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ベアルダウン王国編
193話 主人公、異世界の秘密を知るー5
しおりを挟む「価値観が違うと同じ場所では暮らせない?ガンガルシアの国民なら分かるってどういうことです?」
ガンガルシア王国には、まだ行ったことがない。何か問題のある国なんだろうか?
「この世界にある7つの国の中でも、ガンガルシアは特別だ。この国があるから紋章システムが機能していると言ってもいいくらいだ。」
「そんなに重要な国なんですか?」
「俺の国はそんなに大層な国じゃねぇよ。」
ガルシアがそう答える。
「ガルシアよ。お前の国に住んでるヤツらが他国に行ったらどうなるか、お前なら良く分かるだろ?」
タイジュに指摘されたガルシアは、はぁっと溜息をつく。
「タイジュの言う通りだ…。俺の国のヤツらは良いヤツばかりだが、他国では生きていけないだろう。」
「それって、どういう…?」
「タクミには、破壊衝動は無いのか?征服欲は?」
タイジュが質問を重ねてくる。
破壊衝動?征服欲?
「僕には、あまりそういう衝動は無いです。」
「でも、そういうヤツらを知っているだろ?例えば、お前の元上司、とか?」
グールに取り憑かれる原因となったあの会社のあの上司。俺の言うことを聞けと、執拗に怒鳴り散らしていた。
「あの男は他人を従わせたいっていう気持ちが溢れていた。だから、執拗に命令して、それに背くと激しく怒鳴る。世の中には、そういう気質のヤツもいるんだよ。」
気質…。その人が持っている性質ってこと?
征服欲か。たしかにそういう気持ちが強い人だったのかもしれない。
「アースでは、いろんなヤツが同じ場所で暮らしている。そういうヤツらが好き勝手に暮らしていたら、争いばかりになってしまう。だから、法律や世間の常識で、度を超えた行動をしないように縛ってるんだ。でもそういう気質のヤツらにとっては、それは抑圧された状態だ。そいつらはちょっとしたキッカケで、抑圧から解き放たれてしまう。そして、犯罪と呼ばれる行為をする。ダメだと言われてるもの程、やってみたくなるだろ?」
「いえ、僕はそんなことはあまり思わないです…。」
でも少し理解はできる。あれもダメ、これもダメって言われていたら、何でだよ!って反発したくなるかも。
「ガンガルシア王国にいるヤツらは、そういう気質のヤツが多いんだ。何故だか分からないけど、攻撃したくて堪らなくなる。オレは獣人種だったこともあるし、完全なヒト種だったこともある。基本、獣人種は攻撃的だ。しかし、オレはヒトだった頃の方が攻撃的だった。だから、種族の問題じゃ無くて、その人の気質の問題だと思ったんだ。アースにもいるだろ?攻撃的なヤツ?」
「そうですね…。すぐカッとなって手が出る人は、社会ではうまく生活できない。そして、そういう人は周囲の人と争いになりがちです。」
「この世界は価値観によって、住む国を選ぶことができるが、じつは価値観だけじゃないんだよ。その個人の性質、気質によっても国が決まるんだ。」
「たしかに俺の国のヤツらは、すぐに手が出るから、他国では他人と関わって生きていくのは大変だろう。防御結界があるから被害は無いとはいえ、会う度に殴ろうとする相手と付き合おうなんて思う人はあまり居ないからな。」
「アースにも、こういう気質のヤツはいる。そのためにスポーツがある。スポーツで発散させて、普段攻撃的にならないようにしてるんだ。」
スポーツってそういう効果もあるんだ?そういえば、中学生の頃は運動部に入れってよく言われたなぁ。スポーツしてないと悪い事するからって言ってる先生もいた。その時は何言ってんだよ、と思ってたけど。発散という意味では、言ってる事は間違いじゃなかったのか…。
「ガンガルシア王国は闘いの国だ。自分の気がすむまで闘うことができる。それによって、命が無くなっても満足なんだ。そうだろ?ガルシア。」
「俺の国のヤツらは、他国のヤツらから見たら、死にたがりだよ。生きるか死ぬかのギリギリの所で戦闘することを好むヤツが多い。」
死にたがり?たしかに防御結界があるのに、それを使わずに戦闘するのは理解できない。まったく使わない人は滅多にいないと言っていたけど、討伐者の中には自分が傷付く事をあえてする人が多いと聞いた。
「だからオレは紋章システムを開発して7つの国を作る時に、この城の機能をひとつ強化した。」
「この城の機能って…。異世界の穴を塞ぐ機能だよね?それを強化ってどういうことです?」
「ガンガルシア王国にだけ、異世界の穴が開くようにしたんだ。」
以前、ガルシアは言っていた。昔は世界中に異世界の穴が開いて、怪異が出現していたと。
「それは?なぜ?」
「ガンガルシアのヤツらのためだ。そして、この世界の人々のためだ。ガンガルシアのヤツらは闘うことが生きる存在意義なんだ。そいつらから闘うことを無くすことはできない。闘う相手が居なくなった世界では、他に闘う相手を探すだろう。」
「平和な世界で闘う相手を探すって?それって、戦争になるってこと?」
「そういうヤツらもいるってことだ。そいつらは常に闘う相手を探してる。闘う相手を作るために、戦争を起こすヤツがでるかもしれない。」
戦争を知らない僕には、全然理解できない。平和な方がいいのに。
「戦争は駄目デス!戦争になると、弱い個体から死んでいきマス!戦争なんて、迷惑にならないところで、やりたい人達だけで勝手にやっててほしいデス!」
戦争を経験しているカシムが叫ぶ。
「だから、だよ。だからガンガルシアにだけ、怪異を出現するようにしたんだ。不意に開く異世界の穴もガンガルシアに固定してある。ガンガルシアで討伐される怪異の中には、そうやって入り込んだ異世界の異形のモノ達もいるんだよ。ガンガルシアで思う存分闘えるから、戦争を起こしてやろうってヤツはいないだろ?」
「ちょっと待ってよ。異世界の穴を固定できるようになったの?ってことは、もしかして異世界の穴を全て塞ぐこともできるんじゃない?」
「リオンの言う通りだ。それを実行するには問題もあるが、出来なくはない。」
「じゃあ、すぐにやってよ。そうすれば、グールも異世界の異形のモノも入ってこれないんでしょ?」
グールを憎んでいるリオンは不機嫌そうに、タイジュに訴える。そのリオンに、タイジュは真剣な顔で返事をする。
「では、リオン。ガンガルシアの死にたがりの討伐者達はどうする気だ?やつらは闘う相手が居なくなるぞ。」
「そっ、それは…。」
「そいつらに、お前達の考えは変だから、闘わないようにって、諭すのか?攻撃性を激減させる薬でも投与するのか?そこまでしたら、それは個人の否定だ。リオンだって、グールを憎んでるのは変だから止めろって言われても自分を変えることはできないだろ?」
それとこれとは別の話だと思うが、攻撃性のある人でも好きに生きられる場所があるなら、その方がいい。自分が自分らしく生きられる場所があるなら、そこで自由に生きたい。少なくとも、僕はそう思う。
「オレは出来るだけ、いろいろなヤツらが好きに生きられる世界にしたかった。だから、ガンガルシアがあるんだ。それに、その方法には問題があると言っただろ?」
「問題があるから実施してないってことだね?」
「そうだ。それに、お前達がここの座標を発見した時に、オレは決意した。砂のガーディアンを見事に倒して、精霊王のことを知ったヤツらに未来を託そうってな。」
未来を託す?
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