180 / 247
イリステラ王国編
セシルさまのお悩み相談室【本日のお題 恋と愛】
しおりを挟むタクミ
本日のお題は、『恋と愛』です。
僕には経験がないので、どういう感情が恋なのか、愛なのか、さっぱり分からないんです。
セシル
そうじゃなぁ。
何代か前のイリステラ王は、『好きになるのが恋で、恋の先にあるのが愛』だと言っておったなぁ。
タクミ
いまのイリス様は、子供が15人いますけど、全員父親が違うって言ってましたよ。好きの種類は違うけど、全員"好き"になったから、子供が産まれたのよって。
僕には良く分からない感覚なので、セシルさまに聞いてみたいと思ってました。
セシル
我は、何度も転生しておるのだが、その中では、ヒト種だけでなく、獣人種や妖精種だったこともある。そして、男の時もあったし、女だった時もある。その経験から話をすると、好きになるのは人それぞれだ。
獣人種の男だった時は、発情期があったからのぅ。そういう相手は、それこそ誰でも良かったな。
タクミ
えっ?発情期があるんですか?
セシル
特定の獣人種には、発情期があるぞ。いまは混血が進んで、それで困っている者は、ほとんどいなくなったが。
ヒト種なんて、つねに発情期じゃろう?
タクミ
そうだと言われてますね。僕には分からないですけど…。
セシル
男と女の好きも少し違うのぅ。上手く表現できないが、女の時は相手を独占したいって感情が強かった。逆に男の時は、守ってあげなくてはっていう使命感みたいな感情が強かった。
タクミ
単純な好きって感情じゃないってことですか?
セシル
一夫一妻制度があった頃は、一人の人を一生愛し続けることが素晴らしいことだ、という考えだった。だから、女性は独占欲、男性は保護欲が強かったのではないかと、今になって思うのじゃ。特に昔は、女性の方が立場が弱かった。男性の愛を失うこと=生活できなくなる、じゃったからなぁ。
タクミ
あぁ、だから独占欲が強かったってことですね?
セシル
相手を好きになる気持ちは、いつの時代も同じじゃ。しかし、好きの先には生活がある。
好きだと思ったけど、一緒に生活してみたら我慢できなかったってこともあるじゃろう。
タクミ
あぁ、会社員時代の先輩が、嫁がケチで困ってるって言ってましたよ。付き合ってる時は、高い物もねだらないし、そこが好きだと思って結婚したけど、毎月のお小遣いは少ないし、節約節約でノイローゼになりそうって。
セシル
好きという感情だけでは、生活はできないからな。2人での生活を円滑にするために、好きの感情が変化するのじゃよ。それこそ、家族愛に変わる者もいるじゃろう。
タクミ
一緒に生活することで、恋愛の"好き"から、家族としての"好き"に変わっていくってことですね。なるほどなぁ。
そういえば、この世界ではカップルでも一緒に暮らすことは少ないって聞きましたよ。
セシル
誰かと一緒に暮らすというのは、良い事ばかりではないからのぅ。紋章システムが出来てから、どちらも選べるというのに、一緒に暮らすことを選ぶヤツラの考えてることが分からんよ。
タクミ
えっ?誰かと一緒に暮らす方が楽しいじゃないですか?セシルさまは違うのですか?
セシル
我は一人の方が気楽じゃ。
毎日誰かと話すのは疲れるしのぅ。
タクミ
(どんだけ怠惰なんだ!)
そっ、それにしても、愛の形っていろいろなんですね。
独占欲が強いと言えば、ジャンという男がティアにかなり執着してましたよ。
セシル
ティアは元々、ティアドロップという宝石だ。ティアドロップには不思議な魅力があって、それに魅入られてしまうと手に入れたくて仕方なくなる、そんな曰く付きの宝石じゃった。
タクミ
だから、ティアと付き合う男性は独占欲が強くなるってことですか?
セシル
そうかもしれぬのぅ。
タクミ
ティアがジャンという男に腕を掴まれた時に、防御結界が発生しましたけど、アレは普通のことなんですか?
セシル
この世界には人を害してはいけないっていうルールがひとつあるだけじゃ。それが成り立っているのは、この防御結界があるからなのだ。何があっても使用者を守るから、この世界には法律や警察が無いのじゃよ。
タクミ
ホームにいる小さい子供達はまだパートナー精霊がいませんけど、防御結界は発生するんですか?
セシル
そうじゃよ。身体に危険があると判断した場合に、自動で発生する。パートナー精霊はまだ目覚めていないだけで、存在しているのだから。
タクミ
じゃあ、この世界では交際相手から暴力を受けたりなんて、無いんですね?
セシル
絶対に無い。そして、合意の無い性行為も絶対に無い。防御結界は必ず使用者を守るのだから。
タクミ
それは安心です!
アースには、力や立場の弱い女性や子供を狙う男性もいますからね。
セシル
うむ。そのような輩の中には、合意があったと言い張るヤツもいるのぅ。万死に値するぞ!そんなヤツは、我が跡形も無く消し去ってやる!
タクミ
(過激だなぁ。セシルさまって、過去に何かあったのか?)
そうだ!アースにも出来ませんか?防御結界!それがあれば、僕の両親も事故で亡くなることはなかったのに。
セシル
そうじゃな。身体を守るものができるといいな。危険を察知すると、エアバッグみたいなものが身体を包んで守る、とかな。誰か開発してほしいのぅ。
タクミ
そうですね。
それにしても、ジャンはティアを愛しているからしてしまったのだと言い訳をしていましたけど、相手に危害を加えるくらいの愛って、愛なんですかね?
セシル
愛にはいろいろな形があるからのぅ。
それは日本人の方が詳しいのではないか?
タクミ
どういうことです?
セシル
日本には、愛の付く文字がいっぱいあるではないか!日本人は古来から、愛を理解できる国民なのではないか?
でも、日本は家同士の結婚が多いから、愛を貫き通すのは難しかった。だから、そのような言葉が多くできたのかもしれんのぅ。
タクミ
そうですね。恋愛と結婚は別って言ってる友人もいましたよ。家族が認めてくれないから結婚できないって。
セシル
日本の結婚は、"家"を守るためにあるからのぅ。
タクミ
結婚って難しいですよね?僕にも、結婚する機会は何回かあったんですよ。お見合いを勧められたり。でも相手を守れる自信がなかったので、断りました。
セシル
この世界エレメンテには、結婚なんて制度はないから、相手を守らなくては!なんて、思わなくてもいい。
タクミはこの世界で、深く考えずに人を好きになってほしいのぅ。人を好きになる、愛することは、本当は難しいことではないのだから。
タクミ
セシルさま、ありがとうございました。本日の話は、これで終了です。僕もこの世界で、好きな人が見つかるといいなって思います。
(いや、まてよ?ドラゴンは、そういう人とはなかなか出会えないって聞いたばかりだよ!)
0
あなたにおすすめの小説
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした
☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。
日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。
フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ!
フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。
美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。
しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。
最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる