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6話「秋っぽいことをしよう」
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季節が秋になった。すふれが買い物から帰ってきて薬品店のドアを開けた。
「みんなー、果物買ってきたわよー」とすふれが言うと、「わー何買ってきたのー?」とひだまりが言う。「甘いのある?」ショコラもすふれのもとへ近寄る。
「キノコとー、ベリーとー、キノコとー、イチゴとーキノコー♪」すふれが数えながら買い物バッグからテーブルに買った物を置いていく。
「おいー! キノコばっかりじゃねーか!」とショコラ。
「えー? そんなことないわよー」とすふれ。
すふれはまた数えながら「ほかにもナシとキノコ」
「わー色んなフルーツだー」と喜ぶひだまり。「ほとんどキノコだろ」とショコラ。
「それにさ、キノコは野菜だろ」とショコラが言うと「でもね、木に実ってるからキノコは果物の一種じゃない?」とすふれ。「それもそっか」とひだまりは納得しているが「キノコは実ってるんじゃないぞ」とショコラ。
「野菜でも果物でもない」と通りがかったこむぎが書類に目を通しながら、そう言って部屋の奥に入っていった。こむぎは部屋に入ってドアを閉めた。
「そういうこと、そういう野菜」とすふれ。
「だから野菜じゃないって言ってるだろ!」こむぎは閉めたドアを開けてツッコんだ。
「じゃあなんなんですかー!? 木にくっついている果物野菜ですか師匠―!?」とひだまりが叫ぶと、こむぎはまたドアを開いて「特用林産物だ!」と言って閉めた。
「そうなんだー……」とショコラはつぶやいた。
「果物狩りに行くのはどうでござろうか?」といつのまにか店にいたタフィーがナシを食べながら言う。
「そうねー、それもいいわねー」とすふれ。「たくさん食べられるかなー」とひだまり。「ナシ食べてるけど」とショコラはタフィーを指さす。「結構うまいでござるよ」とタフィー。
別の日。タフィーが言ったとおりに果物狩りに行くことになった。
薬品店の入り口で全員が集合する。
「ひまちゃんそんな大きなリュック持ってきてどうするの?」すふれはたずねる。
「たくさん手に入るようにね!」とひだまり。
「採って良い量にも限度があるのよー」とすふれが言うと「もー、そういうのは始めに言ってよねー」とひだまりはリュックを戻しに行った。
その後全員で出発して、現地に到着した。
ここの果樹園は植物園と植物研究所も兼ねていて、れあの親が経営するグループ企業の一つだ。
ひだまりたちはこむぎの仕事に付いてくる形で果樹園に来たのだった。
「施設内では静かにな」とこむぎが言うとはーいと全員が返事をした。こむぎはひだまりに向かって指さし「特にお前な」と言う。
「えー、なんでですかー!」とひだまりはほっぺを膨らまして抗議する。
「日頃の行いを思い出せ」とこむぎ。「そうよー」とすふれが言うと、「それとお前も」とこむぎが追加で指さす。
すふれもほっぺを膨らまして抗議した。
「それじゃ行くか……ああ、そうだ。あたしはそのまま仕事に行くから時間まで好きにしてていいぞ。果樹園の予約も取ってるから渡したカードで受け付けにいけば大丈夫」と振り向きざまにこむぎは言った。
こむぎが用事で植物研究所に向かったあと、ひだまりたちは果物狩り会場に向かった。
「へー、結構たくさんあるんだねー、いろんな果物が取れるんだー」とひだまりは果樹園のパンフレットを読みながらそう言った。
「ええ、うちの会社って造園業もやっていてその一環なの。ガーデニング用の樹木を栽培しながら園芸用の果樹の栽培もしているから、そのついでで果樹園をやってるってわけ。造園業自体は代々6代前からやっていたらしいんだけど、お父様が品種改良をより大胆に進めてオリジナル樹木の開発まで始めたの。それでね、オリジナル果樹の開発も乗り出したみたいなんだけど、うまくいったもののいくつかを果樹園でも使うことにしたのよ。このアイデアもお父様が考えたのだけど、売店で果樹園の果実を使ったオリジナルスイーツもお父様が提案したのよ。自社開発だったからその時はお父様はずっと会社で寝泊まりしていて」とれあが話していると「お父上のことしか話してないでござるが」とタフィーが言う。
「かかか会社のことを話すには経営者の話をすることになるじゃない! お父様は執行役員なのよ! 会長はおじいさまだし!」
二人は歩みを止めて口論になる。
「いやそれはそうでござるが」
「なによ!」
「なんでもないでござるよ~」
れあはタフィーのほっぺを両手でつかんでムニムニいじりまわす。
「なによーなにか言いたいことあるならはっきり言えば?」
「はっきり言ったら怒るからいやでござるよ~」
「はっきり言わなくても怒ってるわよわたし」れあはタフィーのほっぺを手のひらで挟む。
「あ、ここからにしない?」とひだまりは歩みを止めて、今いる場所のビニールハウスを指さした。
ナシのビニールハウスだ
「またナシでござるか」「じゃあ無しにする?」「ナシでいいでござるよ」「無しか~」「ありでござるよ」「アリってくだものあったっけ」
タフィーとひだまりのやりとりを聞いていたれあは「いやだから梨……」と言う。
「入るのかー? 入らないのかー?」とショコラがビニールハウスの中でたずねている。
「もう入ってるわね」とれあ。
「ねーショコラちゃーん、アリってくだもの知ってるー?」ひだまりはショコラのもとへ駆け寄っていった。
「どこの国のくだものだよ」とショコラは答えた。
「ないじゃーん、タフィーちゃーん、アリってくだものなんてないってー」とひだまりはタフィーに振り返って言った。
「そんなこと言ってないでござるよー」とタフィー。
「えー?」とひだまり。
「ひまちゃーん、ギアナ高地にはアリってくだものが自生しているのよー」とすふれが呼びかけた。
「そうなのー!? じゃあアリってくだものは本当にあるんだ!」とひだまり。
「え?」とショコラとれあは怪訝な顔つきをした。
「おおー! そうでござるか!」とタフィーは両手を上げて驚いている。
「人類未踏の秘境の地には私たちが知らないことがたくさんあるのよー! わたしは行ったことないから知らないけどー!」とすふれが言う。
「嘘じゃない」とれあは言いながらナシのビニールハウスへ向かった。
ギアナ高地は人類未踏の地ではない。
そのあとみんなはナシのビニールハウスへと入っていった。
パンフレットを読みながら果物狩りについて確認する。
ひだまりがナシを二つ採って目のあたりに当てて「ねー、すふれちゃーん」と呼んだ。
「なーにー?」と振り向いた瞬間すふれは噴き出した。そのあと笑いを堪えている。
「言いつけ破るの早いわね……」とれあがつぶやくと、「チキンレースでもしてるかのようでござるな」とタフィー。
タフィーはりんごを目のあたりに当てて、ひだまりとすふれの元に向かいながら「見るでござるよー」と言った。
れあは「あなたね……」とあきれている。
タフィーを見たひだまりとすふれが噴き出した。
果物狩りをしている最中、ひだまりはベリーを食べながら「おいしいねー、家にいくつか持って帰りたいな」と言う。
「持ち帰りは禁止なのよねー。その代わりあそこの売店で買えるみたいよー」とすふれは売店のほうを指さす。
「……お小遣い足りるかな」財布の中身を覗くひだまり。
「お小遣いと言えば、れあちゃんお小遣いたくさんありそうー」とすふれ。
「よくそう言われるんだけどそんなにもらってないわよ、わたし」れあは手をひらひらと振りながら答える。
「そうでござる意外にケチでござるよ」とりんごを食べながら言うタフィー。
「あなたは黙ってて」タフィーを見るれあ。
「えーでも本当は結構貰ってて麻痺してるかもしれないじゃないー」とすふれ。
「どういう目で見てたのよあなた……。毎月100ユーロ」とれあ。
「多いようで少ないようで……」とひだまり。
「家柄考慮するとねー」とすふれ。
「うるさいっ」とれあは膨れる。
「小銭あるー? あとで返すから」とひだまり。
「あるわよー」とすふれ。
話を聞いていたショコラは売店とれあを見てなにか思ったようで、「あ、そうだ。せっかくだからお父さんに買ってあげればいいんじゃない? れあのお父さん最近家に帰ってきたんでしょ」とショコラはれあにたずねた。
「本で消えた」とれあ。
「そう……」とショコラ。
「せちがらいねー」とひだまり。
すふれから貰った小銭も合わせて数えながらひだまりは「わたしも今月ピンチなんだよねー。お父さんとおじいちゃんから貰ったよんひゃ……よ、じゃなくて……60ユーロがもう無くなりそうだし」
「今400って言ったでござる」とタフィー。
「4!? 400!?」と物凄い速度で反応するれあ。「なんでうちより!?」
「おい答えろひだまりお前400なんだろ!? どう考えても40じゃないよなぁ!?」ショコラに揺さぶられるひだまり。
「ち、ちがうよー!! 400ってのは400って言いたくなっただけだよぉー! そういう気分なのー!」とひだまり。
頑なに否定するひだまりの財布からレシートが落ちる。「あ」とひだまり。「とーう!」仰々しく滑り込みながらレシートを手に取るタフィー。「レシート、ゲットでござる!……えーと、支払いが150ユーロ超えてるでござるな」
「何ぃー!?」とショコラとれあが振り向く。
タフィー、れあ、ショコラの三人はひだまりの財布から落ちたレシートの詳細を見る。「えーと、メジャーにフラスコに蒸留器に、薬品にマッチに鉱石……」レシートの内容を読み上げると、さっきまで騒がしかった三人が静かになり、その後れあがひだまりに返す。
「もうちょっと色んなもの買ったらどう」
「買ってるよ?」とひだまり。「いやそういうことじゃなくて」とれあ。
「まー、こいつらしいっちゃあ、こいつらしいな」とショコラ。うなずくタフィー。ひだまりはほっぺを膨らましてなにかを抗議しているような気がする。
「そういえばすふれちゃんはいくら貰ってるの?」とひだまりが聞くと即答で「内緒―♪」とすふれは逃げていった。
「絶対人に言えない額貰ってるだろ」とショコラは半目になる。
そのあと、ほかのブドウなどの果物狩りもし終わり、こむぎが向かった植物研究所の方へひだまりたちは向かった。
向かう途中、ひだまりたちは談笑している。
「おいしかったねー!」とひだまりが言うと『ねー!』とタフィーとすふれが言う。
「もう少し静かにしなさいよ」とれあは呆れながらつぶやく。
「そういえば、アリってくだものなかったねー」とひだまり。
「まだ言ってるのかそれ」とショコラ。
「そんなに珍しいのかなー」とひだまり。
こむぎがいる植物研究所に到着してしばらくすると、研究所からこむぎが出てきた。
「おー、どうだった?」とこむぎ。
「元は取れそうよー」とすふれが言うと「そんなこと聞いてないぞ」とこむぎ。
「元が取れるかどうか聞く側の身にもなってよ」とれあもツッコむ。
「社長なんだっけ?」とひだまりが言うと「社長はお父様!」とれあ。
「はい、師匠。これ採ってきたベリーなんですけど」
ひだまりがこむぎに取ってきた果物をひとつ渡す。こむぎは食べながら「あたしゃ甘い物苦手なんだよ……」と言いながら食べる。が嫌そうではなかった。
「あ、そういえば師匠―、ギアナ高地にはアリってくだものが自生しているって本当ですかー?」とひだまりがたずねるとこむぎは「そんなものはないぞ」とこむぎ。「えー! すふれちゃんの嘘つきー!」とひだまりはすふれに言う。「えー! そうだったの!?」とすふれは驚く。「ギアナ高地なんてなかったじゃない!」とひだまりが言うとすふれは「え?」と目を点にする。
空を飛んでる鳥の鳴き声が聞こえた。
「ギアナ高地はあるぞ」とこむぎが言った。
この植物研究所の近くにはキャンプ場もある。
研究所であり、植物園であり果樹園であり、キャンプ場でもあるのだ。
時刻は夕方当たり。
キャンプ場にはアウトドア用のコンロとテーブルとイスのセットが設置されている。
ひだまりたちはこむぎと合流したあとキャンプ場でキャンプファイアーの準備をしていた。夕食もついでにここで取る予定。
「まっきまっきまっきまっき~薪持ってきたよ~」ひだまりは薪を抱えながらルンルン気分で駆けてきた。
「そこに置いておいてー」とすふれが言うと「はーい」とひだまりは言われた場所の近くに持ってきた薪を置いた。
ふぅー、とひだまりは腕でひたいの汗をぬぐうと、夕空の眺めに気づいた。
「あー! いちばんぼーしみーつけた!」とひだまりは夕空を指さしそう言った。ひだまりは満足気である。
「ほんとだー、もうこんな時間なのねー」とすふれ。
「夕暮れが綺麗でござるなー」と言いながらタフィーが手際よく人数分のテントを設置している。
「タフィーちゃんすごいねー、テントがすぐ出来てく」とひだまり。「ねー」とすふれ。
「わたしもなにか手伝えることあるかな」ひだまりがそう言うと、「ひまちゃんは手伝わなくていいの」とすふれ。「そうなの?」とひだまり。「そうよー、ろくなことにならないんだし」とすふれが言うと「そっかー」とひだまり。「というよりタフィーちゃん以外できないし」とすふれ。「まぁそうだよね」とひだまり。
タフィーがテントを設置し終えたあと、ひだまりはタフィーに「ねー、タフィーちゃんってどうしてそんなにテントを素早く設置できるの?」とたずねる。「生活に必要でござるからな」とタフィー。「そっかー。……あれ、必要だっけ?」「タフィーの場合はね」とれあが付け足す。
「テント設置はできたほうがいいでござるよ。基本遭難するわけでござるし」とタフィー。
「それもう遭難じゃないんじゃない?」とひだまり。
「どんな道歩いてるのよアンタ」とれあ。
「おーい食材買ってきたぞー」とショコラがバッグやリュックに食材を詰めて運んできた。研究所近くの売店で買ってきたようだ。
ショコラは荷物をテーブルの上に置いたあと、「よっこらしょ。ふー、結構重いなー」と椅子に座った。
「6人分だよね……あれ、ちょっと多くない?」とひだまり。
「え?6人分だよな」とショコラ。
「でも2~3人分くらい多い感じだよね」とひだまり。
「そういやそうだな。メモ見て買ってたから気づかなかった」とショコラ。
「人数分でござるよ~」とタフィー。
「そうなんだ~。……あれやっぱり多くない?」とひだまりはショコラが買ってきた食材を見る。
「多いよな!?」とショコラ。
「多くない!?」とひだまり。
「あータフィーは大食いだから」とれあが言うと「適量でござる」とタフィー。
「そうなんだー」とひだまり。
「ねー、なにか手伝うことある?」とひだまりが訪ねると「ないわよー」とすふれ。「ないでござるよ」とタフィー。「ないぞ」とショコラ。
一様に全員手伝うことはないといった。
「ちょっとくらいなにか」とひだまりが言うと「お前がやったら全部爆発するだろ」とショコラが言う。ほっぺを膨らまして抗議するひだまり。
テントなどの設置や食材の準備ができたので夕食を作り始めることになった。
「なに作りましょうか」とすふれがたずねると、タフィーが「鍋ー!鍋にするでござるよ!」と言う。
続いてひだまりが「カレー!」と言うと、タフィーが「ミルク粥も欲しいでござるよ」と言う。
ひだまりはついでに「ハンバーグ!」と言った。
「じゃあ全部作りましょうか」と言うすふれに「全部は作りすぎよ!?」と言うれあ。
「楽しそうだなお前ら」とこむぎは買ってきたお茶を飲みながら言う。
すふれは全部作り始めた。
すふれが料理を全部作ったので、夕食を取り始めた。
雑談しながら食事をするひだまりたち。
「あ、そうそう。香辛料を自作してるんだけどね」とひだまりは自作した香辛料をバッグから取り出した。
「へーすごいじゃないー。配分とかも自分で考えてるの?」とれあが聞くと「そうだよー、薬の調合みたいで面白いよー爆発しないし」
「そうね爆発はしないわね。いや待って薬は普通爆発するものなの!?」とれあ。
「ひまちゃんのは爆発すること多いわよー」とすふれ。
「そ、そう……」とれあ。
「これをカレーに入れるといいよー。カレーの香辛料で作ってるから大丈夫」とひだまり。
「いいわねー、ちょうどちょっとだけ辛さが足りないと思ってたから」とれあは受け取った。
「それでね、今薬品の濃縮実験とかしてるんだけどね」と話すひだまりの会話を聞きながら、れあはカレーにひだまり製香辛料を入れた。
「試作品としてその香辛料作ったんだー……あ、それ一粒だけでいいんだよ」とひだまり。
全員が凍り付く。
「何粒入れたでござるか」とタフィーがたずねると「つ、つつつ粒の数なんて数えるわけないじゃない普通!」と青ざめるれあ。
その様子を見たひだまりは、何も言うことなく席を立ってその場から離れていく。
「ひまちゃーん、どこに行くの?」とすふれが声をかけると、ビクッとしたように振り替えってひだまりは「な、なんか気分がすぐれないから風に当たりたいかなーって」と言った。
「待ちなさい!」とれあが立ち上がって、ひだまりの腕をつかんだ。
ひだまりは、れあの手を振り払って逃げる「わー! 今すぐにでも風に当たらないとどうにかなってしまうよぉー!」と言いながら全力で逃げていった。
「短距離走選手並みの速さでござるよ」とタフィーは逃げていくひだまりを見て言う。
「逃げる時だけものすごい早いのよねー」とすふれ。
「ああ、カレーが……」と逃げていくひだまりを見て崩れ落ちるれあ。
カレーを見たタフィーは「なんて日でござるか」と絶句した。
テーブルの席を見ると、こむぎが座っていてカレーを食べている
「いけるじゃん、これ」と食べながらこむぎは言う。
「あ、こむぎちゃんそれ……」と恐る恐るカレーを指さすすふれ。
「それってひだまりの香辛料を入れる前のカレーかしら?」とれあがたずねると、「さぁ? それはわからないけど今盛り付けたばっかりだよ」とこむぎ。
「な、なら香辛料が入っていることになるわね……」と考え込むれあ。
「ということは大丈夫でござるか?」とタフィー。
「大丈夫だと思う」とショコラ。
「はぁ、よかった。せっかくの夕食が台無しになるところだったわね」とれあ。
全員はカレーを盛り付けて食べることにした。
カレーを皿に盛りつけながら、ショコラは「それにしてもあいつ帰ってこないなー」と言う。
「当分帰ってこないんじゃない? ほとぼり冷めるまで」とすふれ。
すふれたちは食べ始めた。
食べた瞬間に『ぎゃあああー!!』と悲鳴が上がるのだった。
よく見ると木陰で真っ青な顔でひだまりがのぞいていた。
「あばばばば……!」とひだまり。
「どうか師匠が全部食べますように」と祈っていた。
ほとぼりが冷めたあと、ひだまりが戻ってきた。
「もう大丈夫?」とひだまりが言うと「大丈夫だと思ったか?」とショコラはひだまりを見る。
「ひえー! こんなことになるとは思ってなかったんだよぉ!」とひだまり。
全員がひだまりに呆れていた。
「もう終わったことだし、しょうがないわよ」とれあ。
「そうでござるな」とタフィーはうなずく。
ひだまりが安堵していると、「ひだまりが作った調味料は使用禁止で」とれあが言う。
「そうでござるな」とタフィーはうなずく。
「あはは……」とひだまり。
「濃縮ってこんなに危ないなんて初めて知ったわよ」とれあ。
「今度は気を付けて濃縮するね」とひだまり。
「使わないって言ったでしょ!」とれあ。
その後、夜が深まっていく。
ひだまりたちは焚火をしながら空を見上げていた。
「あ、流れ星!」とひだまりが言うと「ほんとだ―」とすふれ。
みんなも流れ星を見ていた。
流れ星を見たその後。
「さすがに寝るかね」とこむぎはあくびをしたあとテントに向かった。
「お休みなさーい」とすふれ。
「えー、もう寝ちゃうんですかー」とひだまりが言うと「いや、もうじゃないから22時回ってるだろ」とこむぎ。
「そろそろ私も寝ようかしら」とれあもテントに向かっていた。
「私も」とショコラもテントに向かう。
しばらく星を眺めたあと、ひだまりとすふれとタフィーも寝たのであった。
翌朝、ひだまりのテントにすふれがやってきた。
すふれの「ひまちゃーん、起きてるー?」という声で目覚めたひだまりは「なーにー?」と返事する。
「朝食ここに置いておくわねー」と言って保存容器に入れた朝食をテントの中に入れた。
「ありがとー。いやー、昨日食べそこなったからお腹ぺこぺこだよー」とひだまり。
「よかったー、それなら全部食べれそうね」すふれ。
「うん? そうだね」とひだまり。
「はい、パンと合わせて食べてね」とすふれは皿に乗っけたパンもテントに入れる。
「朝食はなにかなー?」とひだまりは保存容器を開ける。
「昨日の」とすふれ。
植物研究所から帰ってきて、薬品店に戻ってきたあと。店内の休憩室にて紅茶とクッキーを用意しながら。
「そういえば、ひだまり殿の寝相本当ひどいでござるよ」と話を切り出したのはタフィー。
「そうなの?」とれあはタフィーを見ると、タフィーはうなずいた。「テントから顔を出してた時があったでござるよ」
「そういやそうだな、寝相悪いっていうのは。前起こしに行ったときなんか床に落ちたまま寝てて……」とショコラが話すと「えー! そんなことないよー!」とひだまり。
「当事者はわからないんだよ」とショコラ。
「じゃあショコラちゃんだって自分の寝相知らないじゃん!」とひだまりが言うと、「いや、私は大丈夫だって……大丈夫だよな。あれ大丈夫だったか……!?」とショコラは考え込み始めた。
ショコラがすふれに「大丈夫だよな?」とたずねると「ふふっ」とすふれは笑うだけだった。
「おいー! どうなんだよー!」とショコラ。
「みんなー、果物買ってきたわよー」とすふれが言うと、「わー何買ってきたのー?」とひだまりが言う。「甘いのある?」ショコラもすふれのもとへ近寄る。
「キノコとー、ベリーとー、キノコとー、イチゴとーキノコー♪」すふれが数えながら買い物バッグからテーブルに買った物を置いていく。
「おいー! キノコばっかりじゃねーか!」とショコラ。
「えー? そんなことないわよー」とすふれ。
すふれはまた数えながら「ほかにもナシとキノコ」
「わー色んなフルーツだー」と喜ぶひだまり。「ほとんどキノコだろ」とショコラ。
「それにさ、キノコは野菜だろ」とショコラが言うと「でもね、木に実ってるからキノコは果物の一種じゃない?」とすふれ。「それもそっか」とひだまりは納得しているが「キノコは実ってるんじゃないぞ」とショコラ。
「野菜でも果物でもない」と通りがかったこむぎが書類に目を通しながら、そう言って部屋の奥に入っていった。こむぎは部屋に入ってドアを閉めた。
「そういうこと、そういう野菜」とすふれ。
「だから野菜じゃないって言ってるだろ!」こむぎは閉めたドアを開けてツッコんだ。
「じゃあなんなんですかー!? 木にくっついている果物野菜ですか師匠―!?」とひだまりが叫ぶと、こむぎはまたドアを開いて「特用林産物だ!」と言って閉めた。
「そうなんだー……」とショコラはつぶやいた。
「果物狩りに行くのはどうでござろうか?」といつのまにか店にいたタフィーがナシを食べながら言う。
「そうねー、それもいいわねー」とすふれ。「たくさん食べられるかなー」とひだまり。「ナシ食べてるけど」とショコラはタフィーを指さす。「結構うまいでござるよ」とタフィー。
別の日。タフィーが言ったとおりに果物狩りに行くことになった。
薬品店の入り口で全員が集合する。
「ひまちゃんそんな大きなリュック持ってきてどうするの?」すふれはたずねる。
「たくさん手に入るようにね!」とひだまり。
「採って良い量にも限度があるのよー」とすふれが言うと「もー、そういうのは始めに言ってよねー」とひだまりはリュックを戻しに行った。
その後全員で出発して、現地に到着した。
ここの果樹園は植物園と植物研究所も兼ねていて、れあの親が経営するグループ企業の一つだ。
ひだまりたちはこむぎの仕事に付いてくる形で果樹園に来たのだった。
「施設内では静かにな」とこむぎが言うとはーいと全員が返事をした。こむぎはひだまりに向かって指さし「特にお前な」と言う。
「えー、なんでですかー!」とひだまりはほっぺを膨らまして抗議する。
「日頃の行いを思い出せ」とこむぎ。「そうよー」とすふれが言うと、「それとお前も」とこむぎが追加で指さす。
すふれもほっぺを膨らまして抗議した。
「それじゃ行くか……ああ、そうだ。あたしはそのまま仕事に行くから時間まで好きにしてていいぞ。果樹園の予約も取ってるから渡したカードで受け付けにいけば大丈夫」と振り向きざまにこむぎは言った。
こむぎが用事で植物研究所に向かったあと、ひだまりたちは果物狩り会場に向かった。
「へー、結構たくさんあるんだねー、いろんな果物が取れるんだー」とひだまりは果樹園のパンフレットを読みながらそう言った。
「ええ、うちの会社って造園業もやっていてその一環なの。ガーデニング用の樹木を栽培しながら園芸用の果樹の栽培もしているから、そのついでで果樹園をやってるってわけ。造園業自体は代々6代前からやっていたらしいんだけど、お父様が品種改良をより大胆に進めてオリジナル樹木の開発まで始めたの。それでね、オリジナル果樹の開発も乗り出したみたいなんだけど、うまくいったもののいくつかを果樹園でも使うことにしたのよ。このアイデアもお父様が考えたのだけど、売店で果樹園の果実を使ったオリジナルスイーツもお父様が提案したのよ。自社開発だったからその時はお父様はずっと会社で寝泊まりしていて」とれあが話していると「お父上のことしか話してないでござるが」とタフィーが言う。
「かかか会社のことを話すには経営者の話をすることになるじゃない! お父様は執行役員なのよ! 会長はおじいさまだし!」
二人は歩みを止めて口論になる。
「いやそれはそうでござるが」
「なによ!」
「なんでもないでござるよ~」
れあはタフィーのほっぺを両手でつかんでムニムニいじりまわす。
「なによーなにか言いたいことあるならはっきり言えば?」
「はっきり言ったら怒るからいやでござるよ~」
「はっきり言わなくても怒ってるわよわたし」れあはタフィーのほっぺを手のひらで挟む。
「あ、ここからにしない?」とひだまりは歩みを止めて、今いる場所のビニールハウスを指さした。
ナシのビニールハウスだ
「またナシでござるか」「じゃあ無しにする?」「ナシでいいでござるよ」「無しか~」「ありでござるよ」「アリってくだものあったっけ」
タフィーとひだまりのやりとりを聞いていたれあは「いやだから梨……」と言う。
「入るのかー? 入らないのかー?」とショコラがビニールハウスの中でたずねている。
「もう入ってるわね」とれあ。
「ねーショコラちゃーん、アリってくだもの知ってるー?」ひだまりはショコラのもとへ駆け寄っていった。
「どこの国のくだものだよ」とショコラは答えた。
「ないじゃーん、タフィーちゃーん、アリってくだものなんてないってー」とひだまりはタフィーに振り返って言った。
「そんなこと言ってないでござるよー」とタフィー。
「えー?」とひだまり。
「ひまちゃーん、ギアナ高地にはアリってくだものが自生しているのよー」とすふれが呼びかけた。
「そうなのー!? じゃあアリってくだものは本当にあるんだ!」とひだまり。
「え?」とショコラとれあは怪訝な顔つきをした。
「おおー! そうでござるか!」とタフィーは両手を上げて驚いている。
「人類未踏の秘境の地には私たちが知らないことがたくさんあるのよー! わたしは行ったことないから知らないけどー!」とすふれが言う。
「嘘じゃない」とれあは言いながらナシのビニールハウスへ向かった。
ギアナ高地は人類未踏の地ではない。
そのあとみんなはナシのビニールハウスへと入っていった。
パンフレットを読みながら果物狩りについて確認する。
ひだまりがナシを二つ採って目のあたりに当てて「ねー、すふれちゃーん」と呼んだ。
「なーにー?」と振り向いた瞬間すふれは噴き出した。そのあと笑いを堪えている。
「言いつけ破るの早いわね……」とれあがつぶやくと、「チキンレースでもしてるかのようでござるな」とタフィー。
タフィーはりんごを目のあたりに当てて、ひだまりとすふれの元に向かいながら「見るでござるよー」と言った。
れあは「あなたね……」とあきれている。
タフィーを見たひだまりとすふれが噴き出した。
果物狩りをしている最中、ひだまりはベリーを食べながら「おいしいねー、家にいくつか持って帰りたいな」と言う。
「持ち帰りは禁止なのよねー。その代わりあそこの売店で買えるみたいよー」とすふれは売店のほうを指さす。
「……お小遣い足りるかな」財布の中身を覗くひだまり。
「お小遣いと言えば、れあちゃんお小遣いたくさんありそうー」とすふれ。
「よくそう言われるんだけどそんなにもらってないわよ、わたし」れあは手をひらひらと振りながら答える。
「そうでござる意外にケチでござるよ」とりんごを食べながら言うタフィー。
「あなたは黙ってて」タフィーを見るれあ。
「えーでも本当は結構貰ってて麻痺してるかもしれないじゃないー」とすふれ。
「どういう目で見てたのよあなた……。毎月100ユーロ」とれあ。
「多いようで少ないようで……」とひだまり。
「家柄考慮するとねー」とすふれ。
「うるさいっ」とれあは膨れる。
「小銭あるー? あとで返すから」とひだまり。
「あるわよー」とすふれ。
話を聞いていたショコラは売店とれあを見てなにか思ったようで、「あ、そうだ。せっかくだからお父さんに買ってあげればいいんじゃない? れあのお父さん最近家に帰ってきたんでしょ」とショコラはれあにたずねた。
「本で消えた」とれあ。
「そう……」とショコラ。
「せちがらいねー」とひだまり。
すふれから貰った小銭も合わせて数えながらひだまりは「わたしも今月ピンチなんだよねー。お父さんとおじいちゃんから貰ったよんひゃ……よ、じゃなくて……60ユーロがもう無くなりそうだし」
「今400って言ったでござる」とタフィー。
「4!? 400!?」と物凄い速度で反応するれあ。「なんでうちより!?」
「おい答えろひだまりお前400なんだろ!? どう考えても40じゃないよなぁ!?」ショコラに揺さぶられるひだまり。
「ち、ちがうよー!! 400ってのは400って言いたくなっただけだよぉー! そういう気分なのー!」とひだまり。
頑なに否定するひだまりの財布からレシートが落ちる。「あ」とひだまり。「とーう!」仰々しく滑り込みながらレシートを手に取るタフィー。「レシート、ゲットでござる!……えーと、支払いが150ユーロ超えてるでござるな」
「何ぃー!?」とショコラとれあが振り向く。
タフィー、れあ、ショコラの三人はひだまりの財布から落ちたレシートの詳細を見る。「えーと、メジャーにフラスコに蒸留器に、薬品にマッチに鉱石……」レシートの内容を読み上げると、さっきまで騒がしかった三人が静かになり、その後れあがひだまりに返す。
「もうちょっと色んなもの買ったらどう」
「買ってるよ?」とひだまり。「いやそういうことじゃなくて」とれあ。
「まー、こいつらしいっちゃあ、こいつらしいな」とショコラ。うなずくタフィー。ひだまりはほっぺを膨らましてなにかを抗議しているような気がする。
「そういえばすふれちゃんはいくら貰ってるの?」とひだまりが聞くと即答で「内緒―♪」とすふれは逃げていった。
「絶対人に言えない額貰ってるだろ」とショコラは半目になる。
そのあと、ほかのブドウなどの果物狩りもし終わり、こむぎが向かった植物研究所の方へひだまりたちは向かった。
向かう途中、ひだまりたちは談笑している。
「おいしかったねー!」とひだまりが言うと『ねー!』とタフィーとすふれが言う。
「もう少し静かにしなさいよ」とれあは呆れながらつぶやく。
「そういえば、アリってくだものなかったねー」とひだまり。
「まだ言ってるのかそれ」とショコラ。
「そんなに珍しいのかなー」とひだまり。
こむぎがいる植物研究所に到着してしばらくすると、研究所からこむぎが出てきた。
「おー、どうだった?」とこむぎ。
「元は取れそうよー」とすふれが言うと「そんなこと聞いてないぞ」とこむぎ。
「元が取れるかどうか聞く側の身にもなってよ」とれあもツッコむ。
「社長なんだっけ?」とひだまりが言うと「社長はお父様!」とれあ。
「はい、師匠。これ採ってきたベリーなんですけど」
ひだまりがこむぎに取ってきた果物をひとつ渡す。こむぎは食べながら「あたしゃ甘い物苦手なんだよ……」と言いながら食べる。が嫌そうではなかった。
「あ、そういえば師匠―、ギアナ高地にはアリってくだものが自生しているって本当ですかー?」とひだまりがたずねるとこむぎは「そんなものはないぞ」とこむぎ。「えー! すふれちゃんの嘘つきー!」とひだまりはすふれに言う。「えー! そうだったの!?」とすふれは驚く。「ギアナ高地なんてなかったじゃない!」とひだまりが言うとすふれは「え?」と目を点にする。
空を飛んでる鳥の鳴き声が聞こえた。
「ギアナ高地はあるぞ」とこむぎが言った。
この植物研究所の近くにはキャンプ場もある。
研究所であり、植物園であり果樹園であり、キャンプ場でもあるのだ。
時刻は夕方当たり。
キャンプ場にはアウトドア用のコンロとテーブルとイスのセットが設置されている。
ひだまりたちはこむぎと合流したあとキャンプ場でキャンプファイアーの準備をしていた。夕食もついでにここで取る予定。
「まっきまっきまっきまっき~薪持ってきたよ~」ひだまりは薪を抱えながらルンルン気分で駆けてきた。
「そこに置いておいてー」とすふれが言うと「はーい」とひだまりは言われた場所の近くに持ってきた薪を置いた。
ふぅー、とひだまりは腕でひたいの汗をぬぐうと、夕空の眺めに気づいた。
「あー! いちばんぼーしみーつけた!」とひだまりは夕空を指さしそう言った。ひだまりは満足気である。
「ほんとだー、もうこんな時間なのねー」とすふれ。
「夕暮れが綺麗でござるなー」と言いながらタフィーが手際よく人数分のテントを設置している。
「タフィーちゃんすごいねー、テントがすぐ出来てく」とひだまり。「ねー」とすふれ。
「わたしもなにか手伝えることあるかな」ひだまりがそう言うと、「ひまちゃんは手伝わなくていいの」とすふれ。「そうなの?」とひだまり。「そうよー、ろくなことにならないんだし」とすふれが言うと「そっかー」とひだまり。「というよりタフィーちゃん以外できないし」とすふれ。「まぁそうだよね」とひだまり。
タフィーがテントを設置し終えたあと、ひだまりはタフィーに「ねー、タフィーちゃんってどうしてそんなにテントを素早く設置できるの?」とたずねる。「生活に必要でござるからな」とタフィー。「そっかー。……あれ、必要だっけ?」「タフィーの場合はね」とれあが付け足す。
「テント設置はできたほうがいいでござるよ。基本遭難するわけでござるし」とタフィー。
「それもう遭難じゃないんじゃない?」とひだまり。
「どんな道歩いてるのよアンタ」とれあ。
「おーい食材買ってきたぞー」とショコラがバッグやリュックに食材を詰めて運んできた。研究所近くの売店で買ってきたようだ。
ショコラは荷物をテーブルの上に置いたあと、「よっこらしょ。ふー、結構重いなー」と椅子に座った。
「6人分だよね……あれ、ちょっと多くない?」とひだまり。
「え?6人分だよな」とショコラ。
「でも2~3人分くらい多い感じだよね」とひだまり。
「そういやそうだな。メモ見て買ってたから気づかなかった」とショコラ。
「人数分でござるよ~」とタフィー。
「そうなんだ~。……あれやっぱり多くない?」とひだまりはショコラが買ってきた食材を見る。
「多いよな!?」とショコラ。
「多くない!?」とひだまり。
「あータフィーは大食いだから」とれあが言うと「適量でござる」とタフィー。
「そうなんだー」とひだまり。
「ねー、なにか手伝うことある?」とひだまりが訪ねると「ないわよー」とすふれ。「ないでござるよ」とタフィー。「ないぞ」とショコラ。
一様に全員手伝うことはないといった。
「ちょっとくらいなにか」とひだまりが言うと「お前がやったら全部爆発するだろ」とショコラが言う。ほっぺを膨らまして抗議するひだまり。
テントなどの設置や食材の準備ができたので夕食を作り始めることになった。
「なに作りましょうか」とすふれがたずねると、タフィーが「鍋ー!鍋にするでござるよ!」と言う。
続いてひだまりが「カレー!」と言うと、タフィーが「ミルク粥も欲しいでござるよ」と言う。
ひだまりはついでに「ハンバーグ!」と言った。
「じゃあ全部作りましょうか」と言うすふれに「全部は作りすぎよ!?」と言うれあ。
「楽しそうだなお前ら」とこむぎは買ってきたお茶を飲みながら言う。
すふれは全部作り始めた。
すふれが料理を全部作ったので、夕食を取り始めた。
雑談しながら食事をするひだまりたち。
「あ、そうそう。香辛料を自作してるんだけどね」とひだまりは自作した香辛料をバッグから取り出した。
「へーすごいじゃないー。配分とかも自分で考えてるの?」とれあが聞くと「そうだよー、薬の調合みたいで面白いよー爆発しないし」
「そうね爆発はしないわね。いや待って薬は普通爆発するものなの!?」とれあ。
「ひまちゃんのは爆発すること多いわよー」とすふれ。
「そ、そう……」とれあ。
「これをカレーに入れるといいよー。カレーの香辛料で作ってるから大丈夫」とひだまり。
「いいわねー、ちょうどちょっとだけ辛さが足りないと思ってたから」とれあは受け取った。
「それでね、今薬品の濃縮実験とかしてるんだけどね」と話すひだまりの会話を聞きながら、れあはカレーにひだまり製香辛料を入れた。
「試作品としてその香辛料作ったんだー……あ、それ一粒だけでいいんだよ」とひだまり。
全員が凍り付く。
「何粒入れたでござるか」とタフィーがたずねると「つ、つつつ粒の数なんて数えるわけないじゃない普通!」と青ざめるれあ。
その様子を見たひだまりは、何も言うことなく席を立ってその場から離れていく。
「ひまちゃーん、どこに行くの?」とすふれが声をかけると、ビクッとしたように振り替えってひだまりは「な、なんか気分がすぐれないから風に当たりたいかなーって」と言った。
「待ちなさい!」とれあが立ち上がって、ひだまりの腕をつかんだ。
ひだまりは、れあの手を振り払って逃げる「わー! 今すぐにでも風に当たらないとどうにかなってしまうよぉー!」と言いながら全力で逃げていった。
「短距離走選手並みの速さでござるよ」とタフィーは逃げていくひだまりを見て言う。
「逃げる時だけものすごい早いのよねー」とすふれ。
「ああ、カレーが……」と逃げていくひだまりを見て崩れ落ちるれあ。
カレーを見たタフィーは「なんて日でござるか」と絶句した。
テーブルの席を見ると、こむぎが座っていてカレーを食べている
「いけるじゃん、これ」と食べながらこむぎは言う。
「あ、こむぎちゃんそれ……」と恐る恐るカレーを指さすすふれ。
「それってひだまりの香辛料を入れる前のカレーかしら?」とれあがたずねると、「さぁ? それはわからないけど今盛り付けたばっかりだよ」とこむぎ。
「な、なら香辛料が入っていることになるわね……」と考え込むれあ。
「ということは大丈夫でござるか?」とタフィー。
「大丈夫だと思う」とショコラ。
「はぁ、よかった。せっかくの夕食が台無しになるところだったわね」とれあ。
全員はカレーを盛り付けて食べることにした。
カレーを皿に盛りつけながら、ショコラは「それにしてもあいつ帰ってこないなー」と言う。
「当分帰ってこないんじゃない? ほとぼり冷めるまで」とすふれ。
すふれたちは食べ始めた。
食べた瞬間に『ぎゃあああー!!』と悲鳴が上がるのだった。
よく見ると木陰で真っ青な顔でひだまりがのぞいていた。
「あばばばば……!」とひだまり。
「どうか師匠が全部食べますように」と祈っていた。
ほとぼりが冷めたあと、ひだまりが戻ってきた。
「もう大丈夫?」とひだまりが言うと「大丈夫だと思ったか?」とショコラはひだまりを見る。
「ひえー! こんなことになるとは思ってなかったんだよぉ!」とひだまり。
全員がひだまりに呆れていた。
「もう終わったことだし、しょうがないわよ」とれあ。
「そうでござるな」とタフィーはうなずく。
ひだまりが安堵していると、「ひだまりが作った調味料は使用禁止で」とれあが言う。
「そうでござるな」とタフィーはうなずく。
「あはは……」とひだまり。
「濃縮ってこんなに危ないなんて初めて知ったわよ」とれあ。
「今度は気を付けて濃縮するね」とひだまり。
「使わないって言ったでしょ!」とれあ。
その後、夜が深まっていく。
ひだまりたちは焚火をしながら空を見上げていた。
「あ、流れ星!」とひだまりが言うと「ほんとだ―」とすふれ。
みんなも流れ星を見ていた。
流れ星を見たその後。
「さすがに寝るかね」とこむぎはあくびをしたあとテントに向かった。
「お休みなさーい」とすふれ。
「えー、もう寝ちゃうんですかー」とひだまりが言うと「いや、もうじゃないから22時回ってるだろ」とこむぎ。
「そろそろ私も寝ようかしら」とれあもテントに向かっていた。
「私も」とショコラもテントに向かう。
しばらく星を眺めたあと、ひだまりとすふれとタフィーも寝たのであった。
翌朝、ひだまりのテントにすふれがやってきた。
すふれの「ひまちゃーん、起きてるー?」という声で目覚めたひだまりは「なーにー?」と返事する。
「朝食ここに置いておくわねー」と言って保存容器に入れた朝食をテントの中に入れた。
「ありがとー。いやー、昨日食べそこなったからお腹ぺこぺこだよー」とひだまり。
「よかったー、それなら全部食べれそうね」すふれ。
「うん? そうだね」とひだまり。
「はい、パンと合わせて食べてね」とすふれは皿に乗っけたパンもテントに入れる。
「朝食はなにかなー?」とひだまりは保存容器を開ける。
「昨日の」とすふれ。
植物研究所から帰ってきて、薬品店に戻ってきたあと。店内の休憩室にて紅茶とクッキーを用意しながら。
「そういえば、ひだまり殿の寝相本当ひどいでござるよ」と話を切り出したのはタフィー。
「そうなの?」とれあはタフィーを見ると、タフィーはうなずいた。「テントから顔を出してた時があったでござるよ」
「そういやそうだな、寝相悪いっていうのは。前起こしに行ったときなんか床に落ちたまま寝てて……」とショコラが話すと「えー! そんなことないよー!」とひだまり。
「当事者はわからないんだよ」とショコラ。
「じゃあショコラちゃんだって自分の寝相知らないじゃん!」とひだまりが言うと、「いや、私は大丈夫だって……大丈夫だよな。あれ大丈夫だったか……!?」とショコラは考え込み始めた。
ショコラがすふれに「大丈夫だよな?」とたずねると「ふふっ」とすふれは笑うだけだった。
「おいー! どうなんだよー!」とショコラ。
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