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ガンガルシア王国編
198話 主人公、戦闘狂に会うー1
しおりを挟むタムと共にガンガルシア王国に来た僕は、王宮ではなく町の宿屋に滞在することにした。
王宮では、ガンガルシアに仕える朔夜や音都羽、カシム、サーシャ達とガルシアで、この世界の未来について話し合うだろう。その邪魔をしたくなかったのだ。
それに、ガンガルシア王国の町の雰囲気を味わってみたかったという理由もある。
宿屋を紹介してくれたのは、カシムだ。この町の宿屋には、いろいろな討伐者がやって来るらしい。カシムは、ここでガンガルシアの実情を知ってほしいと言っていた。
「ミライ。ガンガルシアに来たけど、どうしたらいいと思う?」
僕は宿屋の個室でミライに相談する。タムは隣の部屋だ。
「あい!とりあえず討伐者の仕事を見たらどうかな?タクミには、この世界のことをよく知ってから、未来を決めてほしいな。」
「未来か…。みんなが幸せになれる世界がいいよね。」
「あい!紋章システムが稼働しなくなったら、碧とも話せなくなる。それはイヤだな。」
ミライは人工精霊だ。紋章システムが無くても実体があるから消えないが、碧や他のパートナー精霊達は、具現化できなくなって、もう話せなくなる。
「セシルさまは、自分を犠牲にしてこのシステムを継続させるつもりだ。紋章システムのおかげで、この世界のみんなは幸せそうだ。紋章システムは、この世界の人々に必要なものだと思う。でもセシルさまを犠牲にしたくない。何か他に方法は無いのかな…。」
「そうだね…。」
僕とミライがそんな話をしていると、タムから連絡がくる。近くで巨大な怪異が発生したので見に行かないか、と。
町から数キロ離れた場所にホバーで向かう。そこには、巨大な甲殻虫がいた。蟹のような硬い殻を持った、見た目は蜂のような生物…。大きさは2階建ての一軒家くらいある。
マジか…。デカイ昆虫?
僕はハムスターとかの小動物は好きだが、昆虫は苦手だ。あの節が嫌いなんだよな…。できるなら、見たくない。
巨大怪異を相手に、数人の討伐者が攻撃を加えていた。その周りには見ているだけの人が何人かいる。僕たちもその一人だ。
「タム。周りの人達は何を?見てるだけ?」
「タクミは、ガンガルシアは初めてだか?怪異の討伐は、早い者勝ち。いま攻撃してるチームが先に見つけたから、周りのヤツは見てるだけなんだべよ。」
「全員で戦った方がいいんじゃないの?」
「討伐者達は、討伐数を競っている。ランキングがあるだ。怪異が強すぎてチームだけでは倒せない時だけ、共闘することがあるべ。だから、周りに集まってくる。ここは町から近いし、いろんなチームが見学に来てるだよ。」
見学ね…。
「成人する直前の子供たちも見学にくるべ。怪異を実際に見て、怪異の恐怖を体験するだ。」
恐怖か…。間近に見る巨大な怪異は、たしかに異様な怖さがある。
これが日本に出現して、街で暴れたとしたら?パニックどころじゃないよな。1体だけでも壊滅的な打撃を受けるだろう。
「あっ、ほら。もう討伐されるべ。なかなか良いチームだ。連携がとれてるだよ。」
僕達が見ている前で、巨大なハチ型甲殻虫が動かなくなる。
しかし、これで終わりかと思ったら、怪異の殻がはずれて中から鋭いトゲが大量に発射された。トゲは周りにいる人々も襲う。
僕はとっさに腕にドラゴンの鱗をまとわせて、トゲを弾く。隣を見ると、タムはトンファーのような武器でトゲを弾き落としていた。
タムって、武器なら何でも使えるんだ?器用だな。
「怪異は倒される前が一番危険だべよ。油断してはいけないだ。」
最初に戦っていたチームのメンバーのうち、何人かがトゲを避けきれなかったようだ。ケガをしている。
「命に関わる攻撃ではない限り、防御結界を使わないチームのようだべ。あっ、チームのリーダーが負傷したみたいだ。優先権を放棄しただよ。ここからは、誰でも討伐できる。オラたちも参加するべか?」
タムの言葉どおり、周りで見ているだけだった人々が討伐に加わる。
「基本的に武器なんだね。術式で攻撃する人はいないの?」
「んだよ。チームのメンバーに当たると困るから、術式は、空を飛んでる怪異を地上に落とす時に使うことが多いだ。」
そういえば、僕がこの世界にはじめて来たときも僕に向かって爆撃が飛んできたな。いま思うと、あれが術式での攻撃だったのかも。
「あとは武器での攻撃が効かない怪異には、周りに人が居ないことを確かめた上で、誘い込んで強力な術式を使う場合もあるだよ。」
強力な術式の展開には時間が必要だと聞いた。チームで行動してるのは、そのためだな。
僕達の目の前にいる怪異は、近付く討伐者達にトゲを発射して攻撃してくる。なかなか近付くことができない討伐者達のパートナー精霊が、突然一斉に騒ぎ出す。
「「強力な術式展開を確認!ここから離れてください!」」
パートナーからの警告で各自、怪異から少し距離をとったところで、僕達の後ろから何かの術式攻撃が怪異に放たれた。その術式攻撃が当たった怪異が一瞬氷に包まれる。
「ブリザード系の術式で足止めとは、考えたべ。あれならしばらくトゲは飛んでこないだよ。」
すると、術式攻撃がきた方向からひとりの少年が走ってくる。手には巨大なハルバードが。その武器で、怪異を思い切り殴り倒す。
ごっ、強引だね…。
それにしても、小さい身体で大きな武器を上手く使いこなしているな。でも少し雰囲気が不気味だ。執拗に怪異を攻撃している。よく見ると、少年は笑いながらハルバードを振るっている。
周りの討伐者も、その異様な攻撃に気付いたようだ。ひとりの討伐者が叫ぶ。
「戦闘狂のシグルトだ!やべぇ!巻き込まれるぞ!みんな、離れろ!」
周りの屈強な討伐者達が、怪異と少年から距離をとる。
戦闘狂?あの少年が?
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