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ベアルダウン王国編
190話 主人公、異世界の秘密を知るー2
しおりを挟む「どっ、どういうことだべか?それじゃ、ソラと精霊王は神様だとでも言うだか?」
「ハハッ!そうかもしれないな。ソラと精霊王が出会ったのは5000年前。その頃、この世界は異世界への穴がどこにでも開いていて、そこから異形のモノ達が出現していた。ソラはそいつらを片っ端から倒しまくってたと言っていた。それが楽しくてこの世界に留まっていたようだ。異世界への穴からは、いろいろなモノ達がやって来る。新天地を求めて、獣人種やヒト種、稀に精霊種も。この世界は、異世界からの移住者で成り立ってたんだよ。」
「この世界の人のルーツは移住者だったんだ…。僕と同じ…。」
「ソラはこの移住者達を気に入った。ソラは特に好奇心が強いドラゴンだ。積極的に関わりを持った。しかし、異世界への穴が開いてる状態では、人々は安心して暮らせない。ある時、ソラと仲良くなったヒトが、ソラにお願いしたんだよ。この異世界への穴を閉じてほしいと。」
「んっ?んだども、ソラには穴を閉じる能力はないべ?」
「そうだよ。だから、ソラは精霊王に穴を閉じてくれって頼んだ。精霊王はエンシャントエルフ。長命で不思議なチカラを持っていた彼も、異世界からやってきた存在なんだよ。ソラには一目でわかったらしいよ。この穴を塞ぐことができるって。」
「精霊王も異世界からの移住者なんだ…。」
「でも最初は、即答で断られたって言ってたな。『なんでボクがそんな事しなくちゃいけないの』って言われたらしい。」
「えっ?映像で見た精霊王は優しげな人だったよ。」
「だよなぁ。俺も信じられなかった。でもタクミなら分かるんじゃないか?ソラも人の常識とは違う所があるだろ?」
「たしかに、ソラは人とは少し感性が違うかも…。」
「ソラも精霊王も長命だ。2人から見たら、ヒトは蟻のようなものなんだ。」
「人が蟻?」
「タクミも小さい頃、蟻を踏み潰したことあるだろう?2人にとってヒトは、ちょっと力加減を間違えたら死んでしまう、そんな脆弱な存在なんだよ。ソラにとって、ヒトに興味があるっていうのは、蟻の巣の観察と同じなんだ。」
「そんな…。人を人として見てないってこと?」
「仕方ないさ。彼らはそういう種族なんだ。」
「じゃあ、なぜこの世界を?」
「この世界に暮らす人達が好きになったからさ。ヒトと蟻の違いだよ。オレたちは蟻と話すことはできない。でも、ソラと精霊王はヒトと話す事ができた。意思疎通ができれば、理解もできる。ヒトを理解して、その望みを叶えることにしたんだ。」
ソラと精霊王は、ヒトを理解して好きになってくれたんだ!
「異世界への穴を塞いでも、この世界は不安定だ。度々、小さな穴が開いて何かが出現する。意思疎通できるモノは元の世界に帰すか、この世界に移住させて、意思疎通ができない危険なモノは討伐する。こうして、今のこの世界ができたんだよ。」
「精霊王が異世界への穴を塞ぎ、ソラが異世界から来る異形のモノ達を倒す。そうすることで、やっとこの世界が安定したってことだね?」
「タクミ、正解!」
「この世界を今の状態にしたということを考えると、精霊王とソラがこの世界を作ったというのは間違いではないですね…。」
「歴史家であるライルも知らない歴史だろ?」
「じゃ、このエレメンテは、昔から異形のモノが急に現れる世界だったということかい?」
「そうだ。ドラゴノイドのユーリ。お前の祖先達は勇敢に戦ってたよ。精霊王とソラがこの世界を安定させたため、さらに多くの種族が移住してきた。ドラゴンもそうだ。だから、ドラゴノイドも多くいたらしい。」
「アズマもそう言ってた。そうか。昔はアタイと姉貴みたいなドラゴノイドがいっぱい居たんだな。」
「その後、ソラは闘う相手が減ったと言って、異世界へと行く事が多くなった。精霊王はこの地域で穏やかに暮らしていたが、ある時、異世界から助けを求める声が聞こえた。王妃は異世界で、誰でもいいから助けてと一心に祈っていた。その声に反応した精霊王は王妃の一族を受け入れた。精霊王には異世界への扉を開けるチカラがあったから。」
「精霊王は異世界への穴を閉じるだけじゃなくて、開けることもできたんだね。すごいチカラの持ち主なのに、なぜ…。」
「王妃と結婚したからさ。精霊王と王妃は命を分け合う契約を結んだ。精霊王は人から見たら、永遠とも思えるような時間を生きる存在。王妃を愛した精霊王は、王妃を先に亡くすなんて耐えられなかった。だが、その契約によって、精霊王のチカラは弱体化する。ヒト種の姫に取り憑いていたヤツを見抜けなかったのは、それが原因だよ。」
「そうだったんだ…。」
「でも弱体化してると言っても、姫さんのチカラはその精霊王より弱かった。半分ヒトだからなのか、精霊王が特別強かったからなのか、それは分からないが。姫さんを鍛えていたソラは、このままでは無理だと感じた。ところでタクミ、ドラゴンの強さは魂の強さなんだって?」
「うん。ソラはそう言ってた。そして魂の強さは身体に影響を及ぼすって。」
「ソラは姫さんがチカラを上手く使えないのは、精神が原因だと考えた。チカラはあるはずなんだよ。でもチカラを使えない。これは精神を、魂を鍛えるしかないと思ったソラは、姫さんの肉体と精神の分離を提案したんだ。そして姫さんはそれを受け入れた。」
肉体と精神の分離?
「じゃあ、ここにいる姫は?」
「そうだよ。姫さんの肉体だけ。ソラはこの肉体を守るために、この国中の精霊をここに集めた。だからこの大陸には精霊がいないんだ。精霊のいない大地は不毛の土地になる。こうして、この大陸は砂漠となり、暗黒大陸と呼ばれるようになったんだ。」
「でも、姫の精神は?いまどこに?」
「それはお前達が良く知ってるだろ?」
「えっ?どういうこと?」
今まで黙っていたトゥーラが口を開く。球体の中で静かに漂う精霊王の姫の前に立つとこう言った。
「皆さま、ご紹介します。この城の姫、セシルさまです」と。
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