車輪の神 ジョン・ドゥ 〜愛とロマンは地球Bを救う?〜

Peppe

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第一章 乱乱乱世

神話のはじまり

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地球B 2日目
AM 6時00分

 窓から差し込む日光に「朝ですよ、とっとと起きなさい。」と、瞼に圧をかけられて目を覚ました。
「何時だと思ってんだ!?」と文句をつけてやろうかと思ったが、なんだか頭はスッキリしている。
そういえば、昨日は早くに寝たんだった。
早寝早起きなんて、神話の世界の出来事かと思っていたが、地球Bでは簡単なようだ。

 むくんで半開きの目を外にやると、朝の日差しに照らされた草花が、気持ちよさそうに揺れている。
羨ましいじゃないか、おじさんも外に出て、日光浴に洒落込むとしよう。

 ショルダーから降りて伸びをすると、思った以上に気持ちがいいので、そのままラジオ体操に突入した。
十数年ぶりの体操は、順番やら細かい動きがウロ覚えで随分と不細工だ。
大きく深呼吸の動きだけを完璧にこなすと、胃袋も目を覚ましたのか、急に小腹が減ってきた。

 火を起こして、昨日のディナーと同じメニューを食べた。
朝から餅を6つも食べるなんて、学生時代の正月以来だ。

 食後のコーヒーとタバコを満喫し、皿洗いを済ますと、朝食の準備を始めてから2時間も経っていた。
まぁいいさ、別に急ぐ用事があるでもない、何より全ての作業が楽しくて仕方ない。

 ーー カキンッ シュボ ーー

「………………カフゥーーーー……うんーーまっ……禁煙さえすりゃメチャクチャ健康な生活してんな今………………コハーーーーうめぇ! 無理無理……ぼちぼち行動開始しますかね。」

 出発の為に、カバンやらなんやら準備していると、イカレ集落の連中に『奇妙な服装』がどうだのと言われたのを思い出した。
どうしたものかと思ったが、『世紀末救世主風マント』を持ってきていたのを思い出し、カバンの上から羽織った。
自分が荒野の冒険家になったようで、胸がときめいた。
せっかくの気分だ、今日は東の方角へ、歩いて探検する事にしよう。

「……す、すまない……水を……水を一杯恵んでもらえないか…………」

 ……なんつって。
ふふふ、いいね、無人の野を一人、マントをなびかせながら歩む。……ロマンじゃないの。
こうなるならサンドバッグみたいなカバンも用意しときゃよかったよー。
しっかし、散歩もたまにゃ悪くないねぇ、1時間ちょい歩いたけど全然余裕だわぁ、健康健康。
…………なんぞ? なんか路肩に止まってんじゃん、ありゃなんじゃ?…………

「あぁ……馬車だ。」

 ……んだよ! テンプレがしつこいんだよ。
今度は盗賊やらゴブリンにでも襲われてるんですか!? 悪いがな、そう簡単にゃダービーもショルダーも呼んでやらんからな!
……なんだ? 車輪イジってんのか? パンク? 女の人っぽいぞ…………ん~……見捨てるー?……
車とは直し方違うわなー……
でも何も声かけずにスルーってのもかわいそうだし、声だけかけてみるか……

「大丈夫ですかー?」
「ちっ、なんだお前は? 今忙しいんだ! 用がないなら話しかけるな。」
「おぉっ!……」

 振り向いた顔を見て言葉を失った。
このレディ、口の悪さと対照的に、とんでもなく綺麗な顔をしている。
東洋と欧米、それぞれの優れた美の特徴をいいとこどりしたような風貌で、『絶世の美女』とはきっとこういう女性に使う言葉なのだろう。
キラキラとド派手な金の長髪も、まったく下品に見えず、彫刻のような顔面と相まって、神秘的な雰囲気を醸し出している。

 ダービー並みに完成された容姿に見惚れていると、それぞれが完璧に見えるパーツの中で、一ヶ所だけ明らかにおかしい部分を見つけた。
整いきった顔の両サイドに、様々な漫画で見た事のある、特徴的な長くてとんがった耳がついているのだ。

「え、エルフっ!?」
「ちぃっ! 訳のわからん事を言って邪魔をするな!」
「あ、あぁ……困ってんなら手を貸そうと思って、声かけただけだよ。」
「手を貸すだと? そんな事をしてお前に何の得がある? 騙されると思うなよ、さっさと失せろ。」

 どうやらこの子も脳みそが乱世らしい。
流石のオレだって、二日も続けて無礼者に関わっていられる程めでたい頭をしてる訳じゃない。
充分義理も果たしたし、東への旅を続行する事にしましょう。

「……あぁ、そうかいわかったよ、オレはもう行くから勝手にやりなよ……」

 嘆かわしい……この星には蛮族しかいないのか?
顔がいいからってなんでも許さ……

「そこの旅のお方ぁ!」
「今度はなんだってんだぁ!?」

 プンプン状態で振り向くと、エルフ女の横に、ヒゲを生やした恰幅のいいおじさんが立っている。
なんだか泣き出してしまいそうな顔をしてるじゃないか。

「あ、あのぉ、私の連れが失礼をしてすみません。」

 なっ! 『敬語の使い手』だと!?
むぅ……この星で初のマトモっぽい人に、八つ当たりで怒鳴ってしまったぞ……

「……まぁ、オレもアナタに失礼な態度でしたし……それより、どうしてオレに声をかけたんですか?」
「ど、どうか助けて欲しいのです! 娘の『サシャ』が毒蛇に咬まれてしまい、急いで集落に戻っていたんですが、ここまで来て車輪の軸が折れてしまって、先へ進めなくなってしまったんです。何か手はないものかと思っていたら、丁度アナタが通ってくださって……」
「毒蛇ぃ!? 大変じゃないですか! 馬車を直しましょう! 何かオレに手伝える事はありますか?」
「……馬車を直しても、間に合わ……ぐぅうぅ……ふぅぅうう……サシャ……サシャァァ……あぁ、神よ! どうか娘を助けてください。」

 突然泣き出したおじさんは、地面に突っ伏し、神に祈りを捧げ始めた。
創作物ではよく見る光景だが、実際に目の前でやられると対応の仕方がわからない。
どうしたものかと戸惑っていると、車輪と格闘していたエルフ女が声を荒げる。

「『パンチョ』! 泣き言を言ったところで何も変わらんぞ! 今すぐ馬車を直して、それから全速力で集落を目指せば、まだ間に合うかも知れないだろう!」

 そうか、そこまで切羽詰まった状態なのか……
子どもが危ないんじゃ迷ってても仕方ない、やっちゃうぞ使徒降臨!

「ショルダー!」

 ーー パチィン ーー

「パンチョさん! 私は『車輪の神 ジョン・ドゥ』! あなたを助ける為に天から来た! 今すぐこの車に娘さんを移すんだ!」

 テンパって、『神の使い』ではなく『神』を名乗ってしまった。
オレの声に振り向いたエルフ女は、「邪魔なだけじゃなく頭もおかしいんだな。」と言いたげな目で睨みつけてくる。
パンチョさんはショルダーを見て固まり、地面に跪いたままを動かない。

「パンチョさん、何やってんの早く! 一刻を争うんでしょ!?」
「パンチョ! こんな怪しいヤツの話を聞いてやる必要はない! 何が狙いかわからん! 大体、こんな鉄クズで何が出来ると言うんだ!? まやかしを使って神を騙るペテン師が、とっとと去れ!」

 鉄クズ?……はぁぁあああ!?
クソったれが、神の力を見せてくれる!

「おいエルフ! オレのナイフを渡す。オレが何か妙な事をしたらすぐに刺せ!」
「何を……」
「お前と喋ってる時間はないんだよぉ! いいから持ってろ! パンチョさん、馬車から娘さんを運ぶからな!」

 馬車の扉を開けると、小学生ぐらいの女の子が苦しそうな顔で、座席の上に横たわっている。
そっと抱き抱えてショルダーのフラットシートに移して、地面で呆然としているパンチョさんも娘さんの横に押し込む。

「ふー、おいエルフ。お前はオレの横に乗って集落まで案内してくれ。ナイフを構えたままでいい。」
「……本当に間に合うのだろうな?」
「間に合わなかった時も刺せばいいだろうが! 急いでんだから早く乗れよ!」
「……ふん、妙なマネをするなよ。」
 
 そう言って馬車から離れ、ショルダーの助手席側で立ち尽くしている。
一応は信じてくれたのだろうか?

「おい、どうやって乗り込めば……」
「あぁぁ! どけ、開けるから……ホラ! そこに座れ、閉めるからな、手を引っ込めてろ!」

 助手席のドアを閉め、走って運転席に回り込み、乗り込んでエンジンをかける。

「パンチョさん、結構揺れるから、しっかり娘さん支えてあげて!」
「……おぉ、サシャ、サシャァ……」

 娘さんの手を握り、メソメソと言葉をかけている。
気持ちはわかるが、こっちは急いでるんだ。

「ねぇ、聞いてる? さ・さ・え・て! 返事ぃぃいぃぃいいぃぃ!!」
「あ! あぁ……は、はい……」
「っとにぃ……エルフ、時間はどれぐらい残ってるんだ?」
「今からなら、2時間以内に血清を打てば命は助かるはずだ……だが……ここから集落まではどんなに馬車で急いでも……2時間以上かかってしまう……」

 悔しさを噛み殺すように、小声でボソボソとした口調で話している。
話の内容をパンチョさんと娘さんに聞かれたくないのだろう。

「……馬車で2時間ちょいね……ねぇ、パンチョさん、娘さんは助かったよ!」

 エルフの案内を聞きながら集落を目指す。
娘さんが体をぶつけないよう、そこそこのスピードに抑えているが、それでも未体験の速度なのだろう。
パンチョさんは祈りのような言葉をブツブツ唱え、エルフは目を丸くしながら窓の外を見つめていた。
それでもナイフはしっかりオレに向けて構えている。
よろけてオレに刺さったら、誰もショルダーを運転できない事をこいつは理解してるのだろうか?

 娘さんの体とナイフの切っ先に、細心の注意を払いながらの安全運転でも、集落には1時間もかからず到着した。
門のそばで3人を降ろすと、「一緒に来てください。」と、パンチョさんに頼まれた。
さすがに、昨日の今日で集落に入るのはかなり抵抗がある。
同行を丁重に断ると、「それならこの辺りで待っていてください。」と、しつこく頼んできた。
非常にめんどくさいが、折れてくれそうにないので、門の近くで待っててあげる事にした。

  ーー カキンッ シュボ ーー

「…………………ムファーーー……」
 
 ふー、くたびれた……娘さん大丈夫かな? 時間的には余裕だったし、間に合ったんだよな?
……助かったとしてだ、こっからどうなるんだろ? まーた囲まれたりすんのかな?
「私たちを鉄の獣でさらおうとしたんだぁ!」とか言い出して……
でも馬ヒモん時とは違うから大丈夫だよな……『車輪の神』って事にしといたし。
……いや、「神を騙る不届き者めぇ!」とか言って、槍持って突っ込んでくる感じか?
どうしよ? バックれるか、うーーーん……

 エスケープするべきか悩んでいると、門からパンチョさんとエルフが出てきた。
キョロキョロしてオレの姿を見つけると、二人とも猛ダッシュでこっちに向かって来る。
これは捕まるパターンだ、さっさとバックれる事にしましょう。

「ダービー!」

 ーー パチィン ーー

「フケようぜ!」

 ーー ドゥゴンッッッ! ーー

「……お待ちくださーーーーーーい! 神よ! どうか、お待ちくださーーーい!」
「私も無礼を働いた事を謝りたいんだーーー! 神よ、待ってくれーーー!」

 必死の形相で走りながら、大声でオレを呼び止めてくる。

パンチョさんのホッペや腹が、走りに合わせて激しく上下動して、非常に面白気持ち悪い。

「そんな事言ってーーー、オレのこと捕まえる気なんでしょーーーーー?」
「そんな恐れ多い事できませーーーん! どうか、どうかお待ちをーー! ゔぅえぇっ! 『テッサ』さん……お願いしますぅー!」
「任せろ!」

 何が起きるのかと思い見ていると、エルフが急加速して、人とは思えぬ速さで突っ込んでくる。
慌ててダービーのアクセルを開こうとすると、『ジャンピングスライディング跪き』でエルフが目の前に滑り込んできた。

「あっっっぶねぇえ! バイクの前に飛び出すなよぉ!」
「すまない!……だが、どうか、どうか話をさせてくれ!」
「えーーー……うーん、襲ってきたりしない?」
「しない! アナタにそんな無礼は働かない。……どうか頼む!」

 ぐぅー、そんな真剣な顔されると弱いんだよ……
ってか、やっぱりこの子めっちゃくちゃ美人だなぁ、地球の女優やモデルでもここまで綺麗な人は見た事ないぞ……
……はぁあぁ……騙されてもいいかな、って気になっちゃうじゃないのよぉ……

「……ふぅ~、わかったよぉ……」

 ダービーから降りて基地へ送り返すと、パンチョさんがポヨポヨドタドタと到着し、オレの前で跪いた。

「はぁ……はぁ、ぜぇ……ぜぇ……ゔぅぇっ……ふぅ……ふぅーーー……か、神ジョン・ドゥよ、あなた様のおかげで、娘のサシャは無事に助かりそうです。本当に、なんとお礼を申し上げればいいか……」
「お、助かるの? それはよかったですね、おめでとうございます。」
「あ、あぁあ、なんとありがたきお言葉を……私はこの集落で統領をしております。どうか、何かお礼を差し上げたいのですが……」

 統領なの!? なんだか裕福そうな身なりはしてるけど、ドリルとは態度が全然違うね……

「お礼ですか……うーん、特に思いつかないんで大丈夫ですよ。」
「なんと寛大な!……おぉ……神よぉ……」

 そう言って、手を組んでオレを拝み始めた。
なんともむず痒い気分だ。

 気まずい気持ちで突っ立てると、今度はエルフが口を開いた。

「神よ! あなたの救いの手を信じられず、無礼を働いた事を謝りたい。」
「いいですよ、緊急事態だったんだし。サシャちゃんが心配だったんですよね?」
「だが! 私は神の奇跡を鉄クズと……」
「あ、確かに! やっぱりテメェは許しません!」

 危ねぇ、忘れるトコだったわ……こいつは神としてキッチリ裁かなばならんな。
神っぽく……お主……貴様……そち?

「ごほんっ、ゔ、ゔぅん!…………うぬは自分が犯した罪の大きさをわかっておるのか?」
「本当に申し訳ない事をした!」
「我に謝って済む問題ではないわ! しばし待っていろ。」

 『汝』が正解だったか?……まぁいいか、勢い勢い!

「ぁ来ぅるがいいぃ! ショルダァーよぉ!」

 ーー パキィン ーー

「これは……またも神の奇跡……」
「よいか! この子はな、我が寵愛を受けし二人の眷属の内が一人、ショルダーだ!」
「ショルダー……」
「見よ……見るがいいこの完成された美しさを! ぬは、ぬはははは……素晴らしかろう?……さぁ、このつぶらなお目々を見て謝るのだ。」
「申し訳なかった!」
「あぁりませんでしたぁあ!!!」
「も、申し訳あ、ありませんでした……」

 あんなにキビキビ話してたのに、えらいモニョモニョするね。
敬語ってそんなに難しいもんか?

「おい女! うぬは許してもらう気があるのか? 気持ちを込めろ! もっと欲しがるように言ぃえぇ!!」
「わ、わかった……申し訳ありませんでした!」
「ふん! どうするショルダー? 処す? 罰す? 裁く?……許すの!? 優しい子だね本当に……いい子いい子、器ベリービッグだね……よし、この人たちともう少し話すから、基地に帰ってなさい。」

  ーー パキィン ーー

「ふぅー、さてさて、えーっとぉ、ゔぅんっ!……おい女ぁ、己の無知を恥じ、これからはショルダーの寛大さに感謝しながら生きるのだな!」
「……わ、わかった……これで裁きは終わりなのか?」
「ふん、もうよいわぁ!」
「そんな訳には行かない! あれだけの無礼を働いたんだ、足でも腕でも持って行ってくれなければ私の気が治らない!」
「な、何を言ってるんです! 神よ! テッサさんは私の為に動いてくれたまでです。裁くならどうか私めを!」
「バカかパンチョ! サシャはどうする気だ!? 神よ! 私を裁いてくれ!」
「神よ!」
「神よ!!」
「神よぉ!!!」
「どうか神よぉぉ!!!!」
「うぅわぁー……」

 ……どうしましょ? 裁かなきゃ引き下がらん感じだよな……え~、怖いから腕とかいらな~い。
超まっすぐに見上げくるじゃないのさ……
二人とも悪い人じゃなさそうなんだよなぁ……
罪悪感が凄いぞ…………正直に話すかぁ……

「……あの……すみません、裁けません。…………オレ……実は神じゃないんです……」
「神ではない……やはり騙っていたのか!?」
「どういう事なのですか?」
「えーっと、実はですね……」

 戸惑うパンチョさんとブチギレ寸前のエルフに、オレは自分の事情を説明した。
艦長や基地の事は説明してもチンプンカンプンだろうから、訳あってよその世界からこの世界に来たこと、来たばっかりでこの世界のことは全く知らないこと、ダービーとショルダーを出せるだけの普通の人間であることを話すと、二人は黙り込んでしまった。

 ……こっからどうなるんだ? やっぱり神で通した方がよかったか?
……なんか話してくれ、沈黙は怖いぞ……パンチョさんなら許してくれそうなもんだけど……

「あのぉ……パンチョさん?……」
「あぁ、すみません、理解するのに時間がかかりまして……」
「はぁ、理解してもらえたんですか?」
「正直、全くできていません……ですが、あなたのおかげで私の命よりも大切なサシャが助かったのです。神であれ人であれ、私たち親子の大恩人であることに変わりありません。」

 さっきまで戸惑いに染まっていた顔は、なんだか安心したよう笑顔に変化していた。
プニプニしてそうなホッペも相まって、なんとも人の良さそうな表情ではないか。

「……えっと、許してもらえるんですか?」
「もちろんです!……そうですね、この世界に詳しくないというのであれば是非お世話をして差し上げたいのですが、いかがですか? 神としての扱いがイヤならば……そうですね、客人として。」

 パンチョさん! あなたはマトモな脳の持ち主だと信じてたよ!

「そうですね、そういうことなら、喜んで!」
「すばらしい! 早速今晩は我が家に来てください、歓迎しますよ。」
「やったぁ、ありがとうございます。」

 ふふふ、一時はどうなる事かと思ったけど、やっぱり人助けはするべきなんだよ。
世の中には思いや……

「おい!」
「おぉぅ! びっくりしたぁ」

 忘れてた……このエルフ女はめんどくさそうだ。
カミングアウトしてからバリバリに睨んでくるし……

「えーっと……テッサさん……だっけ?」
「テッサでいい。それより、お前に聞きたい事がある。」
「うん……じゃあテッサ、どうしたの?」
「あの状況だ、神を騙ったことは目を瞑ってやる。ショルダーとやらを鉄クズと言ったこともこっちの落ち度だ、妙な謝り方をさせられた事についても一応筋は通っている。……だが、一つだけ納得がいかん。」

 この子なりに友好的な態度なのだろうが、オレが何か返答を間違えれば、たちまち飛び掛かってきそうな物騒な迫力を纏っている。

「納得……何が?」
「どうして見ず知らずの私たちを助けた? パンチョに取り入るつもりもなかったのだろう? どうしてだ? お前には何も得がないだろう。」

 得ぅ?……やっぱ乱世脳は違うんだな、イカれてらっしゃるわ。
……しょうがないか、映画も漫画も見てねんだから、脳細胞も貧困になるわな、かわいそうに……
ここは文明人として一つ、ロマンというものを教えてやらねば!

「そうだな、強いて言うなら……『義を見てせざるは勇無きなり』って、とこかな……」

 ……ふっ、ピッカピカに決まっちゃった……ね!

「……お前は何を言ってるんだ?」
「あー……え、そこから? んーと、義で勇だから……『困ってるヤツを見つけたら助けてやるのがカッコイイ男だ』って意味かな。」
「カッコイイ? そんなくだらん理由で……」
「くだらん、って……オレにとっては大事な事なんだよ。」
「カッコイイが大事?……わかった、お前はバカなんだな! なるほど……そうか、バカか……」

 そんな腑に落ちたような顔せんでくれよ……

「テッサ……バカと紙一重だけどな、オレのはロマンチストって言うんだよ!」

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