異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

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マルクトール王国編

145話 主人公、歴史の闇を知るー2

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「ライル、古文書を年代順に並べてみよう。テル、手伝って。年代鑑定師になったんだろ?」

「分かった。でも鑑定師としてはまだまだだから、どこまで出来るか…。」

「大丈夫だよ。こうやって、みんな経験を積むんだよ。さぁ、やってみよう。」

 テルとシオンとライルで、様々な古文書を年代順に並べていく。

「これでいいと思うのですが、この2つだけ、年代が分からないのです。」
 ライルはその2冊を手に持って、みんなに見せる。

「ミライ、年代が分からないこともあるの?」
「あい!秘匿の術がかけられているものや特別な空間に保管されていたものは、書かれた年代が分からないんだよ。その場合は、書かれている内容か、その書物の様式で判断するんだけど、それでも判別つかないものがあるんだ。」

「ワタシにそれを良く見せて。」
 テルが2つの書物を手に取り、じっくり観察している。
「年代鑑定の師匠が言ってた。最後は直感だって。この2つは新しく見えるけど、どちらも1000年以上前のものだと思う。」

「やはりそうですか。この2つはそれぞれ別の場所で発見されたのですが、特殊な箱の中に保管されていました。その箱にも流浪の民の紋様があったのですが、その紋様は今のとは少し形が違うものでした。」

「こうやって並べてみると、良く分かるね。1000年前を境にして、紋様の形が違う。」

「ということは、この2つはやはり1000年前のものであってるのね?スゴイわ。テル姉さま!昔から勘が鋭かったけど、この年代鑑定のお仕事に活かされてるのね。」

「うん。師匠が勧めてくれたんだよ。その勘を活かしてみないかって。」

 テルはエレーナのためだけに仕事を変えたわけじゃないんだ。ちゃんと自分に合っている仕事に決めたんだね。

「さぁ、ここから分かることを考えてみるよ。」

「まず、1000年以上前のものは、それぞれの古文書で紋様が微妙に違うね。でも1000年前から数百年前までの古文書は、紋様が同じだ。」

「ということは、1000年前を境に紋様が統一されたってことですね。ちょうど境にあるものは、ソラにもらったこの2冊です。やはり、この神官達が最初なのでは?」

「うん。トールの仮説は正しかったのかも。この2冊が事実を書いたものだとすると、精霊王が亡くなったのは、1000年前。そこから200年間、暗黒の時代があって、精霊王に関する書物が破棄されていった。流浪の民の紋様がある書物を書いていた人達は世襲で役目を受け継いでいたのなら、代を重ねるごとに本来の意味が失われたのかもしれないな。」

「あっ!だから、内容に意味が無いんじゃない?」

「なるほど、そういう推測もできますね。世界のことを調査して、神官達に情報を送っていた人達は世襲だった。代を重ねるごとに神官達に情報を送るという本来の目的が分からなくなり、何かを書いて残す場合には、流浪の民の紋様をどこかに記すという慣習だけが残った。だから、本の内容に深い意味など無かった。」

 筋は通っているな。でも……。

「ちょっと聞いていいかな?」
 僕は基本的なことを確認したくて、みんなに聞いてみる。

「もし、その精霊王って人が本当にいたのなら、1000年以上前の古文書とかに書いてないの?」

「そんな王がいたという記載は無いです。それもあって、この2冊の内容が信じられないのです。」

「でもさ。精霊王に関する書物は、徹底的に破棄された可能性もあるよね。残ってないのは、それが原因なんじゃない?」

「そんなに全部の書物を消すことは出来るのかな?」

「紋章システムが出来るまでは、書物は大事なものでした。だから、所有者は限られていたのです。そういう人達だけを狙えば、破棄させることができるかもしれません。」

「これだけ残ってないということは、精霊王の存在自体を無かったことにしたいという意思が働いたのでは?」

「トールの言うとおりかもしれません。歴史は時に残酷です。書物や物などの証拠がないものは、無かったことにされてしまいますから。」

「ダグザ族と一緒だね…。」

「ダグザ族?」

「あっ、ライルは居なかったね。ここの地下に迷宮が見つかって、そこのダグザ神殿でソラにあったんだよ。そして、ダグザ族という種族がいたって教えてもらったんだけど。」

「えぇっ!僕も行きたかったですよ!なんで、誘ってくれなかったのです?」

「何度も呼んだけど、返事が無かったのよ。ライルは何かに夢中になると、他の声が聞こえなくなるでしょ?」

「そういうことは…、ありますけど。」
 ライルがとても残念そうな顔をしている。

「あっ!それだよ、それ!」
 何かに気付いたリオンが、大きな声を出す。
「ソラに聞けばいいんだよ!ソラなら、精霊王のこと分かるんじゃない?長生きなんでしょ?」

「うーん、それはたぶん無理じゃないかな?」

「タクミ、どうしてさ?いい案でしょ?」

「ソラはそういうことは教えてくれない気がするんだよ。ダグザ神殿で会った時に、こう言ったんだ。『安易に色々なことを教えない方がいいのかもしれない』って。たぶん聞いても自分で考えてみろって言われる気がするよ。」

「リオン。ソラに聞くのはダメですよ。仮にソラが精霊王について知っていたとしても僕達はそれを証明することができません。結局、真実かどうかは分からないままになってしまいますよ。」
 トールが諭すように話す。

「誰が見てもそうだという証拠を見つけろってことか…。地道にやるしかないね。」

「そういえば、書物ではないのだけど。紋様システムに公開されている物の中に、流浪の民の紋様が付いてるものがあるの。その人たちにどうしてこの紋様を付けているのか、教えてもらうことから始めてみない?デザインが気に入って、とか、なんとなくって人も多いのかもしれないけど。」

「エレーナ、ちょっと待って。その人たちってことは、何人もいるんだよね?」

「そうね。1万件くらいかしら?紋章システムで連絡して、聞いてみるのが早いと思うの。」

 1万件って!かなりの数だよ?
 もしかしたら、ヒントがあるかもしれないけど。

「どうして、その流浪の民の紋様を使用しているのかを教えてもらえばいいんだな。出来るだけやってみよう。オレ達も協力するからさ。成人前の子供達じゃ、連絡はできないだろ?」

 マオリアの言葉にハッとなる。
 そうか!僕とエレーナは、まだ成人前の試用期間だから、知らない人達に連絡することはできないんだった!トールは王様だから、元々できないし。

「そうですね。書物の意味を探るのはやめて、流浪の民の紋様から調べてみましょうか。みなさん、よろしくお願いします。」
 ライルがみんなに頭を下げている。

「連絡はできないけど、私も手伝うわ。この瞬間記憶の能力が活かせるかも。」

「では、エレーナもお願いします。トールはアースに帰りますよね?タクミはどうしますか?」

「僕も手伝うよ」と言おうとした瞬間、ミライが大きな声を出す。

「タクミ!タムから緊急連絡だよ。『イリステラ王国で待ってるよ』だって。」

 タムから緊急連絡?
 イリステラ王国で待つ?
 タムは病気で、スカラにいるはずなのに……。

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