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ベアルダウン王国編
176話 主人公、ドラゴンの神殿を調査するー2
しおりを挟むユーリが開けた扉の先は、中庭のような空間だった。キレイに樹木が配置され、花が咲いている庭園が広がっている。
「不思議だな。ここには誰もいないはずなのに、手入れが行き届いている。まるで、毎日誰かが世話をしているかのようだ。」
ユーリが庭園を見ながら、素直な感想を口にする。
僕は再び、ドラゴンの瞳を発動する。
すると、今まで見えなかったものが見える。無数の光る玉が庭園の草花の世話をしているのだ。
これは…、精霊球?
いや違うな。いまこの世界にある精霊球ではなく、ソラが教えてくれたヤツだ。精霊を集めてお願いをすると、それを実行してくれる光る玉ができる。
ということは、やはりここはドラゴンが作った建物?
「おい、タクミ。あっちに何かの構造物があるぞ。」
庭園の真ん中あたりに、綺麗な装飾が施された建物がある。あまり高さはないが、大人が2、3人は入れる大きさの祠のような建物だ。
「ここから中に入れるみたいだ。」
建物の内部にもキレイな装飾が施されている。
「へぇ、これはキレイだね。さっきタクミが言っていたのは、これかい?」
「うん。ドラゴンの紋様がある部屋にはこの装飾が施されていたよ。でもユーリには見えてなかったんだよね?」
「あぁ。でも、ここの装飾は見えているよ。ここは不思議な建物だね。あっ、タクミ。そこの壁に絵があるよ。」
ユーリが指し示す壁には、男女の肖像画が飾ってある。が、これは絵というよりは、写真のようだ。細部まで精巧に描かれている。
ドラゴンの瞳でジッと見ていると、絵の中の男性と目があったような気がした。
気のせいだよな…。
『ようこそ、ドラゴンの家へ。』
「んっ?ユーリ、何か言った?」
「えっ?アタイは何も言ってないよ。」
『客人が来るのは、とても久しぶりだな。』
不思議な声がまた聞こえた。
どこから聞こえるのかと、キョロキョロ見まわしていると、目の前に特異な雰囲気の男性が現れた。
『はじめまして、君は正真正銘のドラゴンだね?ドラゴノイドには見えない仕掛けを突破してきたとは。』
「あっ、はじめまして。僕はタクミです。ドラゴンの先祖返りです。」
条件反射的に僕は男性にあいさつをするが、ユーリが不思議そうな顔をしている。
「タクミ?誰と話をしているんだい?大丈夫かい?」
『ふむ。こちらのお嬢さんはドラゴノイド、タクミの肩にいるのは人工精霊か。興味深い存在だ。それにしても私の姿が見えておらんとは。この時代のドラゴノイドは、随分と能力が低くなってしまっておるのだな。』
「あの…。貴方は…?」
『私の名前は、アズマ。この建物の主人だよ。』
「タクミ?本当に大丈夫なのかい?」
「ユーリ、ここの建物のご主人があいさつしてくれてるんだよ。後で詳細を話すから少し待っててくれる?」
「主人?わかった。何もない空間に向かって独り言を言ってるタクミは不気味だけど、待っているよ。」
ははっ、不気味って…。
「ユーリ、タクミの近くに強い力を感じるよ。」
「ミライには分かるのかい?」
「ユーリ、ミライは僕の力を糧にしているからね。人工精霊っていっても、ドラゴンに近い存在なんだよ。」
「ドラゴンの能力を使えるのかい?じゃ、アタイとミライは同じだね。ミライには負けられないな!」
『人工精霊を生み出すとは、この時代の者達は面白いな。そして、そちらは元気なお嬢さんだね。ほほぅ、お嬢さんはの望みは、自分のルーツを知りたいということだな。ふむ、タクミはソラと出会っているのだね?ソラはまだ息災であるか。』
「アズマもドラゴンなんですね。僕やユーリの思考を読んでる。」
『不躾ですまぬな。お前達の思考は読みやすい。心が素直なのだな。ユーリとやらにも、私の姿が見えるようにしてやろう。』
アズマの姿が一瞬光る。
「うわっ!ビックリした!」
いきなり目の前に男性が現れて、ユーリがとても驚いている。
「ユーリ、ここのご主人のアズマだよ。」
『私がアズマだ。はじめまして、ドラゴノイドのお嬢さんとタクミのパートナー。』
「あっ、あの。おっ、お邪魔してます。ユーリっす。よろしくお願いします。」
アズマの独特の雰囲気に気圧されたユーリが変な口調になっている。
「あい!ミライだよ。よろしくね。」
ミライは気軽にあいさつしている。アズマの威厳を感じ取れないのは、子供だから?人工精霊だから?僕の育て方がいけないのか?
『うむ、どちらも愛らしいのぅ。』
アズマは気にしてないようだ。
良かった。心が広い人で。
「すみません。勝手に入ってきてしまって。」
『よい、よい。この建物はドラゴンの血を引く者達のために造ったのだよ。お前達なら大歓迎だ。』
「ここは一体どういう目的の建物なんですか?」
『ここはドラゴンの家。その昔、この家でドラゴン達は育ち、旅立っていった。』
「それじゃあ、この世界にはたくさんのドラゴンがいたのですか?」
『そうだよ。※※※※がこの世界から去るまではね。』
※※※※?
『ふむ。君の言語では表現できないようだね。この世界は昔、強大な力を持つ※※※※が治めていたのだよ。※※※※のおかげで人々は幸せに暮らしておった。私たちドラゴンもね。』
「あっ、あの。アタイはドラゴノイドについて知りたいんだ。教えてください!」
『ふははっ!せっかちなお嬢さんだな。そうだな。ここはドラゴンの家。ドラゴンとドラゴノイドについて、語るとしようか。』
アズマは僕達についてくるようにと言うと、祠から出て中庭を抜ける。そして、大小ある建物のひとつの扉を開ける。
『ここは会食の間だよ。好きなところに座りなさい。いま飲み物を出すから。』
精霊球もどきの光る玉が、飲み物を運んできてくれる。
『タクミにはダグザ茶、ユーリにはスーレ山名物の発泡水だ。』
「アタイの好きな飲み物…。何も言ってないのに…。」
「これがドラゴンだよ。ドラゴンの瞳の能力のひとつなんだ。」
席についたアズマは、僕達の目を見ながら、威厳ある声で言う。
『では、ドラゴンについて語るとしようか!』
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