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第1話
しおりを挟む潮風が肌を撫でるように吹いていく。
「ふふ~ん。ふ~ん。」
鼻歌を歌いながら軽やかに舞う少女はさながら月の精霊のようだ。
月に照らされた髪が少女がくるりと回転する度にふわりと淡い白を纏いながら宙に浮く。
少女がぱちりと瞬きする度に金の瞳が幻想的に海に反射した月をうつす。
ふと、少女が踊りを止めた。
「……?」
少女から辛うじて見える辺りに明かりが灯ったからだった。
(ランプかな……?)
少女は気になり、少し近くに行ってみることにしたらしい。
裸足だった足についていた砂を落とし皮の靴を履き、歩き出した。
「……。何だろ?」
ざくざく。
少女が少し歩くと髪をひとつに束ねた同じくらいの歳の子が桟橋であろうそこに座り竿を持ち釣りをしていた。
「ねぇ!そこで釣りをしてるの?」
桟橋に座っていた子は急に声をかけられたことに驚きびくりとはねてばっと首を勢いよく後ろに向けた。
「えっ!?うぁあ、びっくりした……。そうだけど……。どこの子?普通の家だったら子供はもう出して貰えない時間だと思うんだけど……?」
「まぁ、うーん。そこはね。ほら、察してくれない?」
「抜け出してきたクチか…。早く帰った方がいいよ。そろそろ、雨が降り出すから。」
「そ…うだけどー……。それより、雨が振るのがわかるなんてすごいね。」
「普通だよ。」
「それでも、こんなに晴れてるんだし、普通わからなく無い?」
「ぅーん……てか、誤魔化さず帰りなよ。」
呑気に会話しながら、釣具を片付けている。
そうこうしているうちに、ポツポツ雨が降り出し始めた。
「うわっ。ほんとに降り出した……!」
「ほらね。うーん、とりあえず、家に帰らないんだったら着いてきなよ。」
「ほんと?ありがとう!助かる!」
少女はお礼を言ってその子の後ろを歩きはじめた。
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