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13話
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どよめきが起こる中、静かになるまでヒーロスは待った。
そして。
「荒唐無稽? 帰還した約一万人を操ることなど不可能? 本当に?」
兵士たちは、耳を疑いながらも聞き入っている。
「では、逆に聞きたいなー。一万人もの兵士が、ほぼ死傷者もなく帰還できたのは何故だろう? 兄が守ったと? それなら、初めから一人で行けばいいじゃない。足手まといでしかないよ」
物語の語り部。演者だろうか。
滔々と、事の顛末をヒーロスは語って聞かせる。
顛末と言いても、実際に見たわけではなく、彼の推察によるものだが……。
二年間もの食料はどうやって賄ったのか。
魔境に近づけば、魔王配下の魔物がたくさんと出て来るだろう。
上位、最上位に位置するものだっていたはずだ。
もし、奇跡的に魔王の元まで兵を減らさず行けたとして、そこにはどれだけの数の魔物が控えていただろうか。
副官クラスの強力な者たちだっていただろう。
「僕たちは、魔王と言う恐ろしい存在を、その上部しか理解していないんじゃないかな? 僕はね、討伐に参加した兵士にいろいろ質問してみたんだよ。けれど、そのどれもが抽象的で、答えられないものは忘れたとか、覚えてないと言うんだ。記憶の欠如、もしくは制限されてるようにね」
ある兵士が、恐る恐ると手を挙げる。
「どうぞ。そんな怖がらないでよー」
「で、殿下は、陛下の剣や魔法をご覧になったことがないのでは……?」
「あるよ。あるに決まってるじゃない。僕はさ、英雄に憧れてたんだ。物心ついた頃には、そうした物語や歴史書を読み漁ったもんだよ。でさ、3番目の兄が凄いって言うじゃない」
ヒーロスは、その噂に心が躍ったと言う。
八歳となっていた、ある日。
こっそりと、プププートの稽古を見たのだそうだ。
そこには、真剣に素振りを繰り返す兄の姿があった。
まるで、からくり仕掛けの人形のように……。
始めは、鍛錬とはそういうものなのか、と思っていたらしい。
何度か見ていくうちにおかしい事に気が付いたという。
兄が剣を振るう、魔法を使う、その際には、必ず傍らに同じ下女が居たのだと。
名をエイシェットと言うものだった。
と、語る。
その者が居ない時に、剣を振るったり、魔法を使う姿を見た事がない。
確かに、前王が開催した御前試合で優勝して見せた。
大歓声の中、誇らしく剣を掲げる姿が印象的だった。
それが、兄の実力であったなら……。
その下女がいない時、遠目から石を投げてみた。
武芸に達者なものが、そんなものに当たるわけがないと。
直撃した。
怒り狂って、衛兵に周囲を捜索させていた。
ある時は、魔法で攻撃を仕掛けてみた。
念のために当たらない位置に。
ただの、ウインド・スラッシュだ。
だが、反応する事もできずに、壁が突然割けた事に尻もちをつき、暗殺者だと叫んだという。
「そんな男に魔王が倒せると思う? あっはっはっはっは」
ひとしきり笑うと、急激にその場の空気が冷えるような目線となった。
兵士たちは固唾を飲む。
「魔王討伐どころか、戦ってさえいない。いや、会ってさえいないよ」
「……で、殿下、多くの兵士が魔王の特徴を語ってますが……」
「大柄で? 真っ黒で? 大魔法を使う? 何度も死ぬ思いをした? そんな時もプププートが勇気を与えてくれた。そして、魔王を打ち破る姿を見た! でしょ? 名前は? 大魔法ってどんなの? こう言う事聞いてもさ、ドカーンとかバコーンとか、それはそれはお恐ろしいとか、こんなばっかなわけ」
ヒーロスの言葉に、兵士たちの中から、確かにそうだといった声が漏れ始めた。
「人間って意外と単純にできてるんだよ……」
ヒーロスは、にんまりと口の端を上げる。
「殿下、もったいぶらずに……」
「あっはっはっは。ごめんごめん。もったいぶりたいわけじゃないの。僕さ、今、すごく楽しいんだ。あのゴミ溜めの箱庭から出られてさ」
また、同じ顔に戻ると一言。
「常識と先入観」
兵士たちは、皆、次の言葉を待っている。
「さっきさ、何故、魔王が死んだ事を、皆は信じたのか聞いたよね? アレが倒した、そう口々に多くの――一万人の証人が同じ事を言ったからなんだよ」
兵士たちは、黙々と聞いている。
中には察しの良いものは、ヒーロスの話を既に理解してきた者も現れ始めた。
「ですが、他国でも魔王がいなくなったっと……」
「うんうん、噂になったよね。そして、常識になった。そこがポイントなんだよ」
「殿下! よろしいでしょうか?」
「おう、元気だね、どうぞ」
「……つまり、魔王を討伐したと多くの兵士に語たらせ、それを利用して魔物の動きを、魔王が巧みに統制している、ということでしょうか?」
ヒーロスは、高笑いをした後、その兵士を見つめる。
「素晴らしい! 君、名前は?」
「アズバルドです!」
「皆、アズバルド君に拍手!」
兵士たちは、分かっている者もそうでない者も、とりあえず手を叩いた。
「まだ、わかっていない諸君に、教えよう。魔王討伐を多くの兵士が語り、それが広まる。それを裏付けするように魔物が現れなくなっていった。誰もが、魔王が居なくなったからだ、そう思う。そうした先入観は、やがて当たり前の常識となるわけだよ」
ヒーロスは、そうやって、まんまと国の中枢にまで、魔王の配下の者を蔓延らせる結果となってしまった、と語る。
その中でも、操られている中心人物が、絶対権力を持つ現王なのだから、どうしようもない。と……。
「つまり……」
兵士のつぶやきを拾ってヒーロスは話す。
「たぶん、魔王の配下に幼少の頃から操られているんだよ、アレは。討伐に出たのも、大掛かりに兵士を洗脳するためだったんだろうさー」
幕引きが近づいて来ている。
ここで、ヒーロスは、さらに爆弾を投下する。
「だいたいさ、どんなに愚かだったとしても、突然、親を刺し殺す? ありえないでしょ」
兵士たちは何の話かと、顔を見合わせた。
ヒーロスは、それを見て、皆には知らされてなかったからか、と。
「はいはい、前王は、現王が刺殺しました」
兵士たちは今、何を聞かされたのか、理解が追いついてないそこへ。
「いやさ、長兄も次兄もさ、あの下女の策謀だったんじゃないかって思ってるんだよね」
ヒーロスは、周りの兵士たちが呆気に取られている姿を、実に楽しそうに眺めている。
そして続ける。
怪しき笑みを浮かべて。
「アノイトスは今、魔王の手の者に、乗っ取られている最中なのさー」
そして。
「荒唐無稽? 帰還した約一万人を操ることなど不可能? 本当に?」
兵士たちは、耳を疑いながらも聞き入っている。
「では、逆に聞きたいなー。一万人もの兵士が、ほぼ死傷者もなく帰還できたのは何故だろう? 兄が守ったと? それなら、初めから一人で行けばいいじゃない。足手まといでしかないよ」
物語の語り部。演者だろうか。
滔々と、事の顛末をヒーロスは語って聞かせる。
顛末と言いても、実際に見たわけではなく、彼の推察によるものだが……。
二年間もの食料はどうやって賄ったのか。
魔境に近づけば、魔王配下の魔物がたくさんと出て来るだろう。
上位、最上位に位置するものだっていたはずだ。
もし、奇跡的に魔王の元まで兵を減らさず行けたとして、そこにはどれだけの数の魔物が控えていただろうか。
副官クラスの強力な者たちだっていただろう。
「僕たちは、魔王と言う恐ろしい存在を、その上部しか理解していないんじゃないかな? 僕はね、討伐に参加した兵士にいろいろ質問してみたんだよ。けれど、そのどれもが抽象的で、答えられないものは忘れたとか、覚えてないと言うんだ。記憶の欠如、もしくは制限されてるようにね」
ある兵士が、恐る恐ると手を挙げる。
「どうぞ。そんな怖がらないでよー」
「で、殿下は、陛下の剣や魔法をご覧になったことがないのでは……?」
「あるよ。あるに決まってるじゃない。僕はさ、英雄に憧れてたんだ。物心ついた頃には、そうした物語や歴史書を読み漁ったもんだよ。でさ、3番目の兄が凄いって言うじゃない」
ヒーロスは、その噂に心が躍ったと言う。
八歳となっていた、ある日。
こっそりと、プププートの稽古を見たのだそうだ。
そこには、真剣に素振りを繰り返す兄の姿があった。
まるで、からくり仕掛けの人形のように……。
始めは、鍛錬とはそういうものなのか、と思っていたらしい。
何度か見ていくうちにおかしい事に気が付いたという。
兄が剣を振るう、魔法を使う、その際には、必ず傍らに同じ下女が居たのだと。
名をエイシェットと言うものだった。
と、語る。
その者が居ない時に、剣を振るったり、魔法を使う姿を見た事がない。
確かに、前王が開催した御前試合で優勝して見せた。
大歓声の中、誇らしく剣を掲げる姿が印象的だった。
それが、兄の実力であったなら……。
その下女がいない時、遠目から石を投げてみた。
武芸に達者なものが、そんなものに当たるわけがないと。
直撃した。
怒り狂って、衛兵に周囲を捜索させていた。
ある時は、魔法で攻撃を仕掛けてみた。
念のために当たらない位置に。
ただの、ウインド・スラッシュだ。
だが、反応する事もできずに、壁が突然割けた事に尻もちをつき、暗殺者だと叫んだという。
「そんな男に魔王が倒せると思う? あっはっはっはっは」
ひとしきり笑うと、急激にその場の空気が冷えるような目線となった。
兵士たちは固唾を飲む。
「魔王討伐どころか、戦ってさえいない。いや、会ってさえいないよ」
「……で、殿下、多くの兵士が魔王の特徴を語ってますが……」
「大柄で? 真っ黒で? 大魔法を使う? 何度も死ぬ思いをした? そんな時もプププートが勇気を与えてくれた。そして、魔王を打ち破る姿を見た! でしょ? 名前は? 大魔法ってどんなの? こう言う事聞いてもさ、ドカーンとかバコーンとか、それはそれはお恐ろしいとか、こんなばっかなわけ」
ヒーロスの言葉に、兵士たちの中から、確かにそうだといった声が漏れ始めた。
「人間って意外と単純にできてるんだよ……」
ヒーロスは、にんまりと口の端を上げる。
「殿下、もったいぶらずに……」
「あっはっはっは。ごめんごめん。もったいぶりたいわけじゃないの。僕さ、今、すごく楽しいんだ。あのゴミ溜めの箱庭から出られてさ」
また、同じ顔に戻ると一言。
「常識と先入観」
兵士たちは、皆、次の言葉を待っている。
「さっきさ、何故、魔王が死んだ事を、皆は信じたのか聞いたよね? アレが倒した、そう口々に多くの――一万人の証人が同じ事を言ったからなんだよ」
兵士たちは、黙々と聞いている。
中には察しの良いものは、ヒーロスの話を既に理解してきた者も現れ始めた。
「ですが、他国でも魔王がいなくなったっと……」
「うんうん、噂になったよね。そして、常識になった。そこがポイントなんだよ」
「殿下! よろしいでしょうか?」
「おう、元気だね、どうぞ」
「……つまり、魔王を討伐したと多くの兵士に語たらせ、それを利用して魔物の動きを、魔王が巧みに統制している、ということでしょうか?」
ヒーロスは、高笑いをした後、その兵士を見つめる。
「素晴らしい! 君、名前は?」
「アズバルドです!」
「皆、アズバルド君に拍手!」
兵士たちは、分かっている者もそうでない者も、とりあえず手を叩いた。
「まだ、わかっていない諸君に、教えよう。魔王討伐を多くの兵士が語り、それが広まる。それを裏付けするように魔物が現れなくなっていった。誰もが、魔王が居なくなったからだ、そう思う。そうした先入観は、やがて当たり前の常識となるわけだよ」
ヒーロスは、そうやって、まんまと国の中枢にまで、魔王の配下の者を蔓延らせる結果となってしまった、と語る。
その中でも、操られている中心人物が、絶対権力を持つ現王なのだから、どうしようもない。と……。
「つまり……」
兵士のつぶやきを拾ってヒーロスは話す。
「たぶん、魔王の配下に幼少の頃から操られているんだよ、アレは。討伐に出たのも、大掛かりに兵士を洗脳するためだったんだろうさー」
幕引きが近づいて来ている。
ここで、ヒーロスは、さらに爆弾を投下する。
「だいたいさ、どんなに愚かだったとしても、突然、親を刺し殺す? ありえないでしょ」
兵士たちは何の話かと、顔を見合わせた。
ヒーロスは、それを見て、皆には知らされてなかったからか、と。
「はいはい、前王は、現王が刺殺しました」
兵士たちは今、何を聞かされたのか、理解が追いついてないそこへ。
「いやさ、長兄も次兄もさ、あの下女の策謀だったんじゃないかって思ってるんだよね」
ヒーロスは、周りの兵士たちが呆気に取られている姿を、実に楽しそうに眺めている。
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