異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

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ベアルダウン王国編

195話 主人公、正解の無い問題を考えるー1

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「この世界の未来を決めるのは、今を生きているお前達だ。オレがすべての情報を提供する。だから、お前達が答えを出すんだ。」

「それは、僕達でエスティオを実施しろと言うことですか?」
 ライルが真面目な表情で聞く。

 エスティオとは、この世界の成人前の子供達が参加する卒業試験みたいなもの。ある問題を全員で話し合い、全員一致の答えを出す。

「そんな重要な問題を僕達だけで答えを出すんですか?それって、この世界の未来のことだよね?」
 僕は心配になって聞く。

「ガルシアは呪われし者。そして、ここにいる多くは、王宮関係者だ。答えを出すに相応しいと思う。それに今から話すことは、すべての王に伝えてくれ。フラルアルドのアルドはまだ生まれてないから、ジルが王代理と相談してほしい。」

「すべての情報を提供するって言っただな。まだ話してないことがあるだか?」

「呪いについてだよ。どうしてアースのグールがこの世界へとやって来て、怪異となるのか。グールと怪異の存在が判明して、アースのような異世界からもやって来ると気付いたオレは、長い間考えて、ある仮説をたてた。グールがこの世界にやって来るのは、何か目印があるからではないかと。」

「目印?この世界で呪いが発動したことと関係があると言うのですか?」

「精霊王は、王妃の一族を受け入れたことで呪いも入ってきたと言っていたが、本当にそうなのだろうかと考えていた。じつは王妃だけが呪われた存在なのではないか、と。王妃が一心に願った祈りが精霊王に届いたと言うが、普通のヒトが祈っても、異世界に祈りは通じない。王妃に特別なチカラがあったと考える方が自然だ。そして、そのチカラと呪いに関係があるとすると、いま一番王妃のチカラを受け継いでいるのは、娘である姫だ。」

「まさかタイジュは、グールや怪異の目印になってるのは、姫だと言いたいのですか?」

「その可能性は否定できない。精霊王の姫には強いチカラがある。それこそ、異世界にいても、引き寄せられるだろう。」

「じゃあ、姫がいなくなれば、グールも怪異も入ってこないってこと?」
 リオンが複雑な表情でつぶやく。

「でも姫が居なくなれば、異世界への穴が開くだよ。それに、それは仮定の話だべ?もし王妃の一族が原因だとしたら?この世界は混血ばかりになったんだから、姫がこの世界から居なくなっても、グールは入ってくるべ。」

「そうだな。その可能性もあるな。」

「この世界に発生する怪異は、アースからのモノが多いのデスよね?なら、アースが平和になれば、グールに取り憑かれる人は減りマス。だから、アースで紋章システムを開発するのがいいと思いマス!」
 カシムはどうしてもアースで紋章システムを開発して、戦争を無くしたいようだ。

「いや、それより異世界の穴を完全に開かないようにしたら、怪異だって、異世界の異形のモノだって、入ってこれないよ!討伐者達のことは、どうにかしなくちゃいけないけど!」
 リオンは、グールと怪異が発生しないようにしたい。

 そんなリオンにタイジュは苦言を呈する。
「リオン、異世界の穴を閉じることには問題がある。それをすると、こちらからも異世界へ行くことが出来なくなるんだ。」

「それって、もうアースにも行けなくなるってこと?」

「そうだ。オレは紋章システムを開発して、ガンガルシアに異世界の穴を固定した。その技術で、アースへの道を作ったんだ。元々アースは、この世界と繋がりやすい場所だった。そしてアースからやって来るグールと怪異も多かった。だから道を作ってグール退治をすることにしたんだ。それが出来なくなる。そして、もうひとつ。ドラゴンは異世界へ行く能力があるが、それも出来なくなる。」

「新しいドラゴンがやって来ることも無くなるってことかい?」

「実際、800年前に異世界の穴を閉じた時には、アズマの子供達はすべて異世界に旅立った。チカラの弱い個体は、出入りできないようになったらしい。いま、この世界に自由に出入り出来るのは、ソラとグールくらいだ。」

「異世界の穴を完全に閉じたとしても、この世界にグールが発生するかもしれない。でも、紋章システムが継続できれば取り憑かれる人はほとんど居ないから、怪異は発生しないよね。」
 シオンは、異世界の穴を閉じて、紋章システムを継続することが良いと思っているようだ。

「あぁ、異世界への穴を塞ぐには、この城と姫さんが必要だ。紋章システムの継続が絶対条件だ。」

「それより、本当にこのシステムは継続出来ないのか?何か手があるんじゃないのか?専門チームを作って研究したらどうだ?」

 ジルの提案に、タイジュは複雑な顔をする。

「このシステムの仕組みをすべて公開することは、オレは反対だ。これを悪用するヤツが出たらどうする?こんなものを動かせるのは、エンシャントエルフかドラゴンくらいだが、この世界には今、タクミがいる。タクミを捕まえて、稼働させようって考えるヤツが出たら?」

「パートナーが止めるだろ?そのための紋章システムだ。」

「紋章システムは万能じゃない。良いと思ってする行為が、必ず良いおこないとは限らない。オレが国を作った後、土地所有者達から土地を取り上げた時は、オレは極悪人扱いだったぞ。」

「それはどうしてです?カネっていう仕組みが無くなったら、土地を持ってる意味も無くなるから問題ないと思うんだけど。」

「タクミ。自分が持ってるものが無くなるってのは、受け入れられないものなんだよ。紋章を授けるから、全てを放棄するよう説得したんだが、紋章システムという便利なものより、先祖代々の土地を守るって人もいたよ。」

 良いと思ってしていることも、誰かにとっては困ることになる。

 万人に受け入れられるものは無い、か…。

「お前達はどんな未来を選んでも良いんだよ。どれが正解かなんて、誰にも分からないんだから。」

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