!」
「納得いかないんだけど……」とショコラ。
「はー、負けちゃった。じゃあもう帰って良い?」ひだまりは伸びをしたあと、実験室を去ろうとする。
「おいコラ!」ショコラは抗議した。
「そういえば、なんで私負けちゃったのかな」勝負の結果に少し疑問を持ったひだまりがすふれに訊ねた。
「爆発したからよ」とすふれ。
「爆発かー」となんとなくひだまりは納得しているようだ。
「ルール上、爆発はリタイアになるわね」とすふれは説明した。
(ルールなんてあったかな……?)とひだまり、ショコラ、こむぎの三人は頭にハテナマークが浮かんでいるようだった。
「じゃあそれでいいや」ひだまりが実験室を後にしようとすると、「おい待てコラ!」と抗議するショコラ。
ひだまりの後頭部をわしづかみにしながらこむぎが「掃除していけ」と言う。
「はい」とひだまりは即答した。
掃除中、ひだまりは「いやーでも、実験勝負ってのも楽しいね」「……そう?」とショコラはちょっと嬉しそうに返事をする。
「こういう遊びもたまにはいいよね!」とひだまりが言うと、「そういうつもりで始めたんじゃないわよ」と空咳をしたあと、ショコラは明後日の方向を向きながら言葉を返した。
薬品店の実験室で、ひだまりは鼻歌を歌いながら薬品の調合をしていた。
「うーん、今のところ良い感じー♪ あ、そーれ♪」
とノリノリで最近流行の歌を歌いながら調子よく作業をすすめるひだまり。
すると試験管が唐突に光って急激に反応を始めた。
研究室がバゴーンと爆発する。
「うわわわわわぁああーー!」
ひだまりは実験失敗による爆発事故にパニックになる。
「あわわわわわわ――え、エマージェンシー! エマージェンシー! メーデー! メーデーだよぉー!」
「ちょ、ちょっとぉー!? 大丈夫ひまちゃん!?」
すふれが消火器を両手に持って実験室に飛び込んでくる。
勢いよくひだまりも巻き込んで実験室に消火器を噴射するすふれ。
「うぉおおおおおおおお!」
ひだまりの悲鳴が聞こえる。
念のため、実験室への消火活動が終わったあと。服に降りかかった消火剤を払いのけるひだまり。
「ひまちゃん大丈夫?」とすふれはたずねる。
「わ、わたしは大丈夫……って機材は大丈夫かな!?」
ひだまりは慌てて状況を確認する。
実験室は窓が吹っ飛ぶように割れた(大破)だけで大丈夫なようだ。
「よ、よかったぁ~」
ほっとするひだまり。
「機材より、ひまちゃんの体のほうが大事よ! えぇ、簡単に買える機材じゃないけどね! 高い研究用の機材だけどね!」
「言い方に毒があってもなにも言い返せないよ……って、なんですふれちゃん消火器二つ持ってきてるの?」
とひだまりがたずねると、「念のために二つ持ってきたわ!」とすふれ。
「そ、そう……」とひだまりは困惑している。
「おいおい、全く……しっかりしてくれよ」
とこむぎが呆れた様子で実験室をのぞき込む。
「す、すみません師匠!」とひだまりが土下座する。
「い、いや仕方ないけどさ……あたしもたまにやるし……ってか師匠って言うのやめろよ」
「はい、師匠!」
「だからやめろって」
とこむぎは半目でひだまりを見ながら、ひだまりに近寄る。
こむぎはひだまりの顔を手で触りながら、ひだまりが怪我をしていないか確認する。
「ったく、大丈夫か? 目とか怪我してないよな? 気をつけるように」
「はい……」とひだまりはしゅんと落ち込んだ。
ふたりの様子を見ていたすふれは「あらー」と言う。
「まったく。全然ダメダメね!」
見知らぬ少女が、実験室の入り口に立っている。
彼女は栗毛色のロングヘアーに帽子を被っている。
少女はひだまりに指をさしながら、呆れたように言う。
身長はひだまりたちより低めだ。
「あ、こんにちわー。ねえ、この子は誰?」とひだまりがすふれとこむぎにたずねる。
「ショコラちゃんよー」とすふれが答える。
「よろしく、ショコラちゃん!」とひだまり。
「ちょ……ちょっと! 「この子」ってねぇ! 私の方が一年上なんだけど!?」
「え、えぇ!? そうなの!? 見えないよー!」とひだまりは自分と少女の背丈を手のひらで比べる。
「だって、身長が……」
「比べんな!」少女がひだまりの手のひらを叩く。
「そ、それはそれは……でもまだまだ背が高くなるチャンスはあるはずだよっ」
「だからやめろって!」うがー、とショコラ。
「ショコラちゃんはひまちゃんより先にこむぎちゃんに弟子入りしたのよー」とすふれ。
「そうよ、私のほうが先輩なんだかんね、それなりの敬意を払いなさいよ」
「ご、ごめんね……」とひだまりはしゅんとする。
「陽州ひだまりです。よろしくねショコラちゃん」
「ショコラちゃん……」とショコラは少し不満そうだ。
「ショコラ先輩のほうがいいのかな」ひだまりはうーんと考えるようにしながら言う。
「……そ、そうね!」若干うれしそうにうなずくショコラ。
「でも見た目からするとショコラちゃんのほうがしっくりくると思うわ」とすふれが言った。
「だから見た目の話はやめてよー!」とショコラはすふれに抗議する。
「それでショコラちゃんの名字って」とひだまりはたずねる。
「華十(かと)。華十ショコラね。よろしく」と二人は握手する。
ひだまりは笑顔で満足そうだ。ショコラもなにか隠しているような感じで表情が少し固まっているが、特に問題はなさそうだ。
握手する二人に割り込むようにすふれがこそっと呟く。
「華十ショコラッテよ……」
「――おい!」ショコラがすふれのほうを振り向く。
「か、華十ショコラッテ……」ひだまりがショコラに背を向けて笑いを堪えている。
「笑うな!」
「ご、ごめんね……名前は笑っちゃだめだもんね……!」
「個性的な名前よね」とすふれ。
「あ、あぁ……先輩としての威厳が……」とショコラがガクっとうなだれる。
「違うの馬鹿にしているわけじゃないの! でも、いきなり名前の……発音が」
ひだまりは慌ててフォローしようとするが、名前について思い出し笑いをする。
「おい」とショコラ。
「あのね、なんども言うけど、わたしはあなたの先輩なんだからね!」とショコラ。
「そ、そうだよね。ごめんね」とひだまりはショコラに謝る。
「う、うん……本当に謝るとは思わなかったけど」とショコラは少しびっくりしている。
「先輩って事はショコラちゃんはわたしより年が一個上なのかな?」とひだまりは年齢をたずねている。
「年齢の話は別にしなくていいじゃない」とショコラ。
「それで実際はいくつなのかな?」とひだまりはもう一度たずねる。
ショコラがひだまりに背を向けたので、「ショコラちゃん?」とひだまりがもう一度聞く。
「べ、別にそんなこと聞かなくてもいいんじゃないの……」
ショコラはひだまりのほうに顔を見せない。
「あの……」と、戸惑うひだまりの質問にすふれが答えた。
「ひまちゃんと同い年よ」
「そうなんだー」とひだまりはすふれのほうを向いた。
「おいっ!!」ショコラがすふれのほっぺをつかむ。
「い、いひゃいわーショコラちゃんー」
「おーい! こらー!」ショコラが若干泣き顔っぽくなっている。
「なーんだ、同い年ならそう言ってくれればいいのにー」とひだまり。
「で、でもっ! それでもわたしは姉弟子だからねぇっ!」とショコラはムキになる。
「わかってるってー」とひだまりは適当な返事をする。
「ぐぬぬ……」ショコラは拳を握りしめてなにか言いたいことを堪えているようだ。
「かわいい先輩でよかったー」とひだまりはショコラに抱きついた。
「こらー!」とショコラが恥ずかしがりながらもぷんすか怒る。
「離せぇー!」ショコラはひだまりから逃げようとする。
「離さないよー」でもひだまりは逃がそうとしない。
「離せぇー!」それでもショコラはひだまりから逃げようとする。
「へっへーん」それでもひだまりは以下同上。
「楽しそうねー」とすふれはふたりを見て微笑んでいる。
ショコラは抱きついているひだまりから力尽くで離れた。
「ば、馬鹿にしやがってぇー」ショコラはむかっとしている。
「してないよー!」必死になだめるひだまり。
「こうなったら見せてやる、先輩としての意地ってもんを!」
とショコラは実験室でまだ使えそうな機材と素材を手にし、なにやら準備を始めた。
「えーっと、ひだまりが作ろうとしていたのは……ふんふん、なるほどねー」とショコラはなにか始めた。
「あらぁ、ひまちゃんが作ろうとしていたのと同じものを作ろうとしているのね」とすふれ。
「そうよ、わたしのほうが上ってこと思い知らせてやるんだから!」とショコラは手際よく作業を始めた。
「あ、あぶないよー! また爆発しちゃうよ! またまたエマージェンシーだよぉおお!」
「あんたじゃないんだからなるわけないでしょうが!」と止めようとするひだまりに牽制するショコラ。
すふれもひだまりの肩を抑えて「大丈夫よー、ひまちゃん。ショコラちゃんはなかなか腕があるんだから」
「そうよ!」とショコラは薬品の調合を順調に進める。試験管が光り輝き始める。
「これで仕上げね――ヨッコラショ!」
「い、いまなんて――!?」ひだまりがそう叫んだと同時に調合が完了したみたいだ。
「どうよ!」とショコラが自慢げに言うと、こむぎが確認をする。
「どれ……うむ、良く出来ている。偉いぞーショコラ」とこむぎがショコラの頭をなでるとショコラはうれしそうだ。
「どんなもんよ!」と自慢げなショコラ。
「す、すごーい! ……あ、それはそれで置いといて」とひだまり。
「置いとくな!」とショコラがツッコミを入れる。
「仕上げ前に……なんて」ひだまりは確認しようとする。
「なにも言ってないよ」とショコラが即答する。
「ヨッコラ――」
ショコラはすふれの口を塞いだ。
「むー!」すふれは最後まで言いたそうだ。
「言わなくていいー!」
ショコラはすふれの口を必死で塞ぐ。
ぼけーっとするひだまり。爆笑するこむぎ。
「あー、面白かった。ひだまりもショコラを見習うんだぞ。簡単なのは先輩を頼りにしな」とこむぎは笑い終わる。
「はい、勉強になります! ……ショコラちゃんの調合とっても上手―! やっぱり先輩なんだなー」とひだまりが素直に感心していると、ショコラは恥ずかしそうに笑顔になった。
「え、えへへ……っは!? ふん、そりゃそうよ先輩なんだから!」喜んでいたが、みんながいることを思い出して強がり始めたのだった。
「えー? そうなのかなー?」とひだまりが首をかしげたあと、ショコラに抱きつく。
「そりゃそう……って抱きつくのやめろー!」
「わーい、やっぱり小さいやー」
「うるさいー! 離れろこの!」
ひだまりはショコラが抵抗しても抱きつくのをやめなかったのだった。
二人のやりとりを見ていて、こむぎはははは、と笑った。
「ここもちょっとだけにぎやかになったな」
「そうねー、三人だとわりと静かだったものね」すふれはうなずく。
「ふざけるやつがいないからな」とこむぎ。
「ふざけてないですぅ!」ひだまりはこむぎにそう言い返した。
「どうみてもふざけてるだろっ!」ショコラは抗議する。
「そんなことないよぉおー!」ひだまりも抗議する。
こむぎはなにかを思い出したように言う。
「そういえば、昨日のことだが、ひだまりが見せてくれたあのでかすぎる木のことだけどさ。独学であの成果はなかなかのものだよ。将来性結構ありそうだし、これからもあの調子で頑張るといいよ」
「あの……それは……」ちょっとのミスでド派手な巨大樹になったことを言おうとしているのか、口をパクパクとするひだまりだが、やっぱり言うのをやめたようだ。
「えぇ!? わたしがいない間になにがあったのよ!?」ショコラはひだまりに勢いよく振り向く。
「あぁ、そっか。そういえば、ショコラは初耳だったな」そう言うこむぎにショコラはそうだとばかりに強くうなずいた。
「そうですよ! ぐぬぬ……ひだまりめ、したり顔か」とショコラはまたひだまりを見る。
「えへへ」とひだまりは照れ笑いをしている。
「えへへじゃないっ!」とショコラ。
「じゃあ、てへっ☆」とひだまりは小馬鹿にするように笑う。
「余計ムカつくわ! うぐぐ……見てなさいよ、先輩としての意地ってのを見せてやるんだから!」ショコラは悔しそうだ。
「べ、別にそんなことしなくていいよぉー!」とひだまりはショコラをなだめようとする。
「うるさいー!」ショコラはなんだかむきになっているようだった。
後日。薬品店にて、居住スペースのリビングでのんきに紅茶を飲んでいたひだまりを指さしながらショコラが宣戦布告をしたのだった。
「勝負よ!」と、やけに気合いが入っているショコラ。
「ほ、本当にやるの……?」ひだまりは若干面倒くさそうに困惑しながら、ショコラにたずねた。
「やるに決まってるでしょ、わたしの威厳が無くなっちゃうじゃない、先輩としての威厳が」
「そんなのいらないよぉー!」
「わたしがいるの!!」とショコラがむかっとしている。
「さ、ちゃっちゃとやりましょ」
「うぇー、自分がやりたいだけじゃん……」
「なんか言った?」
「ショコラちゃんは優秀なリーダーになりそうだなぁーって」そんなことは言ってなかった。
「そ、そう!? ――ってそんなこと言っても勝負は勝負でやるからね」と実際に言ってなかったひだまりの発言にウキウキと喜びながら実験室に向かっていくのだった。
「本当にやるのかぁー……」とトボトボひだまりもショコラの後を付いていこうとするが、「あ」となにか思い出したようだ。
「ちょっと、どうしたのよ」とひだまりの様子が気になったショコラが、実験室からリビングを覗きながらたずねる。
「紅茶飲みかけだった」
「あのねっ!」とショコラがツッコミを入れる。「さっさと飲んできなさいよ、先に実験室で待ってるから」意外と優しかったショコラであった。
二人が実験をするという勝負を聞いてウキウキで、すふれが審査員を務めると言った。
ひだまりが実験室に向かうと、妙に気合いの入ったショコラと楽しそうなすふれと、渋々審査席に座らされているこむぎがいた。
「審査員を勤めるすふれですー」
「なんであたしまで……」とこむぎ。
(なんだかおおごとに……)とひだまりは独り言をいう。
すふれとこむぎは用意された椅子に座り、テーブルの上には審査員と書かれたネームプレートが乗っている。そして木製のボウルにクッキーが入っている。観戦中に食べるのだろう。
「別にいいじゃない、こむぎちゃんも弟子の勝負気になるでしょ」とすふれはこむぎにそう言う。
「テレビ見てたんだけど」とこむぎ。
「なに見てたんですか」ひだまりが聞く。
「別に何見てたっていいだろ」クッキーを食べながら、適当にあしらうこむぎだったが、すふれが答えてしまう。
「ドラマなんだけどね、あの恋愛ものだったわよー、ほら昼にやってる――」
「言わなくていいから」とこむぎ。
「おやおやおやぁ!?」ひだまりは話に食いついた。
「ほらみろ」とこむぎ。
「話題を逸らさないで!」とショコラ。
「ごめんごめん、勝負はちゃんとやるからー」とひだまり。
「余裕ぶっているのも今のうちよ」不敵に笑うショコラ。
(いや、わたしやりたくないんだけど)と、つぶやくひだまり。
「負けないんだから」とショコラは腕まくりをする。
(負けて終わらせようかな)とつぶやくひだまり。
「それでは~……勝負、開始~」すふれが卓上ベルを鳴らす。
薬剤調合バトルが始まった。
「負けるもんか!」勢いよくショコラはスタートダッシュを切った。
「う、うおおおおお……すごい迫力……」ひだまりはショコラの気合いに圧倒される。
「ふたりともがんばれ~」すふれの応援が聞こえる。
「フレー、フレー、ふたりともっ! フレー、フレー、ふたりともっ!」
「ちょ、ちょっと集中できないじゃないー!」ショコラからクレームが入った。
「えー」とつまらなさそうにすふれは応援をやめた。
調合バトルは続いている。その時、ひだまりが調合している試験管から光が生まれた。
「おおおっ!?」と注目するひだまりとすふれ。こむぎはクッキーを食べながら、なんとなく様子を眺めている。
「す、すごいのできちゃいそうー!」ひだまりは驚きながら気合いを入れる。
「なにぃいいい!?」焦るショコラ。
「がんばれーひまちゃんー」応援するすふれ。
「どっちでもいいから早く勝負付けてくれよなー」とこむぎはあくびをした。
「うぉおおおお行くぞぉおおお!」ひだまりが叫ぶ。
「ま、まさか……そ、そんなことって――!」絶句するショコラ。
ひだまりの調合はまた失敗して実験室がバゴーンと爆発した。
ひだまりとショコラ二人巻き沿いに消火器から吹き出す消化剤が撒かれる。
『ぎゃあああああー!』
「建て直したばっかなのよー!」とぷんすか怒るすふれ。
「なんでー!?」というひだまりの悲鳴と「真面目にやれー! バカー!」と苦情を入れるショコラの叫びが部屋中に響く。
「こうなると思ってたよ」とクッキーを一口食べようとしたこむぎだったが、クッキーは爆風で吹き飛んだようで、テーブルの上にはなにもなかった。
「あれ?」というこむぎの手は、スカッと虚空を掴む。
「……おい、クッキーまでどっかいっちまったじゃんか」こむぎはちょっとだけむかっと怒り顔だった。
実験室の鎮火後、すふれが結果を発表した。
「えっとー、勝負の結果はぁー。ショコラちゃんの勝ちでーす! わーい!」
「納得いかないんだけど……」とショコラ。
「はー、負けちゃった。じゃあもう帰って良い?」ひだまりは伸びをしたあと、実験室を去ろうとする。
「おいコラ!」ショコラは抗議した。
「そういえば、なんで私負けちゃったのかな」勝負の結果に少し疑問を持ったひだまりがすふれに訊ねた。
「爆発したからよ」とすふれ。
「爆発かー」となんとなくひだまりは納得しているようだ。
「ルール上、爆発はリタイアになるわね」とすふれは説明した。
(ルールなんてあったかな……?)とひだまり、ショコラ、こむぎの三人は頭にハテナマークが浮かんでいるようだった。
「じゃあそれでいいや」ひだまりが実験室を後にしようとすると、「おい待てコラ!」と抗議するショコラ。
ひだまりの後頭部をわしづかみにしながらこむぎが「掃除していけ」と言う。
「はい」とひだまりは即答した。
掃除中、ひだまりは「いやーでも、実験勝負ってのも楽しいね」「……そう?」とショコラはちょっと嬉しそうに返事をする。
「こういう遊びもたまにはいいよね!」とひだまりが言うと、「そういうつもりで始めたんじゃないわよ」と空咳をしたあと、ショコラは明後日の方向を向きながら言葉を返した。
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